咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら   作:神奈木直人

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第20話 個人戦①

個人戦の1日目が始まった。1日目は東風戦で、2日目は東南戦だ。

「1日目って、東風戦なんですか・・・」

1日目が東風戦という事実を知った風越女子の冬室氷華が頭を抱えていた。

「うん、氷華には厳しい戦いになるかもね。」

「何ですかこれ、私を入賞させないためのルールですか?それとも3日前に片岡優希さんが酷い成績だったからですか?」

「冬室さん落ち着いて、1日目が東風戦なのは去年もだったからそんな理由じゃないよ。」

(姉さんが『今年は氷華の闇堕ちが見れそうだね~』とか言ってたのはこれが理由だったのか・・・)

「はぁ、まぁ、頑張りますよ。とりあえず最低限予選は通過しないとですよね。」

「まぁ、大変かもだけどお互い頑張ろうな、氷華。」

「はい、頑張ります。」

(冬室さんのあんな弱々しい表情初めて見た。なんだか新鮮だな・・・)

(去年のインターミドルチャンピオンである私が団体戦のみならず個人戦にも出場出来ないなんて、絶対にあり得ない。今日は絶対に負けられない!)

 

 

その頃、清澄高校は会場に着いてミーティングを行っていた。

「今日は東風戦だから私の独壇場だじぇ!」

「落ち着きんしゃい。あんたは確かに東風戦には強いが、強い相手じゃったら勝てるかわからんのじゃからちゃんと話には参加せい。」

「むぅ、分かったじぇ。」

「あ、でももう話すこと無いわ。それにもうそろそろ始まるわ。」

「よしっ、じゃあとりあえずタコスを食べるじぇ!」

「マホもタコス食べます!」

「お?マホも食べるのか?なら早食い対決だじぇ!」

「はい!」

「ちょっと二人とも、喉に詰まらせても知りませんよ。」

「これくらいなら大丈夫だじょ。」

「はぁ、もう好きにして下さい・・・」

「でも、もう始まっちゃうよ?急がないと。」

『これより、県予選個人戦を開始します。出場者の方々は、対局室に移動して下さい。』

「ん!?のどちゃんが邪魔するから時間になっちゃったじぇ。」

「はぁ?私のせいですか?」

「まあまあ、時間だし移動しよう?和ちゃん。」

「そうですね、優希なんて気にせず行っちゃいましょう。」

「じゃあ、優希ちゃん、マホちゃん、部長。また後で。」

「おう、頑張りんさい。」

「はい!」

「よしっ、食べ終わったじぇ。」

「マホも食べました。」

「なんと、お主やるな!今回の早食い対決は引き分けだじょ。」

「はい、って、早く移動しないとですよ!」

「わっ、そうだったじぇ!えっと、こっちだじょ。」

「はい、急ぎましょう。」

優希とマホが移動すると、既に全員揃っていた。

「ごめんなさいです。遅れてしまいました!」

「は、はあ。」

(この人が3日前の団体戦での最多得点プレイヤー?あんまり強くなさそうだな。サクッと倒しちゃうか。)

『対局室に選手が出揃いました。個人戦1日目、開始です!』

 

 

「ロン!18900です!」

(こ、こいつ、全然弱くない、というか、強すぎる!)

「お疲れ様です~。」

(これが全国レベルなのか・・・)

~1回戦~

「ツモだじぇ!8000オール!」

~3回戦~

「ロン!12000!」

~6回戦~

「ツモ!6000オールだじぇ!」

『清澄高校片岡優希、やはり東風戦は強いですね。』

『あぁ、東風戦のみの大会だったら相当良い順位だろうな。』

『現在6回戦まで行われていますが、全てトップで終わらせているのは彼女と汐見選手ですね。』

『おい、まだいるだろ?冬室氷華が。』

『あぁ、本当ですね。でも、そのわりには一回以上負けている人よりも点が低いですね。』

『そりゃあ、南場がホームグラウンドの奴にとって東風戦なんて苦行でしか無いだろうからな。』

『確かに、しかし、苦手な東風戦で全てトップなのは凄い事ですね。』

『そうだな。』

(インターミドル覇者のプライドか、それとも負けると何かが起こるか。どちらにせよ連続トップは凄いな。)

 

 

(東風戦なんてルールが無ければこんなに酷い成績にはならない筈なのに・・・)

「あ、冬室さん。」

「吉留先輩ですか、どうしました?」

「いやー、さっき南浦さんにやられちゃってさ。」

(南浦数絵、牌譜で見た。確か私みたいに南場が強いタイプだったはず。)

「南場が強い人に東風戦で負けたんですか?」

「あはは、まぁ、負けたって言っても東場までは一応勝ってたんだけどね。」

「はぁ?東風戦で東場まではって、どういう事ですか?」

「あれ、知らない?東風戦も南入させられるって。」

「えっ!?それってどうやってするんですか!?」

「え、えっと、東四局が終わった時に4人全員が30000点以下だったら南入するの、っていうか冬室さんなら知ってると思った。」

「いや、東風戦なんて苦行はこれまでしたことが無かったので。それにしても、とても有益な情報ありがとうございます。このままあんな成績で終わるわけにはいかなかったので助かりました。」

「あぁ、うん、頑張ってね。」

(これで行ける!)

