原作2巻の内容に入ります
今回からはついに祐理回!
今まで影の薄かった彼女の活躍にご期待下さい
それでは本編をどうぞ
雷帝ヴォバン降臨‐1
アテナが私たちの下へとやってきてから一ヶ月が経とうとしている。
あの後、私は祐理に3時間にも及ぶお説教を受け、甘粕からこれ以上苦労を増やさないで欲しいと嘆願を受け、護堂君たちからよくアテナを屈服させたとして頻りに感心された。
エリカ嬢に関してはこちらのことをかなり疑っていたが、彼女に出会う前にアテナの傷は癒してあったので、なんとかごまかしきれた格好だ。
本当に後から思い返してみても綱渡りだった。
なんであんな無茶なことしたんだろうね? アテナに勝てるかも怪しい上に、護堂君たちにもバレるかもしれない、今から同じことをやれと言われても全力で拒否したいな。
まぁ結果的にアテナを手に入れたわけだから大満足ですが。
6月の終わりも近いこの頃、梅雨の季節もそろそろあけて欲しいな、と思うくらいには雨続きの日々に鬱屈した感情を持て余している。
権能を使えばこの程度の雨雲散らせるけど、日本中の天候に影響が出ちゃうんだよねぇ、この時期は。おかげで土砂降りの雨の中、馬鹿みたいに長い階段を毎日登る羽目になっている。
何故うちの神社の階段はここまで大きいのか。わけがわからないよ。
さて、舞台は城楠学院高等部、1年6組。
私こと乾燐音と万里谷祐理、乾アテナの在籍するクラスだ。
アテナは神様だから戸籍なんてもってるわけがない。まぁそのへんは甘粕が一晩でやってくれました。というわけで、今のアテナは私の妹ということに対外的にはなっている。
いわゆる腹違いの妹ってやつですね。あからさまに攻略対象な属性ですなぁ。まぁもう私のものなわけだけど。
さて、そんなこんなで戸籍を手に入れた我が家のアテナちゃんは、私たちが学校にいる間に家で無聊を慰めるのに限界を感じたようだ。
5組にエリカ嬢が転校してくるのに前後すること1週間。彼女も晴れてじょしこーせーになることに成功したのだ。
『まつろわぬ神』が平和に暮らしていることは、まだあることらしい。
しかし、学校にまで通う例は流石に前例がないだろう。
見よ! この偉業! 実際アテナは学校が物珍しいようで、人間の世に溶け込むためにもクラスメイトたちに積極的に話しかけている。
最初の頃は大変だった。彼女は私のものになるとは言ったものの、一般人に関しては今までどおりの対応をしようとしていたからだ。
それを説き伏せるのにどれだけ手間がかかったことか……まさかテレビの存在が、私の説得よりも効力を発揮したということには不満を隠せないが。
テレビを見て、彼女はその面白さに取り付かれてしまったようだ。
こんなに面白いものを生み出す人間も捨てたものじゃないな、と自分を納得させることにしたらしい。
本当ならば一日中テレビを眺めていても良かったらしいが、家に誰もいないというのはさすがにちょっとくるものがあったらしいね。
私としては、夜に見ていた学園ドラマを見たのが直接の原因だと思っているのだが……まぁ細かいことはほっておいていいのだ。
学校に通うことになった彼女だが、フレンドリーであることとその小さなお人形さんのような美貌とが相まって、転校してきてから1ヶ月も経っていないのにクラスの中でマスコットとなりつつある。フレンドリーでありながら尊大な態度を崩そうとしないあたりが萌えらしい。よくわかってるじゃあないか。同士として迎え入れよう。
そして、転校当初、護堂君はそのあまりにも非常識な光景にド胆を抜かれて、しばらく使い物にならなかったが、エリカ嬢の協力も相まって今となっては慣れたもの。
その辺のエピソードは思い出したくもない。あわや、またしても東京が闇に染まるかと思ってしまったではないか。くわばらくわばら。
さて、そんなわけでアテナは今学校に通っているわけだが、お昼の時間にはご飯を一緒に食べる。
つまり昼休みとなった今、彼女はトテトテとこちらに歩いてくる。
お昼のお弁当は私と祐理で持ち回りで3人分作っているけれど、今日は私が当番の日だ。
祐理も誘って屋上でも行こうかと彼女の姿を探せば、その立ち姿の前には、5組のむさい男子どもが土下座しながら大声で何か頼みごとをしている。
ふむ、護堂君がエリカ嬢と毎日いちゃついていることを叱って欲しくて祐理を呼んだのか。
しかしだ、土下座している男子ども、お前らあわよくば祐理のスカートの中を覗こうとしてやがるな? 私と考えてることが同じだからよくわかる。成敗しなければ。
「アテナーちょっと先に屋上にいっててくれる? 私はあのクソ野郎どもに天誅を加えてから行くからー」
「うむ、わかった。私は先に行くことにしよう。シートはあるか?」
「はい、これね。お弁当はこっち。頼んだよー。さて、くたばれあのクソ男子どもめ……」
祐理の後ろから助走をつけて男子どもの中心めがけてドロップキックを咬ます。
その際、スカートの中身が見えないように風を操作するのは乙女の嗜みDEATH!
