ハーメルンのめぼしい小説を大体読み終わってしまったので今度は自分で執筆してみようかなぁと……
挫折しないことを祈って
批評はビシバシ厳しめに
しかし誹謗中傷荒らしは受け付けませぬ
感想評価お待ちしております
さようなら日常、こんにちは非日常‐1
夢を見ていた。
目の前には馬鹿みたいに大きな龍がいた。
それを前にして思ったことはなんだったのか……今となってはとんと思い出せないが、きっと恐怖を覚えていたのか、それとも何も考えられず呆けていたかだったのではないだろうか。
懐かしい夢を見たものだと思う。
あのときまでの私は、平凡で退屈で代わり映えのしない日常に飽き飽きしていた。
今になってからあのころの平穏が懐かしいと思うのは皮肉なものだが……
龍はそのギョロギョロとした眼でこちらを観察するかのように見ている。
あのとき、私は逃げることもできた。
例え
でも私は平凡で退屈で代わり映えのしない毎日に嫌気が差していた。
魔が差したのだ。そうとしか思えなかった。
龍の眼の前で尻餅をついていた少女が膝を小鹿のように震わせながらも気丈に立とうとする。
私は立ち向かった。
そう抗ったのだ、あの超常の塊たる『まつろわぬ神』に。
ここで
龍はその大きな口を盛大に開けて大笑いを始めた。
その余波だけで吹き飛ばされそうになるのを必死に少女は耐えていた。
ああ、思い出した。
私は
こんなに非現実的で幻想的で魅力的なことなどこの世に滅多にあるもんじゃない、と。
私は魅せられてしまったのだ。
あの暴力的で、それでいて美しい神気溢れるあの姿に。
龍はその顔を獰猛に引き攣らせ口を開く。
「人の子の身にありながらその気概やよし」
「我が求むるは力の強さではない心の強さよ」
「その点、主は形容し難く魅力的だ」
「その心の輝きには眼を見開くべきものがあった」
「これは闘いぞ、主の心を賭けた闘いぞ」
「いざ尋常に、始めるとしようではないか」
「その気丈な目……準備はよいな」
「往くぞ、我からの試練……見事打ち破って見せよ!」
それらの言霊が少女の
現代社会の映し身たる何の変哲もない画一的なモラトリアムからの逃避を朝起きた途端に頭に浮かべた私は、早速遠出の準備を始めた。
準備といっても用意するものは少ない。
自分の全財産に携帯ゲーム機、そして携帯電話に着替えに非常食、それだけ鞄に投げ入れて私は意気揚々と親に声をかけたのだ。
いってきます、と。
そこには私がいた。そして私がいた。私もいた。
無数の私が私を見ていた。
意気揚々と家を出たのはいいが行き先も考えていなかった私は、とりあえずいつもどおりの電車に乗り、いつもどおりの駅で乗り換え、いつもどおりの降車駅を見送った。
気づけば電車は山々の間を走っていたし、気づけば県を3つも跨いでいた。
新幹線で移動するような距離を各駅のローカル線で移動したことに感動した覚えがある。
私は私を見ている。他の私も私を見ている。
言葉はない。ただ無音で私は蠢いていた。
まだ若いのに泰然自若とした雰囲気を醸し出す青年が、駅前のベンチに座っていたのだ。
そりゃ私だって年頃の女の子、イケメンに心奪われ目線まで奪われてしまっても誰も責めたりはできない筈だ。例え家出の真っ最中だったとしても。
視線を感じたのか、こちらを見た青年の顔は浮世離れして整っていた。
東洋人にここまでのイケメンがいるものなのか、と感心しながら未だ猶そちらを見ていた私に、ふと思い立ったような動作で青年が近づいてきたのはそのときだ。
意を決して私は声を上げた。
「あなた達は誰?」
「ちょっとそこの君いいかい?」
そう声をかけられて私は焦った。
こんなイケメンと話をするなんて私始まって以来の大事だったからだ。
芸能人かなんかじゃないかと思って、野次馬根性で眺めていただけだったのだから、そのときの私の驚きようはひょっとしたら龍がいきなり目の前に現れた時以上だったのかもしれない。
「え、あ、はぃい!?」
あれほどひっくり返った裏声を出したのは今思い出しても黒歴史だ……
あれほどの無様は今の今まで数えても多分4回ほどしかなかったはずだと記憶している。
あれ?結構多い……?
「君さ、この後暇かい? 暇ならちょっと付き合ってほしいんだけど」
唖然とした。私は唖然としたのだ。多分口をだらしなく半開きにして。
まさかこれがいわゆる『なんぱ』というやつなのだろうか、いや待て判断するには早計だ。
詳しく話を聞こうじゃないか。
テンパった思考はそこまでの結論を0,2秒でひねり出した。
「えーっと、わ、私に何か用ですか? しょ、初対面だと思うのですが!」
声が震えていた。いや落ち着くとか無理でしょうに常識的に考えて。
「ああ、確かに初対面だよ。でもね、君の輝きが気になってね。声をかけさせてもらったんだ。一緒に来てくれないかい?」
ま・さ・か、こんな気障な台詞を素面で言い放つ猛者がいるとはっ!?
ちょっとキュンときてしまったのは万人の納得するところだろう。
なにせ優しく微笑みかけてきているのである。イケメンが。私だけに向けて!
「あ、はい、特に用もありませんのであの…そのご、ご一緒させていただきます!」
「嬉しいね。さぁ、早速行こうか。時間は
「はい!」
そこ、チョロいとか言うな!
今となっては私よくやったと言うところだけど
だから気づかなくても仕方がない。
彼の後ろに在った龍の石像の眼が意味ありげに光ってたことなんて。
きっとそれは終わりの始まり。
私の新しい門出を祝い呪うプロローグの象徴だったのだ。
「私? 私は私、私はあなた、あなたは私、さて私は誰かしら?」
いかがだったでしょうか?
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それではそれでは