というわけで書き上げてみました
内容は原作と同じクリスマスパーティーです
作者は東進に幽閉されていたためあまりクリスマスという気分ではありません!
なので、みなさんだけでもクリスマス気分を味わっていってください
それでは本編をどうぞ
……チョコケーキうまい
めりくりっ!
クリスマス。
神の子イエス・キリストの誕生日と伝えられる聖なる日。
ヨーロッパなんかでは家族全員が揃って暖かく過ごす日だそうだ。
ところ変わって日本では、クリスマスは性なる日と……え? そういうことじゃないの?
おほん、日本では何をどう罷り間違ったのか大切な人と一夜を……え? これも違う?
仕方ないなぁ、日本では企業の策略によりクリスマス関連グッズが大売りされ、アーケードをイルミネーションが彩り、街角ではバイトのサンタがフライドチキンを売っている。
独り身の男は仕事を入れるし、受験生は塾へと冬期講習だ。
なぜここまで日本中にこの風習が蔓延っているのかは甚だ疑問だが、本来の家族団欒を喜ぶ日というモノから些か以上に離れすぎていると愚考する。
バレンタインデーしかりハロウィンしかり、日本人はなにを考えてそこまで企業戦略に全力で乗っかっていくのだろうか?
金になりやすいようにデフォルメを加えられた結果、全く原型を留めていない行事をよく楽しめるものだと思う。
まぁ、サンタさんは私に毎年プレゼントをくれるから大好きだけど。
え? サンタさんは実在するよ? 何を言ってるんだか……この世界に神様がいるのと同じくらい当たり前なことだよね。
これは私たちがまだ比較的平和にしていた頃のクリスマスのお話。
何の変哲もない日常がどれだけ貴重か、分かっていたはずなのに、私はまだ解っていなかった。
そんな私たちのちょっとした聖夜のお話。
◆◆◆◆◆
クリスマスイブ当日。
先日のサトゥルヌスの大騒ぎみたいな予想外のイベントもあったけど、無事今日を迎えることができた。
今日は護堂君家でみんなが集まってクリスマスパーティーだ。
そういえば何をトチ狂ったのか、パーティーにトトが来ようとしてまたイタリアで騒ぎを起こしたらしい。
いい加減自分の立場というものを自覚して欲しいものだ。
私が口に出すと祐理から、貴女もです、とでも言われそうだからあまり大きな声では言えないのだけれど。
ちなみに、今護堂君はひかりと一緒にクリスマスケーキを受け取りに行っている。
本当はエリカと恵那も着いていきたいと言っていたところを、折角だからと二人デートを敢行したのだ。
エリカと恵那は悔しそうにしていたものの、きちんとその辺割り切っているのか、素直に引き下がったのが印象的だった。
それでも、今夜はみんなでそのまま徹夜する予定だから大丈夫だとは思うけれど、明日の夜の護堂君が心配だ。干からびないといいんだけど。
そのエリカは他の魔術関連の集まりに顔を出しに行った。本当は私もそういう所に行ったほうがいいのだけれど、面倒だから全て甘粕に丸投げしておいた。
別に私が行かなくても、甘粕レベルが行けばメンツは充分立つのだ。
そんなわけで私は静花ちゃんと、その再従姉妹のさくらちゃんにその友達の冬姫ちゃんと草薙家の居間でのんびりさせてもらっている。
冬姫ちゃんは私より年上でその上連城の跡取りらしいけど、全くそうは見えない。
私の存在も比較的詐欺みたいなものだけど、冬姫ちゃんの方がそう思える。私の場合これはカンピオーネになった副作用だしね。
人体の神秘というやつだ。漫画やラノベの中には結構いるけど、現実で見ることになるとは思ってなかったもんね。
祐理はアテナとわらしを連れてお買い物だ。
いつでも私の隣にいるというわけではない。
なんでも、予定していたよりも参加人数が多くなってしまったせいで、材料が足りなくなってしまったらしい。
クリスマスのご馳走だ。それはそれは豪勢なラインナップとなるのだろう。
今からもう楽しみで仕方がない。
実は私も厨房に入ってお手伝いしようかと思っていたのだけれど、あそこには修羅がいた。
