咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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全国高校生麻雀大会(インターハイ)の全国大会が遂に始まります!


第29話《千里山編④》 開幕

インターハイの開会式が行われ、千里山女子の一回戦が始まろうとしていた。

「さて望、準備しいや。」

「はい。」

「頑張れ~。」

「まぁ、初戦やから力抜いてな。」

「はい、頑張ります!」

(そういえば、望のメンバー入りが決まった時に結構な人数の人達が心の中で反対しとったな。一年生やし望の能力的に他の先輩方とかに負けとったから反対されんのも納得かもしれん。でも、反対してた先輩方に見せつけてやれ!上野望の本当の実力を!)

 

 

(はぁ、全国の舞台、緊張するわ・・・今から地方大会を勝ち抜いてきた強豪のエース達と対局するんやな。インターミドルでも全国には行ったのに緊張感が全然ちゃうわ。この緊張感に飲まれんようにせんとな。)

望が席に着くと、対戦校の館山商業、苅安賀高校、萌間高校の先鋒が対局室に入ってきた。

「よろしくお願いします。」

「よろしくです。」

「よろしくお願いします。」

「よろしく。」

(千里山女子、今年は先鋒と大将を一年生に任せている。あの園城寺怜と江口セーラの穴はやはり大きいのかもしれないわね。これは、まさかの千里山女子が一回戦で敗退って事もあるかもしれないわね。)

~場決め結果~

館山商業:東

千里山女子:南

苅安賀高校:西

萌間高校:北

 

~東一局~ 親:館山商業

館山 100000

千里山 100000

苅安賀 100000

萌間 100000

『さぁ、戦いの火蓋が落とされました。実況は私、針生えり、解説は三尋木咏プロでお送り致します。三尋木プロ、よろしくお願いします。』

『よろしくねぇ。』

『今回の試合で注目されるのはやはり千里山女子でしょうか?』

『う~ん、まだわかんね~。』

(相変わらずこの人は・・・!)

『えっと、千里山女子は先鋒と大将に一年生を置くという千里山にとってはとても珍しい布陣となっておりますがそこについては?』

『まぁ、一年生って言っても、インターミドルでは結構活躍してたらしいし、そこら辺の三年を使うよりはいいんじゃないかねぇ?』

『まぁ、そうかもしれないですね。』

(この人、ちゃんと選手の事調べてるのになんでこんなに適当なんだろう・・・)

『さぁ、起家は館山商業で試合スタートです。』

 

 

(次が親番やからできるだけこの局で和了っときたいんやけど、面子的にも配牌的にも無理そうやな。まぁ、配牌は和了るまで良くならへんけどな。でも、折角二階堂先輩にあそこまで特訓してもろたんや、一回戦をマイナスで終わらせる訳にはいかへん!やったる!)

「それ、ロン。3900。」

望が捨てた牌で、苅安賀高校が和了した。

『三尋木プロ、今の局、千里山の上野望選手の振り込みについて私には些か初歩的なミスだと思ったのですが、どう思われますか?』

『うーん、確かに初歩的なミスだねぇ。普通あの巡目には切らないとは思うけどねぇ、知らんけど。』

(ま、あの子ならあそこで攻めたくなる気持ちも分かるけどねぇ。)

~千里山女子控え室~

「望の奴、2向聴まで行くと危険牌とか関係無く和了りに向かうから直ぐあんな単純な放銃してまうんでしょうね。」

「まぁ、特訓でもそこは注意したんやけど、あいつは和了する事に意味があるから攻めないと一回も和了れんくなるって言っとったな。」

「確かに、望の性格とあの能力を考えれば妥当かもしれませんね。」

「あぁ、そうやな。」

「振り込み過ぎんとええけど。」

~東二局~ 親:千里山女子

苅安賀 103900

館山 100000

萌間 100000

千里山 96100

(おいおい、今の放銃、初心者かっての。こんなんが本当に千里山の先鋒とか、どうかしてるだろ。やっぱり今年の千里山は弱くなっちまったのかな?)

