日曜テンションで書いているので文章がおかしいところが多々あるかもしれませんが、大目に見てもらえると幸いです
では本編をどうぞ
勝負は私の勝利で決した。
しかし、最後の攻撃の余波が大きすぎて、アテナが今どんな状態なのか、天照大神にもわたしにもわからないでいる。
だから、それらの粉塵やらその他もろもろが消えるまで私たちはおしゃべりすることにしたのだ。
『いやー、それにしても天照のおねーちゃんの一撃はやっぱ格が違うねぇ。神降ろししないでも使えれば私もここまで苦労しないのになぁ。ちょっと『まつろわぬ神』になって下界に降りてきてくれない? そうしたら嬉々として倒してあげるからさぁ』
「うーん、ちょっとそれは嫌かなぁ。燐音ちゃんの役に立つのはいいけど、痛いことは嫌いだから。いつもみたいに神降ろしすればこうやっておしゃべりもできるし、私の力も使えるしで平和でいいんじゃないかなぁ?」
『いやー、だって神降ろしすると負担が半端じゃないじゃん? 多分、私明日は筋肉痛になってるだろうし。神殺しの体で筋肉痛になるって相当だからね?』
「あっ、砂埃がほとんど消えたね。アテナちゃんはどうなったかな?」
『話を逸らしにかかりやがったな、この天然太陽神。まぁいいや、アテナはどうなったかわかるかなー?』
土煙が消え去ったあとに残っていたのは、巨大なクレーターと、服も消し飛びまた幼い姿へと戻ってしまったアテナの姿だった。
その白い珠のような肌を痛々しい傷で覆い尽くし、本来ならば眩いほどの、と形容されるべき裸身を大気に晒している。
おい、甘粕見るんじゃねぇぞ。
そう頭の中で強く念じれば、どこかの神社で必死に目を瞑る冴えない男の出来上がりだ。
さて、意識があるかどうか。なかった場合面倒くさいことになるが……とりあえず近づいてみようか。
ここまで弱れば流石にもう私の力だけで対処できる。
天照大神とはそろそろお別れだ。
毎度毎度少しの時間しか触れ合うことはできないが、私も彼女も互いのことが気に入っている。
それこそ何かの間違いで、彼女が現世への執着で『まつろわぬ神』になって現れかねないくらいにはね。
「あとは燐音ちゃんだけでもなんとかなりそうだから、私は帰らせてもらうわねぇ」
『天照のおねーちゃんありがとうね! また今度会うときを楽しみにしてるよ! 次会う時も絶体絶命とかのピンチだとは思うけどね!』
「えーっと、じゃあまた明日とか! だっけ? 別れの挨拶は」
『……天照のおねーちゃんその知識どこで仕入れてきたの? まぁいいや、ばいばい。また今度ね』
天照大神をお見送りして、わらしを従えアテナへ近づく。
そういえばわらしって、アテナと互角に打ち合うだけじゃなくて私から遠ざけるように誘導もしてたよね? あの時は気づかなかったけど、わらしって実は私なんかよりもよっぽど武芸ができるの……? 私、自信なくしちゃうよ……今までは私でも楽に打ち合える神様とばっか当たってたからなぁ。
そんなことを考えてへこんでいると、わらしが私の腰に抱きついてくる。
わらしなりに私を励まそうとしていることはよく理解できるから、思いっきり抱き返してあげる。
そもそも私は神殺しといっても、どこぞの剣の王のごとくバリバリのインファイターってわけでもないし、わらしが接近戦を出来るって言うなら嬉々として後衛をやるべきなんだろうね。
むしろ今までの戦闘でわらしが前衛を務めることがなかったってことを思い出して、私はちょっともったいないことをしたなって思っている。
わらしを前衛に立てていれば、もっと楽に戦えたはずの戦闘はいくつもあった。
それらを1人で、もしくは天照のおねーちゃんと一緒に突破してきたわけだけど……今回はわらしの手すらも借りなくてはきっと勝つことはできなかっただろう。
最後の最後で熱線と大盾が拮抗していたとき、わらしは私の横で全力で権能を振るっていた。幸運にもこちらの熱線が相手の大盾を貫くように、と。それこそ限界スレスレの権能行使で。
あとで家に帰ったら思う存分甘やかしてあげよう。
今日はわらしの好きなハンバーグを夕飯にするのもいいかもしれない。
祐理もそれくらいの我が儘なら聞いてくれるだろう。
さて、今はアテナだ。
クレーターの端に着いても、まだアテナは目を瞑って地に伏している。
これは本格的に意識を失っているのかもしれない。
この空間を維持するのもなかなかに呪力を使うのだが……
