咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
真紀が対局室から出て、控え室に戻った。
「たっだいま~。」
「たっだいま~じゃありませんよ!なんであんな挑発的な事を言ってしまうのですか!」
「あー、ウチってさ、調子に乗れる時に乗っておきたいタイプだからさ。」
「意味が分かりません!調子に乗るのと挑発的な態度を取るのは全く違います!三味線扱いされなくて良かったって位ですよ。」
「いやいや、対局終わった後に言ったから大丈夫だって。」
「そういう問題では無いですよぉ!」
「大丈夫だって、この調子で行けばいけるって。」
「でも、清澄の宮永先輩にはくれぐれも気を付けて下さいね。」
「うん、あの人、後半戦が怖いからな。前半戦で何もしなかったのが逆に怖いな。」
「対局中は調子に乗らないで下さいね。」
「心外だな、ウチはいつも麻雀には真摯に取り組んでるよ。」
「そうでしたね、頑張って下さい。」
「任せろ!」
「マッキー頑張れ~。」
「汐見さん頑張って!」
「はい!任されました!」
同時刻、華菜が控え室に戻ろうと歩いていると、吉留未春が座っていた。
「あっ、未春ん・・・」
「華菜ちゃん、お疲れ様。」
「未春ん、あの、大丈夫?」
「うん、随分と楽になったよ。そろそろ控え室に戻らないとコーチや皆に迷惑かかっちゃうから戻ろっか。」
「うん、あたしも一緒に行くし。」
「ありがとう、心強いよ。」
華菜と未春が控え室に戻り、控え室に入った。
「あっ、池田先輩に、吉留先輩じゃないですか。」
「ただいま戻りました。」
「ただいま・・・って、何見てるんだ?氷華。」
「これですか?個人戦で戦うかもしれない強い選手の牌譜を見てました。」
「へー、誰のを見てたんだ?」
「夢乃マホと宮永咲さんと天江衣さん、そして鶴賀の方々ですかね。」
「あー、確かに今年の鶴賀は結構強いからなー。」
「はい。でも、あの汐見真紀と宮永咲さんと天江衣さんのいる卓であの収支だった池田先輩も大したものだと思いますよ。」
「なっ、何だよ、急に持ち上げてきて。」
「モチベーションが上がると思ったので。」
「あー、そゆことね。じゃあ、あたしはそろそろ行くし。」
「頑張ってね、華菜ちゃん!」
「おう!」
その頃、和が咲の所へ行き、飲み物を渡していた。
「咲さん、調子は大丈夫ですか?」
「うん、調子は悪くないと思うんだけど、衣ちゃんと鶴賀の人が強くて全然叶わないよ・・・」
「確かにあのお二方は強いですけど、咲さんはあの二人よりも強いと私は思っています。」
「和ちゃん・・・ありがとう。私、頑張るよ!」
「はい!頑張って下さい!」
「そろそろ時間だから行くね。」
「はい。今年も全国優勝しましょうね。」
「うん!」
和と別れてから対局室に向かった。そこには既に全員揃っていた為、場決めを行った。
~場決め結果~
天江衣:東
池田華菜:南
宮永咲:西
汐見真紀:北
『4人の選手が出揃いました。大将後半戦、開始です!』
~東一局~ 親:天江衣
鶴賀 160600
清澄 121000
龍門渕 104000
風越 14400
(取り敢えず1位を死守しないとだよなぁ。でも防御モードでいってツモられたら意味無いしなー。わかんねぇや!テキトーにやろっと。)
~5巡目~
「ロン、ダブ東三色ドラ2。18000!」
(くっ、天江衣に直撃された。防御モードにしてれば振り込まなくて済んだのに!)
(よし、これで咲を捲って鶴賀との点差も削った。このまま連荘して衣が勝つ!)
『龍門渕高校の天江選手、速度重視のプレイングですね。』
『去年みたく海底まで待ってたら、鶴賀が先に和了するだろうからな。』
『確かに、鶴賀学園の汐見は相当な速さを持ってますからね。』
『そうだな。』
(衣、海底で和了出来ない事で不利になるとはあまり思ってないが、確実に和了率は落ちてるな。)
~東一局一本場~ 親:天江衣
鶴賀 142600
龍門渕 122000
清澄 121000
風越 14400
~6巡目~
(このまま天江衣に暴れられると困るな。それに宮永咲も怖い。なら、風越を飛ばして終わらせちゃうか!)