「チーです。」

(チー?捨て牌的に染め手ではなさそうだし、喰いタン狙いか?もう、初心者丸出しだな。)

「ポンです。」

(そろそろ聴牌したかな?でも、君が鳴いてくれたお陰でこっちも聴牌してるんだよね。)

「ツモ!2000・3900!」

(苅安賀、速い・・・)

(このままやと私が何も出来んまま終わってまう。)

~東三局~ 親:苅安賀高校

苅安賀 111800

館山 98000

萌間 98000

千里山 92200

『三尋木プロ、先程から感じていたのですが、千里山女子高校の上野選手の配牌が悪い気がするのですが。』

『へぇ~、アナウンサーはインターミドル個人戦3位の上野望を知らないのか~。』

『個人戦3位!?そうだったのですか・・・』

『彼女は最初手牌が最悪だけど、一回和了ると手が良くなるらしいよ~知らんけど。』

『でも、先程から6向聴ばかりですが、和了する事ができるのでしょうか?』

『まぁ、和了率的には1割くらいだけど・・・ほら!あれ見てみ?スッゴく安いけどテンパってるぜ?』

『そうですけど、あれだと安過ぎませんか?』

『一回和了る事に意味があるのさ。』

『そう、ですか・・・』

(この人の言っている意味が分からない、和了れば配牌が良くなるなんて、そんな事起こるはずがない。)

 

 

「ロン、1000点です。」

「1000点って、和了らない方が点数貰えたんじゃない?」

「これでええんですよ。」

「そう。」

(こりゃあ、千里山も終わったな。)

~東四局~ 親:萌間高校

苅安賀 110800

館山 98000

萌間 98000

千里山 93200

~5巡目~

「リーチ。」

『なんと、千里山女子上野選手が五向聴の手を不要牌を引かず、5巡目でリーチです!』

(やっぱり有効牌しか引かなくなるみたいだねぇ。インターミドルの個人戦でも決勝の南場以外は有効牌しか来てなかったからねぇ。これは一方的になっちゃうかもねぇ。)

「ツモです!リーチ一発ツモドラドラ。2000・4000です!」

(なっ、こいつ!?)

~千里山女子控え室~

「望、やっと和了れたみたいやな。」

「そうですね。」

「このまま行けば、あたしら何もせんでもええ事になるかもな!」

「そうかもしれないですね。」

~南一局~ 親:館山商業

苅安賀 108800

千里山 101200

館山 96000

萌間 94000

~4巡目~

(よし、南場やけど有効牌はちゃんと来てくれとる。このまま攻めるで!)

「リーチです!」

(今度は4巡目にリーチ!?やっぱり千里山女子の先鋒、流石にあの安手和了りだけでは無いとは思ってたけど、これは厳しいかもしれないわね・・・)

「ツモです!リーチ一発ツモ混一。3000・6000です!」

『三連続和了です!しかも、また不要牌を引かずに5巡目に和了です。』

『ここ防げなかったのはちょっとヤバイかもねぇ。』

『えっ?どういう事ですか?』

『何でもないよ~。』

~千里山女子控え室~

「三尋木プロ、良く分かってらっしゃる。流石やな。」

「どうゆうこと?舟久保先輩は分かるんですか?」

「逆に泉は分からんのか。望は有効牌しか引かないのに次は三向聴スタート。もうそろそろ望を止めるんは厳しいんとちゃうか?」

「あぁ、確かに。」

「ウチ、三向聴の時に一回だけ止める事が出来たんですけど、他の人が2巡目に聴牌して、その和了り牌をウチが差し込んで止めれたんです。だから、偶然が重ならんともう望のカウントダウンは防げませんよ。」

「そうやったんか、そんなに危険な奴やったんやな。望って・・・」

~南二局~ 親:千里山女子

千里山 113200

苅安賀 105800

萌間 91000

館山 90000

~3巡目~

「リーチです。」

(おいおい、もしかして、これ、カウントダウンみたいにどんどん速く和了れるようになるのか!?)

