咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
時は戻って4月から始まります。
「ここが、阿知賀女子麻雀部、あたしが最強のチームに育て上げる場所か・・・」
その少女は、部室前で深呼吸をすると目の前にある扉を強く開いた。
「入部希望の天理白(てんりしろ)です。よろしくお願いします。」
一礼してから白が顔を上げると、そこには去年快進撃を繰り広げた阿知賀女子高校の松実玄、鷺森灼、新子憧、高鴨穏乃の四人がいた。
「おおおぉぉぉぉ!!!!!新入部員だ!」
「これで今年も大会に出れそうだね。」
「よろしく、白だっけ?」
「はい、天理白です。」
(なんか、親近感沸く名前だな~。)
「よろしくね、白ちゃん。」
「よろしく。」
「はい、よろしくお願いします。」
4人が新入部員を歓迎していると、顧問の赤土晴絵が部室に入ってきた。
「なんだなんだ、騒々しいな。なんか良い事でもあったのか・・・って、新入部員が入ってきたのか!名前はなんて言うの?」
「はい、天理白と言います。よろしくお願いします。」
「えっ、天理白!?」
「えっ、赤土さん知ってるんですか?」
「知ってるも何も、天理白は去年のインターミドル4位の選手だよ?」
「えっ、マジで!?」
「大物が入ってきたね!」
「・・・その結果は、あたしにとっては不名誉ですね。」
「えっ、どうして?全国で4位なんて易々と取れる物じゃ無いじゃん。」
「もし3位2位1位がめちゃくちゃ強いなら別に文句は無いんですけど、2位と3位はそこまで強く無かったんですよ。最初ちょっと負けてて、ここから逆転してやろうって時に1位が大暴れしたせいで4位になってしまったんです。それが悔しいんです。1位の冬室氷華さえいなければあたしは、2位になれた筈なんです・・・」
「そうだったんだ・・・」
「それは、残念だね。」
「でも、それが勝負事の常だと私は思うな。たとえ2位になれる実力があったとしても勝てない時だってある。だからこそ、次に戦う時に燃える。そういう物なんじゃないか?」
「そうですね・・・」
「さぁ、真面目な話はこれでおしまい!ここは麻雀部なんだ、うちのメンバーと麻雀でもしてみなよ。」
「はい、分かりました。お手柔らかにお願いします。」
「じゃあ私やるー!」
「あたしもあたしも~!」
「じゃあ、私も。」
穏乃と憧と灼が麻雀卓に座った。白も余った所に座った。
「じゃあ、始めようか!」
「よろしくお願いします。」
~場決め結果~
高鴨穏乃:東
新子憧:南
鷺森灼:西
天理白:北
~東一局~ 親:高鴨穏乃
高鴨穏乃 25000
新子憧 25000
鷺森灼 25000
天理白 25000
(北家か・・・)
(なんだかんだ言ってインターミドル上位の人間なんだよね、そういえば決勝でこんな子いたわ。1位の冬室氷華が凄過ぎて覚えてなかったけど。)
「チー。」
(白が早速鳴いてきた、じゃあこっちで・・・)
「ポン。」
(安手で早和了りしようとしてる?ならこっちも速攻しようか!)
「ポン!」
(よっしゃ聴牌。これで追い付いた。)
「ロン。タンヤオドラ1で2000点です。」
(あっちゃ~、振り込んじった~。)
(早い、けどそこまで高くない。)
(早和了りで流して親番で稼ぐつもりなのかな?)
~東二局~ 親:新子憧
天理白 27000
高鴨穏乃 25000
鷺森灼 25000
新子憧 23000
~8巡目~
「ツモ。平和三色で1300・2600です。」
(やっぱり早いな。宮永照さんみたいに点数が増えるってのは流石に無いだろうけど、なんだか嫌な予感がする。気を付けなきゃ!)
(もっと高くなりそうな手なのに、少し勿体無いような気もするな。)
~東三局~ 親:鷺森灼
天理白 32200
高鴨穏乃 23700
鷺森灼 23700
新子憧 20400
~5巡目~
(このままだと、あたしが負けちゃう。ここは攻める!)
「リーチ!」
(憧のリーチ、何が通る・・・?んん、分かんない!取り敢えずスジで。)
「ロン!リーチ一発七対子ドラドラ、12000!」
「なっ、スジ引っ掛けだったか。気付かなかった。」
「なんとなく、シズなら振ってくれると思ってた。」
「なっ、なんだよそれ~!」
(仲良しごっこはここまでですよ。次はあたしの親番ですからね。)
~東四局~ 親:天理白
新子憧 32400
天理白 32200
鷺森灼 23700
高鴨穏乃 11700
(やっと親番になれた。これで、いける!)