~8回戦~

「ツモ。300・500。さぁ、南入しましょうか。」

(な、南入!?まさか・・・)

~南一局~

「ツモ。2000・4000。」

~南二局~

「ツモ。3000・6000。」

~南三局~

「ツモ。8000オール。」

「ツモ。12100オール。これで終わりですね。お疲れ様でした。」

(うわっ、この人は東風戦なら勝てるって言ってたけど、東風戦でも構わず南入させてあんなに和了られた・・・)

『冬室氷華、やっと気付いたみたいだな。』

『えっ?どういう事ですか?』

『いや、これまでは安手を連続で和了していたから南入しなかったけど今回は連荘せずに、しかも振り込んでさえいる。南入させる為にな。』

『という事は、冬室選手はわざと南入させたという事でしょうか?』

『まぁ、十中八九そうだろうな。』

『そうですか、まぁ、何にせよ今の対局で冬室選手は13位から一気に5位に浮上しました。これで冬室選手は予選通過です。』

 

 

(何とか1日目を終えられた。疲れた・・・)

「お?冬室氷華じゃないか!」

「はい?あぁ、清澄の片岡優希さん。」

「南場が得意だから1日目で敗退すると思ったじぇ。」

「私は去年のインターミドルチャンピオンですから東風戦だからといって負けられませんよ。」

「ふっ、まぁ、今日私に当たらなくて良かったな。東風戦だったら私の圧勝だったじぇ。」

「そうですね。でもそれ、普通の半荘だったら勝てないって言ってるようなものですよね。」

「なにをぅ!もし明日お前と当たっても絶対に勝ってやるじぇ!」

「そうですか、期待してます。」

 

 

「カン、ツモ。嶺上開花。2000・4000です。」

『清澄高校宮永咲、予選通過です。』

「ツモ。1300・2600。」

『清澄高校原村和も予選通過です。

そこからどんどん予選通過者が出てる中、全勝記録を作ろうとしている二人が同じ卓になった。

「ふぅ、次で最後か、折角これまでパーフェクトで来たから最後も勝利で終わりたいよな。」

「次で最後だじぇ、絶対に負けられないじょ!」

「うわっ、清澄の東場ブーストの人じゃん、ハズレ引いたわ・・・」

「お?お前は、鶴賀の大将だな!ふっ、残念だったな、東風戦じゃなかったらそっちに勝機はあったかもしれないけど、こっちは東場の神だじぇ。負ける気がしないじょ。」

「奇遇ですね、ウチも東場の神様に勝てるような気がしてますよ!」

「ふっ、そんな挑発したから咲ちゃんに負けちゃったんだじぇ。」

「なっ、あれはどっち道ウチが負けてたんで関係ないです!っていうか、早くやりますよ。」

「そうだな。やるか。」

場決めをする、優希は東、真紀は西になった。

~東一局~ 親:片岡優希

片岡優希 25000

モブA 25000

汐見真紀 25000

モブB 25000

「親リーチいっくじぇ!」

(3巡目か、速いな。流石東場の神様だな。ならこっちも神様退治をしないとな!)

「ポン。」

(こいつ、鳴いてきたらすぐに和了ってくる。ちょっと怖いじぇ・・・)

「ツモ!タンヤオ鳴き三色ドラ3で2000・4000!」

「くっ、親被りだじぇ・・・」

~東二局~ 親:モブA

汐見真紀 34000

モブA 23000

モブB 23000

片岡優希 20000

(くそっ、もう親番はない、それにこいつは親番だと配牌で聴牌しているからな。)

「リーチ!」

(くっ、速すぎるじょ・・・)

「ツモ。リーチ一発ツモタンピン三色で3000・6000!」

(また何も出来ないまま和了られたじぇ・・・)

(さぁて、親番だ!)

~東三局~ 親:汐見真紀

汐見真紀 46000

モブB 20000

片岡優希 17000

モブA 17000

「リーチ!」

(くっ、ダブルリーチ!だけどこっちも配牌一向聴だじぇ。攻めたいところだな・・・おっ!来たじぇ!)

