かなりはっちゃけてます、すいません
そして何故か切る場所が予定と違う場所に……
どうしてこうなった?
まぁなにはともあれ本編をどうぞ
さて、護堂君とエリカ嬢はアテナ来訪の報せを受けて、さっさと出かけていってしまった。
かの神は千葉の習志野市と船橋市の中間あたりに顕現しているようだ。あれ、すごい地元だ……
ま、まぁ護堂君が何とかしてくれるだろう。地元とは言え、今となっては繋がりがあるわけでもないけど、やっぱり死なれるのは寝覚めが悪いから……
おっと、しんみりとした空気は私には似合わないね。
今は彼がアテナを日本から追い出してくれるのを祈るばかりだ。
まさか行きがけにゴルゴネイオンも持っていこうとするほど抜けているとは思わなかったけど、なんかさっきの一幕を見ているとアテナにしてやられそうな気がするんだよねぇ。
私の直感はカンピオーネの直感と巫女としての霊視を兼ね備えた、同類よりハイスペックなものになってるしそれだけでも簡易な予見くらいならできる。
それでアテナの名を考察のもとに導き出したわけだし。
でも確実性を期すためにここは権能を使っておくべきだろう。
「天に在す我が三日月、朝昼夕夜、巡る日々、巡る季節をここに顕し給え!」
言霊を紡ぐとともに私の周りに時計の意匠を模した魔法陣が幾数も散らばり、幻想的な光景を表現する。半分近く私が意識して演出しているのだけど。
私がメソポタミアの月神シンより簒奪した権能「
私的にはピッタリなネーミングだと思うのだけれど、一部の人にしか通じないのが悔しいところ……
さて、この権能の効果だが、簡単に言うと暦を操る権能であり、今回使うのは未来予知だ。
シンという神は月神という性質から暦を司り、その他に大地や大気、農耕なども司っているが、私が手に入れた権能は暦の神としての側面に特化している。
彼の子供が太陽の神と金星の神ということもあるのだろうが、この権能は未来を予知するだけでなく、時間制限はあるが一時的に暦を狂わせることもできる強力な権能だ。
でも暦を狂わせて得をするのは夏に自分の周りだけ涼しくしたりとか、その程度の応用しか効かない使い道の少ない能力なんだよね……
使い方さえ正しければ、一時的に
大魔術を使うなら星辰を揃えることは重要になってくる。そのレベルの魔術をカンピオーネの呪力と星辰に任せて、ポンポン連打するとかも一応やろうと思えばできるけど……
神相手だとそれでも嬉々として切り抜けてくるから、呪力効率が悪いんだよねぇ。
つまり、未来予知と快適な身体環境を整えるだけの権能となり下がっているわけだ。
いや未来予知の精度と時間的限界が案外長いから、それだけでもかなり強力ではあるのだけれど。
「さて、未来を少し覗かせてもらおうかなー?」
この権能の欠点は、どこぞのユッキーの日記と同じで自分視点でしか未来を視ることができない点と、消費呪力が馬鹿にならない点だ。だから、私には護堂君たちがこれから何をするのか予見することはできないし、あまり先の未来を見通すこともできない。
だけど、私はアテナが経緯はともあれ、ここにやってきてゴルゴネイオンを奪っていくだろうことは理解できた。
その過程で護堂君が死んじゃったりとかしないといいんだけど……力が揃いきっていないとは言えヨーロッパ圏最大級の女神さまだからなぁ、万が一が普通にありえるから怖い。
まぁ、彼ならなんだかんだで乗り越えそうな気もしてるから大丈夫だろうとは思うけど。
あ、彼最終的には無事なのか。便利な権能持ってるねぇ。
でも私が見れるのは今回はここまでか……アテナとの決着が見れなかったけど、まぁなんとかなるかなぁ。
ラプラスの魔とかの権能が欲しいよねぇ、あれがあれば未来をすべて無条件で見通すことができるからねぇ、超便利。シンの権能もなかなかだけど。
「ふむふむ……ふむ。よし方針決定」
それにしてもエリカ嬢の呼び出しで駆けつけた彼女の侍女、彼女は凄かった。
花も恥じらうような可憐さなのに、あそこまで禍々しいオーラを背中に背負うことができるとは……勉強になった。
特に彼女の乗ってきた車はやばい。そんじょそこらの下級の神獣と同等クラスの死の気配を纏っていた。あれほどの人材を抱えていなければ
まぁいいや、今のうちに祐理と打ち合わせをしておこうか。
「祐理、護堂君は負けるから私が出るよ。護堂君たちにバレないように
