咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
「さぁ、始めようか!」
(この人、一体何なんや?特に凄い能力があるわけでも無いっちゅうのに、この威圧感は・・・)
~場決め結果~
二階堂渚:東
清水谷竜華:南
上野望:西
藤崎心音:北
~東一局~ 親:二階堂渚
二階堂渚 25000
清水谷竜華 25000
上野望 25000
藤崎心音 25000
(今日あたしがここに入った時、さっきの対局の結果が見えたけど、この藤崎心音とか言うの、あの園城寺先輩にあれだけの差を付けて勝っとる。園城寺先輩よりもはるかに強いんか、園城寺先輩にとって不利な能力みたいなもんを持っとるかのどっちかやな。まぁ、前者はまず無いか。でも、いくら不利な相手やとしても園城寺先輩があそこまで負けるっちゅう事は、こいつもそれなりには強いっちゅう事か。)
(ふっ、全部筒抜けなんやけどなぁ・・・別にウチをどう思ってくれてもええですけどね。でもまぁ、ウチは園城寺先輩が居なくても強いっちゅう事を見せたりますよ!)
~7巡目~
「ロン、三色ドラ1で5200です。」
(ほう、36ピン待ちを捨てて北単騎か、張ってたんは気付いてたんやけどな、まさかあたしが単騎に振り込むとはな。よし、気ぃ引き締めてこ!)
(心音ちゃん、今のはやっぱり渚を狙ったんやろな・・・)
(そうですよ清水谷先輩、二階堂先輩からは、何か嫌な予感がしますからね・・・)
~東二局~ 親:清水谷竜華
藤崎心音 30200
清水谷竜華 25000
上野望 25000
二階堂渚 19800
(あたしはラスが嫌いなんや、ここは和了らせてもらうで!)
(二階堂先輩がタンピン三色一盃口聴牌か。ってか、三色一盃口とか、珍しいな。しかし、低目の1索は抑えとるけど、高目の4索は望が持っとる。しかもよりによって余剰牌やしな。望は危険牌とか気にせずに自分の和了りを目指すタイプやからこりゃあ振り込むやろな。はぁ、しゃあないな・・・)
「ポン。」
(とりあえず望のツモ番を飛ばせば和了られんで済むやろ。今局は確実に流すで!)
(この上家、また何か企んどるな・・・)
(次に清水谷先輩に有効牌が入ったら4萬を出してくるはずや。それやったら鳴ける!)
(よしっ、張ったで。)
「ポン。」
(よし、何とか望に回さず聴牌出来たわ。これを和了って流す。)
(成る程、上家は他家の手牌が何故か分かるんかな?こいつの動きからして、対面があたしの和了り牌持っとるんかな。でも残念な事に、あんたが鳴いてくれたお陰で山にある4索があたしの所に来てくれたで。)
「ツモ。3000・6000。」
(手の内がバレた上に和了られた!?これは結構ヤバいな・・・)
(心音がおる卓で心音以外の人が跳満和了るん見たの冬室氷華以来やな。やっぱり千里山のエース、強いな。)
~東三局~ 親:上野望
二階堂渚 31800
藤崎心音 27200
上野望 22000
清水谷竜華 17000
~7巡目~
(また望が二階堂先輩に和了られそうになっとるわ。でもウチのこの手牌じゃ鳴く事も出来ひん。まぁ、安目やから勘弁してや。)
「ロン、タンピンドラ2。7700や。」
「はい。」
(はぁ、高目三色来るんを待っといた方が良かったか?やっすい手で和了ってしもたわ。)
(7700が安手!?思考がイカれとるわ!まったく、これやから高火力プレイヤーは嫌やねん。)
~東四局~ 親:藤崎心音
二階堂渚 39500
藤崎心音 27200
清水谷竜華 19000
上野望 14300
(このままやられるがままなのは癪やな。それにウチは、冬室氷華にリベンジする時まで誰にも負けんって決めたんや!こんな所で負けてられへん!)
(心音、目が本気に、ふっ、冬室との対局以来やない?その本気の表情。)
(ふっ、そうやな。それくらい二階堂先輩が難敵って事や。やったる!)
~8巡目~
(よし、張ったで。)
「リーチ!」
「チー。」
(二階堂先輩が鳴いてきた。一発消し?でもちゃんと聴牌しとる。けど、ここはウチが和了ったる!)
