咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
まこが清澄高校控え室に戻ってきた。
「ただいま。」
「お帰りなさい部長。」
「お帰りなさいです部長さん!」
「プラスにする事は出来んかったわ。」
「いやいや、十分です!特に最後の判断は素晴らしかったです!」
「やっぱり、マホならそう言うと思ったわ。」
「はい、あの状況でしたら、あの判断が最適だったと思います。」
「でも、最悪の状況を考えて直撃を受けたのは分かりますけど、親番だった訳ですし、少しは自分も和了ろうとして良かったんじゃないですか?」
「確かに和の言いたい事も分かる。けど、オーラスの配牌は特段良い物じゃなかった。それなら、最悪の事態を避けるって判断なら、マホも納得してくれるじゃろうって思ったんじゃ。」
「そうですか。まぁ、全く意味の無いやり方では無いですから良かったんじゃないでしょうか。」
「和がそう言ってくれるとちゃんと正しい事をしたって感じがするな。」
「なんですかそれ・・・」
「とりあえず、マホが点数を取り返してきますよ!」
「そうだね、頑張ってマホちゃん!」
「はい!ありがとうございます!」
~臨海女子控え室~
「ただいまです。」
「お帰り、なかなかの活躍だったじゃないか。流石ハオだな。」
「いや、点数だけ見たら私はかなり出来た方だと思います。けど、阿知賀部長に点数で負けて、清澄に戦略で負けました。私は、二人に負けたんです。」
「阿知賀はともかく、清澄はハオの真似しただけじゃん。戦略も糞も無いでしょ。」
「いや、それを言うなら私も縁さんに聞いた事をしただけです。清澄と何ら変わりません。」
「でも、清澄は結構マイナスになってるじゃん。」
「いや、夢乃マホさんへ確実に回す為にわざと白糸台に直撃をしたんです。それを私は、私の親番を流すだけだと思い、無視しました。あそこで清澄を止めていれば、清澄を倒せたかもしれないのに・・・」
「まぁしかし、白糸台との点差を縮めて清澄の点を減らしてくれたんだ。十分だ。」
「縁さんにそう言っていただけると嬉しいです。」
「しかし、問題は次だな。」
「夢乃マホさんですか・・・」
「あぁ、そうだ。私と西園寺麻衣が同卓なら良い勝負は出来ていたかもしれないが、この面子だと厳しいだろうな・・・」
「そういえば、清澄の部長の方から聞いたんですが、夢乃マホさんが『負ける要素が無い』って言ってたそうですよ。」
「そんな自信、良く出てくるね。中堅の奴ら全員バカにしてんのかな?」
「いや、そういう訳でもない。夢乃マホの言うとおりだ。私でも同じ状況だったら同じ事を思うだろうな。何故なら、白糸台の渋谷はオーラス、阿知賀の天理は連風の時を気を付ければ良い。それ以外は普通だからな。そして明華は準決勝で敵ではないと認識されたのだろう。だから気を付けるべきはオーラスと天理の連風だけ。いや、違う言い方をすれば、その他の全ての局で和了れると思っているだろう。」
「夢乃マホさんにとって私はどうでも良いって事ですか・・・」
「まぁ確かにあいつなら思ってそうだね。それだけの実力を持ってるんだもん。」
「夢乃マホが強いし勝てないのも仕方ないと思う。けど、出来るだけ点を減らさずにネリーに回して欲しいんだ。ネリーまで行ければこちらも勝機がある!」
「当たり前じゃん、ネリーは絶対勝つよ!それこそ、負ける要素が無いよ!」
「そう言ってくれると安心する。しかし、とりあえず今は夢乃マホから出来るだけ取られない事を目標にやって来てくれ。」
「はい、頑張ります。」
~阿知賀女子控え室~
「ただいま。」
「お帰りなさい部長!収支トップ、流石です!後はあたしに任せて下さい!」
「白、ありがとう。白なら清澄の中堅とも良い勝負が出来そう。頑張ってね。」
「はい!では、行ってきます!」
「頑張れ~!!」
「頑張ってね。」
「勝って私に繋げてよね!」
「はい、ありがとうございます。行ってきます!」
~白糸台高校控え室~
「ただいま・・・」
「部長、お疲れ様です。見事に利用されましたね。しかも二回も。」
