咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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3週間も空けてしまい大変申し訳ありません。これからは今まで通り投稿させて頂きます。よろしくお願いいたします。


第74話 決勝次鋒前半戦

先鋒戦を終えて、各々の選手が控え室に戻って来た。

~清澄高校控え室~

「ただいま帰ったじぇ・・・」

「あ、片岡先輩お帰りなさいです!」

「お帰り、優希ちゃん。」

「ごめんだじぇ、全然和了れなかったじょ・・・」

「いやいや、あれは仕方ないですよ。西園寺さんと四季さんが相手だったにも関わらず3万点も残ったんですから十分です。あの二人が全力を出していたんですからかなり実力がある人でも飛んでいたかもしれません。片岡先輩はちゃんと繋いでくれましたから、後は任せて下さい!」

「マホちゃん、そうだじぇ。マホちゃんや皆がいるから心強いじぇ!」

「でも、その前にわしがこの3万点を守らにゃいかんけどな。」

「部長なら大丈夫ですよ。これまでの試合でもちゃんと点数を守って来たじゃないですか。部長はとっても安定してるから大丈夫です!」

「これまで安定していたと言っても、今回は決勝戦じゃ。強豪揃いで勝てる気がせんわ・・・」

「部長は別に勝たなくても大丈夫です。飛ばなければマホが何とかしますから。」

「マホちゃん、やっぱり今日なんだか強気だよね。何かあったの?」

「えっ、いや、何も無いですよ!ただ、今回の相手だったら勝てそうだなって思っただけです。」

「でも、これまでの相手よりも、今回の相手の方が強い気がするけど。」

「そんな事無いですよ。渚さんはとっても強かったですし、県予選の時はマホがまだ弱かったですから。それに、今回はマホと相性が良い方々なので今回は勝てると思っているんですよ。」

「相性?どんな?」

「マホの対局を見ていれば分かりますよ。でもその前に部長さんです。頑張って下さいです!」

「おぉ、ありがとさん。」

「部長、頑張って下さい。」

「はいはい、じゃあ、飛ばない程度に頑張って来るわ。」

~阿知賀女子控え室~

「ただいま・・・」

「玄さん!最後の和了り、カッコ良かったです!」

「でも、結局いっぱい点数取られちゃった・・・」

「気にしないで玄、私が全部取り返して来るから。」

「灼ちゃん。ありがとう!」

「それに、白も私もいるから大丈夫よ。」

「えっ?私は!?」

「シズは・・・ねぇ?」

「そうですね。高鴨先輩はめちゃくちゃ調子が良い時は凄く強いですけど、調子が悪い時は弱いですからね。」

「きっぱり弱いって言われた・・・」

「まぁでも、シズはここぞって時に強くなるから期待はしてるけどね。」

「流石憧、分かってる!」

「はいはい、それより、今は部長の応援でしょ。」

「そうだった!灼さん!頑張って下さい!」

「頑張ってね、灼ちゃん!」

「頑張って下さい部長!」

「ありがとう皆、それじゃあ、行ってくる。」

「灼、いつも通りにやれば勝てるよ。」

「ありがとう晴ちゃん、行ってくるね。」

「頑張れ!」

「うん。」

~臨海女子控え室~

「ただいま帰った。」

「お帰りなさいデース。やっぱり西園寺さんには勝てなかったデスね。」

「あぁ、やはり奴は強かったよ。惨敗だ。」

「でもあれって、冬の時にあいつが親じゃなかったらユカリが勝ってたじゃん。」

「いや、そんな事は言い訳にならないよ。どんな状況でも勝てるようでなくては本当に勝ったとは言えない。それに、前半は私が有利で後半は西園寺麻衣が有利だった。それで、同じ点数か西園寺麻衣よりも多く取っていたなら西園寺麻衣よりも強いとまではいかないものの勝ちではあったかもしれない。しかし結果は西園寺麻衣の圧勝だ。私は西園寺麻衣には勝てないんだよ。」

「まぁ、過ぎたるは及ばざるが如しデスよ!」

「シアン、それは『過ぎた事は気にするな』と言った意味で使っているのだろうが、それは誤用だ。本当は何事もやり過ぎは良くないという意味だ。『過ぎたる』は過ぎ去るではなく、やり過ぎると言った方の過ぎるだ。」