「ツモです。リーチ一発ツモ清一。8000オールです。」

(これ、相当ヤバい・・・)

「一本場です。」

~南二局一本場~ 親:千里山女子

千里山 137200

苅安賀 97800

萌間 83000

館山 82000

~2巡目~

「リーチです。」

(もう、これやだ・・・)

(こんなん防ぎようがないわ!)

(また、やられる・・・)

「ツモです。リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1で8100オールです。」

『五連続和了です!!!最初は微妙な滑り出しだった千里山女子が一気に他校を引き離しました!』

『あの子凄いねぇ。』

(中学の時の牌譜を見た時は、そこまでじゃないって思ってたけど、ありゃあ誰かに仕込まれたねぇ。格段に強くなってるよ。)

「二本場です。」

~南二局二本場~ 親:千里山女子

千里山 161500

苅安賀 89700

萌間 74900

館山 73900

「チェック・・・リーチです。」

(チェック?何?何かが見えたりしたのかな?)

(別に見せ牌をしてる訳でもないのにチェック・・・?)

~千里山女子控え室~

「チェックってなんや?」

「えっと、チェスは分かりますか?」

「まぁ、ルールくらいは・・・」

「チェスで次の一手でキングを取れる時に『チェック』って言うんですよ。将棋で言うところの王手ですね。」

「チェスの王手はチェックメイトやないの?」

「チェックメイトは相手に打つ手が無い時に発される言葉で、将棋で例えると詰みの状態の事ですね。」

「成る程、それはええけど、何でチェスなん?」

「あいつ、チェスの小学生大会で優勝しとるんですよ。それでああいう発声をしちゃうんかもしれないですね。」

「なんでチェス辞めて麻雀始めたんや?」

「チェスは同じ状況から始まるけど麻雀はいつも違う状況で始まるからワクワクするんだそうです。」

「はぁ、天才の考える事はよう分からんな。」

「そうですね。」

~対局室~

「チェックメイト・・・ツモです。ダブリー一発ツモタンヤオ清一、12200オールです。」

「はぁ?チェックメイトだぁ?まだ終わってないだろ!いくら点差があるからってまだ負けてないわ!」

「そうですね。失礼しました。」

(残念やけど、もうチェックメイトなんだよなぁ・・・)

~南二局三本場~ 親:千里山女子

千里山 198100

苅安賀 77500

萌間 62700

館山 61700

望はサイコロを回して、牌を取っていったが、一巡目の牌を取らずに理牌をしていた。

「あの、理牌なら一打目を切ってからにしてくれませんか?」

「あぁ、そうしたい気持ちもやまやまなんですけど、和了る時は理牌した方がええんじゃないかと思いまして。」

(こいつ、何言ってんだ・・・?)

望が理牌をして一巡目の牌を取って、そのまま手牌の横に置いた。

「ツモです。天和、16300オールです。」

(なっ!?)

(はっ!?)

(嘘でしょ!?)

『な、なんと、千里山女子の上野選手が、まさかの天和を炸裂!凄まじい戦いになってきました!』

『いやぁ、これは相当ヤバいのが現れちゃったねぇ。』

『そうですね。』

 

 

その後は、望が四連続で天和を和了り、萌間高校と館山商業の2校が飛び、終了した。

 

~試合結果~

千里山 395500

苅安賀 11700

萌間 -3100

館山 -4100

 

 

望が控え室に戻り、千里山女子のメンバーがホテルに帰ろうとしていた。

「あっ、ウチ、忘れ物したっぽいです。ちょっと戻って取ってきてもええですか?」

「何してんの?はぁ、じゃあ泉、付き添いよろしゅう。」

「あっ、分かりました。」

心音と泉が控え室に戻った。忘れ物は直ぐに見付かり、速く合流する為に急いで戻っていたが、心音の足が止まった。

「あれ、心音?どうしたんや?はよせんと舟久保先輩に怒られんで?」

「は、はい。」

心音の隣をすれ違って行ったのは、セーラー服を着ている5人組だった。その集団は、前年度インターハイ優勝校の清澄高校だった。心音は足が止まったというよりも、足が竦んで動かなくなってしまったのだ、すれ違っただけでも全身に伝わってきた威圧感、畏怖感に。

