カンピオーネ -魔王というより子悪魔-   作:雨後の筍

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UAが三日で1000を超えるとは嬉しい限り…
愛想を尽かされないように頑張っていきたいと思います
プロローグはこれで終わり
というより次からオリジナル編ですけどそれのプロローグも兼ねてるかもです
それではどうぞ




さようなら日常、こんにちは非日常‐3

 そこまで夢に見て……眼が覚めた。

 

 あとちょっと……あとちょっとで一番いいところだったというのに。

 と、そこまで考えてその考えを否定する。

 決して私は戦闘狂なんかではないのだ。

 だから夢があんな中途半端なところで切れたとしても、全く気にしてなんかいないのだ。

 そう、私は一般ぴーぽーであり、物騒なことが嫌いなか弱い乙女なのである。

 ……自分で言ってて虚しくなってきた。

 ああ、二度寝すれば夢の続きを見れるかもしれないなぁ。

 しかし悲しいかな。彼女に矯正されてしまった体は完全なる覚醒へと向かおうとしている……

 寝起きの徒然なる思考もここまでにしておかないと。

 

 まだ早朝といっていい神社には朝靄が立ちこめ、小鳥が囀りまわっている。

 まだまだ温かみを残す布団に篭りたいと切に願うが、そういうわけにもいくまい。

 きっともう少ししたらここの家主の娘さんが私を起こしに来るはずだから。

 毎度毎度思うのだが、神社の朝とはなぜこんなにも早く始まるものなのだろう?

 学校が始まるまで今からまだ3時間以上もあるというのに。

 まぁ今日は休日だから関係ないけど。

 あれ……?休日ですらこの時間に起きる私って……深く考えないようにしよう。

 布団を片付け、縁側へと出る。

 まだ秋だというのに風は冷たく、寝巻きの襦袢姿の今の体には悪いかもしれない。

 まぁこんな身になってから、風邪の類に引っかかったことなんて一度たりとてないのも事実なのだが。

 

 縁側に腰掛けてぬぼーっと庭を眺める。

 私が居候している七雄神社はなかなかに大きな神社で、一般に開放されていない母屋なんかの方でも、一般的な家屋よりも相当立派な造築をしているのである。

 住んでいるのが旧家の方々というのもあるのだろうが。

 そんなわけでここのにわにはにわにわとりがいるわけではなく、庭師さんがいるわけなのだが、これがまたいい腕をしている。

 なんせ毎朝眺めているというのに全く飽きがこないというのだから恐れ入る。

 日本の原風景なるものは心を豊かにしてくれるから大好きだ。

 ちょっと思い立って平日なのに温泉街まで出かける程度には。

 ……どうやらまだ夢に影響されているらしい。

 そろそろ隠さないと彼女にばれてしまう。

 彼女はとびっきり勘が鋭い、当代切っての才媛、媛巫女の中でも特に霊視に優れる御仁なのだから。

 

 そこまで考えた私はいそいそと部屋に戻り、さっさか寝巻きを脱ぎ捨て、巫女服に袖を通す。

 何年も続けていると、巫女服もコスプレではなくきちんとした正装だと思えてくるのだから不思議だ。

 いや経験にあるのかもしれないけど、それは今思い出さなくていいことだ。

 思い出しても結果は変わらないし、思い出すだけ野暮ってもの。

 平々凡々たる私には必要ない情報なのだから。

 次にこの鍍金が剥がれるのはいつになることやら……考えたくもない。

 今朝の夢が予兆に思えてならない。

 実際、夢と並べて無意識のうちに回想なんかやらかしちゃってたことが今頃頭に浮かび上がる。

 この権能のコントロールだけはなかなかうまくいかない。

 私は眠ることは大の好物だから、かなりの速度で掌握できるはずと確信を持っていたのだが……

 最近は、もしかすると掌握は終わっていて、把握していないだけでこれも権能の一部なのではないかと思い始めていたりもする。

 私の直感を考えるとこっちのほうが真実味を帯びているわけだけど。

 どっちにしろ不安材料であることは否めない。

 今までこの権能が勝手に発動したときにいい目を見たことがない。

 全くと言っていいほど、とか頭についてくれればまだ安心できるのに。

 いや、一回だけあったか。彼女とであったときも、前日に夢を見たはずだ。

 ……『まつろわぬ神』に出会うたびに見ているのだからあながち間違ってはいないのか。

 

『まつろわぬ神々』っては基本的に馬鹿だ。

 あの馬鹿どもは、智慧の神やらなにやら名乗っていようとも、基本的に戦闘狂か色魔かはたまた誰もを困らす悪戯者かなのだ。

 傍迷惑以外の何者でもない。

 その点、()はまだましな方ではあったが、それでも最後には試練からの戦闘だ。

 例え絶対に勝てない戦いではなくなるようにしてくれたとしても、『まつろわぬ神々』なんてのはあれよりましになるとは思えない。

 それを言ったら『まつろわす神』たる我らが『お義母様』も相当ぶっ飛んでやがりますが、そこに触れると結局、神様なんて糞食らえって結論に落ち着いてしまうのはいかがなものか。

