咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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第28話《千里山編③》会議

心音と望が入部して、インターハイの北大阪予選が近付いていた。千里山女子のメンバーは集まって会議を行っていた。

「では、インターハイのメンバーを決めたいと思います。まずは先鋒、これは望で宜しいでしょうか?」

「異議なしです。」

「望も大分強なったからな、先鋒でも十分戦える筈や。」

「は、はい、頑張ります!」

「えっと、残りの四人は、渚、私、泉、心音にするつもりなんですけど、順番をどうすればええやろか。」

「あの、ちょっとええですか?」

「うん?どうしたんや?望。」

「えっと、私がもし和了れんかった時の為に、次鋒か中堅を二階堂先輩にするんはどうでしょうか?」

「ほほう、成る程な、ならあたしは中堅やな。そして、泉は去年と同様に次鋒でどうや?」

「舟久保先輩がええなら私はそれでええです。」

「まぁ、ええよ。じゃあ、望と泉と渚で点数を稼いで私と心音でその点数を押さえるか引き離す。じゃあ心音はなにかと便利やから大将の化け物達を抑える係やな。」

「なにかと便利って、ウチは物ですか・・・」

「舟Qの言うとおりやな、心音はまず振り込まへんからな。そう考えると大将なんは必然みたいなもんやな。」

「いやー、でも二階堂先輩が多分三校を突き放すからウチいなくても行けそうですけどね。」

「何言っとるんや、あたしかて調子が悪い時があるかもしれへんし、それに望と泉の負債を回収せなあかんのやろ?抑えは必要やん。」

「ウチらはマイナス前提ですか・・・」

「泉はともかく望は厳しいやろな。セオリー的にも先鋒に強いんを置くからな。」

「確かにそうですね。私、先鋒なんかでええんやろか・・・」

「そんな自信の無い望に悪いニュースを一つ教えたるわ。」

「は?なんや心音。」

「多分やけど府大会の決勝で去年個人戦3位だった荒川憩さんが出てくるで~。」

「・・・マジで?」

「知らんかったんか?マジやで。荒川憩率いる三箇牧は北大阪の壁って言われとるんや。」

「多分それ言っとるの、千里山の人達だけですよ、二階堂先輩・・・」

「でも、三箇牧にとっては千里山が北大阪の壁やって思われとるやろうから渚の言っとる事も強ち間違っとらんと思うで?」

「ほら泉、舟Qもこう言っとるやん!」

「でも、三箇牧を北大阪の壁やって言っとるのは千里山だけですよ。」

「北大阪の壁って言葉を使っとるんは三箇牧もやんか!」

「三箇牧も北大阪の壁って言い方しとるとは限らんやないですか!って、ウチらは何の話をしとるんですか・・・」

「そうやな、舟Qごめん、話戻してええで。」

「あぁ、もうええか。えっと、三箇牧の荒川憩が大暴れするんはほぼ確定やから望には悪いけど先鋒は捨てます。」

「私、捨てゴマ・・・」

「いや、三箇牧以外では期待しとるから大丈夫やで?」

「フォローありがとうございます・・・」

「実際、あたしが望を最強の先鋒になるように育てたんやから三箇牧以外の試合はプラス終了してもらわんと困るで?」

「育てたって、二階堂先輩と心音と江口先輩の3人で私を滅多打ちにするだけや無いですか。その3人相手に10万点持ちの一荘戦を1日3回とか、スパルタにも程がありますよ!」

「それくらいせんと、全国の先鋒相手にならんやろ。」

「いや、一荘戦やる事に関しては別にええんですけど、3人とも私に集中放火しとったやないですか!特に心音!」

「あぁ、それ、あたしの指示やで?」

「えっ?二階堂先輩の指示?どういう事ですか?」

「この一荘戦は望だけやなく心音も特訓しとったっちゅうわけや。具体的に言うと、心音は大将やから必ずと言ってええほど点が低いチームが出てくる。そこを確実に落とす特訓をさせとったんや。それやから望を一方的に狙っとったんや。望の特訓にもなって一石二鳥やしな!」

