咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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遂に白糸台高校先鋒の西園寺麻衣が登場します。


第46話《阿知賀編⑧》 先鋒前半戦

遂に準決勝当日になった。阿知賀女子のメンバーは、ホテルから会場の控え室へと移動して、準決勝の準備をしていた。

「玄、これまでやって来た練習を思い出しながら打つんだよ。」

「はい。」

「頑張って下さい!玄さん!」

「頑張って下さい。」

「頑張れ。」

「頑張れ玄!」

「うん、行ってくるよ!」

~有珠山高校控え室~

「成香、今回は最初から堕天するんだろ?」

「堕天って・・・まぁ、しますけど。」

「本内先輩が堕ちる瞬間が見れるんですね!」

「由暉子先輩、目がキラキラしてますね・・・」

成香が頭を揺らして分け目を変えた。左目はくりくりした愛らしい眼をしていたが、右目は、幾度となく修羅場を越えてきたかのような、目が合ったらやられてしまいそうなそんな目付きをしている。

「では、行ってきます。」

これまでのようなふわふわした口調とは打って変わって、冷酷で淡々と喋る姿に、他のメンバーが震え上がる。

「これ、チカセンに見せたらどんな反応するんだろ?」

「本内先輩カッコいいです!」

「頑張って下さい。」

「はい。」

成香は颯爽と控え室を後にした。

~姫松高校控え室~

「ええか、あんたの仕事は飛ばん事や。飛ばなかったら私らにもチャンスはある。頑張ってこい!」

「分かりました!行ってきます!」

「頑張ってや!」

「頑張れ!」

「はい!」

~白糸台高校控え室~

「さてと、それじゃ、楽しんで来ます。」

「麻衣が負ける事は無いだろうけど、一応相手は弱くは無いんだ。油断はするなよ。」

「はーい。じゃ、行ってきまーす。」

 

 

『さぁ、先鋒の選手が次々に対局室に移動しています。実況は私、福与恒子と!』

『解説の小鍛治健夜です。これって普通は恒子ちゃんが言うんじゃないの?』

『という訳で早速先鋒戦の選手を紹介していきます!』

『無視!?酷いよ!』

『まぁまぁ落ち着いて。まずは姫松高校2年、小早川綾(こばやかわあや)選手。2回戦では白糸台の西園寺麻衣選手にかなりやられてしまいましたが、準決勝ではどのように打ち回して行くのでしょうか。』

『彼女は和了がかなり速いんですけどね。昨日の対局ではあまり持ち味を出せていない感じでしたね。』

『まぁ確かに、白糸台高校に食らいつこうと高い手を和了ろうとしてましたからね。』

『ですが、今回は白糸台だけではありませんからね。』

『そう、この準決勝は白糸台だけではない!昨年ベスト8まで行った有珠山高校の先鋒、本内成香選手!』

『彼女は2回戦の途中から、何かが憑依したかのように強くなりましたからね。』

『たった三局で最下位から一気にトップまで登り詰めましたからね。』

『あの三局は手牌が筒子と字牌で出来ていましたね。字牌と言っても東南西北でしたけど。』

『天使のような顔して悪魔みたいな和了りでしたよね。』

『別にそこまでは行ってないよ!』

『さて、お次は阿知賀女子の松実玄選手。』

『あぁ!また無視した!』

『松実玄選手についてはどうお考えで?』

『そうですね、彼女はドラが来る事で自分の火力が上がる事と、他の相手の火力を少し抑える事が出来るところは強みですけど、やっぱり振り込みやすかったり手が読まれやすかったりマイナス面も多いですね。本人はかなり使いこなせていますが、他の人が彼女のような状況になったら全然使いこなせないでしょうね。』

『じゃあ小鍛治プロは使いこなせますか?』

『えっ、私は、自分のスタイルがあるから、あんまり分からないですね・・・』

『はい、じゃあ次は白糸台先鋒の西園寺麻衣選手です!』

『またぁ!もぉ!無視しないでよ!』

(ふふっ、やっぱりすこやんは面白いなぁ・・・)