 神様って人に祭られるべくものじゃなかったかしらと、ふと疑問に思うのはいつものこと。

 まぁ彼らを揶揄して色魔とは言ったものの、それに並ぶレベルの色情魔である私が言えた義理ではないのだが。

 それについては美しすぎる女神たちがいけないのだし、イケメンすぎる男神たちがいけないのだ。

 私は悪くない。決して他のカンピオーネ同様ぶっ飛んでやがりますね、とかそんなことはありえないのだ。

 恋に恋する乙女たる私は、誰に悟られることもなく、どちらかが死を迎える悲劇の輪舞曲を出会うたびに繰り返すのです。

 ああ、なんて可哀想な私。

 ……そろそろ一人くらい女神様が振り返ってくれてもいいのになぁ。

 

 さて、そんなこんなで茶番を繰り広げていれば、気づけば巫女服をきっちり着こなし終わっていた。

 ここに来てやっと違和感に気づく。

 彼女が来ないのだ。

 まさか、彼女ともあろうものが寝坊……?

 これは、チャンスだ。

 寝坊は私の専売特許だと思っていたが、彼女がしてしまったなら仕方がない。

 精々、()()()()起こしてあげることにしよう。

 顔を邪悪に歪ませ、目的地に向けて廊下をスキップしながら進めば、そこには今まさに部屋に入らんとす妹様のお姿が。

 彼女個人に思うところはないし、とても可愛がってはいるが、それとこれとは話が別だ。

 風の如き速度で妹様に近づき、脇に手を通し高い高いをする。

 

「ほーらたかいたかーい」

「きゃあ、なにするの燐お姉ちゃん!」

「いやー、なに、祐理は私が起こそうかと思ってね。見せ場を奪われそうになったので高い高い攻撃をだなー」

「そんな理由で気配を消して近づいてこないでよ! 心臓止まるかと思うくらいびっくりしたんだから!」

「ははは、愛いやつめー。……今度お姉ちゃんがいいこと教えてあげるからここは譲ってほしいかなーなんて、どうかな?」

「本当! それならいいよ! お姉ちゃんを起こすの譲ってあげる! でも気配消して近づくのだけはやめてね!」

「ふふふ、契約成立! でも気配は自分で探れるようになってくれたまえ。さて……どんな風に起こして差し上げようか、ふふふふふ」

 

 ここに在るは、

 天真爛漫に笑みを浮かべる妹様もとい万里谷ひかり、そして邪悪極まりない笑みを浮かべる私こと乾燐音。

 

「それで燐音、いつまでそのだらしない笑みを浮かべているつもりですか?」

 

「げぇっ!?」

「うわっ! お姉ちゃん!」

 

 そして、私が起こそうと思っていた我らが麗しの彼女、万里谷祐理である。

 決して夜叉女なんて名前のお方ではなかったはずなのだが……

 なぜ誰もが振り返るような微笑をその美貌に浮かべていながら、カンピオーネたるわが身すらも圧倒するオーラを放つことができるのか、つくづく疑問に思う。

 

「ははははは、なに、珍しく私の方が先に起きたからね、起こしてあげようかなーと」

「とりあえず、その言葉に何の後ろめたい感情もお持ちでないなら、こちらを向いてから話しをしましょうね」

「ふふふ……さらばだっ!」

 

 私は風になった!

 

「あっ、お待ちなさい! 貴女のそのふしだらなところを今日こそ矯正してみせるのですから! 顔を洗って待っていて下さいよ!」

「ふははははー、捕まえられるものなら捕まえてみせろー」

「燐お姉ちゃん! 約束守ってね!」

「貴女もですよひかり! またそんな約束をして! そんな不潔な知識ばかり手に入れて何をしようというのですか!」

「何って…ナニ?」

「な、なな、そこに直りなさいひかり! 今日こそは貴女も燐音もそんなふしだらなことを考えられないようにして差し上げます! 大体ですねぇ………」

「きゃー燐お姉ちゃん助けてー」

「はっはっは、平和だなー」

 

 これが私の日常。

 たまに変なのがまつろってくだけの平々凡々たる私の日々。

 これから語るはそんな私と彼女たちの、世界の命運すらかけた平々凡々たる闘争の記録。

 

 

 

「燐音! 捕まえましたよ! そもそも貴女という人は………」

「ぎゃーひかり助けてー」

 

 その後、捕まった私に対する彼女のお説教は、3時間にも及んだのでした……

 

 




いかがだったでしょうか?

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