東方偏執狂~ブタオの幻想入り~   作:ファンネル

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第二十九話 夜這い

 

 妖夢は、一体なんだろうと首をかしげていた。

 幽々子から渡された目隠しの布切れ。ちょっとしたゲームだと言って、手渡したものだ。

 何の前触れもない提案ではあるが、もう随分と酔っ払っている幽々子だ。支離滅裂な事を言い出しても何の不思議もない。

 少しため息をつきながら、妖夢は幽々子に言われたとおりに目隠しをした。

 

 目が見えないと、他の感覚が敏感になる。

 突然、誰かが自分の頭を撫でてきた。びくりと体を強張らせて驚いた。

 

(え? な、なに? 撫でられてる?)                     

 

 目が見えない故に、妖夢は自分の身に何が起きているのか把握できずにいた。

 誰かに頭を撫でられている。

 

(うわッうわぁッ! な、撫でられてる……ッ! だ、誰……? 見えないから不安だよぉ……)

 

 誰とも知らないものに体を触れられている。本来ならば、それはとても不安で気持ちの悪いものだ。

 しかし、どういうわけか。

 何か、不思議な感覚だ。恐怖を感じない。むしろ安心する様な……。

 

(誰だろう……。紫様? でも大きい手……紫様じゃない。お爺ちゃんみたい)

 

 かつての祖父の温もりを思い出す。

 いつの間にか妖夢は、その頭を撫でる手に身をゆだねていた。もう少し撫でて欲しい。もう少し触れて欲しい。そう思いながら。

 そして、その手は妖夢の耳に触れる。

 

「――んッ」

 

 ビクリと体に電流が走る様な感覚。今の嬌声は、自分が出してしまったのか? 思わず妖夢は赤面する。

 

(うわッみ、耳ッ!? 耳に触れてるッ! や、やだッ声が……出ちゃうッ)

 

 必死に声を堪える。恥ずかしさから顔が熱い。そんな妖夢の気も知らず、その手は妖夢の耳をプ二プ二と弄ぶ。

 

「――んんッ」

 

 敏感な所が弄ばれている。恥ずかしい。太くて固い指が自分の耳に――

 

(――え? 太くて固い指? この指って……)

 

 そう思った途端――。

 妖夢の目隠しが外された。

 部屋の明るさに視界がハッキリしないが、それもすぐに収まり……。

 

 彼女は、目の前の自分の頭や耳を弄っていた者と相対する。

 

 ブタオだった。

 

 妖夢は、固まった。そしてブタオも、目を見開いたまま止まった。

 

 若干の間。情報が波のように脳に行き渡り、二人は悲鳴を上げる。

 

「ぶひいいいいぃぃッ!!」

「あばああああぁぁッ!!」

 

 今まで出した事もないへんてこな悲鳴を妖夢はあげ、思わずブタオを両手でドンと小突いた。

 

「ぶぎッ!」

 

 尻もちをついて、ひっくり返るブタオ。

 妖夢はそのまま、脱兎のごとく部屋から出て行ってしまった。

 

 

「あらあら」

 

 

 幽々子は尻もちをついたブタオに駆けより、体を支えて介抱する。

 

「ブタオさん、大丈夫?」

「ぶ、ぶぅ。何とか……」

「妖夢ったら謝りもせずに……。ごめんなさいね。後できちんと言い聞かせるから」

「妖夢殿は何も悪くないでござるよ。そんな事より――」

 

 妖夢に突き飛ばされた事よりも、どうしてこんな“おふざけ”を言い出したのか。

 ブタオは尻目に幽々子に問い詰める。

 

「幽々子殿。余興とはいえ、これはどういうつもりなのでござる? 年頃の少女に対しあの様な……。アレではただのセクハラではござらんか」

 

 不快さを露わにするブタオに、幽々子は変わらずに飄々とした態度で言う。

 

「ただの実験ですわ」

 

 先ほどのセクハラが何かの実験と幽々子は言う。

 ますます首をかしげるブタオ。

 