確かに普段から料理には本気を出す娘だったけど、今日は一段とやる気のようだ。
おかげで私は厨房への立ち入りを禁じられてしまった。
鷹化君とか恵那はなんとか許可を得ることができたみたいだけど、そのレベルの料理人じゃないと今日は料理を作ることができないらしい。
逆にそのレベルの料理人しかいないということは、今日のご馳走はそれはそれは美味しいということの裏返しなわけだけど。
「邪魔するわよー。今日パーティーなんでしょ? これ差し入れね」
知らない女の娘だ。
その勝手知ったる気安い態度から、草薙家と家族ぐるみの付き合いをしている幼馴染かと推測してみるがいかがだろうか。
「明日香ちゃん、よかった! ちょうど助っ人が欲しいところだったの!」
静花ちゃんが玄関まで寿司桶を受け取りに行く。
ツインテールの彼女は明日香ちゃんというらしい。
まぁこれから縁があることもまずないとは思うのだけれども。
”こっち側”に関わっていないと、護堂くんとは出会う機会があったとしても私と出会う機会はないからね。
彼女本人も他の女子会に行くみたいだし、もう出会うことはないだろうね。
それにしても護堂君ってば幼馴染にもあんな美少女侍らせて……彼は少し、女たらしという単語の代名詞として相応しすぎないかな?
静花ちゃんも日々大変そうだし、少しくらい自重してあげればいいのに。
「申し訳ありません。失礼いたします」
静花ちゃんと明日香ちゃんが姦しくおしゃべりしている横を、礼儀正しくアンナさんが通ってくる。
今日もいつもと変わらずエプロンドレスのメイド服だ。
彼女はその格好で日本の路上を歩くことの奇特さについて考えたことはあるのだろうかといつもながら思う。
いや確かに魔術師の方々は普段からローブやらバンディエラやら身につけてますけどね?
日本の呪術師の方々も普段から和服大好きだったりしますけどね?
本当になんでこっち側の人間はその辺の配慮にかけている人が多いのか、理解に苦しむよ。
「静花ちゃん、前言撤回っ。カラオケは適当なところで切り上げて、あたしもこっちに合流する。それまで一人で頑張って、あいつに我が世の春を謳歌させないようにして!」
はーい、1名様追加でーす。
アンナさんが来たことに触発されたらしい。彼女もやっぱり護堂君に惚れてるんだろうなー。
こうやって護堂君の周りに女の娘たちが増えていくんですね、わかります。
まぁ今の宣言を聞けば本人はこう思うのだろうね。
俺、別に春を謳歌してる気は全然しないけどなあ……と。むしろ面倒とか気苦労とかが多い毎日じゃないかなあ……とも。
ところで、もしかして私も護堂君の周りの女の娘にカウントされてるのかな? あれ?
◆◆◆◆◆
そして陽は沈み、聖なる夜の始まりが近づいてきた。
ケーキを取りに行くという名目の護堂君たちのデートも先ほど終わったようで、二人仲良く手をつないで帰ってきた。
祐理たちもしばらく前に帰ってきたし、甘粕も気づいたら居間の端っこに佇んでいた。
あいつも精進しているようで全く気づけなかった。決して影が薄すぎるせいではないはず。
そういえばフライドチキンを持参してきていたけれど、あれはどこで手に入れたものなのだろうか? 自作する時間は今日はなかったはずなのだが……。
と、考えている間に最後の一人もやってきて、今まさに主役のごとく飲み物片手に立ち上がったところだ。
みんなも手に手に飲み物を持ち、始まらんとする宴を待ちきれない様子だ。
「パーティーの前に挨拶はつきものだけど、長く話すほど無粋になる不思議なものでもあるわ。だから簡潔に。今夜は楽しむことにしましょう」
「と、いうわけでみんな乾杯!」
『乾杯!』
別に部屋を飾り付けたりはしないささやかな集まりではあるけれど、人数が人数だからか大層なものになってしまった。
メンツが魔術関係の有名人ばかりというのもあるのだろうが。
親しい人間が集まって飲み、食べ、おしゃべりする。ただそれだけのパーティーがどうしてこうも大袈裟なものになってしまうのか。
私がいけないのか護堂君がいけないのか、それともそんなことどうでもいいのか。