「貴様ら、祐理に護堂君の放蕩ぶりの説教を頼むのも筋違いならば、況してや祐理のスカートの中身を覗こうなどと……恥を知れ! さぁ、処刑の時間だ!」
――ぎゃぁああああああ
――わぁああああああああ
――うわぁああああああああ
祐理の前で土下座していた男子ども全てに制裁を加えてやった。
ふん、ざまぁみろ。
「燐音、たとえ彼らがふしだらな目的で私に近づいてきたのだとしても、暴力はいけません。謝ってきなさい。私を思っての行動だとは分かっていますから、やりすぎて貴女の評判を落とすようなことがあってはいけません。さ、あんないやらしい人たちには一言言うだけでいいですから」
「祐理も何気にひどいよね。まぁいいや、ちょっとばかしやりすぎちゃった、ごめんね。でも、君たちが祐理に狼藉をしようとしたのがいけないんだからね? 反省してよ? 全く……」
――すいませんでした……
――もう二度としません……
――我々の業界ではご褒美です!
あれ? 何か違うのがいるぞ?
まぁいいか、昼ご飯を食べに行こう。
「祐理、行こう? アテナが先に行って場所とってくれてるからさ」
「いえ、彼らの話によると草薙さんは、クラスでも始終時と場所を考えずエリカさんといちゃつく? 慎みに欠けるような親密さで接していらしているようです。これは少しお説教をしなければなりません。5組の皆さんも涙を流してそれを悲しんでいらっしゃいます。たとえふしだらな目的があったとしても、あの涙は嘘ではないように思われました。草薙さんには少し反省してもらわないと……」
「あ、はい。それなら早めに切り上げて屋上行こうよ。またせちゃうのもアレだから、最悪護堂君も屋上連れてけばいいんだし」
そう言って隣のクラスに向かえば、彼は男子たちに取り囲まれていた。
私たちの姿が見えるとともに、モーセの十戒のごとく左右に分かれるその動作の洗練されたこと……あれがモテない男子たちの連帯感というやつか。あのレベルのものはなかなかお目にかかれないが、きっと護堂君がいちゃつきまくってるから、あのレベルまで鍛えられたのだろう。
隣のクラスの友達に挨拶をしているうちに、エリカ嬢が何がしかの買い物から戻ってきたようだ。飲み物を買いに行っていたらしい、どおりで姿が見えなかったわけだ。
しかし、このままだと昼ご飯がいつまでたっても食べれやしない。話が拗れるのは目に見えているからなぁ。
強引にでも屋上に引っ張っていくべきだろうか……あ、護堂君自ら屋上に行く気みたいだ。
便乗しようっと。
所変わって屋上。昼休みであることからある程度の混雑はあるが、それでも私たちに注目が集まることはない。
久しぶりの晴天であることだし、屋上で食べようと提案したことは大正解だったようだ。
クラスにいると、アテナがみんなに構われすぎてなかなか3人で落ち着いて食事、というものができなかったのだ。
お邪魔虫が2匹ほどいるけど、そちらはそちらで完結しているから問題はない。
