咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
個人戦2日目になった。清澄高校が試合会場でミーティングを行っていた。
「今日は東南戦だね。」
「おう、今日は昨日みたいには行かないかもしれないじぇ。でも、ナメられたまま負けるわけにはいかないじょ!」
「私も宣戦布告されたからには全力でやらないとだよね。」
「マホも今日は負けません!」
「よしっ、そろそろ出発じゃ!」
「「「「「はい!」」」」」
『個人戦2日目を開始致します。出場選手の皆さんは、所定の卓に移動して下さい。』
「よし、移動しようか。」
「はい。」
『各校の選手が出揃いました。個人戦2日目、開始です。』
(2日目、今日は東南戦だから昨日みたいな酷い成績にはならないはず。しかし、1回戦の相手の南浦数絵、牌譜で見た。私と同じで南場に強いタイプ。なら、私とこの人ならどちらが格上かをたっぷりと教えないといけませんね。)
「冬室氷華さん、ですね。」
「はい、そうですが。」
「今日は貴女と戦う事を心待ちにしていましたが、まさか初戦で当たるとは思いませんでした。」
「そうですね。私と貴女、どちらが南場に強いか決めましょうか。」
「ふっ、そうですね。では、始めましょうか。」
~南一局~ 親:南浦数絵
冬室氷華 31700
沢村智紀 23300
文堂星夏 22600
南浦数絵 22400
(まさか東場を1位で終えられるとは思わなかったな。じゃ、少し世界の違いでも教えてあげますか。)
~8巡目~
(これは、南場に入って手が良くなってるはずなのに3向聴から手が進まない。全然聴牌出来ない・・・)
「ツモ。純チャン三色ツモ、3000・6000。」
(冬室氷華!?やはり去年のインターミドルチャンピオン、強い。)
(冬室さん、東三局の親番で四連続和了してるから次の局で何とかしないと負けちゃう・・・)
~南二局~ 親:沢村智紀
冬室氷華 43700
沢村智紀 20300
文堂星夏 19600
南浦数絵 16400
~5巡目~
「ポン。」
(冬室さんが鳴いてきた、ヤバい・・・)
(全く聴牌出来ない、私が南場で和了出来ないなんて・・・)
「ツモ。鳴き清一で2000・4000。」
(うわっ、終わった、次からダブリー一発されちゃうよ・・・)
~南三局~ 親:冬室氷華
冬室氷華 51700
文堂星夏 17600
沢村智紀 16300
南浦数絵 14400
「リーチ。」
(やっぱり東場で和了した局ではダブリーをしてくる、こんなの対策の仕様がない・・・)
(やられる・・・)
「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ。4000オール。」
(本当にダブリー一発を和了った。これが全国レベルの力か・・・)
~南三局一本場~ 親:冬室氷華
冬室氷華 62700
文堂星夏 13600
沢村智紀 12300
南浦数絵 10400
「リーチ。」
(また、こんなの、どうすればいいの・・・)
「ツモ。ダブリー一発ツモタンピン。6100オール。」
(やっぱり点数が上がってる。もし次に8200オールを和了されたら3人とも飛んじゃう。どうにか防げないの?これ・・・)
~南三局二本場~ 親:冬室氷華
冬室氷華 81000
文堂星夏 7500
沢村智紀 6200
南浦数絵 4300
「リーチ。」
(また・・・)
(これで終わりです。)
「ツモ。ダブリー一発ツモ清一、8200オール。」
(終わった・・・)
(この私が南場で1度も和了れないなんて・・・)
(3人飛び終了、異常・・・)
「お疲れ様でした。」
~試合結果~
冬室氷華 105600
文堂星夏 -700
沢村智紀 -2000
南浦数絵 -3900
「はぁ、やっぱり冬室さんには勝てないね。」
「そうですね。それより、文堂先輩はもう少しリーチを慎重にした方がいいと思います。火力はそこまで悪くは無いのですがそれ以上に振り込んでいるので意味が無くなっているんですよ。もう少し慎重な打ち方が出来ればもっと安定した点数になりますよ。」