「ツモ!リーチツモ平和一盃口。2600オール!」
(おぉ、なかなかやるやん。やっぱり、こいつはつまらんくないな。)
(千里山のエース様にお褒め頂くとは、光栄ですわ。)
~東四局一本場~ 親:藤崎心音
二階堂渚 36900
藤崎心音 35000
清水谷竜華 16400
上野望 11700
~11巡目~
「リーチ。」
(二階堂先輩が14索待ちでリーチか。ならこの7ピンを処理しておくか。)
「それや、ロン!」
(えっ、14索やないの!?あっ、そうか。23444の形は14の二面ともとれるけど双ポン待ちにもとれるんや!なんでそれに気付けへんかったんやウチは!)
(心音が放銃!?どういう事や?心音が放銃なんて、何年ぶりやろか・・・)
「12300。ちょっと集中力切れてんとちゃうの?相手の手牌分かっとるのに放銃とか、そんな恥ずい事無いで?」
「そう、ですね・・・」
(この人、なんで心音が相手の手牌を分かっとるのを知っとるんや!?)
(やっぱり渚は凄いわ、相手の弱点を瞬時に見極めてそこを突いてくる。1年前から急激に成長したな。)
(1年前?そういやこの人、去年は団体戦メンバー入りしとらんかったな。何かあったんやろか?って、そんな事より今は試合に集中や!)
~南一局~ 親:二階堂渚
二階堂渚 49200
藤崎心音 22700
清水谷竜華 16400
上野望 11700
(二階堂先輩の親番、気ぃ付けとかんとやられるわ。)
(おっ、染められそうやな。染めてくか。)
(二階堂先輩は筒子の染め手か。筒子だけに筒抜けですよ?とりあえず索子と萬子のタンヤオ辺りで良いかな?)
「チー。」
(よしっ、一向聴や。これなら行けるわ!)
~6巡目~
「ロンです。タンヤオ三色ドラ2、8000です。」
「わぉ、結構高い染め手が出来とったのに。」
「それだから鳴いて早和了りしたんやないですか。」
「そうか。せやけど、8000程度じゃあたしとの点差は埋まらんで?」
「大丈夫です。次も和了りますから。」
「そうか。」
(心音と二階堂先輩がお互いを分かり合ってるようなこの感じは何なんや・・・)
~南二局~ 親:清水谷竜華
二階堂渚 41200
藤崎心音 30700
清水谷竜華 16400
上野望 11700
(望の7索をチーして二階堂先輩の2ピンをポンすれば聴牌やな。この局も行かせて貰いますよ!)
~3巡目~
「チー。」
(よしっ、一向聴や。二階堂先輩がだしてくれればいけるで!)
(心音が来とる?ならこっちも攻める!)
「ポンです。」
(望の奴、鳴いたって無理やで。どうせウチが和了るからな!)
~9巡目~
「チーです。」
(望、聴牌したんか。それに、二階堂先輩が当たり牌持っとるわ。これは二階堂先輩が振り込むな・・・)
「ロンです。タンヤオのみ。1000点です。」
(しかし、この1年生二人はインターミドルで2位と3位やって言っとったけど、こっちはパッとせえへんな。そんなに凄いんか?って、こいつさっきまで切羽詰まった顔しとったのに、なんでこんなに余裕そうな顔しとるんや?和了れたからか?それとも・・・)
~南三局~ 親:上野望
二階堂渚 40200
藤崎心音 30700
清水谷竜華 16400
上野望 12700
~5巡目~
「リーチです。」
「っ、チー!」
(なんやこいつ、さっきまで鳴いてばっかやったのに、リーチしてきよった。これは何かありそうやな・・・)
「ツモです。リーチツモタンヤオ平和三色ドラ1。6000オールです。」
(なっ、親跳!?やっぱりこいつもそれなりにやるようやな。)
(望に連荘させるのはかなりまずい!次にこいつを防げんと本気でヤバイで!)
~南三局一本場~ 親:上野望
二階堂渚 34200
上野望30700
藤崎心音 24700
清水谷竜華 10400
~4巡目~
「リーチです。」
「ロンや、8300。」
(なっ、二階堂先輩!?もう聴牌しとったんですか!?)