「リーチ!」
(ほらほら池田華菜、ウチの和了り牌出して楽になっちゃえよ~。)
(よしっ、四暗刻の一向聴。これでいける!)
(うわっ、本当に出したよこいつ。)
「ロン!リーチ一発タンピン三色で12300!」
(なっ、残り点数が・・・鶴賀があたしを飛ばして終わらせようとしてる!?ヤバい、ヤバいヤバい!3人に10万以上の差があるし、超ヤバい!やっぱり魔物3人に勝てる訳なんて、素より無かったのかな・・・福路先輩、あたし、どうすれば良いんでしょうか・・・?)
~観戦室~
「華菜・・・大丈夫かしら?」
「龍門渕の天江さんは分かるけど、鶴賀の汐見さん、あの子ヤバいわね。」
「あぁ、正直汐見は、私がこの前部室に行った時も殆ど勝てなかったからな。」
「ワハハ、あいつは色んな戦い方で戦うからな。対策が難しいと思うな。」
(やっぱり、小学校の時よりも格段に強くなってるね~。もう一回あの子と戦いたいな~。)
~東二局~ 親:池田華菜
鶴賀 154900
龍門渕 122000
清澄 121000
風越 2100
~5巡目~
(これで終わりだ!)
「リーチ!」
(くそっ、こっちも聴牌出来たのに鶴賀のリーチが怖いからリーチ掛けられない。どうしよう・・・)
(一発ならずか・・・)
(うわっ!それ、あたしの当たり牌だし!でも役が無いから和了れないし!)
「ポン。」
(清澄!?残り1枚、宮永、去年みたいにまたカンしてくれ!)
(宮永咲、まさかあんた・・・)
「カン!」
(あっ・・・)
「ろ、ロン!チャンカンドラ8、24000!」
「はい。」
『チャンカンだー。今年もこの決勝卓でチャンカンが飛び出した!』
(おいおい、あんた3位だろ?確かにウチに飛ばされたらその時点で敗北確定だけど、親倍を差し込みするほど余裕は無いはずだろ?それとも、もしかして差し込みしても1位抜け出来るくらいのヤバいのを隠し持ってたりすんのか?)
~清澄高校控え室~
「宮永先輩がチャンカンされちゃいましたよ!」
「今のって、わざとなんかいのぉ。」
「いや、もしそんな事が出来たとしても、あの点差を考えたら風越を気にしてなんていれないじゃないですか。」
「うーん、宮永先輩はたまに何を考えてるのか分からなくなりますからね。もしかしたら何か意図があるのかもしれないですね。」
「ま、咲ちゃんなら最後に大逆転とかしてくれそうだじぇ。」
「確かに、咲ならなんかしてくれそうじゃな。」
「頑張って下さい!咲さん。」
~東二局一本場~ 親:池田華菜
鶴賀 153900
龍門渕 122000
清澄 97000
風越 27100
~6巡目~
「ツモ。500・800です。」
(宮永咲、遂に動くのか!?)
(宮永、去年みたいな安手和了り、これってもしかして氷華みたいに後に大きい和了りをストックしてたりするのか?)
~風越女子控え室~
「宮永咲さんの安手和了り。去年の県予選決勝でもしてましたね。」
「うん、あれって冬室さんの和了り方と何となく似てるよね。」
「まぁ、確かに似てますが、私はチャージしてる感じですけど、あの人は何て言うか、調整をしているように感じるんですよね。」
「調整?」
「乱数調整とか言うじゃないですか。安手を和了って、最後に逆転出来るように調整してるように見受けられるんですよね。」
「そうかな?私はよく分からないな。」
「まぁ、私の思い違いかもしれませんが。」
「とにかく華菜ちゃんには頑張って欲しいよね。」
「そうですね。」
~東三局~ 親:宮永咲
鶴賀 153400
龍門渕 121500
清澄 98800
風越 26300
(咲、今年は何をしてくる気だ?)
(宮永咲の親番、気を付けないと一気にやられる。ここはスピードモードで行くか!)
「ポン。」
(鶴賀、副露する事は少なかったはずだが・・・)
「ツモ!タンヤオ三暗刻対々で2000・4000!」
(はやっ、まだ3巡目だぞ?鶴賀と天江衣の勢いが止まらない。あたしはさっきから聴牌もままならないのに・・・)
(鶴賀の人、速いし打点も高いからどんどん点差を広げられちゃう。)
~東四局~ 親:汐見真紀
鶴賀 161400
龍門渕 119500
清澄 94800
風越 24300
(鶴賀の親番、という事は来るのか、ダブリーが・・・)
「・・・」
(えっ、ダブリーしてこない?)