ただ、みんなが笑顔ならやっぱりどうでもいいのかなと思う。
乾杯の音頭を奪い取った私はエリカに白い目で見られたけれど、そんな細かいことこの宴の前では気にするのもバカバカしい。
エリカも納得したのか早速護堂君に絡みに行っていた。その顔にはきちんと笑顔が浮かんでいたし、問題ないだろう。
誰もがここ1年の間に出会った人間ばかり。
そう、この1年いろいろなことがあった。
大体が護堂君に巻き込まれてばかりだったけど、私だけが巻き込まれたこともあった。
カンピオーネであることを隠して、祐理と慎ましくしていたあの頃が懐かしい。
「誰が慎ましくしていましたか。貴女は昔からはちゃめちゃでした!」
「あれー、思い切り心が読まれた気がするー。なぜバレたし」
「燐音の考えてることなんてすぐにわかります。顔に出やすいんですから」
そんなことを考えていたら祐理に突っ込まれてしまった。
本来なら突っ込まれるんだろうなぁ、と考えるところまでで1セットなんだけどなぁ。
「今年はお疲れ様でした。あ、燐音さん。来年こそ、例の旅行どうですか? 僕たち2人が組めば、旅先で色々楽しい目に遭えると思うんですよ!」
途中参加した馨さんからは全国ナンパの旅のお誘いを囁かれたりもしたけれど、今の私はなかなか旅に出るわけにもいかないのだ。
祐理やアテナたちをあまり悲しませるわけにはいかないからね。
そう言ったら納得してくれてよかった。
代わりに護堂君と甘粕に声をかけに行っていたけれど、あの2人も行かないだろうなぁ。
というか甘粕が行くとか言いだしたら仕事を倍にしてやる。
さっきも私に無視されて喜んでたみたいだし、いつの間にか調教が完了していたようだ。楽しみにしていた旅行を仕事に潰されるとか甘粕好みの展開だろう。
……最近本格的に貞操の危機を感じる。私が貞操云々言うのも間違っていると思うし、別に甘粕が望むのならやぶさかではないけれど。
甘粕自身のことは私も結構気に入ってるから別に構わないのだ。
ただ……あの乱れた息ではぁはぁと近づかれると、流石に危機感が先に立つのだ。
本当にどこで間違ってしまったんだろうなぁ。
さて、なぜクリスマスにまでこんなことを考えなければならないのだろうか。明後日の方向に投げ捨てておこう。
盛り上がりに盛り上がった宴もたけなわな草薙家。
今は飲み物が少なくなってきたからと、それを買いに護堂君たち3人が出て行ったあとだ。
つまり、監視の目がないということでもある。
パーティー開始前に護堂君によって封印の憂き目にあったジュースたちを解禁する時だ!
祐理に静花ちゃんがいるけれど、話を聞く感じ静花ちゃんの方はどちらかというとウワバミらしい。
彼女自身も酒好きらしく、別に反対はされないだろう。
アテナなんかは存在に気づいてはいても、封をされたことをひどく悲しんでいた。
腐っても神様だからねぇ、可哀想だから大盤振る舞いしてあげよう。
ちなみに、わらしは護堂君が消えた瞬間から脇に日本酒の一升瓶を抱え込んでいる。
ちびちびといつもどおりの無表情で、甘粕相手に酌をしてやっていたりもする。
あの娘は……ああ、下戸だからわらしに一発で潰されたらしい。うまいのかなぁ、あの『魔王』という日本酒は。
「全く……燐音と来たらいつもいつも心配ばかりかけて……その上目を離したかと思ったらすぐに新しい娘を連れてくるんですから。護堂さんのことばかり言えませんよ? 反省してくださいね? そもそも貴女はですねぇ…………」
「ちょ、祐理、それ私が入れたシャンパンだから! シャンメリーじゃないから!」
「聞いているのですか!? 確かに貴女が私のもとに帰ってきてくれることは分かっているんですよ? それでも心配になる私のことも考えてもらいたいというか……なぜ貴女はそうも騒動にばかり愛されているのですか……大体ですねぇ…………」
ちなみに祐理は間違ってお酒を口に含んでご覧の有様だ。
別にそこまで弱いわけではなかったはずだが、雰囲気にでも酔ってしまったのだろうか?