「全くその通りだ。やっぱり私は、利用されるだけの存在なのか・・・」
「いや、そんな事はありません。十分出来ていました。利用されていたとは言え、トップを維持しましたし、臨海を止める事も出来ました。部長のお陰です。」
「でも、私は何も出来ていない・・・」
「むしろそれで良かったんですよ。」
「えっ?どういう事だ?」
「すいません、私、部長に謝らなくてはならない事があります。部長の対局前に思ってもない酷い事を言ってしまってすいませんでした。実はあれ、部長がちゃんと仕返しをしてもらう為に言ってたんです。」
「仕返しをしてもらう為に?どういう事?」
「準決勝が終わった時の部長はなんだか自分を失っているように感じました。もしかしたら決勝戦であの和了りをしないで酷い負け方をするかもしれないと思って、あえて酷い事を言って仕返しをして貰ったんです。だから、部長は十分な仕事をしました。ありがとうございました。」
「そうだったのか。じゃあ、私は麻衣に必要とされているのか?」
「もちろんです!そうじゃなかったら私の次を頼んだりしませんよ。」
(そうだ、麻衣は入部して直ぐに部内一位だった淡を負かした事で、部内でチームを作る時に取り合いになっていたのに一番最初に私を選んだ。その時はまだ三流で誰からも注目されていなかった私を選んでくれた。しかも麻衣の次である次鋒を・・・)
「そうか、私は、麻衣に必要とされていたのか・・・」
「そうです、部長に代わりなんていません。私は部長となら決勝でも戦えると思って選んだんですから!」
「麻衣・・・」
(私は、幸せ者だな・・・)
~臨海女子控え室~
「ただいま帰りました。」
「清澄にしてやられたな。」
「はい、ミスだと思って放置してしまいました。」
「でもあれだけ点差があるなら大丈夫なのではないのですか?」
「いや、奴はかなり脅威!」
「そうデース。夢乃マホさんなら余裕で一位に返り咲きデスよ!」
「確かにそうかもな。しかし、準決勝ではそれも込みで勝ったわけだ。中堅で出来る限り失点を抑えて、副将戦と大将戦で巻き返せば、我々にも勝機がある。」
「そうデース!しかも今回はアレを使っても良いんデスよね!」
「あぁ、存分に使ってもらって構わない。」
「なら大丈夫だと思うデース!まぁ、慢心はしませんが。」
『さぁ!決勝戦ももう折り返し地点!中堅戦が始まります!』
『注目する選手はやはり夢乃マホ選手ですね。彼女がどれだけ巻き返すのか、そして他の選手がどのようにそれを食い止めるか。といったところが重要になってくると思います。』
『成る程、では中堅前半戦を開始致します!』
~場決め結果~
夢乃マホ:東
雀明華:南
渋谷尭深:西
天理白:北
~東一局~ 親:夢乃マホ
白糸台 178600
臨海 137500
阿知賀 68500
清澄 20100
(いきなり夢乃マホの親番、一回くらい和了られても問題無いかな?いや、夢乃マホに連荘されたら渋谷さんが地和を和了るようになる。それだけは阻止しないと。でも、私のとこも点数少ないからダブ東の親番で連荘したい。どうしよう・・・)
「リーチ。」
(2巡目なのにもうリーチ!?流石夢乃マホ・・・)
(まぁ、最初は和了られちゃいますよね・・・)
「ツモ!リーチ一発ツモ三色ドラ3。8000オールです!」
(いきなり親倍!?やっぱりこの人は異次元。どうすれば攻略できるんだろう・・・)
「一本場です!」
~東一局一本場~ 親:夢乃マホ
白糸台 170600
臨海 129500
阿知賀 60500
清澄 44100
「リーチ!」
(ダブルリーチ!?)
(やはりこの人を止めるのは難しいですね・・・)
(このまま連荘してくれれば、最後に和了れる。)
「ツモ!ダブルリーチ一発ツモタンピン三色。8100オールです!」
(また親倍!?しかも捲られた!?)
(早速見せてきましたね。本物の実力を・・・)
~東一局二本場~ 親:夢乃マホ
白糸台 162500
臨海 121400
清澄 68400
阿知賀 52400
(白糸台から点数を取っておきたいですね。じゃあ、狙い打ちします!)