「わかりました。燐音がそう言うならアテナはここに来るのでしょう。そうですか……草薙さんは負けてしまわれるのですか。知り合ったばかりだというのに、少し残念です。」
「少しなんだ? 護堂君可哀想だなぁ。祐理ほどの美人さんに期待されてれば、彼も頑張ると思うんだけどなぁ?」
「もう! からかわないでください! 真面目な場面ですよ! 草薙さんが危ないというのに、貴女はなぜそんな平然としていられるのですか!?」
「いやー、だって彼、多分死なないよ? アテナは来ると思うけど、それは彼の一時的な敗北が原因じゃないかなぁ。だって予知の最後に彼また出てきたし、復活の権能でも持ってるんじゃないの? ウルスラグナで言うならば『雄羊』に該当する力かなぁ。羊は豊穣と生命力の象徴だし」
「へ、それは本当ですか? 『まつろわぬ神』と遭遇し、闘って、その上で敗北しても生き返るとは……カンピオーネというのは化物ですか?」
「その言い草はひどいなぁ、燐音ちゃん傷ついちゃうよー。まぁ、私も一回殺したくらいじゃ死なないしねぇ。東欧の老王も蘇生の権能持ちじゃなかったっけ? もともと生存能力が高いうえにこんな権能も持ってるんだから確かに化物かもね。それでも少しはオブラートに包んで欲しかったなぁ」
さすがに今の言い様には苦笑せざるを得ない。
確かに祐理の言うとおりではあるのだけれど、それを受け入れられるかどうかというのは別問題であるわけで……まぁ、私はそのへん割り切ってるから構わないんだけど。
所詮はこんなのもポーズだしね。
彼女もそこんトコロを理解してるからこんなあけすけに言ってるわけだし。
そんな風に談笑していた時だ。
境内に直接空から降ってくる、という罰当たりな登場の仕方を噛ましてくれた御仁が。もちろんこのタイミングで出てくるのは委員会の犬、甘粕冬馬だ。
「『まつろわぬ神』らしき超自然の存在を浦安付近に発見しました。まだ日没までもう少し時間があるはずなのに、辺りが闇に沈み始めています。確認のためにもご同行願えますか」
「ほぉ、奴さんお出ましなすったか。しかも闇を操る……ね、これで確証ゲットだねー。祐理の霊視と私の推測だけじゃあ、確定まではできなかったからねぇ」
「燐音さん、それはもしかして今回降臨したのは、草薙護堂が持ち帰ったという神具にまつわる神、ということですか?」
「そうだよー。このゴルゴネイオンだけだと系統しか絞れなかったけど、闇を操ると聞いて確定できた。闇を操り、蛇の似姿を持ち、大地母神である、アフリカ由来と思われる女神、そんなのは私は一柱しか知らないなぁ。アテナ、リビアにおいてはネイトとして崇められる、ギリシャ神話がオリンポス12神の一柱しかね」
「アテナ……ですか。なるほど、しかしかの神は智慧と戦いの女神のはずでは? 確かにアテナは広範囲で崇められていますし、ギリシャ土着の女神でもあります。でもその言い様だと、それだけが根拠ではないのでしょう?」
「アテナの目は梟の眼とされている。梟は智慧を司るからね。でも、梟ってのは冥府と現世を繋ぐ霊鳥でもある。また、アテナはペルセウスに命じてメデューサを退治させ、その首を生涯自分の横に置き、自らの使う盾にも好んでその意匠を取り入れたという。実際ゴルゴネイオンを身につけていたって話もあるからね。根拠としてはあとはメデューサと、アテナの母であるメティスの語源が同じこととか、アテナは予言によってメティスの生まれ変わりに近い存在として扱われていたこととか? 夜の闇を司るのは梟の化身でもあるから、蛇の神でもあるのは地母神の聖獣として生と死の輪環を表す動物だから。こんなところで全部かな? 他にも欲しい説明ある?」
「いえ、結構です。だいたい私の持っている知識と符合しました。それで全てが説明しきれるとも思えませんが大枠はそんなものでしょう。それにしても燐音さん、よくそんな細かくアテナについて情報を持ってましたねぇ。偶然ですかね?」
「いやー、私一時期大陸の方を放浪していた時があったって前にも言ったじゃないですかー。その時に神獣やら『まつろわぬ神』に何度絡まれそうになったことか……その時に私は学んだんですよ。逃げ切るためにも相手方の情報が必要だ、ってね」
「へぇ、なるほど、そういうことにしておきましょう。さて、いらっしゃった神様の謎もわかったことですし、偵察にお付き合い願いたかったのですが……あー、闇の方がすぐそこまで迫ってますねぇ。こりゃいよいよ、魔王様のご出場を願わないと収まりがつかなくなってきましたな」