と、アテナへともう1歩進んだとき、彼女が目を開いた。
「お、起きたねー。今回の決闘についてだけど、私の勝利ってことで片付けちゃっていいかな? 最後に天照のおねーちゃん呼んだけど私の力だしいいでしょ?」
「…………よかろう。敗者とは勝者の言い分に従うのみ。私の全て、貴女の好きにするといい」
「やったね! じゃあアテナはこれから私の女になること! これ決定事項ね! いやー、勝ててよかったぁ。一時はどうなることかと思ったよ……私が負けそうになったかと思えば、今度はアテナがそのまま消えちゃうかと思ったもん。最後あんな顔をするのは反則だと思うな。余計な心配しちゃったじゃん」
そう、心配した。
彼女が太陽の熱量で蒸発してしまうのではないかと。
しかし、腐っても不死の神性を持つ女神。あの焔にも灼き尽くされず、再生を遂げたようだ。戦う力こそ残っていないものの、驚異の生命力と言える。
まだぼんやりとはしているようだが、そのうち元に戻るだろう。
「ん? 貴女は妾に止めを刺さないのか? 妾を屠れば、新たな権能を簒奪できるぞ。貴女はより強き神殺しとなれるのだ。その好機を妾を自分の女にするなどと……みすみす見逃すつもりか?」
「わかってないなぁ、アテナは。権能なんて二の次なんだよ。私が欲しいのは1に女の子、2に平穏、3に美男子なんだよ。私としては、こんな数の権能を手に入れたことすら、最近はなんかの間違いだったんじゃないかと思ってるくらいなんだから。いや、神殺しになったことは後悔してないけどね? それに、今回は神降ろしを使っちゃったからお義母さんは怒って権能くれないだろうしねぇ」
「神殺しの支援者、パンドラ……か。わかった、妾は貴女の女となろうではないか。処女神たる妾を闘争の末に勝ち取ったのだ。そうする資格は十分にあるだろう」
キタコレ!? マジでか! 銀髪美幼女アテナたんゲットだぜ! ヒャッハー!
いやー苦労した甲斐があったというものですよー。ここまで苦しい戦闘も久しぶりだったからねぇ。
さて、とりあえず裸ってのは世間体がやばい。何か服を着せなければ。
さてさて皆さんご注目、ここに芽生えるは種も仕掛けもありゃしないただのオリーブの苗木。
この苗木があら不思議、次の瞬間には成木と化しているではありませんか。
っと、魔術でオリーブの木から冠を削り出す。服に関しては、その幹から削り出した鎧と見まごうばかりのナニカを物質変換! あ、これ上級魔術だから要注意ね。デザインはやっぱりギリシャ風がいいかな? 最初に会った時に着ていた服も似合っていたんだけど……
迷うわぁ、とりあえずはギリシャ風にしておこう。そっちの方が気に入りそうだし。
とりあえずアテナにあげるものだからオリーブをもとにして作ってみたけれど、気に入ってもらえるかな? これでセンスないとか言われるとショックがやばいなぁ……魔術的、呪術的意味はバッチリ付与してあるから、礼装と言ってもいいものと化してるけど。
「というわけでまずはこの服を着てくれる? さすがに裸のままで人目に晒すわけにはいかないからね。それを着たら神社に戻ろっか。みんなに紹介するよ。それで今回の一件は万事解決! だね」
アテナは無言で私から服と冠を受け取ると、無造作にそれを身に付けた。
一度だけ自身の姿を見て、問題はなかったようで満足そうに頷いている。
気に入ってもらえてなによりだ。
「さぁ、この世界を解除するんだけど……どうしよう。護堂君たちが境内にいると解除したらバレちゃうよ……仕方ない祐理たちに頼もうか」
限界が近い頭で祐理へと念話をかける。消耗が激しい。念話を繋ぐのですら精一杯だ。
「祐理ぃ、護堂君たちをどっか境内以外の場所に連れてってぇ。そこにいられるとこの世界から帰れないよぉ。アテナについては見てもらった通り私のもとに下ったからさ、早急に事態を解決しよう。私もそろそろ限界が近いからさ、そっちに戻ったら多分ぶっ倒れると思う。だから、あとのことは頼みます、割と切実に」
『わかりました。草薙さんは甘粕さんに連れて行ってもらいますから、少しだけ待っててくださいね。あ、あと帰ってきて一休みしたらお説教ですからね? 一回私たちの目の前で死ぬなんて……どれだけ心配をかけたと思っているんですか……そろそろ貴女が、私に心配をかけることばかりやるというのは、いい加減理解しました。だから、これからは心配をかけてもいいから先に一言告げてからやってください。今度のことだって、草薙さんが途中でやってきたときは、燐音ったら説明を私たちに丸投げしたりして……いろいろと貴女の行動は突拍子もなさすぎるんです。だいたいですね…………』