「実験? 何の……?」

「ごめんなさい。それはまだ言えないの。本当にそうなのか、私自身確証が持てなくて……。ただの勘違いかもしれないから。でも結果が出たらきちんと説明しますから」

「ぶぅ?」

 

 何か、上手く誤魔化されたような気がするが、さすがに立場の違いからブタオはそれ以上の追及をしなかった。

 

(後で、妖夢殿に謝らなければならぬでござるな……)

 

 なんだか妖夢には謝ってばかりだな、とブタオは逃げ出した妖夢の心配をしながら思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ブタオは食器の片付けのために台所へ向かい、居間には幽々子と紫の二人が残された。

 紫は、ブタオが居なくなった事もあり、不快感を隠さずに幽々子に問い詰めた。

 

「幽々子。あの余興は何のつもり?」

 

 あらかじめ黙って見てて欲しいと言われ、その通りにはした。しかしあんなセクハラまがいなモノだとは知らなかった。

 当の妖夢は逃げてしまったわけだし、自分がセクハラしたから逃げたのだと思ってるに違いない。ブタオからすれば不愉快な事この上ない話だろう。

 

「さっき、ブタオさんにも同じ事言ったけど、ただの実験よ実験」

「だから、一体何を実験するっていうのよ」

「ブタオさんの能力について」

「は? ブタオさんの能力? ソレ、さっき話したじゃない。ただの癒やし系になる能力だって」

「私はその言葉を信じていない」

 

 普段の幽々子の飄々とした態度とは打って変わって、彼女は真面目だった。

 

「ねぇ紫。お互いに素面じゃないわけだし。腹を割って話をしない?」

「話って……何の話よ」

「ブタオさんについて。――私ね、ブタオさんの事が好きになっちゃった。もちろん恋愛的な意味でね」

「……え?」

 

 突然の幽々子の告白に紫は目が点になる。

 

「え、えええッ!? ちょ、ちょっとっ何言ってんのよ幽々子! 好きって……ええッ!」

「信じられない?」

「え、えと……。信じる信じないと言うかその……。幽々子あんた、かなり酔ってる?」

「酔ってはいるけど、頭は正常よ。自分が何を言ってるのか分かってて言ってる」

「だ、だって……。あんたとブタオさんは今日初めて会ったわけで、そんな好きになるとか……」

「自分でも信じられないと思ってるわ。私は身持ちが固い方だって思ってたし……。でもね、私は気付いてしまったの。彼といると心が温かくなって、それでいて体は切なくなって……。亡霊となった今でも、女としての欲情が残ってるなんて思ってもみなかった。私は、ブタオさんの事を愛してしまってるんだって」

「ななな……」

 

 紅潮した幽々子の告白は、妖怪の賢者とまで呼ばれた紫の脳漿に大きな衝撃を与えた。酔って正常な判断の出来ない頭ではあるが、素面でもきっと正常ではいられないだろう。それほどの衝撃だった。

 目をグルグルと回しながら言葉を失っている紫とは対照的に幽々子は真面目に思案する様な表情をしながら言葉を続ける。

 

「でもね紫。私はこの感情を心地よいものと感じていながら、それに違和感を感じてるの」

「違和感?」

「そうよ。あなたの言うとおり、私とブタオさんは今日初めて出会っただけの間柄よ。恋愛感情が芽生えるなんて普通あり得るかしら?」

「……ブタオさんは素敵な殿方よ?」

「そうね。少ししか話してないけど、彼は誠実で優しい素敵な御仁だって私も思う。――でもそれでもあり得ない。いくらなんでも恋心を抱くには早すぎる」

 

 ここにきて、紫はブタオの能力について問うてきた幽々子の思惑に気付いた。

 【誰からも愛される程度の能力】

 その本質は、相手に自分を愛させる洗脳的な力ではないかと。幽々子が疑っている事に気付く。

 

「――あり得ないわ」

 

 紫は思案しながら呟いた。

 