「ありがとう。私のことちゃんと見てくれてたんだね。」
「来年は団体戦でも負けたくないだけです。」
「そっか、でも嬉しいよ。」
「そうですか、じゃあ私の次の対局は逆なのでこれで。」
「あぁ、うん。頑張ってね。」
「はい。」
(さて、次はG卓ですか。誰がいるんでしょうか・・・)
「冬室氷華さん、ですよね。よろしくお願いいたします。」
「一ノ瀬一葉さん、副将戦、圧巻でした。とても素晴らしかったです。」
「あっ、そんな、ふ、冬室氷華さんの方がとても素晴らしかったですよ。」
「いや、鶴賀学園は夢乃マホに目を付けられてあんなに点が減っていたのにあそこまで巻き返したのは一ノ瀬一葉さんの力ですよ。」
「そんな、褒めても手加減とかしませんよ。」
「むしろ本気で来て欲しいですね。本気の貴女を倒したいので。」
「そうですか、では全力で当たらせて頂きます。」
「はい。」
(うっわー、冬室氷華さんにかずかずまでいるんすか・・・これは相当凹みそうっすね。)
~場決め結果~
深堀純代:東
一ノ瀬一葉:南
冬室氷華:西
東横桃子:北
「よろしくお願いします。」
「よろしくお願いいたします。」
「よろしくっす~。」
「よろしくお願いします。」
~東一局 親:深堀純代
深堀純代 25000
一ノ瀬一葉 25000
冬室氷華 25000
東横桃子 25000
(とりあえず和了っておきましょうか。)
「ツモのみ。300・500。」
(冬室氷華さんに和了られました。これで南一局では満貫を和了されてしまいます。)
(早速チャージしてるっすね、とりあえずステルスモードになったらかずかずは多分無理っすからこの風越のおっきい人に直撃をしてチャージブレイクさせないようにするっすよ!)
(真紀が教えてくれたようにやれば、この人を倒せる。真紀がわざわざ教えてくれたのですから勝たなくてはなりません。それに、冬室という名字、絶対に負けられません!)
~東二局~ 親:一ノ瀬一葉
冬室氷華 26100
一ノ瀬一葉 24700
東横桃子 24700
深堀純代 24500
~3巡目~
「ポンです!」
(一ノ瀬一葉、聴牌しましたか。それなら・・・)
「チー。」
(これでこちらも3面張の聴牌。単騎と3面張だったらどちらが来やすいんでしょうね。)
(冬室氷華さんが攻めてきてる。でもここは攻める!)
「ツモです!三色同刻三暗刻対々和ドラ2で8000オールお願いいたします!」
(ドラ単騎を引き入れたのか・・・3面張が単騎に負けますか。まぁ、よくある事ではありますが。しかし東場でこの失点は痛いですね。)
(かずかず、頑張ってるっすね。私も負けないっすよ!)
「一本場です!」
~東二局一本場~ 親:一ノ瀬一葉
一ノ瀬一葉 48700
冬室氷華 18100
東横桃子 16700
深堀純代 16500
~6巡目~
「ツモのみ。400・600。」
(やっぱり、6巡目までに和了してきますね。厳しい戦いになりそうです。)
~東三局~ 親:冬室氷華
一ノ瀬一葉 48100
冬室氷華 19500
東横桃子 16300
深堀純代 16100
~5巡目~
「ツモ。500オール。」
~東三局一本場~
「ツモ。600オール。」
~東三局二本場~
「ツモ。700オール。」
~東三局三本場~
「ツモ。800オール。」
~東三局四本場~
「ツモ。900オール。」
~東三局五本場~
「ツモ。1000オール。」
(この人、何連荘する気ですかぁ!この大会のルールだと八連荘しても役満にはならないんですよ!こんなに連荘してたら日が暮れちゃいます。)
(この人、凄すぎっすよ・・・)
(冬室、親番で六連続で和了った。トンパツの和了りも含めればこれで満貫、跳満、倍満、三倍満、そして役満3回をチャージしたことになるな。点数的に三倍満以上の和了は必要とは思えないが、どうしてこんなに連荘しているんだ?)
~東三局六本場~ 親:冬室氷華
一ノ瀬一葉 43600
冬室氷華 33000
東横桃子 11800
深堀純代 11600
(そろそろこの人の連荘を止めなければなりませんね。)
「ポン。」
(また冬室さんに鳴かれた!?まだ連荘する気なんですか?)