『はいはい、西園寺麻衣選手についてはどう思いますか?』

『彼女は、そうですね、まだ何とも・・・』

『えっ?どうしてですか?』

『あの人は、なんとなくですが、まだ何かを隠してる気がするんです。白糸台の、それも攻撃重視のチーム虎姫の先鋒なのにあのプレイスタイルなのは少し違和感を覚えます。』

『成る程、もし手加減をしているとしたら、それが今日解かれるという事ですね?』

『多分、今日はかなり強い面子が揃っているので、本気で来ると思います。』

『それでは対局室に面子が揃っているので、準決勝先鋒戦、開始です!』

 

~場決め結果~

松実玄:東

西園寺麻衣:南

本内成香:西

小早川綾:北

 

~東一局~ 親:松実玄

阿知賀 100000

白糸台 100000

有珠山 100000

姫松 100000

(まずは資金集めからしないとね。)

~7巡目~

「リーチ。」

(西園寺さん、速い!)

(今回はこいつの好きにはさせへんで!)

「チー。」

(あら、一発消されましたか。でも点数変わらないんで関係ないですね。)

「ツモ。メンタンピン三色。3000・6000です。」

『白糸台高校西園寺選手が先制の跳満ツモです!』

『流れるように和了しましたね。』

『次は西園寺選手の親番です。2回戦では東場の親番で3連荘していました。彼女を止める事はできるのか!』

~清澄高校宿泊部屋~

清澄高校のメンバーは、優希と和とムロが会場に行き、マホと咲とまこはホテルのテレビで試合を観戦していた。

「宮永先輩!試合始まりましたよ!」

「分かった、今行く。試合の動きは何かあった?」

「はい!白糸台の先鋒の方が跳満ツモしました。」

「始まったばっかりなのに速いね。」

「流石は白糸台の先鋒じゃな。」

~東二局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 112000

有珠山 97000

姫松 97000

阿知賀 94000

~5巡目~

「リーチ。」

(速い・・・)

(またかいな!)

「ツモ。リーチ一発ツモ混一。6000オール。」

『またもや跳満ツモ!そして連荘です!西園寺選手を止められるのか!』

『ここからですね。』

~東二局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 130000

有珠山 91000

姫松 91000

阿知賀 88000

(取り敢えず資金集めはこれくらいにして、そろそろ始めますか。)

~8巡目~

(もう3万点も稼がれた。赤土さんが、西園寺さんは点数が減らないって言ってた。一応聴牌したけど、なんとか直撃出来ないかな?ってあれ?それ、私の和了り牌・・・)

「ろ、ロンです!タンヤオドラ5。12300です!」

「はい。」

(えっ!?西園寺麻衣が放銃!?2回戦ではそんな事しとらんかった。もしかしたら調子が悪いんか?なら、私も攻める!)

『なんと!西園寺選手がまさかの直撃を受けてしまいました!』

『そう、ですね。どうしてでしょうか?』

(2回戦の西園寺さんなら簡単に避けれていたはず。という事はわざと?でも、放銃する事が加点に繋がるとも思えないし、どうしてだろう?)

~東三局~ 親:本内成香

白糸台 117000

阿知賀 100300

有珠山 91000

姫松 91000

~3巡目~

「チー。」

~5巡目~

「ポン。」

(よし、これで聴牌や!こいつが調子悪いんやったらこのままどんどん潰したる!おっ!来た!)

