ぶらぼフレンズ   作:とけるキャラメル

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やーなむちほー こうへん

 ヤーナム市街に舞い戻るぼくを、心配した様子でサーバルが出迎える。死んじゃったかと思ったよ、と手を差しのべてくる。ぼくはその手をとって立ち上がると一言謝罪した。直後、けたたましい雄叫びが響き渡り、誰か食べられたのかもしれない、助けに行かなくちゃとサーバルが言う。しかしこのまま進んでもまた袋叩きにあうだけだと言えば、安全な道があると言われ、どこへ進むのかと聞けばなんと下水道を目指しているという。臭いだろうが、だからこそそんなところを好き好んで通る者もいないだろう。休憩を挟みながらぼくたちは進んだ。武器を得たぼくはもうやられっぱなしといことはなく、少しずつだが狩りを覚えていった。二人で群衆を蹴散らしながら進むと下水が見えてきた。

 そろそろ体力が不安だから輸血しようねとサーバルにすすめられ、まわりに敵がいないことを確認すると右大腿に瓶を押し当てた。針が刺さり、輸血液が注入されるのがわかる。きーもちーと二人ではしゃいでいれば、だあれ、と水路の奥からに人影が近づいてきた。現れた女性をサーバルが彼女はカバだと紹介した。どうやら顔なじみらしく軽口をたたきあっている。ややあってカバはぼくを見ると見慣れない狩人ねと言う。サーバルはぼくを紹介すると青ざめた血なるものを調べるためビルゲンワースへ案内する途中だと説明した。カバはビルゲンワースへの道は険しいからなまなかな狩人ではたどり着けない、あなた銃パリィはできるの、内臓攻撃はと続けざまに訪ねてくるからぼくはどちらもまだ下手くそだと正直に答えた。貴方何にもできないのねと率直に言われたものだからこいつ散弾銃で蜂の巣にしてやろうかと考えた。しかしサーバルがそんなことないよ、きっと血に酔ったよい狩人になるよと弁護してくれるから狩るのはまた今度にしてやろう。出発しようとするぼくたちにカバは橋の方に聖職者のフレンズがいるから気をつけろと助言する。二人がかりだから平気だとサーバルは言うがなおも上位者に会ったら基本逃げろ、ちゃんと輸血しなさい、どんなときも幕末戦法よと言い続けていた。その言葉には説得力が強く感じられたから記憶にとどめておこう。

 

 

 

 薄汚い下水道を進んでいき、ときどき沸くドブネズミやフレンズになりかけの群衆に鉈を力いっぱい叩きつける。ある程度の大きさの獲物には変形前の方が隙が少ないなとひとりごちる。サーバルに目をやれば怒濤の連撃で大鉈の男を切り刻んでいた。自分の弱さに恥じ入るがいつまでも足手まといではいられない、早く強くならねばと戒める。ふと道先を見れば死体が転がっていた。なかなか上等な服を着ているものだからはぎ取って着てやった。これで立派な狩人だねとサーバルが言うものだから嬉しいやら恥ずかしいやらで帽子をかぶり直すが、穴が開いているからうまく顔を隠せなかった。

 

 とうとう橋の上まで来たが重大な問題が発生した。迫り来る群衆や犬ども、毛むくじゃらの黒い犬人間などをなんとか狩り殺していくが補給が追いつかないのだ。大事な水銀弾が切れてしまった。水銀弾とはその名の通り水銀に血を混ぜた特殊な弾丸である。これを用いた銃は異形の獣にも有効だが、あくまで足止め程度にしかならない。しかし考え方次第では好きなタイミングで相手の動きを止められる能動的な盾として使うことができる。だから素早い獣どもとの狩りでは非常に重要なのだ。その水銀弾が切れてしまったのだから大変だ。サーバルは銃を使わないスタイルの狩りをするのでいまいち深刻さがわからないようだ。へーきへーき、どんなやつが相手でも自慢の爪でやっつけちゃうんだからと張り切っている。そうこうしていると橋の先にある門のむこうから何かが飛び降りてきた。見上げるほどの図体にあばらの浮いた胸、大きすぎる左腕はあまりにいびつであり、何より肉食獣のようななりをしているのにヘラジカめいた立派な角がある。そしてその顔には、どうやら目が無いようだった。