「良かった、いつものユカリさんデス!」

「お前、それを確かめる為にわざと・・・」

「いや、誤用だった事は知らなかったデース。」

「そうか・・・まぁ、なんだ、とりあえず2位という位置は取れた。後は次鋒で臨海に追い付けば今回もトップで終わらせられるだろう。だから、ハオは出来るだけ白糸台から点数を奪って欲しい。だが、直撃はしないように。」

「わかっています。では、私は行きます。」

「頑張れ~!」

「頑張って下さいデース!」

~白糸台高校控え室~

「いやぁ~、圧勝でしたよ。」

「お帰り麻衣、流石だったよ。」

「ありがとうございます部長。」

「はぁ?何が圧勝よ。前半めっちゃ負けて、後半でめっちゃ有利になったから偶然勝てた癖に!」

「おい淡、麻衣に限ってそんな事無いだろう。」

「いや、悔しいですけど大星先輩の言うとおりですよ。」

「えっ、そうなのか?」

「はい。四季さんが和了れない時に親にならなかったら、私はほぼ確実に負けていました。だから、私はあの人より弱いです。でも、現状私は勝ったんです!あの人との実力の差なんて個人戦で直接当たる時までに埋めれば良いんです。とりあえず今、この対局では私は勝ったんですよ。」

「そんなの、本当に勝ったなんて言えないじゃない。」

「そうですか、やっぱり分からないでしょうね、大星先輩には、次鋒以降全員がマイナスになるかもしれない中で先鋒をさせられる気持ちが。」

「はぁ?どういう事よ!」

「言葉の通りですよ。部長から大星先輩まで四人ともマイナスになる可能性が高い試合で私は四季縁に勝てたんですよ!」

「なんで私らがマイナスになるって決めつけてんの!」

「貴女方が弱いからですよ!冗談抜きで。」

「はぁ?」

「だが、私達は白糸台のベストメンバーのはずだ。」

「それが弱いって言ってるんですよ。他の出場校の選手と比べて。」

「いや、しかし、白糸台は他の所よりも強いはずだ。」

「去年、準決勝で阿知賀に負けて、決勝で清澄に負けて、今年に至っては宮永先輩が居なくなってメンバー全員が誰かに出し抜かれてマイナスという結果を1度以上残しています。そんなチームが強いなんて果たして言えるでしょうか?」

「それは・・・」

「そんな中、私だけは出し抜かれてもプラスで終わらせてきたんですよ。運を見方につけて。でも他の皆さんは、出し抜かれたらそのままズルズルと負けていくだけじゃないですか。そんなチームの先頭を努める人間の気持ちにもなってみて下さいよ。」

「麻衣、私は麻衣の期待に応えられなかったのか・・・?」

「部長は、最初の方は私との連携で上手く勝っていました。けど、準決勝で阿知賀の部長に看破されてしまいました。次の対局でも、彼女は出てきますよ。部長の能力の限界が明らかになった今、部長の存在理由は最早直撃をさせない抑止力だけですよ。もう誰も部長に直撃しません。部長が直撃する能力を封じられたら、うちの3軍チームにも勝てないレベルですよ。だから、せめて最小限の失点で抑えてきて下さい。それが、私の期待に応える方法ですよ。」

「・・・分かったよ。頑張って来る。」

「おい、お前強いからって流石に言い過ぎだろ!お前は1年生だろ!」

「辞めろ亦野、麻衣が言っている事は全て正しい。2年の時の私は、麻衣がさっき言った3軍にすら入れなかった。でも4月から1ヶ月、麻衣に言われた事をしてきただけでここまで連れてきてくれたんだ。麻衣の言った事が全て正しいって事は私が一番知っている。だから、麻衣の言葉は、私の意思だ。だから私は、私の意思に従う!」

「お前、変わったな・・・」

「麻衣が変えてくれたんだ。」

「前のお前の方が良かったよ。」

「以前の私のままなら、今この舞台にはいない。」

「そうか・・・なら、好きにしろ。」

「あぁ。好きにさせてもらうよ。」

 