「ロン!タンヤオ三色同刻。3900や。」

『西園寺選手、2連続で放銃です!』

『これはもしかしたら白糸台高校がピンチになるかもしれないですね。』

~清澄高校宿泊部屋~

「あれ、西園寺さん、この間見た時は一回も点減らしてなかったのに、今回は減らしてる。どうしてだろう?」

「それはその内分かりますよ。」

「え、マホ、知っとるんか?」

「知ってますよ。開会式で照魔鏡を使って全員見たので。」

「恐ろしい子じゃな・・・」

「それでマホちゃん、その内分かるってどういう事なの?」

「それは、その時が来たら言います。」

「えぇ、気になるよ・・・」

「見てからのお楽しみです!」

~東四局~ 親:小早川綾

白糸台 113800

阿知賀 100300

姫松 94900

有珠山 91000

「リーチ。」

(なっ、有珠山がダブリーしてきた!?)

(この人、凄い・・・)

(良いね良いね、有珠山の先鋒最高だよ!)

「ツモ。ダブリー一発ツモ混一三暗刻東南。6000・12000です。」

(三倍満!?やばすぎやろ!?)

(速い上に打点も高い。この人、凄すぎるよ・・・)

『有珠山高校の本内選手が三倍満ツモで最下位から一気にトップに浮上しました!』

『これは2回戦の時と似ていますね。』

『そうですね。』

~対局室~

(良いよ良いよ、こういうのを求めてたんですよ。ちょっとだけ想定外な事が起きたけど、まぁなんとかなるでしょう。さて、見てるだけなのも飽きましたし、そろそろ回収の作業でもしましょうか。)

~南一局~ 親:松実玄

有珠山 115000

白糸台 107800

阿知賀 94300

姫松 82900

~5巡目~

「ロン。三暗刻対々。8000です。」

(白糸台、もう聴牌しとったんか!?それに、直撃されてしもた・・・)

『白糸台がトップを取り返しました!』

『これは、かなり良い戦いになってますね。』

~清澄高校宿泊部屋~

「西園寺さん、動き始めましたね。」

「えっ、今のが?どういう事?」

「えっと、簡単に言うと、西園寺さんは一回自分が振り込んで、その後に振り込んだ点数の2倍の点数を直撃するんです。」

「えっ!凄い・・・でも、2倍にしたら丁度で返せない場合もあるよね?」

「はい、その場合は繰り上げるんです。丁度今のがそのパターンですね。小早川さんは西園寺さんに3900の直撃をしました。これを2倍にすると7800です。でも、直撃で7800を和了する事は出来ません。そこで、一番近くの打点のところまで繰り上げるんです。例えば今の場合だと7800の上にあって一番近くにあるのは8000なので8000の直撃になるんです。」

「へぇ、えっと、これって、相手にツモ和了りされて点数が減った時はどうなるの?」

「その場合は自分が減った点数の2倍を直撃します。この対局で言うと、さっきの本内さんの三倍満ですね。あれは西園寺さんには6000の負担だったのでお返しは12000になります。つまり、西園寺さんが親じゃない時にツモ和了りをすればプラスにする事も可能なんです。」

「成る程、あっ、そうだ、5200の直撃があった場合は2倍にすると10400だから、親の110符2翻の10600になるの?」

「えっ、そこは厳しいから流石に11600とかになるんじゃないでしょうか?」

「110符2翻くらいなら出来るんじゃない?」

「それが出来るのは宮永先輩くらいです・・・」

「そうなのかな?」

「はい、そうです。」

~南二局~ 親:西園寺麻衣

白糸台 115800

有珠山 115000

阿知賀 94300

姫松 74900

~7巡目~

「ロン。混一中。12000。」

(今度は私に直撃、黒い牌が来るはずだったのに来なかった。そしてこの直撃。何かありそう・・・)

(白糸台の人、やっぱり強い。このままじゃ勝てないよ・・・)

『西園寺選手、有珠山との点差を広げた!』

『引き離しにかかってますね。』

『そしてまたまた連荘だ!このまま西園寺選手が独走してしまうのか!』

~南二局一本場~ 親:西園寺麻衣

白糸台 127800

有珠山 103000

阿知賀 94300

姫松 74900

(また親で連荘させてしもた。ここはなんとしても和了るで!)