 これが聖職者のフレンズかと武器を構えると、サーバルはのんきに大きいーとたまげていた。しかし油断しているわけではなく、奴がいびつな左腕を振り上げるとそれが叩きつけられる寸前に飛び避けていた。サーバルがひっかき、ぼくが鉈で打ちつけるもこたえた様子は見えない。まるでスプーンで山を削るようだなと思いながら、しかし手を休めることなく鉈を叩き込み続ける。サーバルは背後を取ろうとするも相手も譲らない。攻めあぐねていると唐突にぼくの脳裏に名案が浮かんだ。ぼくは左手の自信の左大腿に突き刺すと、何かを掴むように引き出した。果たして左手に握られていたのは、もはや尽きたはずの水銀弾であった。急ぎ散弾銃に装填すると、狙いを定めて発砲した。聖職者のフレンズは大きく苦しみ、ひざまづくも苦し紛れにぼくにその左手を伸ばす。発砲時の硬直で動けないぼくに鋭い魔手が迫る!が、ぼくを襲ったのは爪ではなく、横向きの衝撃だった。突き飛ばされながらぼくを襲ったものの正体を確かめると、なんとそれは先刻別れたカバだったのだ。こっそりついてきて助けてくれたのだ。あのとき撃たなくてよかった。カバは左腕を受け止めると豪快に殴りつける。腕を地に縫い付けられ、先ほどのぼくの銃撃で体勢の崩れた聖職者のフレンズにサーバルが迫る。みゃみゃみゃと雄叫びが響き、サーバルが秘められし獣の膂力(りょりょく)を解放する。右手に力がこもり、鋭く膨張すると、すさまじい音とともに突き刺さる!!そのまま温かな体内をえぐると力貸せに引き抜いた。おびただしい血とちぎれた脳漿が飛び散り、夕焼けの空に深紅の花が咲いた。これこそが内臓攻撃。獣を狩り殺すための、凄惨なる致命の一撃だ。聖職者のなれの果ては力尽き、そして爆発四散する。血の雨が降る中、カバはぼくを見て微笑み、何事かつぶやくと礼を言う暇もなく去っていった。

 

 あれほどの巨体を誇ったフレンズも、いざ狩ってしまえばはかないものだ。もはや彼、あるいは彼女が存在した証はどこにもない。強いて言えば、ただ破壊の痕跡が残るばかりだ。サーバルは神妙な顔をしてこちらに近づいてくる。と思えば突然すごーいと驚き、あれは何か、あの赤い弾丸はどうしたのだど畳みかけてくる。血の弾丸のことか、作ったんだけどと答えれば今度は作ったいう事実に驚愕していた。

 

 

 興奮するサーバルをなだめ、血の弾丸の作り方を教えてやるとようやく落ち着いた。血の弾丸とは、血液を消費して作り出すその場限りの弾丸である。すべて血液によるものだがその性質は水銀弾となんら変わりは無い。狩人の奥の手、覚えておいて正解だった。ゆらめく夕陽の下、別れの時が近づいていた。意外なほど別れはあっさりしたもので、大橋の先、聖堂街でもビルゲンワースに行きたいと言えばフレンズが次の地方まで案内してくれるという。サーバルがいなければ勝てるか分からなかったと感謝すれば、こんなすごい技を持っているから大丈夫だ、と先ほど作り方を教わったばかりの血の弾丸を見せつけてくる。サーバルよ血の弾丸を作ったらこまめに輸血したまえよ、でないと失血死するぞと釘を刺しておく。するともう友達だから次に会うことがあればサーバルちゃんと呼びたまえよと言われた。いざ別れるとなると名残惜しいもので、つい何度も振り返っては手を振られるものだからこちらも奥ゆかしく狩人の一礼をする。そして、今度は振り返らず歩き出した。

 

 

 しばらく歩いていると背後に気配を感じた。薄汚い獣めぼくを食べる気かと鉈を構えれば食べないよ!と返された。そこにいるのはなんとサーバルではないか。ぼくが驚いていると彼女はつい心配になってあとをつけてきたという。そして次会ったから約束通りサーバルちゃんと呼びたまえよ、さっき別れたばかりだろう、一度別れたからいいのだと笑いあった。

 ぼくは初めての大物狩りですっかり疲れていたが、サーバルちゃんは元気で明日が楽しみだとはしゃいでいた。獣を狩り尽くさねば夜は明けないよとぼくが言えば、夜行性だからずっと獣狩りの夜でも平気だと言う。先ほどともしたばかりの灯りで談笑していると、いつの間にか水色の珍獣が沸いていた。ボス、とサーバルちゃんは読んだそれは彼女を無視しぼくに向かい合うとラッキービーストダヨと平坦な声で名乗ってきた。白昼夢めいた館でぼくに武器を与えたものたちの仲間らしい。彼らは悪夢から滲み出した小さき獣であり、まともな人には見えず、しかし狩人を慕いその狩りを助けるものだという。それは助かるねサーバルちゃんと言えば彼女は珍獣がしゃべったことにすさまじく驚愕していた。




かりゅうどのゆめ  にんぎょうおねえさん  (???)

ああ、狩人様を見つけたのですね


はじめまして。狩人様
私は人形。この夢で、あなたのお世話をするものです
狩人様。血の遺志を求めてください
私がそれを、普く遺志を、あなたの力といたしましょう
獣を狩り…そして何よりも、あなたの意志のために
どうか私をお使いください

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