彼がここに来た時点でそもそも余裕がなかった気がしたのだが……自慢げに講釈垂れてたら余計に余裕がなくなったようだ。
あのくらいの内容なら彼でも時間さえあればたどり着ける内容でしかないのだけど……実際私は、アテナについての記述はもう少し深いところまで
まぁ、それはアテナと闘う時に披露することになるのだろうけど。
「ところでこの闇の領域に飲まれた光は無効化されてるみたいだけど、実際問題どこまでの被害が出てるの? いきなり電気が落ちたら東京中パニックじゃない?」
「ああ、それについては不幸中の幸いでした。闇の領域が無効化するのは、光と火。この二つに関わるものは、全て働かなくなります。しかし、電気までには干渉していないようで、携帯も問題なく使えますし東京の経済が麻痺する、などといったこともないでしょう。交通に関しては大混乱を起こしていますが……大惨事にはなっていないようです」
「そう、それはよかったねぇ。文明衰退系の権能なんて食らったら東京が終わっちゃうもんねー。今回も十二分に大事だけど。さてと、甘粕さんものは一つ相談なんだけどさ、これから起こることをちょっと黙秘して欲しいんだよねー、馨さんたちにも。何が起こるのかはアテナが来てからのお楽しみだけどねー」
別に乱心したわけじゃない。
私はここでこの冴えない男を自分の陣営に引きずり込むことにしたのだ。
そうすれば、私が神殺しだということが世間により知られづらくなるはずだし、護堂君に投げきれなかった案件の後始末に暗躍もしやすくなる。
やっぱり有能な手駒を一人くらいは抱えていないとねー。
「それは……事と次第によりますが、何か策でもあるのですか? 『まつろわぬ神』ですら退散させる程の策なら是非拝聴したみたいものなのですが……」
「まぁまぁ甘粕さんはそこで見てなって、この御札をあげるからさ。あ、アテナの脅威が去るまで上司方に連絡しちゃダメだよー。破ったらひどい目に合わすんだから」
「燐音、甘粕さん、草薙さんは権能を使って、こちらへ戻るそうです。私はその手引きをしようと思うのですが……燐音、どうしてほしいですか? 草薙さんは呼べばすぐにここに来られるようです。貴女が出る必要性はなくなったのでは?」
甘粕さんと私が話してる間に少し離れたところで護堂君と連絡を取り合っていた祐理がちょうど良く戻ってきた。
それもありっちゃありなんだけどね?
「ふふふ、それでもいいんだけどねー。私もねぇ、準備万端になりつつあるんだよねー、そろそろ。だからさ、祐理は護堂君を呼べなかったってことで事後処理してもらおう! あとのことは頼んだよ! 祐理! 甘粕さん! わらし、二人を守ってあげてね! 行ってきます!」
「言祝げ眠りを、誘え夢へ、夜はここに来りき、『
姿を見せた『まつろわぬアテナ』に先制でこいつをブチ込む!
別に攻撃的な権能ではないけど、とてつもなく便利な権能だ。
辺りの景色がぼやけて、灰色のスクランブル交差点になる。
イメージ的には渋谷のあそこかなー。一番想像がしやすかったんだよね。
『
まぁ、使ってて不便なこともないし別にいいんだけど。
そんなこんなで、今となっては相手だけを取り込むこともできるが、当初は自分も強制で夢の世界に送られていた。まぁ、今でも一緒に中に入らないと夢の中に閉じ込めるだけの権能だし、同じ相手には一日1時間×3という制限のせいで相手だけ取り込むことに旨みはなかったりする。便利ではあるんだけどねぇ。
時間稼ぎできることはいいんだけど、それをするくらいならぶっ飛ばしたほうが手っ取り早いしね。
さて、目の前にいるのがアテナさんであってるはずなんだけど……
銀髪美幼女キタコレ!
あの艶やかな銀髪。クリクリとしたおめめ。ちょこんとかぶった帽子。黒ニーソ!
全てが調和して美を、っていうか萌えを演出している!
ククククク、こないだ出会ったシンもイケメンだったけど、やっぱり神様ってのは美形ぞろいだよねぇ。
その点、神殺しってのは役得だなぁと思ったりする。
殺るんならやっぱり綺麗な相手と殺りあいたいよね。
それに……チャンスがあるなら女神さまの一人くらいはべらせてみたい。
今までにはなかなかそういう機会が訪れなかったから、今度こそチャンスなんじゃないかな?
