暗殺教室〜 穢れた少年〜   作:狂骨

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結果発表と新たな仲間

テストから数日。全校生徒の採点が終わり、各教科の結果が封筒に包まれ殺せんせーの元へ渡った。

 

「さて皆さん。いよいよ結果発表です。今回のテストで皆さんがどれほど自身の刃を磨いたのか見せてもらいます」

その言葉に皆は息を飲む。第一科目は英語だ。

 

「では…結果発表といきましょう…。英語のE組一位は……『中村 莉緒』!同じく学年でも一位で100点です!!」

『ぉおおお!!!!』

皆の視線が一気に中村に集まる。中村は当然という表情を浮かべていた。

「へへん!触手一本忘れないでよ?殺せんせー♪」

「えぇもちろん!」

因みに五英傑の英語担当である瀬尾は浅野に次いで3位である。

 

「渚君も英文の組み立て方は上出来ですが、少々なスペルミスが目立ちますね〜」

「あ…ここか…」

自身のテストで三角を付けられている箇所を見つけた渚。点数は91点。学年で6位だ。

 

次の科目は国語だ。

 

「国語のE組1位は……『神崎 有希子』!が、学年一位は…浅野学秀!」

「あぁ…残念だなぁ…」

神崎は落ち込むはものの、殺せんせーは顔に丸を表しフォローする。

「神崎さんの大逆進です。十分ですよ!」

因みに点数は96点。学年で3位である。国語担当の榊原は4位のようだ。

触手破壊は失敗したものの、皆は神崎に歓声をあげた。

 

 

次は社会だ。

 

「E組の…第一位は…『磯貝 悠真』!そして…素晴らしい!学年一位も同じく『磯貝 悠真』!」

「ぅおっしゃぁぁ!!!!」

磯貝は歓声と共に立ち上がる。

点数は97点。浅野は95点で2位のようだ。

 

「マニアックな問題が多く、浅野君も苦戦していたでしょう。よくぞここまで取りました!」

そして触手破壊が2本決まりとなった。

 

「おぉ!これで2勝1敗!」

不破は窓にE組とA組の勝敗状況を『正』で表していた。

 

 

次で決まるだろう。E組が勝てば勝利は確定。だが、A組が勝てば引き分けとなる可能性が高い。

どうなるか。

 

「さて、お次の『理科』。E組一位は……『奥田 愛美』!そして……素晴らしい!!!学年一位も『奥田愛美』!!」

「!」

 

その瞬間、皆は一斉に大歓声を上げた。奥田が一位を取ったことでE組の勝利は確定した。因みに五英傑の理科担当は学年で4位のようだ。

 

「すげぇぞ!奥田!」

「触手1本 お前のモンだ!!」

皆に拍手される中、奥田は顔を赤くしながら席に戻った。

これで数学がいくら高かろうとE組の勝利は決まった。

皆は次々に取引に掛けていたモノの話へと持ち込んだ。

 

その中で渚は神威の方を向いた。

 

「!」

その瞬間 渚は戦慄する。

 

そこには唇を血が滲み出るほど噛み締めている神威の姿があった。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「くぅ…!」

皆が教室で盛り上がる中 カルマは外の木の影で数学の答案をぐしゃぐしゃに握りしめていた。

85点

カルマの総合は13位。他人から見れば上位な筈だが、彼にとっては13位など敗北に他ならない

要因はただ、『舐めていた』

テスト中に見せたその余裕が命取りとなったのだ。

 

「流石にA組は強い。トップ6を独占。うちのトップ3は片岡さんと竹林君、そして神威君の3人だけ。当然です。A組も負けず劣らず勉強していた。テストの難易度も上がっていた筈です」

木の裏から殺せんせーの声が聞こえてくる。まるで自分の敗因を語るかのように。

「何が言いたいの?」

「『余裕で勝つ俺 カッコイイ〜!』そう思っていたでしょ〜?恥ずかしいですね〜♪」

「!?」

その瞬間 カルマの顔は真っ赤に染まる。完全に図星のようだ。

 

 