(どういうつもりだ?)
(ははっ、皆さんダブリーしない事に驚いてるね。確かにこの配牌ならリーチを掛けられるけど、点差もそこそこあるからスピードモードで行きたいんだよ。)
(リーチをしてこないのならば、こちらも攻めるか。)
~3巡目~
「リーチ!」
(天江衣が3巡目にリーチ?鶴賀を警戒してるのか?)
(海底コースだから最後までリーチ掛けないと思ってたけど、ウチの事気にしてくれてるのかな?嬉しいね~。)
「ツモ。メンタンピン一発ツモ三色ドラ2。4000・8000!」
(うっわー、倍満とか、魅せてくるね~。流石天江衣だな。けど、スピードモードのウチでも追い付けないのか・・・ちょっとショックだな。)
~南一局~ 親:天江衣
鶴賀 153400
龍門渕 135500
清澄 90800
風越 20300
(ヤバい、もう南場だって言うのに1位との点差が13万以上もある。次の親番で連荘し続けないともう勝てない。ここで和了っておかないと!)
~6巡目~
(うぅっ、ツモった・・・リーチ掛けてれば跳満だったけど、ダマだったから満貫だ。まぁ、次の親番で和了り続ければいいか。)
「ツモ。2000・4000。」
(おっ、悪あがきかな?)
(衣の最後の親番が・・・)
(このままだと鶴賀か龍門渕が1位で終わっちゃうよ。もう、あれを使っちゃうしか無いのかな・・・あれ、やっちゃうと皆が私の事を恐れて近寄らなくなっちゃうからあんまりしたくないんだよね。まぁ、仕方無いよね。)
ゾゾゾッ
(なっ、なんだ、今の・・・宮永咲か?もしかしてここから逆転出来る何かを隠し持ってたりすんのか?)
(咲、何をしてくる?)
~南二局~ 親:池田華菜
鶴賀 151400
龍門渕 131500
清澄 88800
風越 28300
~3巡目~
「カン。」
(嶺上開花か!?・・・ってあれ?嶺上開花じゃないのか。おっ、ドラとカンドラがどっちも7ピンだ。これ切れば結構高い手を和了れそうだな。よしっ、いけっ!)
「カン。」
(うわっ、ドラカン!?しかもドラ8!?)
「ツモ。嶺上開花、清一ドラ8。32000。」
(うわっ、清一ドラ8で数え役満とか、チートかよ。)
~南三局~ 親:宮永咲
龍門渕 131500
清澄 120800
鶴賀 119400
風越 28300
~2巡目~
「リーチ。」
(くそっ、スピードモードなのに間に合わねぇ!)
「カン。」
(ドラカン!?うわっ、しかもカンドラもカンした2索に乗った。このままツモられたら親の三倍満じゃねぇか。)
「ツモ。」
(くそっ、三倍満か・・・)
咲が裏ドラをめくると、両方とも表ドラと同じ牌が出てきた。
(おいおい、これってもしかして・・・)
「リーヅモ嶺上開花、ドラ16。16000オール。」
(はぁぁぁぁぁぁ?????ドラ16!?ふざけてんのか!?)
(咲、これがお前の真の実力なのか・・・?)
(もう、ダメだ・・・)
~南三局一本場~ 親:宮永咲
清澄 168800
龍門渕 115500
鶴賀 103400
風越 12300
(2連続役満で1位とか、チート過ぎでしょ、妹尾先輩かっての!これ以上の連荘はさせない!絶対に!)
~7巡目~
(よしっ、国士無双聴牌。これを宮永に直撃させればまだチャンスはあるし!それに1ピンは生牌だから宮永がアンカンしてくれるかもしれないし、ここは確実に和了る!)
(うわっ、風越の捨てたやつ、ウチの和了り牌だ。でもこれ和了していいのか?一応跳満だから飛ばないけど・・・まぁ、でも次の局でどうせ終わるし、宮永咲に連荘されて負けるよりここで和了っといた方がいいよな!)
「ごめんなさい、それロンです。タンピン三色ドラ2で12300です。」
(なっ・・・終わった。また、またこの点数だよ。県予選決勝はこの数字を見なきゃいけないって決まりでもあんのか・・・?)