とりあえずは打診するところから始めよう。
底を見せないように、おどけた態度で。
「もし、そちらはアテナさんでございますか?」
「――見知らぬ神に仕える巫女よ。そなたの持つ蛇の印を渡してもらいたい、と言うつもりだったのだがな。そうとも、妾はアテナ。ゼウスの娘にして、そこを越えいく者。妾をこのような場所に連れてくるとは、貴女はもしかして神殺しなのか?」
「ぴんぽーん、正解でーす! 正解者にはー、私との決闘を進呈いたしましょう!」
その台詞を聞いた途端、アテナの気配が先ほどよりも数段大きくなる。
こちらが神殺しだと知って戦闘体制を整えたのだろう。
護堂君じゃなくて申し訳ないとは思うけど、私の欲望のためにも彼女には踊ってもらわないとね!
「ルールは簡単、貴女にはまずゴルゴネイオンを賭け金がわりに譲渡しましょう。その代わり、決闘の末に貴女が勝てば護堂君を好きにする権利を、私が勝てば貴女を好きにできる権利を得る、ってことでどうですかね? 私と戦ったあとに護堂君と戦えるかは甚だ疑問ですけどねー。ゴルゴネイオンを渡すんだから、十分な条件でしょう?」
ニヤリ、と笑いながら話しかける。
アテナは表情をピクリとも変化させないでこちらのことを見つめている。
訝しんでいるのだろうか? それとも、さらに要求を上乗せしようとしているのだろうか?
それともまさかのまさかで、私に見蕩れてる!? そうだったら私大勝利!
さぁ、アテナよ! どうでる!
「いいだろう。東方の神殺しよ、貴女の名を聞きたい。これより古の《蛇》をかけて対決する我らなれば、互いの名を知らずに済ませるわけにもいくまい」
「その通りだねー、私の名前は乾燐音。護堂君の先輩に当たる神殺しさ!」
「ではまずはゴルゴネイオンを返してもらおう。話はそれからだ」
「了解! わらし、祐理からゴルゴネイオン預かってこっち来てくれる?」
この世界に入ったからには私ですら外に出るためには1時間の時が必要だ。
本当はわらしは外に置いておきたかったんだけど、仕方がないよね。まぁ、わらしはここと外を行き来できるから問題ないんだけどねー。
あ、来た。よーし、いい娘だ。ほれ、ぐりぐりー。
あ、戻ってあの二人を守護しといてもらえる? 私が危なくなるまではわらしの任務はそれね。頼んだよー。
「さてと、ゴルゴネイオン。確かに駄賃として手渡すよ? これで決闘しなーいとか受け付けないからねー?」
「妾は約束は守る。さぁ、それを妾に渡すのだ!」
「はい、どうぞ。準備が出来たら呼んでね、呪力の取り込みに少し時間かかるでしょ?」
「わかった。そうさせてもらうとしよう」
そう言って、アテナの手に、今、ゴルゴネイオンが、渡った。
その途端、辺りには呪力の風が吹き荒れ、彼女の姿が先程までの幼女姿から女性と呼んで差し支えないレベルまで変わっていく。
幼さを廃し、凛々しさと美しさを残したそのかんばせに、現代衣装を脱ぎ捨て纏った古代ギリシャの白い長衣。
成長したあとも絶世の美の持ち主であることに何ら異論はない。
「これこそ、古の《蛇》。ついに妾は過去を取り戻した!」
その美しさにほうけていると、アテナから先程までとは比べ物にならない呪力が溢れ出す。
これがヨーロッパ圏最大級の女神、アテナの実力か!
「妾は謳おう、三位一体を為す女神の歌を。天と地と闇をつなぐ、輪廻の智慧を」
「妾は謳おう、貶められた女神の唄を。忌むべき蛇として討たれた女王の嘆きを」
「妾は謳おう、引き裂かれた女神の詩を。至高の父に陵辱された慈母の屈辱を」
「我が名はアテナ。ゼウスの娘にしてアテナイの守護者、永遠の処女。されど、かつては命育む地の大母なり! かつては闇を束ねし冥府の主なり! かつては天の叡智を知る女王なり! ここに、誓う、アテナは再び古きアテナとならん!」
アテナの長い長い詠唱が終わった。
一緒に死の息吹も撒き散らされているようだが、カンピオーネたる私にとっては蚊に刺されたようなものだ。
ここに決闘の準備は整った。
あとは勝利して私のハーレムにアテナを加えるだけの簡単なお仕事だ!
見せてやろう……ここ1年間放浪して手に入れた新たな力を!
「It's showtime!!」
「善き哉! ここで雌雄を決しようぞ、神殺しよ!」
さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、この一幕は乾燐音の晴れ舞台!
神殺しが華麗に女神を下す様を……とくとご覧あれ!
いかがだったでしょうか?
感想批評評価批判文句質問疑問指摘推薦、荒らし以外の全てをお待ちしております
それではそれでは