「追っかけリーチだじぇ!」

「うわっ、そっちもダブリーですか。」

(来いっ!うわっ、これ、片岡優希に当たりそう・・・)

「それだぁ!ロン!純チャンドラ2で16000だじぇ!」

「うっわー、ダブリーで純チャンとか、流石ですね。」

「ふっ、東場の神だからな!」

~東四局~ 親:モブB

片岡優希 33000

汐見真紀 30000

モブB 20000

モブA 17000

(お!ドラが2つもある。これは中々良い手になりそうだな。)

(うわっ、いきなりドラ切り。こいつ、ドラ切りするとどんどん有効牌を引いてたから怖いじょ。)

~4巡目~

「リーチ!」

(速いじぇ、こっちはまだ一向聴だっていうのに・・・)

「ツモ!リーチ一発ツモタンピン三色ドラ1で4000・8000!これでウチがパーフェクトですね!」

「くそっ、勝てなかったじょ・・・」

~試合結果~

汐見真紀 46000

片岡優希 29000

モブA 13000

モブB 12000

 

~個人戦1日目上位10名~

1位 汐見真紀

2位 片岡優希

3位 天江衣

4位 宮永咲

5位冬室氷華

6位 津山睦月

7位 一ノ瀬一葉

8位 原村和

9位 夢乃マホ

10位 妹尾佳織

 

 

「あっ、優希ちゃん戻ってきたよ。」

「くそっ、咲ちゃんに負けた汐見真紀に勝てなかったじぇ・・・」

「お疲れ様です。2位になっちゃいましたけどよく頑張りましたね。」

「むぅ、今年は1日目トップのインタビューで何を言おうか考えてたのに無駄になっちゃったじぇ!」

「なんで終わってすらいないのにそんな事考えてたんですか・・・」

「おっ、ほらほら、お前がやるはずだったインタビューが始まるぞ。」

「くそぅ、汐見真紀め、明日当たったら絶対にぶっ潰すじぇ!」

 

 

『本日全戦全勝、そして去年までの記録を大きく塗り替えた汐見真紀選手。本日の出来はどうでしたか?』

「まぁ、今日当たった相手にそれほどの強敵はいませんでしたからね。当然の結果でしょう。」

『では明日の決勝の心意気をお聞かせください。』

「そうですね、ウチは東風戦だけでなく半荘戦も得意なので明日も多分1位でしょうね。」

『そ、そうですか。では明日に向けて皆さんに一言どうぞ。』

「そうですね、個人名を出して悪いですけど宮永咲さん。貴女には絶対に負けません!」

(私、皆さんにって言った筈なんだけど・・・)

『あ、ありがとうございましたー。これでインタビューを終わります。』

 

 

「くっそぉ!あいつにバカにされたじょ。明日当たったらぼこぼこにするじぇ!」

「なんか私、宣戦布告されたんだけど・・・」

「ははっ、こりゃあ明日はあれそうじゃの・・・」

~風越女子高校~

「うわー、汐見真紀、調子乗ってるな~。な、氷華。」

「そうですね。」

(汐見真紀は牌譜で見た感じだと、ドラ切りするとどんどん有効牌を引く感じの人だったな、あとタンヤオを作る事がやけに多い。まぁ、それは一ノ瀬一葉の影響かな。まぁ、それは良いとして、問題は津山睦月。まさか6位に入ってくるとは思わなかったな。やはりただ者ではないな。まぁ、私の凍結が効かなかった時点でただ者ではないんだけど。去年、あの大阪の人にも効いていたのに・・・)

 

 

「へぇぇぶしっ!」

「ん?どうしたん望?」

「いや、多分誰かに噂されとるわ。人気者は辛いな。」

「はぁ?んな訳あるか!何アホな事抜かしとんねん。くしゃみなんて風邪か胡椒被ったときかのどっちかやろ。」

「胡椒被った事なんて無いわ!それに、園城寺先輩みたいに病弱でも無いわ。」

「あーあ、今の園城寺先輩にゆうたら多分キレるで?」

「あー、それはマジで勘弁!」

「じゃあ清水谷先輩にゆうたろか?」

「もっと勘弁やわ!そんなんされたら生きて帰れるかも分からへん!」

「じゃあ貸し1な。」

「はぁ?なんでや!」

「別にええんやで?清水谷先輩にゆうても。」

「あぁ、それだけは許してぇな!っていうか、私達、船久保先輩達待たせてるやん!急いで戻らんと!」

「お前が変な事言い出すからや。」

「あんたが移動中にトイレ行きたいとかゆうたからやん!」

「『じゃあ私も。』とか言って付いてきたのは望やん!」

「あんたがさっさと済ませてくれとったらこんなに急ぐ必要もあらへんかったわ!これでこっちも貸し1やからさっきの解消やな!」

「は?意味分からんし、ウチがちょっと遅れたんと貸しは全く別物やん。」

「んなもんこの際どうでもええわ、はよう戻るで!」

 




最後に出てきた新キャラはその内出します。次は普通に個人戦の2日目をやります。

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