咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
副将前半戦が終わり、憧は控え室に戻らずに対局室に留まっていた。
(はぁ、まさかこの面子でマイナス終了する事になるとはね・・・ってか、有珠山、一回しか和了ってないのにプラス収支とか、あり得ないでしょ・・・)
「あの、新子さんは控え室に戻らないんですか?」
「あぁ、あたしは指示がある時は来てくれるだろうから大丈夫。」
「私もです。」
「・・・あ、ごめん、気まずかった?」
「あっ、いえ、そんな事は無いです。その、新子さんは何度も和了ってて凄いなと思いまして。」
「いやいや、結果的に真屋さんの方がプラスじゃない。あたしはむしろマイナスだったし。」
「私は、少し大きな和了りを一度しただけで、全然凄くないですよ。」
(少し・・・この人は親の三倍満が少しなのね・・・やっぱり住む世界が違うって感じね。)
「しっかしさ、一回和了っただけでプラスって、なんだかズルいよね。」
「そ、そうですね、なんか、ごめんなさい・・・」
「いやいや、謝る事では無いよ。」
「でも、偶然高い和了りが出来るよりも何回も和了ってた新子さんの方がカッコいいです。」
「そう?ありがとう。」
「はい。あの、お互い、後半戦も頑張りましょう!」
「うん!次は負けないから!」
「有珠山と阿知賀で決勝に行けたら嬉しいですね。」
「まぁ、そうだね。」
(有珠山と阿知賀で、流石に厳しいだろうね。白糸台が準決勝で敗退とか考えられないし、どちらかは間違いなく敗退しちゃうよね・・・)
~阿知賀女子控え室~
「憧、なんだか有珠山の人と仲良さそうにしてる。」
「憧は誰とでも仲良くなれるよなー。」
「初対面のはずでしょうに、凄いですね。」
~対局室~
『さて、対局室に選手が戻ってきました。副将後半戦、開始です!』
~場決め結果~
愛宕絹恵:東
新子憧:南
亦野誠子:西
真屋由暉子:北
~東一局~ 親:愛宕絹恵
阿知賀 143000
有珠山 92300
白糸台 87700
姫松 77000
(親番、ラスやから連荘しときたい。)
「ポン。」
(また始まった、白糸台のポン。)
「ポン。」
(もう2副露、ヤバイかも・・・)
「ポン。」
(ヒット!)
(いきなり3副露された!これ、またやられちゃうのかな・・・)
「ツモ。中対々ドラ3。3000・6000。」
(捲られてしまいましたか。)
(うわぁ、いきなり跳満親被りはきついわ・・・)
『後半戦最初の和了りは白糸台高校の亦野選手です!』
『今年は去年と比べて和了率が上がって振込率が減ってますね。』
『やはり白糸台のナンバー5は伊達じゃない!』
~東二局~ 親:新子憧
阿知賀 140000
白糸台 99700
有珠山 89300
姫松 71000
(親だから連荘しなきゃ、このまま負けっぱなしじゃいられない!)
「ポン!」
(よし、このまま行く!)
「ポン。」
(またポンされた、でも負けないから!)
~7巡目~
「ツモ!混一三暗刻対々。6000オール!」
(決められてしまった・・・追い付けなかったか。)
『阿知賀女子新子選手、親跳ツモ!詰められていた点差を一気に引き離した!』
『これでかなり優位に立ちましたね。2位の白糸台に子の役満を直撃されても1位は揺らぎません。』
『この点差を逆転する事は出来るのか!?』
~東二局一本場~ 親:新子憧
阿知賀 158000
白糸台 93700
有珠山 83300
姫松 65000
~3巡目~
「ポン。」
~7巡目~
「ポン!」
(また二人が鳴いとる。このままやったら何も出来んまま終わってまう。こんな時お姉ちゃんやったらどないしとるやろ?)
「ツモです。1100・2100です。」
(えっ、有珠山が和了った!?しかも有珠山にしては安手・・・あっ、そうや、安手や。『相手と点差があっても焦らず安手でも和了る。そうすれば流れもこっちに着いてくるで!』ってお姉ちゃん言っとったわ!ほんならこっからは攻めてくで!)
~東三局~ 親:亦野誠子
阿知賀 155900
白糸台 92600
有珠山 87600
姫松 63900
(とにかく流れを掴まなくちゃ!)
「チー。」
(姫松も鳴き始めた、こっちも負けてらんない!)
「チー!」
(もっと速度を上げる!)
「ポン。」
(また姫松が鳴いた。)
「ポン。」
(今度は白糸台!?)
「ロン。混一ドラ1。3900です。」
(やられた・・・)
『鳴き合戦を制したのは姫松高校の愛宕選手です!』
『白糸台高校は今の放銃で有珠山高校との点差が1100点になってしまいましたね。これはまた3位になってしまう可能性もありますね。』
~東四局~ 親:真屋由暉子
阿知賀 155900
白糸台 88700
有珠山 87600
姫松 67800
~7巡目~
(阿知賀も白糸台も2副露やけど、私だって調子出てきてる。行ける!)