(悪いけど、あたしは1対1の勝負が好きやねん。勝負中に横槍入れられるんは耐えられんのや!)
(二階堂先輩すげー、望のカウントダウンを鳴かずに止めるやなんて。しかもカウントダウン4を。)
~南四局~ 親:藤崎心音
二階堂渚 42500
藤崎心音 24700
上野望 22400
清水谷竜華 10400
(ウチの親番、二階堂先輩に9600以上を直撃するか跳満以上を和了るかしかない。でも、ウチにそれが出来るやろか・・・)
(はぁ、連荘が終わったわ。もう私の勝ち目は無いからオリやわ。心音、せめてあんたは二階堂先輩に勝ちや!)
(んなもん分かっとるわ、こんな所で負けてられへんのや!無理してでも勝ってみせるわ!)
~7巡目~
「カン!」
(2ピンをカン?何する気や心音。カンドラか?)
(いや、カンドラは大丈夫、これで二階堂先輩から高目一通を和了れればリーチ一通で9600、ウチの勝ちや!それに9萬は二階堂先輩持っとらんし、タンヤオ三色作っとるつもりなんやろうけど、まだまだ遅いわ。この勝負、もろたで!)
「リーチ!」
(この巡目でリーチ?カンドラが乗ってへんから直撃狙いやろな。なら・・・)
(おっ、9萬が二階堂先輩に入った!よっしゃっ!ってあれ?三色を捨ててオリた?まぁ、しゃーないか。9萬は余剰牌やしいけるやろ。)
~13巡目~
(この人、どんどん萬子を取り入れて清一を聴牌しやがった。でも9萬は3枚、9萬が入ればツモ切りするやろ。でも、それやったらリーチしないんは変やな・・・まさか!?)
「カンや。」
(9萬をカン!?暗カンやからチャンカンも出来ひん。これが狙いやったのか・・・)
(心音、なんか『終わった・・・』って感じの顔しとるわ。こりゃあ、あらかたさっきの9萬が当たり牌なんやろなー。ドンマイやな。)
(そのドンマイだけやったら良かったけど、二階堂先輩の当たり牌掴まされた・・・)
「ロンや!清一ドラドラ、16000や!よっしゃっ!あたしの勝ちや~!」
(終わった・・・)
「ウチの・・・完敗です。」
「いやいや、あんためっちゃ強かったで。あたしにあそこまで本気出させたんは久しぶりや。楽しかったで。」
「そうですか、ありがとうございました。」
~試合結果~
二階堂渚 58500
上野望 22400
清水谷竜華 10400
藤崎心音 8700
「いやー、まさかあの状態から清一に持っていかれるとは思わんかったです。」
「そうやな、あたしもあそこまで乗ってくれるとは思わんかったわ。」
「それより、あの状態でどうして9萬を残したんです?」
「あー、あれか。あたしな、後半になると何となくやけど相手の待ちが分かるねん。」
「そうなんですか。」
(それやからウチの当たり牌を抑えとったんか・・・)
二人が会話をしていると後ろから声を掛けられた。
「それより、私的には渚が楽しいってゆうた事に驚いとるわ。」
「舟Qか、別に珍しい事でも無いやん。」
「いやいや、あんた今年に入ってから強くなり過ぎて他の人が弱すぎて『詰まらん詰まらん』って言っとるし、去年だって先輩方が強くて詰まらんって言っとったし、あんたが楽しいって言ったのなんか殆ど聞いた事あらへんかもしれんわ。」
「確かに、言われてみればそうかもしれんわ。」
「あの、さっきから引っ掛かっとったんですけど、1年前に二階堂先輩って何かあったんですか?」
「あー、まぁ、1年前のあたしは相当調子に乗っとったんや。今みたいに強い訳でも無いのに。」
「今は強いって自分で言うんか・・・まぁええけど、去年のインターハイ前のメンバー発表で渚は選ばれんかったんや。副将希望やったんやけど、渚の代わりに私が入ったんや。」
「あー、そういやそうやったな。」
「園城寺先輩、起きとったんですか。」
「うん、そういえば、あの時の渚は『舟Qを入れたのは身内贔屓やろ!』って監督にめっちゃキレとったな。」
「そうですね、去年のあたしは自信過剰で自惚れが過ぎましたね。」
「それは今も変わっとらんやん。」
「まぁ、そうですけど実力は確かなものにしましたよ?」