「そんなぁ!」

「まぁまぁ、先輩達もウチらの事を思ってやってくれてる事やん。」

「そんなん分かっとるわ!というか、心音は結構楽そうでええな。私なんて地獄やで。」

「いや、多分ウチは望よりも酷くて理不尽な特訓をやってるで・・・」

「はぁ?なんやそれ、対局中は心音は私を狙うだけで楽やん!」

「対局中はな・・・」

「どういう事や?」

「最近、二階堂先輩と居残っとる日があったやろ?」

「おぉ、そういやあったな。でも、それとこれとで何が関係しとるんや?」

「実はな、ウチ以外の誰かが跳満以上を和了ったら居残りで罰ゲームさせられとったんや・・・」

「罰ゲーム?なんやそれ、モノマネとかか?」

「そんなんは可愛い方やで、一番キツかったんは二階堂先輩の『おもろい事言え』って罰ゲームや。二階堂先輩、どんな事しても詰まらんとしか言わへんし、先輩の心の中読んで一番面白いのやっても『全然出来とらん』とか言われて、結局それだけで30分くらいさせられたんや・・・」

「それは、御愁傷様やな・・・」

「そやかて、ほんまに詰まらんかったんやからしゃーないやろ。」

「だったらおもろい事言えなんて言わんといて下さいよ。」

「んな事言われても、一日中詰まらんかったからしゃーないやろ。高い手和了ろうとするとお前が流してくるせいで全然おもろなかったし。」

「先輩の指示やないですか!」

「そういえば、先輩達が和了って裏ドラ見る時に、妙に心音が焦ってたんはそれでか。」

「なぁ、そろそろ話を戻してええか?」

舟Qが呆れた顔で心音達を見ていた。

「あぁ!すいません、続きをお願いします。」

「まぁ、続きと言ってもほぼほぼ終わりですけど。とりあえず今は三箇牧を倒して予選突破する事が大切です。荒川憩は厳しいですが、何とか渚までには逆転しておきたいですね。」

「まぁ、確かにあたしが逆転出来ひんかったらちょっと厳しいやろな。」

「そうやな、じゃあ、これでミーティングは終わりです。」

「お疲れさん。」

「お疲れ様です。」

「さて、じゃあ練習再開や!」

「「「はい!」」」

 

 

 

北大阪大会が行われ、その大会で千里山女子は見事全国出場の権利を得た。それから数日後、全国大会の為のミーティングを行っていた。

「いやぁしかし、決勝で荒川憩が184700点で次鋒に回した時は流石に焦ったわ。」

「それに、望にばっかり直撃してましたよね。」

「そやそや、先鋒で飛ばされるんやないかって思たで。」

「そんなにひやひやしてんのに中堅戦では逆転しとるって、どんだけですか・・・」

「そりゃあ、三箇牧は荒川憩以降はそこまででもないっちゅう事やろ?あの泉が+47300やで?」

「二階堂先輩、『あの泉』とか言わんといてくれませんか?私、これでも頑張っとるんですよ・・・」

「確かに泉は頑張っとるな。ま、あたしは泉の2倍以上取っとるけどなー。」

「ほんっとうに二階堂先輩って性格悪いですよね。」

「事実を言っとるだけやん。それに、悔しいならあたしみたいに強うなりゃええだけや。」

「ほらほら渚、そこら辺にしとき。さて、都道府県予選が終わり、今年のインターハイのメンバーの情報も集めましたんで、今回注意する所を話していきたいと思います。まず、昨日の抽選の結果は正直最悪です。」

「一回戦は問題あらへんけど、二回戦から清澄と永水やからな。」

「ええ、酷い所を引いてしまい、ほんまにすんません。」

「まあまあ、いずれは当たるところやないですか。しゃーないですよ。」

「そうですね、じゃあまず、今年気を付けなあかんチームから、まずは清澄高校、永水女子高校、臨海女子高校、姫松高校、有珠山高校、白糸台高校、阿知賀女子高校。こんな所でしょうか。」