「彼に異能の力を与えたのは私よ? 彼にそんな力は無い。何度も言うけど、せいぜい相手を穏やかにする程度の……本当にその程度の力なの」

 

 紫の言葉に幽々子は何も言わない。

 幽々子も紫の言葉を疑っているわけではない。しかし、それだけでは自分の身に起きている現象の説明にならない。

 

「ねぇ紫。あなた自身はどうなの?」

「……わたし?」

「ええ。だって、あなた……“ブタオさんの事が好き”よね?」

「え、ええええッ!?」

 

 幽々子の言葉に顔が赤くなる紫。たまらず反論する。

 

「な、なななに言ってんのよッ! そりゃ……人としてはまぁ認める所があるとか、誠実なところが良いとか、尊敬できる点も多々あるとか……」

「ブタオさんの良いところしか言えてないじゃない」

「わ、悪い所も言えるわよ! 彼は八方美人で、誰に構わず優しくて、美人を見たらすぐにデレて……」

「それって悪いって言えるのかしら。――ねえ紫。あなたのその嫉妬混じりの視線に私が気付かないとでも思ってたの?」

「わ、私はそんな目であなたの事――」

「そう言うのはもう良いから。――とにかく、あなたは自分の感情に違和感とかおかしなところとか何も感じてないの? ブタオさんの事、意識してるんでしょ?」

「むぅ……」

 

 幽々子の話は心当たりがある。

 ブタオの事となると平常心ではいられない。いつもブタオの事ばかりを考えている。 ブタオと一緒にいるととても安らぐ。一緒に笑いあっている時などは至福の一時に感じる。

 

 確かにおかしいと思う。違和感だって最初から気付いている。

 

 でもそれは――

 

「――ブタオさんは素敵な殿方よ。とても素敵な……」

「……そうね。あなたの言いたい事は分かるわ。私の今の話は全部推測ですもの。もしかしたら、私たちのこの感情は、本当に一目惚れの類なのかもしれない。――だからこそ、確かめなければならないの」

 

 紫は、先ほどの幽々子の“実験”と言う言葉を思い出す。

 

「……それで妖夢にあんな事を?」

「ええ。あの子は私と違って真面目さんだもの。それに身持ちも誰よりも固いから。あの子がもしもブタオさんに好意に近い感情が芽生えたなら、私の仮説は合ってる証明になるでしょ?」

「……あの子、ブタオさんの事を突き飛ばしたじゃない。それで恋に目覚めるって……」

 

 普通はあり得ない。

 セクハラした相手に恋心を抱くなんて、現代の同人誌でもない展開だ。

 

 

 しかし、もし――。

 

 

 もしも、幽々子の言うとおり妖夢がブタオに恋をしたのなら。

 

 彼の能力は人を穏やかにする様な優しい力ではなく、もっと禍々しい――

 

「明日になれば、何か変わってるかもしれないわね♪」

 

 結果が待ち遠しいのか、幽々子は実に楽しげだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

「はぁッ、はぁッ……」

 

 妖夢は寝室に逃げ込み、障子を乱暴に閉じた。

 動悸が大きく脈打ち、呼吸が荒い。体も沸騰したかのように熱くて汗が止まらない。

 

 誰もいない明りもついてない真っ暗な部屋。妖夢の荒い息遣いしか聞こえない。

 

 次第に呼吸の方は落ち着いてきたが、体はまだ熱いままだ。

 いや、先ほどのブタオに触れられた時の事を思い出すと、ますます熱くなる様な気さえする。

 

(わ、私……触られた……触られた触られた触られた触られたッ。ブタオさんにッ。男の人に……ッ)

 

 冥界の管理者。白玉楼の主である幽々子に仕えてから、今までまともに異性と触れ合った事は無かった。まして頭を撫でられたことなど、祖父以外にはいない。

 そんな超が付くほどの箱入り娘である妖夢にとって、ブタオに頭を撫でられた事は、まさに驚天動地と言うほどの衝撃だった。

 