「今日は天気もいいし、やっぱり外は気持ちいいねぇ。お二方もこっちのほうが良かったんじゃない?」
「そうね、ここならそんなに注目を集めないし、落ち着いて食べられるわね」
「お二人とも普通にお昼を食べていれば、いつでも落ち着けるはずです。他人のせいにしてはいけませんよ」
祐理は手厳しくも二人に向かってお説教をしている。
エリカ嬢は大らかにもバゲットサンドをぱくついている。プラスチック容器に残っているバゲットサンドの量は、一般的な男子高校生でも満腹になる量だろう。
彼女は随分な健啖家のようだ。護堂君が同じ量を食べるのは違和感ないけど。
それに比べて、私たち3人の弁当はこじんまりとしている。そもそもがあまり食べない祐理、昼は軽めにが信条な私、夜にこそ本気を出すアテナ、誰として昼ごはんをがっつくということはしないのだ。私が昼ごはんを多めに食べないのは、不測の事態に備えてであって、普通に護堂君と同じくらいお腹がすいてるはずではある。
しかしその辺、授業中に寝ることなどで運動量を減らしてカバーしているのでバッチリだ。
とりあえずあっちのお二方と祐理はお説教をしているので、私はアテナが食べるところを観察することにする。
彼女のお弁当の食べ方は可愛い。女神さまとは言え、まだまだ不慣れな箸でちょこちょことお弁当をつついて食べるさまは、なかなかに萌えポイントが高い。
その際に口に運ぶまでに零してしまって、慌てて手で摘もうとする仕草とか、まじで抱きしめたくなる愛らしさである。
やっぱりアテナはこっちの姿のほうがいいよね? 成長したバージョンにもなれる彼女ではあるけれど、私の希望と燃費という点から今の姿のままでいる。
アテナをおかずにご飯を食べる。
アテナは私の万能なおかずなのだ。
「あまりこちらばかり見るな。燐音もあちらの会話に混ざればいいではないか」
「いやー、だって私があそこに口を出すと私がお説教喰らうんだよ? アテナと毎晩毎晩何をふしだらなことをしているのですか! ってね。別に毎日してるわけじゃないのにね?」
無駄に巧妙な声真似をしてみる。オルペウスの権能の副作用だからこんなに傍で使っても護堂君にもばれない。
「そ、そういうことはこんな場所で言うことではない。家に帰ってから言ってくれ」
アテナは頬を染めて体をくねらせている。
アテナは意外に照れ屋さんだ。照れ照れしてる割に、スイッチ入っちゃうと自分から切なそうに誘ってくるあたりは魔性の女といった風情だが。処女神のはずなのにあの妖艶さは反則だと思います。
さて、私がアテナを堪能していた間に彼女たちの会話はかなり進んでいたようだ。
祐理をともなって護堂君のうちに行く行かないという話になっている。
私としては、こんな女たらしにはあまり深入りすると面倒なことになるから、遠慮したいところなのだけど……祐理が乗っちゃいそうなんだよなぁ。その場合は付いていかなきゃいけなくなる。祐理が護堂君の毒牙にかかるのを防がないとね?