「とりあえず、あたしらのブロックには清澄と永水、臨海がおるな。」

「はい、その中でも一番気を付けなあかんとこは、やっぱり清澄高校ですね。」

「やっぱり宮永咲か?」

「はい、彼女は清澄でも最も注意しなくてはならない存在です。でももう一人います。それは、中堅の夢乃マホです。」

「中堅?中堅やったら二階堂先輩やから安心やないですか。」

「案外、そうも言ってられんかもしれへん。夢乃マホは、団体戦の決勝にして、+25万点で中堅を終わらせてます。」

「+25万!?マジですか?」

「でも、珍しいな、舟Qならもっと正確な数字言うはずやのに25万って。」

「いや、夢乃マホは、ぴったり25万点のプラスなんですよ。」

「なっ!?」

「マジで?」

「因みに冬室氷華も清澄ではあらへんけど決勝に先鋒として出ていて、+214500で終わらせてます。」

「うわっ、流石冬室やな・・・」

「でも、清澄の中堅は冬室よりも稼いでますね。」

「それくらい夢乃マホが危険やって事ですよ。」

「因みにそいつは、どんな打ち方なんや?」

「夢乃マホは、簡単に言うと、コピーですね。」

「コピー?人と似たような打ち方するっちゅう事か?」

「せやな、でも、ただ人の真似をする訳や無い。手牌もその真似した奴と同じかそれ以上になっとる。」

「手牌?どういう事や?」

「例えば、大星淡はダブリーしてカンしてダブリードラ4の跳満で和了するけど、夢乃マホはダブリーツモ清一ドラ4の役満を和了しとります。」

「マジかいな。」

「でも、その夢乃マホよりも宮永咲さんの方がヤバいんですか?」

「そうや、宮永咲は、最後の南二局と南三局と南四局で3回役満を和了しとる。しかも、南二局は嶺上開花清一ドラ8の14飜、南三局はリーチツモ嶺上開花ドラ16の19飜、南四局はリーチ一発ドラ16の18飜と、飜数を大分オーバーしての役満や。」

「・・・マジかいな。」

「でも、それだけや無いんや。」

「まだ何かあるんですか!?」

「大将戦の開始時の点数は?」

「200800ですね。」

「開始時の点数が既にヤバいな・・・」

「じゃあ、大将戦終了時の点数は?」

「あっ!200800です・・・」

「はぁ!?マジかいな!」

「これは故意にやったかどうかは分からんけど、奴は去年の長野の個人戦で連続でプラマイゼロをしとる。もしかしたら、あの天江衣が宮永咲に弄ばれてた可能性があるって事や。」

「清澄、ヤバいな・・・」

「ウチ、点数守れるやろか・・・」

「こりゃあ、二位抜け狙いになるかもしれへんですね・・・」

「・・・まぁ、清澄ばっかり警戒して、二位にもなれんかったら意味無いからな。二回戦は永水を倒す事やな。」

「今年の永水はどうなんや?確か、去年のメンバーは3人減っとるよな?」

「永水は六女仙が二人メンバー入りしています。六女仙じゃない奴は、先鋒をしています。」

「先鋒?先鋒は神代やないんか?」

「今年、神代は大将をやっとる。私までに永水との点差を広げて、心音が神代の高い手を阻止出来れば勝機は十分や。」

「なら、神代に回さずに副将までに永水を潰せばええやん。」

「因みにやけど、永水の先鋒は、鹿児島大会で常に+50000以上で次鋒に回しとる。六女仙やないからって甘く見てると、やられるかもしれへんで。」

「永水の先鋒は何者なんや?」

「早乙女友理奈と言って、鹿児島のインターミドルの個人戦で、三年連続二位だった人です。」

「二位?一位やなくて?」

「ええ、二位と言っても、実力は折り紙つき。侮っとったらやられるで。」

「成る程。」

「望、気を付けや。」

「はい!」

 

 

~長野県四校合同合宿~

 

 