 

『さて、次鋒戦が始まろうとしています。選手紹介をします。まずは現在トップの白糸台高校、三年生で部長を勤めている東条小夜選手です。』

『彼女は直撃をすると痛い仕打ちが返ってきます。西園寺選手と少し似ていますね。』

『東条選手は西園寺選手に練習を教わって1ヶ月で急成長してメンバー入りが決まったらしいですよ。』

『え、三年の東条選手が西園寺選手に教わっていたの?』

『そういう事でしょ。』

『しかも、1ヶ月でって、私でも出来ないかも・・・』

『まぁ、元々素質はあったかもしれないから、すこやんより凄いって事は多分無いと思うよ。』

『そうかな、でも、そうだとしても1ヶ月であそこまで育てたのは流石に驚愕です。西園寺選手はただ強いだけじゃないようですね。』

『そういう事ですね!』

『でも、納得がいきました。東条選手は弱点がそこそこあると思っていましたけど、付け焼き刃だったからなんですね。』

『そういう事だね。ほんじゃあ次、2位の臨海女子2年の郝慧宇選手です。』

『彼女は中国麻雀だったらこの中で一番強いかもしれませんが、日本の麻雀だと少し厳しいかも知れませんね。しかし、打点を和了率で補っているので、かなり手強い相手なのは確かでしょう。』

『中国麻雀のルールちょっとだけ調べてみたんだけど、めっちゃ複雑で良く分かんなかった。』

『確かに、日本の麻雀は結構簡略化されている感じですからね。』

『世界2位の小鍛冶プロは中国麻雀だったら何位くらいですかね?』

『えぇ!そんなの分かんないよ!それに、変な持ち上げ方辞めて!』

『はいでは次~。』

『なんでまた無視するの!?』

『続いて3位の阿知賀女子部長の鷺森灼選手です。』

『・・・』

『ちょっとすこやん、これ仕事だよ?』

『もぉ、分かったよ、やるよ。彼女は安定していますし、阿知賀女子の得点元の一人でもあります。ですが、東条選手やハオ選手は少しイレギュラーですから意外と厳しい対局になるかも知れませんね。』

『成る程、では最下位の清澄高校部長の染谷まこ選手です。』

『彼女も鷺森選手と同じで安定はしていますが、二人に翻弄されそうですね。ですが、清澄高校は後に夢乃マホ選手や原村和選手、宮永咲選手が残っています。染谷選手が飛ばされなければ、つまり0点だとしても飛びさえしなければ勝てる可能性はまだあります。染谷選手は30000点を取られるような選手では無いので清澄が負けるかどうかはまだ分かりませんね。』

『でも、10万近くある点差を取り返せるの?』

『夢乃選手ならそれくらいやりそうですね。』

『ふ~ん、まぁ良いや、選手が揃ったんで対局開始です!』

 

~場決め結果~

染谷まこ:東

郝慧宇:南

東条小夜:西

鷺森灼:北

 

~東一局~ 親:染谷まこ

白糸台 196300

臨海 125200

阿知賀 51700

清澄 31800

(始まったか、とりあえず麻衣の為にもこの点を死守する。そしてあわよくばこの点を増やす!)

(この点差を何とかせんとな。)

(まず和了る!)

~7巡目~

「ツモ。平和一通。1300・2600。」

(やっぱりこの阿知賀の部長が先に和了ってくるわ。去年も和や臨海副将の奴とかと良い勝負しとったからかなり強いとは思っとったけど、この巡目でこの和了りをするか・・・)

(流石は阿知賀部長だ。だが、今回は貴女の好きにはさせない。)

~東二局~ 親:郝慧宇

白糸台 195000

臨海 123600

阿知賀 56900

清澄 29200

(30000点を切った。ここは少し強引にも和了りにいかんとな。)

「ポンじゃ。」

(清澄の部長が鳴いた。この人が鳴いた時は他の人の手を遅くする時か、強引に自分の手を和了る時。私が和了ったから?いや、そんなに神経質って訳でもなさそうだしそれはない。という事は多分、3万点を切った焦り。なら、こっちも。)

「チー。」

(阿知賀も鳴いてきた。)