(夢乃マホが白糸台をじっと見てる?これは、もしかして・・・)
~6巡目~
「ロン!タンピン三色。11600の二本場で12200です。」
(やっぱり白糸台に直撃した!この人、レベルが違いすぎる!しかも、まだ連荘してるし!)
(そろそろ止めないと危ないですね。)
~東一局三本場~ 親:夢乃マホ
白糸台 150300
臨海 121400
清澄 80600
阿知賀 52400
(そろそろ止めないと!と言ってもどうすれば・・・そうだ、風神に鳴いて貰って流せれば。)
「あ、ポンです。」
(臨海の人も止めようとしてる。ここは何とか風神に和了ってもらおう。)
~6巡目~
「ツモ。東のみ。400・700の三本場で700・1000です。」
(やっと親番が流せた。でも今の局、夢乃マホが和了しようとしていなかった気がする。連荘しなくても勝てるから?それともやっぱり白糸台を気にしてかな。何にせよこの親番を流せたのは大きい。)
~東二局~ 親:雀明華
白糸台 149600
臨海 123800
清澄 79600
阿知賀 51700
(この局は夢乃マホが北だから、四喜和をやるかもしれない。気を付けないと。・・・って思ったらいきなり北を出した。って事はもしかして違う能力?ならこの北は出して大丈夫だよね。)
「ポン。」
(はぁ!?自分が捨てたのを鳴いてきた!?そうか、3枚持ってても鳴かなきゃ能力発動しないから捨てたんだ。でも、これで皆四喜和を和了るって警戒してる。東は鳴けないはず!)
「カン。」
(えっ!?東をカン!?という事は東も北も最初から3枚づつ持っていたって事?でもこれ、先に東を捨ててたら出来なかった。どんだけ豪運なの!?)
(最初に風牌が全然無かったので大体察していましたけど、これは流石に・・・)
~7巡目~
「ツモ!小四喜!8000・16000です!」
(やっちゃった・・・これが夢乃マホの本気・・・全然勝てる気がしない。)
(もう捲られそうです・・・)
~東三局~ 親:渋谷尭深
白糸台 141600
臨海 107800
清澄 101600
阿知賀 43700
(まだ東三局なのにもう10万まで戻してる。やっぱり正真正銘の化け物だこの人・・・)
(この局で臨海は捲れますね。)
「ポン。」
(鳴いてきた。今度は何をするつもり?)
「ポン。」
(また鳴いた。)
(この鳴いていく感じ、白糸台副将に似てる。)
「ポン。」
(ヒット!)
(三回鳴かれた。って事は・・・)
「ツモ。対々ドラ3。2000・4000です。」
(捲られた・・・)
(・・・耐えた!次は私のターン!)
~東四局~ 親:天理白
白糸台 137600
清澄 109600
臨海 105800
阿知賀 41700
「リーチ!」
(よし、配牌もドラも大丈夫。これなら和了れる!)
~4巡目~
「ツモ!ダブリーダブ東ツモドラ3。8000オール!」
(今度は阿知賀!?)
(・・・)
(よし、この調子でどんどん稼ぐ!最後の役満も、16000一回くらうだけだから気にせずにここで出来るだけ稼ぐ!)
~東四局一本場~ 親:天理白
白糸台 129600
清澄 101600
臨海 97800
阿知賀 65700
「リーチ!」
(やった。またダブリー出来た!夢乃マホもこれを防ぐ事は出来ないのかも!)
~5巡目~
(来た!)
「ツモ!ダブリーダブ東ツモドラ3。8100オール!」
(また阿知賀!?阿知賀にも捲られてしまいました。それにしても清澄はなんで止めないのでしょう。白糸台の方が最後に和了るかもしれないのに・・・)
(・・・そろそろですね。)
~東四局二本場~ 親:天理白
白糸台 121500
清澄 93500
阿知賀 90000
臨海 89700
(よし、今回も良い感じ。これで親倍和了れればトップになれる!今ならやれる!)
「ポン。」
(夢乃マホが鳴いた!?何をするつもり?)