「ポン。」
(また私の手番が飛ばされてしまいました・・・)
「ポン。」
(ちょっと、これってまさか、私にツモらせない為に鳴いているんでしょうか?もしこの前の団体戦みたいな事が起こるのだとしたら・・・)
(聴牌した。冬室は三副露だけどロン和了はしない。それに他二人も聴牌してるようには感じないな。ここはリーチを掛けておくか。)
「リーチ。」
(やっぱり風越の深堀さんがリーチを掛けてきました。しかもこれ、余剰牌の5、8ピン。当たりそう・・・)
「ロン。リーチ一発タンヤオ平和ドラ2。12000の六本場で13800です。」
(跳満!?やっぱり2つとも当たり牌だった・・・)
(もうそろそろステルスが発動してるはずっすけど全然和了れないっす・・・)
(和了れたのはいいが、何だか冬室に利用されたような気がしてならないな・・・)
(これでトップです。でも念には念を・・・)
~東四局~ 親:東横桃子
冬室氷華 33000
一ノ瀬一葉 29800
深堀純代 25400
東横桃子 11800
~5巡目~
「ツモ。300・500。」
(なっ、また和了られてしまいました。しかも南入してしまいます・・・)
(冬室はトンパツで和了してた。という事は南一局は・・・)
~南一局~ 親:深堀純代
冬室氷華 34100
一ノ瀬一葉 29500
深堀純代 25100
東横桃子 11300
「リーチ。」
(ダブルリーチ!?そうでした、東一局で冬室さんは和了してましたね。)
(また、やられちゃうっす・・・)
「ツモ。ダブリー一発ツモタンヤオ。2000・4000。」
(始まった、冬室のダブリーが・・・)
(こんなの、防ぎようが無いですよぉ・・・)
~南二局~ 親:一ノ瀬一葉
冬室氷華 42100
一ノ瀬一葉 27500
深堀純代 21100
東横桃子 9300
(やっぱりこの局は冬室さんが和了してなかったからダブルリーチはしてこない。ならここで攻めなければ!)
「チーです。」
(なっ、南場になって3向聴から手が進まないようになっているはず。それなのに、どうして・・・あぁ、三色同刻。3向聴ではなく既に1向聴だったという事ですか。じゃあこの人とは南場でも殆ど凍結が効かないという事でしょうか。まぁ、そこはどうでもいいとして今のチー、789ピン。という事は鳴き純チャンと三暗刻対々で跳満といったところでしょうか。だったら9を切らなければいいから、これで。)
「ロンです!三色同刻三暗刻で12000お願いいたします。」
(なっ、私が放銃!?この人、かなりの強者ですね。)
(よしっ、このまま親で連荘出来ればまだ勝てます!)
「・・・もしかして、勝てるとか思ってませんか?一ノ瀬一葉さん。」
「えっ、あ、はい。頑張っています。」
「そうですか、それはそれは、とってもおめでたい方なんですね。」
「ど、どういう事でしょうか?」
「直ぐに分かりますよ。」
~南二局一本場~ 親:一ノ瀬一葉
一ノ瀬一葉 39500
冬室氷華 30100
深堀純代 21100
東横桃子 9300
(直ぐに分かるって、どういう事なんでしょうか。私がこの親で連荘すれば冬室さんのチャージも起きな・・・あれ、そういえば、東二局の一本場って、あっ、冬室さんが和了してました。という事はつまり・・・)
(お気づきになられたようですね。では答え合わせしましょうか。)
「リーチ。」
(やっぱり、どうして気が付かなかったんですか!私のばかぁ!これじゃあ、どっち道勝ち目が無いじゃないですかぁ!)
「ツモ。ダブリー一発ツモ混一。3100・6100。」
(あぁ、やられてしまいました・・・)
~南三局~ 親:冬室氷華
冬室氷華 42400
一ノ瀬一葉 33400
深堀純代 18000
東横桃子 6200
「リーチ。」
(もう、おしまいです・・・)
(これで、終わりです。)
「ツモ。ダブリー一発ツモ清一。8000オール。」
(終わった・・・)
「お疲れ様でした。」
「お、お疲れ様でした・・・」
「お疲れっした・・・」
「お疲れ・・・」
~試合結果~
冬室氷華 66400
一ノ瀬一葉 25400
深堀純代 10000
東横桃子 -1800
「途中はヒヤヒヤしましたけど、終わってみれば私の圧勝でしたね、一ノ瀬一葉さん。」
「・・・そうですね。」
(この感じ、対局してみて確信しました。この人は、やっぱり冬室焦華さんの妹です。あの頃と同じ・・・)
~6年前~