「先生の触手を破壊できるのは3人。が、君は暗殺にも賭けにも、何の戦力にもならなかった」

そう言うと殺せんせーは顔を緑のシマシマ模様に変化させカルマの頭を触手でつつく。

「やるべき時にやるべき事をやらない者はこの教室から存在感を失っていく。刃を磨く事を怠った君は暗殺者ではない。錆びた刃を自慢げに掲げているただのガキです」

「くぅ!」

もう限界なのかカルマはその頬をついてくる触手を振り払うと校舎へと戻っていった。

 

すると、偶然現場を見ていた烏間は疑問に思う。

「いいのか?あそこまで言って」

殺せんせーの表情には何の心配も映されていなかった。

 

「心配はいりません。彼は多くの才能に恵まれています。今まで余裕で勝負してきた者でも、一度の失敗を知る事で大きく前進するでしょう」

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

 

 

旧校舎よりも更に山奥の深い森にある巨木の下で神威は一人 苛立っていた。

 

「ちくしょぅ……!」

その原因は矢田の点数だ。彼女の合計はE組では上位だったとはいえ、学年では50位に行き届かなかった。

それが腹立たしくて仕方がなかった。

神威の点数は5教科合計478 学年10位。

 

「何でだ……何でだ…!!あそこまで教えたんだぞ…!!」

彼の目的は彼女を本校舎へ復帰させる事だった。けれども、それが叶わなかった。それが彼を苛立たせる原因だった。

 

「くそがッ!!」

 

バァァン!!!

 

怒りが溜まりに溜まって漏れ出した。神威は怒声をあげると足を巨大な木に目掛けて振り回した。

 

幹が音を立てながら地面に倒れると神威は悔しさのあまり唇を噛み締める。

 

「だが…まだチャンスはある…そこで必ず…!」

 

彼はまた決意を固めたのかその場から去り、旧校舎へと戻った。

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

「さて、皆さん。これにて3人に触手を破壊する権利が与えられました。破壊したい方はどうぞ前へ」

そう言い触手3本を前に出す。顔はしましま模様だ。3本破壊されたところで何の問題がないと、内心 舐めているのだ。

けれども、それに異議を申し出るモノがいた。

「待てよタコ。5教科満点は3人だけじゃねぇぞ」

寺坂、吉田、村松、狭間の4人組だ。

 

「え?3人ですよ?『国語』『英語』『社会』『理科』『数学』」

「は?『数学』抜かせ。5教科っつったら…『国語』『英語』『社会』『理科』そして『家庭科』だろ?」

 

目の前に家庭科満点の四人の答案が差し出された。

 

「か……家庭科ぁぁぁぁぁ!!!????」

その答案を見た瞬間 殺せんせーの顔が絶望に染まる。

 

「だ〜れもどの教科なんて言ってねぇ〜よな?」

「くっくっくっ…クラス全員でやればよかったかも…♪」

 

「ちょちょちょ!!家庭科なんてついででしょ!?何故に!?」

殺せんせーの反論にまたもや異議をなすモノがいた。

「なんて…って、失礼じゃね?5教科最強の家庭科に」

そう。カルマだ。お得意の挑発に皆が乗ってくる。

 

「そうだぜ殺せんせー!」

「5教科最難関の家庭科100点が4人だぜ!」

「合計 触手7本〜♪」

 

「な…なななな7本!!???ひぃぇええええ!!!!」

圧倒的な絶望の境地に叩きつけられた殺せんせーは悲鳴をあげる。

 

そんなムードの中 磯貝が手を上げる。

 

「それと殺せんせー。皆と話し合って決めたんですが、今回の暗殺にA組との賭けの戦利品も使わせてもらいます」

磯貝の言葉に殺せんせーは首を傾げる。

 

「ホワッツ……?」

ーーーーーーーー

 

「く…」

A組の教室では浅野が拳を握り締めていた。

成績底辺のE組なぞ、自分の敵では無かった。負ける事が許されない今回の賭け。けれども負けてしまった。

 

「やぁやぁ〜。随分な有様だね浅野くん〜」

「…!」

その自分へ声を掛けてくる者がいた。制服を纏っている一般生徒だが、肌の色が褐色色であり、眼帯をつけており、他の生徒とは一味違う風貌を表している少女だった。

 

「君は…B組の『赫夜』といったか…。何の様だ?」

赫夜と呼ばれた少女は他の生徒が寄り付かない程の険悪な浅野に平然と近づく。

 