「リーチ。」
「ポン。」
(白糸台が3副露、でも流れはこっちに来とるはずや!)
「ツモ。メンタンピンツモ。1300・2600。」
(また姫松に和了られた!)
(折角3副露出来てるのに和了れない・・・)
『姫松高校の愛宕選手、2連続和了です!』
『調子が出てきましたね。』
『しかも次は親番です!そして南入です!』
~南一局~ 親:愛宕絹恵
阿知賀 154600
白糸台 87400
有珠山 85000
姫松 73000
~6巡目~
(なんだか調子良さげやな、親やし行っとこか。)
「リーチ。」
(また姫松、しかも親リーだし。連荘とか止めて欲しいな・・・)
(鳴けない・・・)
(これ、ホンマに流れがこっちに来とるわ!)
「ツモ。リーチ一発ツモ混一。6000オール。」
(これ、ヤバいかもなぁ・・・)
『愛宕選手、3連続和了ぁぁ!!!そして連荘です!』
『しかも有珠山と白糸台を捲って一気に2位に浮上しましたね。』
『愛宕選手の猛追を止める事は出来るのか!?』
~姫松高校控え室~
「よっしゃ!2位浮上や!流石絹やな!」
「このまま阿知賀も捲ってくれたら楽なんやけどな。」
「漫なら多分爆発するから大丈夫やろ。」
「そんな事言ったって、自分でコントロール出来るもんでも無いからなぁ、出来るか出来んか分からんわ・・・」
「まぁ、漫先輩が爆発してくれたら姫松が1位になる可能性がかなり出てきますよね?」
「でも、白糸台の大星淡と阿知賀の高鴨穏乃は怖いからなんとも言えんわ。」
「そんな弱気やったら勝てるもんも勝てんで?」
「まぁ、ちゃんと全力でやるけどな。」
「なら大丈夫やろ。まずは絹がどうなるかやな!」
「せやな。」
~南一局一本場~ 親:愛宕絹恵
阿知賀 148600
姫松 91000
白糸台 81400
有珠山 79000
~7巡目~
(まだまだ攻めてくで!)
「リーチ。」
(また姫松がリーチ!?誰か止めらんないの?これ・・・)
「ポン。」
(一発消しされた。でもそれ、和了り牌やで?)
「ロン。リーチタンヤオ三色。11600の一本場で11900。」
(姫松を早く止めなきゃ!)
(最下位転落・・・)
『4連続、和了ぁぁぁ!!!!誰も止める事が出来ない!』
『白糸台高校は今の放銃で最下位に転落してしまいましたね。』
~白糸台高校控え室~
「亦野、危ないな。」
「あの人、去年よりも火力は上がってるんだけど振込率は下がってないから微妙ですよね。」
「何点取られたって逆転するから大丈夫だよ。このスーパーアルティメットあわいち」
「あーはいはい、凄いですねー。ちょーかっこいー。」
「ちょっと!せめて最後まで言わせなさいよ!」
「そういうの言わない方がいいですよ?負けた時スーパーアルティメット恥ずかしいですし。」
「やっぱりあんた嫌い!絶対断トツで勝ってやるからなぁ!」
「その気持ちで対局にも臨んでくださいねー。」
「楽勝だし!100回勝つし!」
「はいはい、頑張って下さい。」
~南一局二本場~ 親:愛宕絹恵
阿知賀 148600
姫松 102900
有珠山 79000
白糸台 69500
(おっ、これはもしかしたら、行けるかもしれない・・・)
(よし、まだまだ調子は悪くなってへん。どんどん攻めてくで!)
~8巡目~
(阿知賀が2副露やけど白糸台が1副露もしとらん。ちょっと怖い気もするけど、ひよってたらやられる。ここは攻める!)
「リーチ。」
(また姫松がリーチ!?ヤバいよ、誰かあたしの和了り牌出してよ!)
(姫松が怖い。でもこれがくれば・・・あっ!)
「ツモ。四暗刻。8200・16200。」
(・・・は?)