『試合終了です!全国小学校麻雀大会の長野県代表は、圧倒的大差で勝利した6年生の冬室焦華さんです!』
~試合結果~
冬室焦華 106700
一ノ瀬一葉 1300
早乙女友理奈 200
汐見真紀 -8200
「・・・勝てなかった。」
「全然、手も足も出ませんでした・・・」
「これは規格外・・・」
「お疲れ様~ってあれ?皆お通夜状態だね~。まぁ、小3の子3人相手に大人気が無かったかもしれないけど~、君達結構強かったから良いかな~って思って。悪気は無かったんだよ~。」
「いえ、私が勝てなかったのが悪いんです。冬室さんは悪くないです。」
「おぉ!8200のマイナスでラスだったのに、結構根が強いんだね~。」
焦華の発言を聞いて、一葉が立ち上がった。
「あのっ!いくら強かったからとは言え、真紀に酷い事言っていい理由にはならない筈です!」
「はぁ?何?口答えすんの?だったら私に勝ってからにしてよ。あっ!でも、25000点の勝負で10万点差も付けられた相手に勝てる訳無いか~。」
(くっ!この人、酷すぎます!どうして神様はこんな人にこんな力をお与えになったんでしょうか・・・)
(もう、麻雀辞めようかな・・・)
~翌日~
早乙女友理奈(さおとめゆりな)が真紀と一葉を、普段麻雀をしていた場所に呼び出した。
「用って何だよ友理奈。」
「私達、麻雀は続けた方がいいと思う!だからもっと麻雀をしよう!そして、あわよくばあの人に勝とう!」
「・・・無理だよ。友理奈も見たでしょ。あの人、どう戦っても勝てる気がしなかっただろ。」
「それに、昨日の今日で麻雀はちょっと・・・」
「そっか・・・じゃあ明日から始めよう!」
「はぁ?お前、話聞いてた?」
「聞いてたよ、確かに冬室さんは強かった。あんなの勝てっこ無いって事も分かってる。でも、でも駄目だよ!このまま、あの人にやられたからって理由でこんなに楽しいゲームを辞めるのは、勿体無いよ!絶対に辞めちゃいけない、ここで辞めちゃったら本物の敗者になっちゃうんだよ?真紀はそれでもいいの!?」
「友理奈・・・」
「はぁ、分かったよ、そこまで言われたらしゃーねぇ。ウチも負けたまま終わるなんて専らごめんだ!やってやる!」
「一葉も続けてくれる?」
「私は、真紀がやると言ったのですから、勿論続けます。」
「そうこなくっちゃな!よしっ、じゃあ早速麻雀しようか!」
「えっ、明日にするんじゃ無かったんですか!?」
「二人がやる気になってくれたんだ。それに、ここまで来て麻雀しないで帰るなんて勿体無いだろ?」
「それ、もし私達が続けないって言って帰ろうとした時にも言うつもりでしたよね。」
「は、ははっ、ソンナコトナイヨ。」
「はぁ、まぁ良いですけど。真紀はこのまま麻雀やりますか?」
「もちろん!やるに決まってるっしょ!」
「そうですか、真紀がやるなら私もやります。」
「じゃあ、始めようか!」
「はい!」
「おう!」
「かずかず、大丈夫っすか・・・」
(・・・あぁ、思い出に耽ってしまいましたか。)
「大丈夫です。東横先輩こそ、マイナスで終局してしまいましたけど大丈夫ですか?」
「心配無いっすよ。むっきー先輩があんなにやられてたのを見て、こうなるとは思ってたっすから。」
「そうですか・・・」
「・・・結局、マッキーの助言はあんまり役に立たなかったっすね。」
「ご期待に添えなかったですね。」
「仕方ないっすよ。あんな相手、勝てる方がおかしいっす。」
「そう、ですね・・・」
(そういえば、あの時の真紀もそんな事言ってましたね。それで友理奈に諭されて・・・そういえば、友理奈とは中学の頃に転校で九州の方に行ってしまってから会ってませんね。元気にしているのでしょうか・・・)
「と、とりあえず、切り替えて次の対局に行くっすよ。」
「あっ、そうでした!行きましょう!」
その頃、真紀は一葉の試合結果を見ていた。
(一葉、冬室氷華に勝てなかったのか。ま、仕方無いか。ウチが後で敵討ちしないとな!でもその前に、その冬室氷華を倒したっていう、このサイドテールっ子を倒さねぇとな!)
「1度でいいから対局したいと思っていたよ、夢乃マホ!」
「マホも鶴賀の大将さんと戦いたいと思っていました。よろしくお願いしますです!」
「お互い全力を出して真剣勝負、しましょうね。」
「はい!」
個人戦2日目の3回戦、夢乃マホと汐見真紀との対局が今、始まる。
個人戦の話は幾つかの対局を用意していたのですが、⑤くらいまでには終わらせたいので少しカットするかもしれないです。