「ポン。」
(また私の牌を鳴かれた。って事はこれ、臨海の大将の和了り方。ヤバい・・・)
「ポン。」
(この赤5ピンで和了られる・・・)
「ロン。タンヤオ対々ドラ3。12600です。」
(終わった・・・夢乃マホ、ヤバいなぁ・・・)
~南一局~ 親:夢乃マホ
白糸台 121500
清澄 106100
臨海 89700
阿知賀 77400
(そしてまた夢乃マホの親番、こんなの勝てる訳無い・・・)
「ポン。」
(夢乃マホがいきなり鳴いた。今度は何をするつもり?)
~7巡目~
「ツモ。三色同刻三暗刻対々。6000オールです!」
(手牌に1の三色同刻!?ヤバ過ぎ・・・)
(トップ取られた・・・)
~南一局一本場~ 親:夢乃マホ
清澄 124100
白糸台 115500
臨海 83700
阿知賀 71400
(夢乃マホ、今度は何をしてくるの・・・)
「カン。」
(えっ・・・)
「ツモ!嶺上開花ツモ清一ドラ8。16100オールです!」
(えぇぇぇぇぇぇ!!!??そんなのありですか!?)
(宮永さんの和了り方、何も出来ずに役満を和了られてしまうとは・・・)
(でも、これで地和が出来る!)
~南一局二本場~ 親:夢乃マホ
清澄 172400
白糸台 99400
臨海 67600
阿知賀 55300
(あれ、夢乃マホからヤバい感じが無くなった。この局は和了るつもり無いのかな?なら、私が和了る!)
(夢乃さんは何もしないようですね。なら、私が和了ります!)
「ポン。」
(臨海が鳴いた。臨海の人も夢乃マホが何もしない事に気付いて攻めてきてる。負けられない!)
~9巡目~
「ツモ!混一混老対々ダブ南。4200・8200です!」
(やっぱり風神は伊達じゃないですね、間に合わなかった。)
~南二局~ 親:雀明華
清澄 164200
白糸台 95200
臨海 84200
阿知賀 51100
(臨海の風神さんに流れが来ているような気がします。ならここは流れを変えます。)
「ポン。」
(夢乃マホが鳴いた。何をしてくるの・・・)
~3巡目~
「チー。」
(夢乃マホの手、あんまり強そうには思えない。何をしているの?)
~6巡目~
(これは、全然有効牌が来てくれません。夢乃さんのせいなのでしょうか・・・)
「ロン。タンヤオのみ、1000です。」
(やっぱり、夢乃さんに止められてたんですね・・・)
~南三局~ 親:渋谷尭深
清澄 165200
白糸台 95200
臨海 83200
阿知賀 51100
「リーチ!」
(この局はダブ南だからダブリーが出来る!それに、多分夢乃マホも邪魔してこないはず!)
(今回は阿知賀に和了られそうですね。)
「ツモ!ダブリーダブ南ツモドラ3。4000・8000!」
(よし、これで少しはましになった。と言ってもこの後地和で白糸台に持っていかれちゃうんだけどね・・・)
~南四局~ 親:天理白
清澄 161200
白糸台 87200
臨海 79200
阿知賀 67100
(オーラス、これまで蒔いてきた種が実る時!ハーベストタイム!)
(ハーベストタイム!)
「ツモ!地和!8000・16000です!」
和了したのは尭深ではなくマホだった。
(えっ!?なんで夢乃マホが地和和了ってるの!?)
(えっ?どうして・・・)
(何がどうなっているんでしょうか・・・)
(しかも夢乃マホの手牌、大四喜だし・・・ん?そういえば夢乃マホの最初の捨て牌、東南西北ばかりだった!という事は、夢乃マホが小四喜を和了った時も、あたしから北を鳴くためだけじゃなくて、ここで和了るためでもあったって言うこと!?そんな、何手先まで読んでるの・・・こんなの、勝てる訳無い・・・)
「ありがとうございました!」
(私が、ハーベストタイム出来ないなんて・・・しかも、私のハーベストタイムをコピーされるなんて・・・)
(夢乃さん、どこまで強くなるのでしょうか・・・)
~中堅前半戦結果~
清澄 193200
白糸台 79200
臨海 71200
阿知賀 51100