~4巡目~

「ポン。」

『姫松高校小早川選手、対々の聴牌です。』

『この状態でツモ和了出来れば三暗刻が付きますね。』

~8巡目~

(やっと来てくれたわ。)

「ツモ。2100・4100。」

~清澄高校宿泊部屋~

「あぁ、小早川さん、やってしまいましたね。」

「えっ、どうして?」

「西園寺さんとの対局で最も注意しなければいけない事は本場です。」

「本場?」

「今の局、一本場だったから西園寺さんの出費は4100です。これを2倍にすると8200になります。」

「あっ、そっか!じゃあこれのお返しは9600?」

「いや、親番はもう無いので、回収する点数は12000です。」

「えっ、じゃあ一本場あるか無いかだけでツモ和了りでも多く取られちゃうって事?」

「そうです。それに、東二局一本場の時、松実玄さんは12300を直撃していました。」

「2倍にすると24600、親番が無いから・・・32000!?」

「そうです。つまり、西園寺さんに12300の放銃をするという事は、19700の直撃を受けるというのと同義なんですよ。」

「凄いね。」

「西園寺さんは普通に打っても強いですから、先に和了らないとどんどん高い手を和了られてしまいます。でも、和了ると取った点数を回収される。それに、西園寺さんは相手の和了り牌を掴んでいる事が多いのです。なので、他家から和了るのも難しいです。」

「そんな、そんなの、勝てないよ・・・」

「これが、今年の白糸台先鋒の強さです。」

~白糸台高校控え室~

「後は麻衣が12000と32000を和了って終局か。今回も大丈夫そうだな。」

「本当に、相手が可哀想になってくる程強いよね、あいつ・・・」

「はぁ、認めたくないけどさ、やっぱり強いよ、あいつは。」

「珍しいね、淡ちゃんが他の人の実力を認めるなんて。」

「だって、あいつの事を弱いって言ったらあいつに負けてる私も弱くなっちゃうじゃん!」

「あっ、いつもの淡ちゃんだった・・・」

~南三局~ 親:本内成香

白糸台 123700

有珠山 100900

阿知賀 92200

姫松 83200

~4巡目~

「ロン。清一。12000です。」

(4巡目!?速すぎやろ!?)

~阿知賀女子控え室~

「あっ、成る程、そういう事ですか!」

「もしかして白も気付いた?」

「赤土先生も2倍になっている事気付いたんですね。」

「あぁ、まあね。」

「えっ、どうしたの二人とも?2倍?」

「えっと、それはだなぁ・・・」

晴絵と白が3人に説明をする。話を進めると、3人がどんどん驚きと絶望が入り交じったような顔色に変わっていった。

「えっ、それじゃあ、この後玄さんは役満直撃されちゃうって事ですか!?」

「まぁ、そうなるだろうね。」

「ヤバすぎでしょそれ!高利貸しすぎ!」

「現実でやったら、即警察・・・」

「ははっ、確かにね。」

「笑っていられるような状況じゃないですけどね。」

「そうだね。」

~南四局~ 親:小早川綾

白糸台 135700

有珠山 100900

阿知賀 92200

姫松 71200

~5巡目~

「ロン。国士無双。32000です。」

(えっ・・・役満・・・)

(本物やな・・・)

『ぜ、前半戦、終了ぉぉぉ!!!!なんと!西園寺選手が松実選手に役満を直撃して終わらせました。』

『これは、後半戦辛そうですね・・・』

『10分間の休憩の後、先鋒後半戦を開始します!』

 

~先鋒前半戦結果~

白糸台 167700

有珠山 100900

姫松 71200

阿知賀 60200




西園寺麻衣、やっぱり強いですね。某銀行の看板を見た時に思い付いたキャラにしては強すぎたので白糸台の先鋒にしました。そして、外伝含めて3話同時投稿は流石に疲れました・・・

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