「ありがとう、万里谷! ……というk「みんなで護堂君家に行くの? 私たちを仲間はずれにしたりはしないよね?」こと……で……ああ、構わないよ。それにみんなで来てくれたほうが効果があるだろう。こちらからお願いしたいくらいだ」
「護堂……貴方、その程度の小細工で私を止められると思っているの? このエリカ・ブランデッリも見縊られたものね」
「ふん。いつまでもお前の好きにばかりはさせないから、覚悟しておけよ?」
護堂君……君は墓穴を掘るのが得意だね。私が言えたことではないけれど。
自分家に4人も美少女を連れ込むなんて……どこのハーレムの主だよ君は。
◆◆◆◆◆
放課後、護堂君家に着いてお祖父さんと妹さんの出迎えを受けた。
妹さんも大層な美少女ではあったが、私たちの来訪を認めると、その可愛らしい顔をクシャクシャに歪めてしまった。
お祖父さんの方は感心するような目を護堂君に向けている。
彼と目があった。彼はこちらを面白そうに見つめていたが、ふと何かに気づいたかのように破顔した。
「……ええと、何て言うか、いろいろあって友達を連れてくることになったんだけど」
「ほほう。……ま、とにかく座りなさい。今お茶を用意してくるよ。話はそれからだ」
大きな卓を囲んで護堂君の隣に妹さんとエリカ嬢が座る。
反対側には私とアテナとお祖父さんが座っている。祐理はエリカ嬢の隣だ。
正直今日ここに来た理由は、祐理が護堂君にフラグを立てられないようにするためであって他には特に理由がなかったのだが、気が変わった。
この面白いお祖父さんと話がしてみたい。
エリカ嬢と祐理は護堂君を挟んで護堂君の妹の静花ちゃんとやりあっている。
その間、私はお祖父さんと話をさせてもらっていいてもいいはずだ。
「さて、そちらの君も、護堂の友達ということで構わないのかな?」
「はい、乾と言います。今日は不躾にもこんな大人数で押しかけてしまって、申し訳ございません。今日は護堂君からお誘いを受けて訪問させていただきました」
「ほう、礼儀正しいね。護堂とはどういう風に仲良くなったのかな?」
「それが、あたしは無関係なんだよね。お兄ちゃんと万里谷さん、それに乾さんたち、いつの間にか仲良くなっていたの。お休みの日にこそこそ、あたしに隠れて会うくらいだからね」
ここまで来てやっと護堂君も自分の失敗を悟ったようだ。そりゃ一人の男が、知り合った経緯も曖昧な美少女を4人も家に連れて帰ってきたらねぇ? 静花ちゃんはブラコンの気質があるみたいだし、それはそれは面白くないことだろうね。私たち3人はただの友達なんだけど……説明してもわかってくれるかなぁ?
私が少し考え込んだ間に、静花ちゃんは護堂君の女癖の悪さをじくじくと突いている。
確かに転校初日に婚約宣言するような友達なんてまずいないだろうね。
うちのアテナもすごい無難なこと言ってたしねぇ。
仲良くしてやろう、って発言が無難かどうかはさておくとして。
なんだか静花ちゃんの前でもいちゃついてるあの2人はどうしよう?
私でもさすがにあそこまで露骨にはやっていない……はず、多分、きっと、メイビー。
というよりエリカ嬢、そんなしょうもないことに魔術使いますか……護堂君もご愁傷様だね、さすがにあれじゃあ抜け出せないよ。
「エリカさんッ。悪ふざけをされるのも、いい加減になさって下さい!」
お、祐理のお説教が始まるぞ?
「静花さん、それとお祖父さまに、私から事情をご説明させていただきます。とても信用しがたい、虚偽に満ちた言い訳に聞こえるかもしれませんが、エリカさんと草薙さんは男女のお付き合いをされているのではございません」
静花ちゃんもさすがに追及を一時やめ、その言い分を聞くことにしたようだ。
むしろ祐理が口出ししたことで、余計機嫌が悪くなってる気もするけど、そこはまぁなんとかなるだろう。
所詮、本気で怒ってるわけじゃなくて拗ねてるだけだろうし。
「この間、草薙さんは私に対して宣誓してくれました。――自分はエリカさんと決して付き合ってはいない。この誓約が偽りだったとしたら、殺されても文句は言わない、と。私は、あのときの草薙さんの言葉に嘘はなかったと信じています。いえ、信じたいのです」
アテナが大人しくなった後の事後処理のときの話だね。
まわりもはばからずに2人でいちゃついてたからねぇ。
祐理が怒ったのも当然だったよ。
私は疲れ果ててて指摘する気にもなれなかったけど。
苦しい言い訳ではあったけど、彼らはまだ付き合っていないみたいだからね。
一応のところは真実じゃないのかな? その虚勢がいつまで続くのかは疑問だけど。
「たしかに、お二人の関係はひどく不健全な、いやらしいものに思えます。ですが、エリカさんのはしたない誘いにたぶらかされながらも、草薙さんはギリギリの一線で踏みとどまっているとおっしゃるのです」
ん? 弁護じゃなくなってきてるよ祐理? それはただの批判じゃないかな?