 祖父以外の初めての男――

 

 自分の体にそこまで思い入れがあるわけじゃない。そんな大層な体じゃない。主である幽々子のためならば、どんな辱めにあっても構わないとすら思っていた。

 

 そう思ってたのに……。

 いざ男の人に触れられただけで、こうも動揺するなんて。

 

 しかし――。

 

 決して嫌なものではなかった。

 むしろ心落ち着く様な……祖父の温もりに似た安心感があった。

 

(ブタオさんの手……大きかったなぁ。それに指も太くて逞しくて……)

 

 物思いにふけながら、妖夢はブタオの触れた耳に手を添える。

 頭を撫でられただけじゃない。敏感な所も触られた。そして嬌声も聞かれてしまった。

 

 思い出してまた顔を真っ赤に染める。

 

 胸が息苦しい。ドキドキする。嬉しいのか悔しいのか分からないグチャグチャとした感情。全身を刺激し、耳から首筋のあたりがかっかと火照ってきた。目の奥がおのずと熱くなり、その場に突っ伏したい気持ちになる。

 

 こんな気持ちは初めてだ。

 

 そして、自分をこんな気持ちにさせたのは、ブタオだ

 

「せ、責任……。そうだ、ここ、これはブタオさんのせいなんだから、責任を取って貰わなくちゃ……」

 

 妖夢は誰もいないところで一人呟いていた。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ブタオは客室の一間を借り、就寝に入ろうとしていた。

 この数カ月間の間、紅魔館ではずっとベッドだったから、和室で畳の上の布団と言うのに、ブタオは懐かしく思っていた。

 

「今日は色々あったけど、楽しい一日でござったなぁ。――しかし妖夢殿……」

 

 楽しい一日には違いなかった。会いたいと願った紫には出会ったし、白玉楼と言う見事なお屋敷にご招待され、接待もされたのだから。

 しかし気がかりなのは妖夢の事だ。

 酔った幽々子の余興で、とんだ不逞を行ってしまった。

 謝ろうにも彼女はどこにもいなかった。

 結局見つからず、明日紅魔館に帰る時にでも謝ろうとブタオは部屋の明かりを消して床に就いたのだった。

 

「ぶぅ……。明日には、紅魔館でござるか。なんか一人だけ仕事サボった様な気がしてみんなに悪い気がするでござるなぁ」

 

 紅魔館に行く前に、人里に寄ってもらってお土産でも買って帰ろうかなぁとブタオは思った。

 明日からは、いつも通りの日常が始まる。

 朝早く起きて、朝食の下ごしらえをして。

 昼になったら、シーツや衣服を日の光に当てて乾かして。

 夜になったら、一日の出来事を思い返しながら床につく。

 

 退屈ではあるが、確かな幸福。

 充実と言う言葉は、こう言った退屈な日常の事を指すのかもしれない。

 

 紅魔館に戻ったらまず何をしよう。

 そう思っている内に、ブタオの瞼は徐々に重くなり。彼の意識はまどろみの中、夢うつつになっていく……

 

 

 

 

………………………

 

 

 

………………

 

 

 

………

 

 

 

 

(なんでござろう……体が重いでござる……)

 

 夢うつつの中、ブタオは何やら体が重くなっていく様な気がした。

 元々、重い体ではあるが自重の重さではない。体の上に何か乗っかっている様だ。寝返りも打てない。

 ブタオは、ほっそりと目を開ける。

 当たり前だが暗い部屋だ。寝ぼけているせいか視界がぼやける。

 しかし、それもしばらくすると落ち着くわけで。

 ブタオの視界が暗闇に慣れ、意識もハッキリと戻った時――。

 

 

「あ、起きたのですか?」

 

 

 彼は言葉を失った。寝間着姿の妖夢が自分の腹部に跨っているのだから。

 

「は……へ?」

 

 理解が追い付かない。自分はまだ夢でも見ているのではなかろうか? 