「ちょ、帰ってからお説教するって言ったくせに今からもだと!? お説教は後回しにお願いだから護堂君をどこかにお願い……流石に、もう、限界……」
『燐音!? わ、あ、甘粕さん! 草薙さんを早く神社の中でもどこでもいいからお連れして! このままじゃ燐音が!』
あ、もうだめ。落ちる。あーここで落ちるとどうなるんだろうなぁ。夢の中で寝るなんての○太君じゃないんだから。あーおやすみ、みんな。私が起きた時にまた会えるといいね。
なんて、意識が飛ぶ寸前の朦朧とした思考回路を回していると、唇に言いようのない柔らかい感触が。
飛びかけていた意識が一瞬で覚醒し、目を開ければ、そこにはどアップのアテナのご尊顔。
現在私の唇には、彼女の桜色の唇が押し付けられているようだ。
あ、舌入れてきた。エロ! 私も流されるかのように舌を絡めに行く。
これに何の意味があるのかは知らないけど、アテナなりの誓約か何かの類なのかもしれない。私の女になったってことのね。
あーなんだか体が楽になってきた。こんな深いキスしたのなんて久しぶりだから滾っちゃったかなぁ。
辺りにピチャピチャと水音が響く中で、私とアテナは互いを求め合っていた。
蕩けた顔をして私と舌を絡め合わせるアテナ可愛い。今すぐ頂いちゃいたいくらい可愛いけど……この光景って祐理が見てなかったっけ?
ピシッ、とそこで思い出した私は固まってしまった。
アテナは突然キスをやめた私のことを、不思議そうな求めているかのような顔で眺めている。
ああ、やめて、そんな顔で見つめられたら私、自分が止められないわ。押し倒してしまいそう。
って、あれ? キスをやめたからか、冷静になってきた頭で考えると、なぜか疲労が体から抜け落ちている。全てとまではいかないけれど、大分楽になったのは確かだ。
私が不思議そうな顔をしていると、キスの時間はもう終わりだと悟ったのか、少しだけ残念そうな顔はしながらもアテナが説明してくれた。
「神殺しには普通魔術は効かないが、その体内に直接吹き込んでやれば効力を表すのだ。ここで気を失われては、どんなことが起こるか及びもつかないからな。それに、妾は貴女の女となったのであろう? このくらいはしてあげねばな。なに、このアテナ相手にあそこまで奮戦したのだ。当然の褒美だろう。……それより、貴女はもしかしてそんなことも知らなかったのか?」
衝撃の新事実!? カンピオーネであっても経口摂取ならば魔術が効くらしい!
なんだそれ初耳! え、なにそれ! 合法的にキスできるってこと!? カンピオーネ万歳!
いやー、今までカンピオーネ関連の話題には、なるべく触れないようにして生きてきたからねぇ。こんな耳寄りな情報が手に入るとは……わらしも教えてくれればいいのにね。でもこれで、祐理とも合法的に……ムフフフフ」
「あー、その、り、燐音……最後の方声に出ているぞ?」
「あぁ!? ここで声に出したら祐理さんは……」
ギギギ、と神社の境内の方に視線を移してみれば、そこには万里谷祐理など存在していなかった。そこにいたのは、『まつろわぬ神』もかくやと言わんばかりのプレッシャーを放つ夜叉女だった。
そのあまりのプレッシャーの前には、アテナが私の名前を呼んでくれたという大歓喜の事柄すら、喜べる隙は微塵もなかった。
護堂君たちは、もう拝殿に行ったのか社務所に行ったのかはわからないけれどそこにはいなかった。つまり、私たちはあそこへと戻らなければならない。
私たち3人は決闘中にも感じることのなかった、世界の垣根すら超えてみせるその圧倒的なプレッシャーの前にただただひれ伏すことしかできなかった。
こうして、私の日常には大きな波紋が浮かんで消えていった。
これから戻る平穏には、銀髪碧眼の女神様の姿があるのだろう。
これは、私たち”乾燐音を愛でる会”の覇業の第一歩。
『殺神姫』、『玻璃の姫巫女』、『夜の姫神』、『黙天童子』、『清水の流行り巫女』
私たち5人が紡ぎ出す物語は、まだ産声を上げたばかりだ。
いかがだったでしょうか
さて感想批評評価批判文句質問疑問指摘、荒らし以外の全てをお待ちしております
それではそれでは