「リーチ!」
(ダブリー!?)
(そんな・・・)
(全国4位だから早和了りだけじゃないとは思ってたけど、親番でダブリーって・・・)
~5巡目~
(これ、当たりそう。抑えとこ・・・)
(やっと来てくれた。)
「ツモ。ダブリーダブ東ツモドラ3。8000オールです。」
(なっ・・・)
(ここへ来て親倍!?しかも、東はドラな上にダブ東だから、あれだけで5飜にもなるんだ。)
(私、あと3700しか無い!これ、きっついな・・・)
~東四局一本場~ 親:天理白
天理白 56200
新子憧 24400
鷺森灼 15700
高鴨穏乃 3700
「リーチ。」
(またダブリー!?)
(しかも、また東がドラだ!これ、偶然じゃないよね。)
(おっ、今回は一発で来てくれた。良い子だね~。)
「ツモ!ダブリーダブ東一発ツモドラ3で8100オールです!」
(またダブ東ドラ3で親倍!?しかもシズが飛んで終わっちゃった!)
(この子、強い・・・)
(まさかこの3人が全く太刀打ち出来ないとは、予想以上だね。こりゃあ本当に2位取れてたかもだね。)
~対局結果~
天理白 80500
新子憧 16300
鷺森灼 7600
高鴨穏乃 -4400
「白ちゃん、凄く強いね・・・」
「そりゃそうさ、もし高校でドラフト会議みたいなのがあったら1位指名されてもおかしくない実力だからね。」
「晴絵、その例え、あんまり良く分かんない・・・」
「そうですね、去年のインターミドルを見ていたなら、全員が冬室氷華を1位指名する筈ですし。」
「問題そこなの!?」
「まぁでも、強いのは確かだっただろう。」
「そういえば、白は親番だとダブリー出来るとかそういう感じなの?」
「いえ、親番では無いです。」
「えっ、違うんだ。」
「もしかしたらだけど、連風の時?」
「はい、そうです。」
「えっ、どういう事?」
「連風、つまりダブ東ダブ南の時にダブリーが出来て、その連風牌3枚が付いてきて更にその連風牌がドラになる。そんなとこかな?」
「そうですね、だから、南場では1度しかチャンスが無いので東場で稼ぎます。」
「ふーん、なんか、限定的な能力なんだね。」
「だからこそ強いって人もいるじゃん。ほら、去年の永水で副将だった薄墨初美みたいにさ。」
「確かに、あの人、北家の時の手牌がとんでもなかったよね。」
「でも、薄墨は連荘出来ないけど、白は東場に限るけど出来る。そう考えたら白の方が薄墨よりも強いんじゃない?」
「でもそれは、机上の空論でしかありません。あたしと薄墨さんでどちらが勝るのか、それは直接対局する他はありませんよ。」
「そうだね。」
「という訳で、高鴨先輩、鷺森先輩、新子先輩の3人よりあたしが強い事は証明出来ましたね。」
「えっ?まぁ、そうだね。」
「確かにあたし達より白の方が強いだろうけど、それがどうかしたの?」
「あたし、自分よりも弱い人には遠慮しないタイプなんですよ。だから先輩方の事、これから少し軽く見てしまうかもしれませんが、宜しくお願いします。」
(なんだか、急に人が変わったよ・・・)
(また面倒臭いタイプの人が来た。)
「いいよ、軽く見ても・・・」
「ちょっ、シズ!?何言っちゃってんの?」
「でもその代わり、私達と一緒に、全国で戦って欲しい!宮永さんや大星さんを倒して、今年こそ、全国優勝したい!」
「シズ・・・」
「穏乃ちゃん・・・」
「先輩の熱意は犇々と伝わりました。了解です。あたしが全力を持って先輩方の援助を致します!」
「よっし!決まり!これから、全国に向けて頑張ろう!」
「はい。」
白を入れた新生阿知賀女子麻雀部がここから始まる。
県予選では初瀬と憧の勝負を書きたいんですが、他に書く事が難しいと思うのでカットします。そして咲-Saki-阿知賀編の実写ドラマが約1ヶ月で始まりますね。色々な意味で楽しみです。