(嘘でしょ・・・)
『な、なんと亦野選手、役満ツモだぁぁ!!!』
『これは驚きですね。まさかあれを和了れるとは・・・』
『これで勢いに乗っていた姫松は親被りで16200の出費です。』
『出費って・・・まぁいいけど。これで白糸台はまた2位に浮上ですね。』
『順位が目まぐるしく動いています!これは何処が1位になってもおかしくなくなってきた!』
『ここからですね。』
~白糸台高校控え室~
「おぉ!亦野先輩が役満和了ったよ!凄いね。」
「そうですね。『もう私の仕事は終わった』って感じの顔してるのがちょっと腹立ちますね。」
「まぁまぁ、別に良いじゃないか。これでうちが阿知賀をトップから引きずり落とす事が出来るんだから。」
「そうですね。スーパーアルティメット淡先輩が勝てばの話ですけど・・・」
「絶対勝つから!あと、あんたにスーパーアルティメットって言われるとめちゃくちゃ頭にくるから止めて!」
「そうですね、スーパーアルティメットごめんなさい。」
「麻衣ぃ、あんたマジで許さないから・・・!」
「おぉこわ。」
~南二局~ 親:新子憧
阿知賀 140400
白糸台 102100
姫松 86700
有珠山 70800
(最後の親番、ここで連荘して、出来るだけ高い点でシズにバトンタッチしたい。頑張らないと!)
「ポン!」
(まず一回和了る。)
(また阿知賀が攻めてきている。ここはこっちも攻めないとな・・・)
「ポン。」
(今回は白糸台に邪魔させる訳には行かない。)
「ポン!」
(こっちだって負けられない!)
「ポン。」
(これで2副露、次でヒットする。)
「ロン。2600。」
(えっ、また姫松!?)
(さっきの役満で完全に流れを絶ち切ったと思ったのに・・・)
(役満親被りしたなら、また16000稼げばええだけや、まだまだ稼ぐで!)
~南三局~ 親:亦野誠子
阿知賀 140400
白糸台 99500
姫松 89300
有珠山 70800
~6巡目~
(点差がどんどん広げられてる。私だけが負けてる。なら・・・)
「左手を使っても良いですか?」
「はい。」
「っ!?はい。」
(また左手使ってきた・・・)
「はい。」
~9巡目~
「リーチ。」
(やっぱり有珠山がリーチしてきた。せめて一発消ししなきゃ。)
「チー!」
(一発、消されましたか。まぁ、点は変わらないですが。)
「ツモ。リーチツモタンピン三色ドラドラ。4000・8000です。」
(うわぁ、一発消した意味無いじゃん・・・)
(やっぱり真屋由暉子が左手を使うと強いな。それに親被り、もしかして私が親のタイミングを狙って左手を使ったのか?)
『今の和了りで有珠山はまた3位に浮上。そして白糸台との点差もかなり削りました。』
『順位移動が激しい試合ですね。』
『そして遂に副将戦も最後の局になります!次はオーラスです!』
~南四局~ 親:真屋由暉子
阿知賀 136400
白糸台 91500
有珠山 86800
姫松 85300
~6巡目~
(このまま連荘して揺杏先輩に少しでも多く残さないと!)
「リーチです。」
(また有珠山、もう左手は使っとらん筈やろ?なら、私も行く。)
「ほんなら、追っかけリーチや。」
(姫松と有珠山がリーチ!?これ、危ないかも。一発消しとこ・・・)
「ポン!」
「ロン。メンタンドラ1。5200。」
(うわっ、一発消ししようと思ったら振り込んじゃった!)
(しかもこれ、白糸台と同点です・・・)
『副将戦終了ぉぉぉぉ!!!!!なんと、白糸台と姫松が同点で終わらせました!』
『この場合は起家の姫松高校が2位になりますね。』
『しかし、同点で終了するなんてかなり珍しいですよね。』
『そうですね。狙ってやったとは思えませんが偶然だとしたら凄いですね。』
『本当にそうですね。さて、10分後に大将戦を開始致します!この結果で全てが決まります!』
~副将後半戦結果~
阿知賀 131200
姫松 91500
白糸台 91500
有珠山 85800
同時刻、永水女子高校のメンバーが宿泊施設で準決勝の様子を見ていた。
「それじゃあ、個人戦まで日があるから、一旦鹿児島に帰りましょうか。」
「あの、ちょっと行きたい所があるんですけど・・・」
「どうしたの友理奈?観光なら個人戦の後でも出来るよ?」
「いや、今じゃなきゃダメなの。」
「何処に行くの?」
「準決勝の会場です。」
「何?忘れ物?」
「いや、準決勝が終わったら会いたい人がいるんです。阿知賀女子で中堅をしている天理白に!」
「あぁ、あの人にですか。」
「成る程、だけど友理奈だけ行かせると待ち合わせとかも大変そうですね、東京ですから。」
「それなら準決勝の会場に皆さんで行きましょうか。」
「良いんですか?」
「大丈夫ですよ。飛行機の時間が間に合うのであれば。」
「大丈夫、問題ない。」
「なら行きましょうか!」
「ありがとうございます、私のわがままに付き合って貰っちゃって。」
「良いのよ、友理奈は天理白に会いたいだろうからね。」
「まぁ、そうだね。」
「それじゃあ、レッツゴー!」
永水女子が準決勝の会場に向かった。そこでは準決勝の大将戦が行われようとしていた。