 しかし、あまりにも現実的な感触があり重さがあり――

 

 そして、妖夢の体温と少し荒い吐息を感じる。

 

「妖夢……殿? これは一体――」

「よ、夜這いです……」

 

 ブタオの問いに妖夢は少し恥ずかしげを見せながら答えた。

 ますますブタオは理解が追い付かない。

 

「妖夢殿……。もしかして酔ってるのでござるか?」

「し、失礼なッ。私は正気です素面です」

「では、なぜこのようなハレンチな真似を……。年頃の娘のする行いではないでござるぞッ」

 

 ブタオの声は、騒ぎ立てる様な大きなものではなかったが、芯の通った強い声だった。

 ブタオは怒っていた。

 自分がバカにされているからと言う理由からではない。年頃の娘がやっていい様な悪ふざけではなかったからだ。

 そんなブタオの憤りに、妖夢は――

 

 

 逆切れした。

 

 

「あ、貴方のせいじゃないですかッ!」

「ぶ、ぶひ? わ、吾輩のせい?」

 

 思ってもみなかった反論にブタオは言葉を失う。

 

「わ、私はッ! 初めてだったんですよ、あんなッ――あんな風に頭を撫でられてッ 耳まで触られてッ! 恥ずかしいところだって貴方に見られたんですッ!」

「ぶ、ぶひぃ――お、落ち着くでござる妖夢殿、何をそんなに興奮して……。アレはすまなかったと思ってるでござるが、幽々子殿の悪ふざけで……」

「人のせいにしないでくださいッ! あ、貴方が私に辱めをしたのは事実で……。あ、赤ちゃんが出来たらどうするつもりなんですかぁッ!」

「ぶひッ!? あ、赤ちゃんッ!?」

「そうです! 責任とって下さいッ!」

「ななな何を言ってるんでござるか! 吾輩はまだ童貞で――」

「大体貴方は生意気なんですッ! やんごとない幽々子様達にデレデレと……ッ。そんなにオッパイが好きですかッ! 私みたいにちっちゃいのなんて眼中にないって言うんですかッ!」

 

 もはや支離滅裂である。

 妖夢は寝間着の帯をほどき、その幼いながらも健康的な体を露わにした。

 暗闇の中、小さな月明かりの下で妖夢の裸体はハッキリとブタオの目に映り――。場違いではある。しかしブタオは妖夢の体に目を奪われた。

 妖夢は、自分の半霊でブタオの両手を縛りあげ、お互いの吐息がかかるくらいに顔を近付ける。

 

 動けない。

 

 妖夢の半霊が腕を縛っているのもある。しかし、それ以上に妖夢の美しい裸体に視線が釘付けにされてしまっている。

 

「あ、貴方みたいなだらしのない人……半人前の私くらいで丁度いいんです。――私をこんな気持ちにさせた責任を……取ってください」

 

 妖夢は、顔を真っ赤に染め震えながらブタオの唇に、自身の唇を重ね合わせようと近づき――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そこまでよ」

 

 突然、ブタオの部屋の障子が勢いよく開いた。

 ブタオも妖夢も唖然として見る。そして、その廊下側には――。

 

「ふふ。凄いわぁ。まさかここまでなんて……くふふ」

「妖夢、お前――」

「チッ……」

 

 愉悦の表情を見せている幽々子と、驚きの表情を見せている藍。そして顔を赤く染めながら不愉快そうにしている紫の三人が佇んでいた。

 

「え、え……? 幽々子……さま?」

 

 親にオナニーしているところを見られた学生の様な絶望的な表情をして妖夢は青ざめる。

 

「まさかあんなに身持ちの固い妖夢がねぇ……。このおませさん♪」

 

 茶化す様な幽々子の言葉は、妖夢の耳に入ってない。

 妖夢は半ば涙目になって――

 

「ひ、ひいいいいぃぃッッ!」

 

 深夜の月夜の下。少女の悲鳴が木霊する。

 

 





R18展開になるはずがない(キリッ

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