咲-Saki-もし1年後に夢乃マホが飛び級して清澄高校に入学したら 作:神奈木直人
『ここからは夢乃マホの独壇場っすよ!』
夏の全国高校生麻雀大会、通称インターハイの団体決勝戦。その試合での快挙は国民を魅了した。清澄高校、それが初出場にして、大会二連覇だった白糸台高校の連勝記録を止めた高校の名である。その快挙に魅了された人の中で特別な心持ちをしていた少女がいた。その少女の名前は夢乃マホ、高遠原中学校の二年生だ。高遠原中学校というのは清澄高校一年生の原村和と片岡優希の二人が通っていた中学校で、その二人はマホの尊敬する先輩だった。その憧れの先輩が優勝した事である気持ちが抑えられずにいた。
「マホも和先輩や片岡先輩みたいになりたいです。いや、それより、先輩達とまた団体戦で一緒に戦いたいです!」
マホのこの気持ちはどんどん大きく膨らんでいった。
それから1年後、清澄高校麻雀部のメンバーは、いつも通り麻雀をしていた。すると、一人の部員が話し始めた。
「今年はどれくらい部員集まると思う?」
彼女は昨年のインターハイで大将を勤めた清澄高校二年宮永咲だ。
「インターハイで優勝したからきっと20人くらい来るかもしれないじぇ!」
咲の下家に座っているテンションが高めなこの少女は、去年先鋒を勤めた片岡優希だ。
「逆に活躍し過ぎたせいでウチらを怖がって来んかも知れんのぉ。」
咲の対面に座っていた広島弁の少女は、団体戦次峰で清澄高校麻雀部の新部長にして唯一の3年である染谷まこだ。
「大丈夫です。たとえ誰も来なかったとしても、ムロさんがいます。ムロさんが入れば5人になるので団体戦は出れます。」
咲の上家に座っているのは、団体戦副将で全国中学生麻雀大会、通称インターミドルで優勝した原村和だ。
「ムロちゃんと言えばムロちゃんと一緒にいたマホちゃん、凄かったよね。」
「ありゃぁ育てりゃもの凄い打ち手になるかもしれんのぉ。」
「マホちゃんがですか?確かにたまに大きい和了り方はあるかもしれませんがそんなに凄いでしょうか?」
「マホちゃんは永遠の初心者だからな、いつもハラハラだったじぇ。」
「すみません、ここって麻雀部の部室ですよね?」
部室に入ってきたのは先ほどまで話していたムロこと室橋裕子だ。
「噂をすれば影ですね。ムロさん。」
「和先輩!それに優希先輩!お久しぶりです。」
「ムロちゃんインターハイぶりだじぇ。」
再会を懐かしんでいると、もう一人生徒が入ってきた。
「来ちゃいました~。」
やって来たのは、ムロマホコンビのマホこと夢乃マホだった。
「えっ!?マホちゃん?どうしてここにいるんだじぇ!?」
「マホちゃんは今年中3のはずじゃないですか。」
優希と和が驚いているのもそのはず、今部室のドアの前に立っているのは現在中学3年のはずのマホが清澄高校の制服を着ているからである。すると、ムロが少し呆れたような顔でマホの現状を話し出した。
「マホは本当は高遠原中学3年のはずだったんですが、去年のインターハイを見て先輩方に感動して、先輩方と一緒に団体戦を戦いたいって思ったらしいんです。そして、その気持ちがどんどん大きくなって『二年も待ってられない!』なんて言い出しまして、死ぬ気で勉強して飛び級で高校に入ったらしいです。」
「凄い・・・」
「なっ!?」
「マホちゃん、私達が中学生だった時成績良くなかったような気がするじょ。それなのに飛び級なんて・・・」
「大した精神力じゃのぉ。」
全員が驚きを隠せない様子だった。
「そういう事ですので、これからよろしくです~。」
かくして夢乃マホは清澄高校麻雀部に入部した。
第1話書いてみて『1年後にしたから他の高校の3年のメンバーもいないじゃん!』ということに今更ながら気付きました。嶺上でツモれる気がしてカンしたらツモならずで完全に役無しになってしまった時くらいの絶望感。続編はどんどん書きたいのですが以上の理由で遅れるかもです。