「冬室焦華さん、凄かったじぇ・・・」

「ねぇ真紀ちゃん、氷華ちゃんのお姉さん凄かったけど、あの人って何者なの?」

咲が焦華と対局した事のある真紀に尋ねた。

「焦華さんは、だんだん火力が上がっていくんですよ。東一局では1飜、東二局では2飜、東三局では3飜、東四局では満貫、南一局では跳満、南二局では倍満、南三局では三倍満、南四局では役満を和了るんです。」

「なんか、凄いね。」

「おぉ、真紀ちゃん良く覚えてるね。私の燃焼の事。」

(燃焼・・・焦華さんは燃焼で氷華さんは凍結。姉が火で妹は氷なのね。対局したらどっちが強いのかしら・・・)

「忘れるわけありませんよ、あの時の事は。」

「あ!そういえばさ~、あの頃真紀ちゃん達と一緒に対局したお友達の早乙女友理奈ちゃん。あの子、永水女子の先鋒やってるらしいよ~。」

「えっ!?」

「それ、本当ですか!?」

「そうだけど・・・」

真紀と一葉は、焦華が少し引く程驚いていた。

「一葉、友理奈の携帯番号持ってる?」

「確か、電話帳に登録されていたはずです。電話しましょうか。」

「友理奈と話すの、実に4年ぶりだな。」

「そうですね。」

prrrrr

『もしもし?』

「もしもし、友理奈?」

『・・・もしかして、一葉?』

「はい!お久しぶりです。」

『おぉ!久しぶり!元気してた?』

「はい!」

『一葉が元気って事は真紀も元気なんだな。』

「そ、そうですけど、どういう意味ですかそれ!」

『ははは、何でもないよ。』

「あ、それより友理奈、あの永水女子の先鋒になったらしいじゃないですか。凄いですね!」

『あぁ、お陰様で、そっちは麻雀まだやってるの?』

「はい、残念ながら清澄というところに負けてしまいましたけど、真紀は個人戦で全国へ行きますよ。」

『真紀と一葉がいても勝てなかったんだ、流石昨年の優勝校だな。』

「はい、残念ですけど、清澄の方々はとてもお強かったです。」

『一葉は相変わらず丁寧口調だな。まぁ、それはいいとして、私も個人戦に出るよ。真紀とまた戦う為に頑張るって伝えといて。』

「はい、分かりました。」

『じゃあ私、ちょっと部活中だったから、じゃね。』

「はい。」

一葉が通話終了のボタンを押した。

「友理奈、なんて?」

「永水女子の先鋒、そして個人戦でも全国出場したらしいです。個人戦で真紀と戦う為に頑張るって言ってました。」

「そうか、じゃあウチも頑張らないとな!」

「はい!頑張りましょう!」

 

 

一葉と真紀が話している時、焦華が咲に話し掛けた。

「宮永咲ちゃん、ちょっといいかな?」

「えっ、はい、何でしょうか?」

「間違ってたら悪いんだけど、咲ちゃん、お姉さんとかいる?」

「はい・・・います。」

「それって、宮永照?」

「そう、ですね。」

「ふふっ、凄い因果関係だね。私が宮永照に負けて、氷華が咲ちゃんに負けるなんて。じゃあ私と咲ちゃんが戦ったらどっちが強いんだろうね?」

「あっ、えっと、じゃあ、よろしくお願いします。」

「そうだね~、じゃあ一葉ちゃんと夢乃マホちゃんとでやろうか。」

「分かりました。」

「よろしくお願いいたします焦華さん。」

「本当は真紀ちゃんと氷華としたいんだけどね~。」

「ウチも焦華さんとまた戦いたいですね。」

「うん、また後でね~。」

そして、咲、焦華、一葉、マホの対局が行われ、1日が終わった。

 




千里山編なのに本編の話をしてしまいました・・・書き忘れてた訳では無い、はずです・・・
咲と焦華の対局はどちらを勝たせたらいいのか分からなかったので、対局の描写と結果は書きません。
焦華の能力を書きましたが、氷華と焦華はどちらが強いのでしょうか・・・?(設定では焦華の方が強いですが)どっちが強いか意見がありましたらコメントお願いします。

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