~風越女子控え室~
「華菜ちゃん、0点ぴったりだね・・・」
「風越の敗退が確定しましたね。」
「でも、華菜ちゃんならまだ諦めないかもしれないよね。」
「いや、100%あり得ないですね。仮に次の汐見真紀の親番で汐見真紀と池田先輩が流局し続けたとしましょう。龍門渕が115500ですから最高で77回流局可能です。しかし、もし77回流局して鶴賀に役満を直撃したとしても、鶴賀が176500で風越が170600になって、5900点足りないです。今の12300が無かったら可能性は0では無かったですね。まぁ、この面子だと流局なんて一回すらさせて貰えないでしょうけどね。」
~南四局~ 親:汐見真紀
清澄 168800
鶴賀 115700
龍門渕 115500
風越 0
(流石に天和は来てくれないか、いいけど。よしっ、風越以外に直撃して1位になるぞ!)
(・・・)
ゾクゾクゾクゾク
(なっ、なんだ今の悪寒は!?あっ・・・ダブリーし損ねた。)
咲が1巡目の牌を引いた。そして4枚の牌を倒した。
「カン。」
(またドラカン!?しかもまたカンドラも乗った。)
(嘘だろ・・・)
「リーチ。」
(おいおい、これ、もしかして・・・)
(咲から強大な気配はするが、何を出せば良いのか皆目検討も付かぬ。・・・これか?)
「ロン。」
(なっ・・・)
咲が裏ドラをめくるとまたもや表ドラと同じ牌が表れた。
「リーチ一発、ドラ16。32000。」
(なっ!?)
(うわっ・・・)
(嘘だろ!?)
『たっ、大将戦決着!清澄高校が一気に逆転して優勝を手にしました!』
『宮永咲、まさかあんな物まで持っていたとはな・・・』
(宮永咲、お前は手牌だけでなく、ドラ表示牌まで4枚集めるのか・・・?)
~団体戦決勝結果~
清澄 200800
鶴賀 115700
龍門渕 84500
風越 0
咲が立ち上がって真紀の方を向いた。
「汐見さん。」
(なんだ?自慢でもしてくる気か?)
「真紀で良いですよ。」
「じゃあ真紀ちゃん、私、ちゃんと本気、出したよ!」
咲が笑顔でそう言った。
(あー、あの言葉か・・・もしウチがあんな事言ってなかったら勝ってたのか?いや、無いか。)
「ははっ、ウチの完敗です。ありがとうございました。」
「私も前半戦の時は真紀ちゃんに勝てる気がしなかったよ。」
「慰めのつもりですか?大丈夫ですよ。」
「いや、本心だよ。お姉ちゃんみたいで、怖かった。」
(お姉ちゃん?この人が怯えるほどの人・・・宮永・・・はっ!?宮永照!?)
「あの、もしかして宮永さんのお姉さんって、宮永照さんですか?」
「うん、そうだよ。」
(マジか、道理でこんなに強い訳だよ。まさかあの宮永照の妹だったとは・・・)
「ははっ、やっぱりウチの完敗です。」
突然衣が立ち上がった。
「個人戦、個人戦では負けない!咲!個人戦ではお前を倒す!」
「うん!私も負けないよ。」
「ついでに鶴賀の汐見真紀!お前も倒す!」
「ははっ、ついでにですか。ま、ウチも負けませんよ!」
四人で話していると、清澄の部員達が対局室に入ってきた。
「咲さん!」
「咲ちゃんやったじぇ!」
「宮永先輩凄すぎです!」
「ありがとう皆。」
「途中まで危なっかしかったけど、まさかあんなんを用意しとるとはな。」
「あはは、ご心配をお掛けしてすみません。」
「それより、表彰式とかあるから準備しないといけないんじゃ?」
「おぉ、ほうじゃったな。ほれ、移動するぞ。」
「はい!」
咲達は表彰式で、優勝トロフィーの授与をされた。こうして、団体県予選決勝は清澄高校の優勝で幕を閉じた。
汐見真紀の能力まとめ
・『攻撃モード』・・・ドラなどを捨てる事で、それまでの手よりも更に高い手を作る事が出来る。
・『スピードモード』・・・ドラを捨てる事で、速く和了る事が出来る。
・『防御モード』・・・わざと向聴を下げたりして、絶対に和了出来ないが絶対に振り込まない。
・親番での配牌で聴牌(稀に天和を和了する)
汐見真紀はざっくり言うと「なんかよく分かんないけど強い」キャラです。