(はぁ、安手和了るって分かってるだろうに、止めるんかい・・・しんどいな。)

~6巡目~

「ロン。一通のみ、1000点。」

「はい。」

(阿知賀が臨海に直撃、しかも2巡前に私が出した牌。阿知賀は3巡前から手が変わってないから私を見逃した。たった1000点だろうが私には直撃しないって事か。やはり強い。)

(先に和了られた。こがぁなん追い付けんわ・・・)

~東三局~ 親:東条小夜

白糸台 195000

臨海 122600

阿知賀 57900

清澄 29200

(これが阿知賀部長ですか。大した事ないですね。)

~6巡目~

(これで聴牌。)

「リーチ。」

「フー・・・ロン。」

(やられた!)

「7700。」

(これまで取った点数、全部持っていかれた。)

(やはり臨海も強い。この対局で私は、麻衣の期待に応えられるのだろうか・・・)

~東四局~ 親:鷺森灼

白糸台 195000

臨海 130300

阿知賀 50200

清澄 29200

(これくらいならまだ和了れそうですね。)

(この人、強い!)

~7巡目~

「フー・・・ツモ。2000・4000。」

(また和了った!)

(今度はツモ和了り。)

(親被り・・・)

~南一局~ 親:染谷まこ

白糸台 193000

臨海 138300

阿知賀 46200

清澄 27200

(そろそろ止めないとヤバい。)

(さっきからズラそうとしても全然鳴けんわ。どうすればええんじゃ・・・)

(やはり麻衣が言ってた通りだ。全員強者だ。どの高校も簡単には敗れないな。くっ、私も麻衣みたいに素でも強ければこんな事には・・・)

~8巡目~

(やっと臨海を止められた・・・)

「ツモ。七対子赤1で1600・3200です。」

(阿知賀が和了った。)

(また阿知賀、臨海と阿知賀が強い。この後この二人の親番が残っていると考えると辛いな。)

(また親被りじゃ・・・)

~南二局~ 親:郝慧宇

白糸台 191400

臨海 136700

阿知賀 52600

清澄 24000

(このまま点数が下がり続けてたらいくらマホでも厳しいじゃろうな。勝負手になりそうだし、ちょっと本気出すわ!)

(清澄が眼鏡を外した!?確か、この人は勝負手が入った時に眼鏡を外すはず。ならば清澄を警戒するべきか。)

(清澄が危ない!)

~8巡目~

「リーチじゃ!」

(やっぱりリーチしてきた。)

(この人がリーチを掛けた時の成功率はかなり高い。しかし、一発を消す事も出来ない。やられたか・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモ一通混一。4000・8000じゃ!」

(倍満!?)

(親被りですか。なら、縁さんに言われてたもしもの時の策を取りましょうか。)

(やはり清澄は夢乃マホと宮永咲が突出しているだけで個々が強い。私も負けていられない!)

~南三局~ 親:東条小夜

白糸台 187400

臨海 128700

阿知賀 48600

清澄 40000

(ここまで一回も和了れていない。このままでは終われない!)

(さっきの勢いでもう一度和了る!)

~7巡目~

(よし、聴牌した!これで焼き鳥を回避できる!)

「リーチ。」

「フー・・・ロン。3900。」

(えっ、私に直撃した?仕返しされるのは分かっているはず。どうして・・・)

(はっ!まさかこの人、私の次の親番で流す為にわざと!)

(この機転のきかせかた、まるで元部長みたいじゃの・・・)

~南四局~ 親:鷺森灼

白糸台 183500

臨海 132600

阿知賀 48600

清澄 40000

(今気付いた、成る程、阿知賀に連荘させないために私に直撃したのか。臨海の思い通りに動くのは癪だが、ここで阿知賀に連荘されるわけにもいかない。しかも今の失点を取り返すと言う意味でも和了らなくては。臨海の餌だと分かっていても釣られなくてはならないのか・・・)

~4巡目~

「ロン。3900。」

(臨海、強い・・・)

「ありがとうございました。」

「お疲れ様だ。」

「ありがとうございます。」

「お疲れさん。」

 

~次鋒前半戦結果~

白糸台 187400

臨海 128700

阿知賀 48600

清澄 40000


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