「ま、そやけどな。」
「えっと、その後は何があって今の二階堂先輩になっとるんですか?」
「その後、渚はインターハイで舟Qの戦略を目の当たりにしたんや。相手の隙を突いてくる麻雀を。」
「それで、あたしに実力が無い事に気付き、猛練習して今に至るって訳や。」
「成る程、それでこんなに強いんですね。」
「そうやな、じゃああたしの話をしたから今度はあんたの話や。」
渚が望の方に指を指した。
「えっ、私、ですか?」
「そや。あんた、なんかあるやろ?さっきの連荘、あれはどういう能力なんや?」
「そうですね、簡単に言うとカウントダウンですね。」
「・・・は?」
「ひぃ!」
(二階堂先輩、怖い・・・)
「あー、ウチが説明します。望はですね、最初の配牌は絶対に6向聴なんですよ。」
「はっ?マジ?」
「はい、それで、その6向聴の手を和了ると次の配牌は5向聴になるんです。更にそこからは有効牌しか引かなくなります。でも、連続和了してる途中で他の人が和了ったりするとまた6向聴に逆戻りするんですよ。当然有効牌も人並みに戻ります。」
「要するに、1度和了ると誰かが止めん限り有効牌しか引かなくなり尚且つ和了れば配牌がだんだん良くなるっちゅう訳か。」
「そうですね。」
「ん?ちょっと待て、という事は、六連続和了したらどうなるんや・・・?」
「その後は天和を和了し続けます。まぁ、25000やとその前に飛んだりして天和を和了する事はあんまり無いですけどね。」
「マジかいな・・・チート過ぎやん。」
「そうですね、でも、さっきみたいに途中で止められたり相手が即効やったりしたら焼き鳥で終わる事もありますけど、一回和了ると3人飛ばしとかしたりもするんですよ。だから望は結構ピンキリなんですよね。」
「成る程、って事は、一回和了れればええんやな?」
「そういう事になりますね。」
「分かったわ。望ってゆうたか?」
「はいっ!何でしょう。」
「今からインターハイまでにあたしが早和了りの特訓をしたるわ。それで望はその早和了りでカウントダウンを使うんや。カウントダウンが出来れば、少なくともマイナスにはならへんやろ。」
「確かに、園城寺先輩みたいにリーチ一発ツモも出来ますしね。早和了りが上手くいかない事を考えて、先鋒辺りがええんとちゃうか?」
「よし、ならあたしが望を最強の先鋒にしたるわ!今日から特訓や!」
「は、はい!頑張ります!」
「それと、もう一人のあんたの名前は?」
「藤崎心音です。」
「じゃあ心音、あんたもまだ少し穴があるからそこを埋めるで。」
「はい、分かりました!」
「よし、あんたら二人をインターハイまでに最強にするわ!」
「渚、なんか楽しそうやな。」
「そうやな、でも、千里山で二人も1年生なんて、ええんかいな?」
「大丈夫ですよ清水谷先輩。あの二人よりも強いのはうちの高校にはいませんから。」
「そうか。」
「はい。」
「なら、ウチらは帰るわ。」
「わざわざ来て貰ってありがとうございます。」
「いや、楽しかったからええよ。」
「そやね、じゃあ、また来るわ。」
「はい。」
「・・・」
「あれ、江口先輩はまだ残っとるんですか?」
「・・・俺、今日なんもしてねぇぇぇぇ!!!!!」
「五月蝿いんで帰って下さいよ。」
「うっさいわ舟Q!まぁええわ。次来た時は渚も心音も望も全員倒したるわ!」
「はいはーい、さようならー。」
「あぁ、もう、押すなや!」
「はぁ、じゃあ、私達も帰るか。」
「はい、今日は本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました。」
「あぁ、明日からは本格的に活動やからな。」
「はい、頑張ります。」
「よし、じゃあ解散や。」
3年に続き、片付けをした後に他のメンバーも帰った。
上野望は、天和出来る能力を作りたくて、それには難しい条件が必要だろうと思い、今の能力に落ち着きました。結局和了れれば作中最強なんじゃないかとも思えてしまうようなキャラになってしまいました。やっぱり天和出来る能力の時点でもうチートですね。