まぁ、顔を赤くして説教し続けているけれど、もう少ししたら眠りにつくことだろう。祐理は眠り上戸だから。
って、玄関の方から音がする。護堂君たちが帰ってきたのかな?
この状況にしたのが誰か犯人探しするんだろうなぁ。
「ってこの惨状はなんだよ!? 誰だ! 酒類の蓋を開けやがったのは! 燐音か!?」
ほら、護堂君は最初に私を疑うんだよ? 悪戯しすぎて狼少年だねぇ、涙が出てくるねぇ。
「今回は私じゃないよー。いや、私がきっかけって言えばきっかけだけど、どっちが早かったと聞かれればわらしの方が早かったしー」
「なるほど、つまり燐音が悪いんだな」
「人の話聞いてた!?」
護堂君の疑いは確信へと至ったようだ。悲しいねぇ、泣けてくるねぇ。
「って、おい燐音泣いてるのか!? ちょ、ごめん、強く言いすぎたよ。だから泣き止んでくれないか? な?」
ああ、護堂君ったらこんな時にも紳士的で……ほんとこんな素敵な男性がそばにいたら惚れちゃうのも仕方ないよねぇ。
だから、これはちょっとだけの気の迷い。私はひどくお酒に酔ってしまったようだ。悪酔いしちゃうなんてやだねぇ。
……ホントやだねぇ。
「って、おい、燐音!? なぜこっちにしな垂れかかってくる! ちょ、見てる! みんな見てるって!」
くすくす……慌てちゃって、いつまでたっても護堂君は可愛いなぁ。
「大丈夫、ただの気の迷いだから。明日になったら忘れてるよ」
耳元で囁かれた護堂君は、なんでか知らないけれど顔を赤くしている。
いつもエリカたちにキスされても全く顔を染めない護堂君が珍しい。
祐理も寝息を立てて横に転がっているけれど、仕方ない。私も酔いを覚ますとしよう。少しばかり悪酔いしすぎた。
「……ちょっと外の空気吸ってくるよ。私のことは気にしないでパーティー続けて? まぁ、もう素面な人の方が少ないけどねー」
心配そうな顔をしている護堂君を置いて外に出る。
雪は降っていないけれど、それはそれは綺麗な星空だ。
やっぱり冬の夜空というのは空気も澄んで一層輝いている。
「よいのか?」
……アテナがついてきたようだ。
「別に、本気なわけじゃないしね。私には祐理がいるし、彼にもエリカたちがいる。もとからありえないんだよ」
これは本心。祐理だけじゃない、アテナもわらしも、あの娘もいる。
「それならよいのだがな。だが、燐音。貴女が後悔する選択肢は妾たちも喜ばないぞ?」
「後悔なんて……しないよ。ただ、少しだけ悲しいかな。彼があんなにも魅力的だから、こんなことになるんだ。あとで祐理には謝らないとね」
アテナは私のことをよくわかっている。多分祐理よりも。
祐理を何より優先する私のそばにずっと侍り続けてくれている。それがどれだけありがたいことか私はわかっている。
だから、私は彼女には甘えることができる。本心を曝け出すことができる。
だから……
「それでも、悲しいことには変わりないんだよ。なんで私はこんなにも移り気なんだろうね? 一人を愛し続けられればきっとこんなに悩まなかっただろうに」
私が涙を流しても、彼女は優しく抱きしめてくれる。
それは母のように、女神のように、寄り添う恋人のように。
星座たちが見守る空の下、ただ少女が2人抱き合い立ち尽くしていた。
空に輝く星たちは、街の光に晒されどこか物寂しかった。
いかがだったでしょうか?
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それではそれでは
良いクリスマスを! .。.:*・゚Merry-X'mas:*・゚。:.*
……ちなみに執筆中のBGMは金の聖夜霜雪に朽ちてですた