(何や今の、あれが前年度インターハイ優勝校の清澄なんか。こりゃあ、ちょっとヤバイかもしれへんな・・・)

 

 

~小ネタ集~

『もしも心音がすれ違った人の心を読んだら』

その①

心音と泉が、二人でインターハイ会場を歩いていると、長野県鶴賀学園の汐見真紀と一ノ瀬一葉が歩いていた。

(おっ、あれは清澄を相手に区間一位を取った鶴賀学園の二人やな。あの二人は普段どんな事考えとるんやろ、ちょっと見てみよ。さて、どっちから見ようかな・・・というか、何やあの胸は。一ノ瀬とか言ったっけ?おっきすぎやろ!少しでええからウチに分けてや!まぁ、無理やろな。はぁ、胸無い方から見るか。)

(今日も一葉は可愛いなぁ。)

(おぉ、まさか、この同志の人は隣におる敵に恋をしとるんか。ほえー、じゃあ、その一葉ちゃんはどないな事考えとるんやろうな・・・)

(真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い真紀可愛い)

(うわっ、怖っ!愛が重すぎるわ!というか両思いなんか!もう勝手にしいや!)

(なんか、心音が情緒不安定やわ。やっぱり後輩って難しいわ・・・)

 

 

その②

またまた二人で歩いていると、奈良県阿知賀女子の松実姉妹が歩いていた。

(おっ、あれは去年決勝まで行って、先輩方が準決勝で負けた阿知賀の先鋒と次鋒やん。ってか、今、夏やのにマフラー!?一人我慢大会でもしとるんか!?どんな事考えとるんや?)

(この会場クーラー効いててちょっと寒いな・・・)

(はぁ!?嘘やろ?ウチなんかこの会場ですら暑くてしゃあないのに、マフラーに厚着までしてちょっと寒いって、なんかの病気持ちなんかな・・・大変なんやな。じゃあもう一方はどうやろ。)

(お姉ちゃん、今日も良いお餅だな。)

(お餅?あぁ、胸の事か。というか、姉の方の厚着に気を取られて気付かんかったけど、この二人めっちゃデカいやん!なんであの二人はあんなに大きいのにウチにはこんなに貧相なんや!理不尽やろ!くそ~、睨み付けてやる~!あっ、妹の方に見られてもうた!ヤバっ、どないしよう、変な奴やって思われたやろか?ちょっと見てみるか・・・)

(あの人はお餅無かったな。)

「・・・コロス!」

「えっ?ちょっ、どうしたんや心音!」

「コロス!ゼッタイコロス!」

「ちょっ、何しとるんや心音!しっかりしろ!」

「離してください泉先輩!あの人を殺してウチも死ぬんやぁ~!」

「もう何言っとるんか全然分からんわ!落ち着け!」

(やっぱり後輩は訳分からんわ!)

 

 

その③

またもや二人で歩いていると、今度は清澄高校の原村和と宮永咲の二人がこちらに向かってきた。

(おぉ!清澄の副将と大将やないか!こりゃあ、大物と会えたわ。って、またおっぱいかい!原村和、デカ過ぎやろ!さっきの人らよりデカいやん!少しと言わず半分寄越せ!まったく、じゃあやっぱり宮永咲さんから見ますか。)

(今年も全国優勝しようね!和ちゃん。)

(ほう、なんか、思ってたより優しそうな性格やな。もっとエグい事考えてそうやと思ったんやけど、そんな事は無いか。じゃあこのおっぱいさんはどうやろ?)

(咲さんの(自主規制)を(自主規制)して(自主規制)しながら(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)(自主規制)したいですね!)

(・・・もう、対局以外であんまり人の心見るの辞めよう。うん、そうしよう。)

(なんや、今度はなんか、悟りでも開いたような顔しとるわ。今度、望に心音との接し方を教えて貰わんとな・・・)




とりあえず今回で千里山編は終了です。次からは再び清澄視点からの話を進めていきたいと思います。最後に、全国の和ファンの皆様、大変申し訳ありませんでした!

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