いや、別にいいんだけどね。
「この人は常識家みたいなことを普段散々言うくせに、いざとなると無茶ばかりし、周りの迷惑も考えなくなります。本当に仕方のない、でも、嘘は言わない人です。約束も、できる限り守ろうとしてくださいます。結果的に守りきれていないときが多いですけど」
……確かにカンピオーネになるだけあって護堂君は無茶苦茶だよね。
アテナが学校に来たときも暴走しかけてたし、呪術界に関わりたくないからってきちんと話は聞いておいてほしいよねぇ、全く。
さて、静花ちゃんの方は祐理に任せておけばいいや。
護堂君も祐理のお説教をもう一回受ければ多少は……よくならないかなぁ。
まぁいいや、私はこの面白そうなお祖父さんとお話しようっと。
「護堂君とはよくさせていただいております。彼は少々女の人にだらしがないところを除けば、なかなかに良いお人ですからね」
「そうかい、そう言ってもらえると安心だ。護堂は良い友達を持ったね。ああ、それとそんなにかしこまった物言いをしなくて構わないよ。若者は若者らしくあるべきだ」
この御仁……できる!
なるほど、護堂君がこの人のことを希代の女たらしというわけだ。
心配りが細やか過ぎる。
自らお茶を入れにいき、アテナには何も言わずお茶菓子の煎餅を与え、痴話喧嘩は聞き流し、そしてこの私にも退屈しないようにとおしゃべりしてくれようというのか。しかも、言葉の端々に優しさが滲み出ている。
これは……すごいお方だ、ぜひ見習いたい。
「じゃあ、お祖父さま? 私、護堂君の話をするよりお祖父さまの昔話を聞いてみたいな! 護堂君がいつも自慢してくるんだよ!」
「誰がいつ自慢した! 適当なことを言うんじゃない!」
「草薙さん! 貴方のためにお話をしているのですよ! きちんと聞いてください!」
「……不幸だ」
あれ? 護堂君なんか電波受信した?
「ははは、いいだろう。じゃあまずは、僕がハイチでブードゥーの呪いと対峙した時の話をしてあげよう」
「わーい! 女の人の話じゃないけどすごい面白そう!」
「燐音お前、人ん家の祖父ちゃんにナニ期待してるんだ!?」
「ほう、呪いとな」
「へぇ、護堂のお祖父さまったらワイルドな体験してるのねぇ」
「……乾さんって大胆って言うか、物怖じしない人なのね」
「もう、皆さん聞いてください!」
祐理の受難は続く……頑張れ祐理、負けるな祐理。
もうそろそろ護堂君のことは諦めてもいいと思うけどねぇ。
私はこの1ヶ月で悟ったよ、彼は生粋の女たらしなんだなって。
静花ちゃんもそろそろ受け入れちゃえば楽なのにねぇ。
まぁ、嫉妬するのが可愛いんだけどねー。
「さぁ、この話が終わったら晩御飯にしようか。今夜は手巻き寿司でも久しぶりに作ろうかと思ってね。もう酢飯の仕込みは済んでいてるんだ。ああ、4人とも一緒で構わないだろう? 折角来てくださったんだから、これぐらいはさせてもらわないとね。君たちもそれまでに話をつけるといい」
茶目っ気のあるその笑顔も経験のたまものなんだろうなぁ。
護堂君もいつかこうなるのか……ちょっといいかも。
「それにしてもお兄ちゃんったら……どんどんお祖父ちゃんに似ていっちゃって……今日だってこんな可愛い娘4人もつれ込んで、だんだんと遊び人の道を歩んでいくんだから。全く、ご先祖様といいお祖父ちゃんといい、お兄ちゃんといい、なんで草薙家の男はこんなろくでなしばっかり」
「ははは、良くないな静花。ご先祖様のことをそんな風に言うものじゃない。……ま、全部間違っちゃいないがね」
「あら、そのお話詳しく聞かせていただきたいわね」
ははは、今日も平和だなぁ。
とりあえず拗れに拗れてる向こうの話は放っておいて、お祖父さまの話を聞かせてもらおうかな。
ブードゥーの呪いだなんて……私は大陸しか行ったことないから出会ったことないしね。
「さて、まずは僕がハイチに行ったところから話を始めようか。あれは今から…………」
わーい! どんな体験談が聞けるのかな、今から楽しみだよ!
いかがだったでしょうか?
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それではそれでは