「いや別に?ただ単にE組なんかに負けない〜とかイキッてた5英傑を見に来ただけ〜かな?」

『ッ…!』

その言葉にA組の皆や五英傑は頭にキたのか恨みの目を向けた。その中でも特にプライドを傷つけられた瀬尾は怒りの声を上げながら赫夜へ近づいてきた。

 

「テメェには関係ねぇだろ。B組が口出ししてきてんじゃねぇ!これは俺らとE組の問題なんだよ!」

「あ〜怖い怖い。学校自慢のA組様がこんなに血の気が多いとはねぇ〜」

その言葉はさらにA組を苛立たせた。

 

「じゃ、私 戻るねぇ〜」

そう言い彼女は皆から向けられた目線をものともせずに鼻歌を口ずさみながら出て行った。まるで人を喰ったような性格にA組は嫌悪感を抱いた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

本校舎では、1学期の終業式が行われようとしており、A組の五英傑はそれぞれが委員長の役職に就いており、準備のため、E組と同じくらい早く行く必要がある。

重苦しい雰囲気の中 A組を待ち構えているのは自分達が見下していたE組の皆だ、

「おうおうやっと来たな。生徒会長様よ〜」

出迎えたのは家庭科で大成功を収めた寺坂グループ達だ。

 

「…何の用かな…。式の準備で忙しいんだ。君達に構っている暇はない」

そのまま通り過ぎようとした浅野の肩に寺坂の手が置かれる。

 

「おいおい。何か忘れてねぇか?」

体育館に入ると先に揃っていたE組の皆も五英傑へ目を向けた。

 

「浅野、賭けの事だが、前に要求したアレでいいよな?」

「……」

武が悪そうな顔をする浅野に寺坂達は更に畳み掛ける。

 

「何ならよ?5教科の中に『家庭科』も加えてやってもいいんだぜ〜?それでも勝つけどよ〜」

寺坂グループ4人の勝ち誇る笑みに皆は若干頬を引きつらせるものの、心強いと感じていた。

 

彼ら自身も今回は殺せんせーに一泡吹かせたいの思いで相当勉強したのだろう。家庭科は一般科目と違い、教師の気分で出題される。故に本校舎の授業を受けていないE組は圧倒的に不利だ。故に殺せんせーも家庭科は最小限の事しか教えなかった。この事から彼らは皆以上に研究していた事が感じ取れるだろう。

 

 

 

 

因みに、今回の集会にはカルマも参加していた。

 

「珍しいな。お前が参加するなんて」

「だってさ、今 ふけたら逃げてるみたいで何か嫌だし」

予想外のカルマの反応に磯貝は不思議に思う。

 

「え…えぇ…2学期も…E組のようにならないように…」

校長の言葉が詰まりに詰まっている。それもそうだ。E組は特進クラスであるA組とトップ争いをしたのだから。

BからDの生徒達は悔しそうな目でE組を睨む。特にD組はほぼ全員がE組に負けているのでプライドがズタズタだろう。

 

皆が胸を張って集会に参加できている。近くにいる烏間もその姿勢に微笑んでいた。

 

ーーーーーーーーー

 

「えぇ〜 この度E組に新しい仲間が加入する事になりました。では自己紹介を」

「はぁ〜い。元B組の『赫夜』で〜す。趣味はショッピング、好きなものは甘いもの。得意科目は理系で〜す。皆 よろしくね」

 

 

『『『…は!?』』』

集会終了の直後の教室で、いきなり 赫夜の自己紹介が執り行われていた。新しい仲間に殺せんせーもウキウキの笑顔だった。

一方で、天然である倉橋を除いた皆はそのテンションの高さかつ、いきなりすぎる新しい仲間にポカンとしていた。また、茅野は妬ましい視線を彼女の身体に向けている。

 

「うぅ…また巨乳……」

 

 

「赫夜って…確か中間も期末も全国模試も浅野に続いて2位の奴じゃ…」

目が前髪で隠れている生徒『千葉 龍太郎』の漏らした言葉に皆はすぐさま驚きの表情を浮かべる。

 

「えぇ!?」

「マジかよ!?」

 

皆は次々と驚きの声を出す。その情報で渚も思い出したのだ。全国模試でも浅野に引けを取らない程の実力者である。そんな成績の優秀な彼女がなぜE組に来たのか。

 

「実はA組にテストのあと ドヤ顔しながら行ってさぁ。それが何か『侮辱された』とか何かで問題にされてちゃったんだよねぇ」

赫夜はざっくりと説明するが、結局はカルマと同じ素行不良である。

 

そんな中で後ろの席にいる三村は赫夜の身体と顔を見て、ある事を質問する。

 

「質問なんだけど、君 神威と同じ肌で眼帯もつけてるみたいだけど、姉弟か何かなのか?」

「ん〜?」

その質問に赫夜は頭に手を当てると手を横にふる。

 

「いんや。全然違うよ。ただ偶然さ」

三村の質問に皆は少しだがざわめきだす。眼帯のことで皆も思い出したのだ。神威が一部の皆には一切 眼帯の下を見せていない事を。

 

そんな中で修学旅行の一班と四班の生徒達はうつむく。

 

「はいはい皆さんお静かに。では、質問はまたの機会に。赫夜さんは神威君の隣に座ってください」

 

殺せんせーの指示通りに赫夜は神威の隣の空席に座る。隣にいる神威はとてつもなく不機嫌な様子であった。

 

「よろしくね。神威ちゃん♡」

「うるせぇ」

 

 

「さてさて、新しい仲間も加わわり、一層賑やかになったところで、夏休みのしおりを配ります」

 

『しおり』その言葉に赫夜以外の皆はぎょっとする。

 

「しおりって?」

「いや…聞かない方がいい」

意味を知らない赫夜は前にいる菅谷にどう言う意味か尋ねると菅谷は何かを思い出したように汗を垂らす

 

デデン

 

教壇に置かれたのは厚さ80センチはあるしおり。修学旅行の時とは比べものにならない量だった。

 

「出たよ…恒例過剰しおり…」

 

「アコーディオンみてぇだな…」

皆は次々とその『しおり?』を受け取るとパラパラとめくる。

 

「これでもまだまだ足りないくらいですよ」

そう言い最後の生徒に配り終える。

 

「夏の誘惑は所々にありますからねぇ。さて、夏休みに入る訳ですが、皆さんには一つの『メインイベント』がありますねぇ」

「あ〜。賭けで奪ったこれのことでしょ?」

そう言う中村の手には一つのパンフレット。

渚と茅野はそれを見開かせると顔を輝かせた。

 

「夏休み!椚ヶ丘中学校特別夏季講習!!沖縄リゾート二泊三日!!」

 

皆は一斉に歓声を上げた。

 

 

 

 

「はい静かに。皆さんの要望は…」

すると、クラス委員である磯貝は頷く。

 

「はい。触手破壊はこの合宿時に使わせていただきます」

「なるほど。四方を先生の苦手な水がある場所で触手7本を……正直に認めましょう…君達は侮れない生徒になった。あ、言い忘れていましたが、今回の合宿に赫夜さんの参加も受理されました。これを機に皆さんも赫夜さんとの仲を深めてください」

 

そう言うと皆は赫夜へ目を向ける。

 

「因みに暗殺の事は烏間先生から全部聞いたよ。私も出来る限りサポートするからねぇ〜」

その頼もしい発言に皆は安心と信頼を寄せる。すると、横にいるカルマは興味本位で得意な武器を聞く。

 

「そういえばさぁ、君 どんな武器とか使うの?」

「ん?」

すると赫夜はニコッと笑うと既に支給されているのか、懐からナイフを取り出す。

 

「君たちと同じだよ。私の場合はナイフかな?このクラスに入ったからには必ず殺すよ『殺せんせー』♡」

そう言い赫夜はナイフをペンのように回すとウインクをしながら殺せんせーへ突きつける。

 

「ヌルフフフ。君もよきアサシンに育ちそうですね!ではでは…新たな仲間が加わったところで!椚ヶ丘中学校3年E組1学期!これにて修了!!!」

 

その掛け声と共に中学校生活最後の1学期が終わった。

 

いよいよはじまる中学最後の夏休み。

 

 

 

 

 

 

 

 


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