『タイム!』
その合図と共にその場は沈黙に包まれた。その瞬間に野球部の者達はベンチへと走って行った。
その様子をE組の皆はただ見ることしかできなかった。
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「惜しかったね〜」
「入れるチャンスがいくつかあったからリベンジリベンジ!」
男子達が野球をやっていると体育館の方からバスケで試合をしていた女子達が出てきた。会話からすると負けてしまったようだ。
「ごめんね…私が足引っ張っちゃって…女子バスケ部のブルンブルン震える胸を見たら怒りと殺意で目の前が真っ暗になって…」
「茅野っちのその巨乳に対する憎悪はなんなの!?」
「あははは…」
「……さて、男子はどうなってるかな?」
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突然と現れた理事長、その後、数分のタイムが掛かった。
「いきなりラスボス登場かよ……」
すると
『い…今入った情報によりますと……野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で……部員もそれが心配で野球どころではなかったのこと…なので急遽理事長が指揮を取られるそうです!!』
「「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」
その知らせと共に会場から大歓声が上がった。今までのはまぐれじゃない。ただの遊びだと
すると理事長の話が終わったようで野球部の面々が戻り守備についた。
だが
『こ…これはなんだー!?守備を全員内野に集めてきた!!こんな極端な前進守備は見たことがない!!」
打席からほぼ目の前という距離で守備についていたというのだ。
「ま…マジかよ!?バントしかないって見抜かれてるぞ!?ってもルール違反だろ!?あんな至近距離なんて!!」
「いや、違反ではない。ルール上…フェアゾーンはどこを守っても自由……審判が判断すれば別だけど向こうはもうあっち側みたいだよ」
竹林の言葉の通り、審判はまったく注意をする気配を見せず、ただただ薄ら笑いを浮かべていた。
「…………くだらん」
神威は小さく呟くとベンチに座った。
その後は相手の流れとなった。打席に回った前原は前進守備に意識がいきすぎボールが来た途端に真上に上げてしまいワンアウトとなってしまった。
次は岡島だ。
(ちっくしょ〜…こんな内野…バントじゃ抜けねぇよ…!どうすんだ!殺監督!)
「ワン!トゥ!……………スリ………」
(打つ手なしかよ!!)
その後、岡島もアウトとなり磯貝も続いてアウトとなった。スリーアウトチェンジとなり相手の番が回って来た。
一方向こうも向こうで理事長が進藤を洗脳させるように指示を出した。
「その調子だ進藤君、投げる時は4シームのストレートだけでいい。
『君の球を外野に運べる生徒は杉野君以外いない』
「はい!」
その言葉に進藤は獣の如く気高い声で答えた。
自分にとって最も注意すべき相手は杉野だということを
試合は再開された。投手は杉野であり、
ビュゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!
「のわっ!?」
流石の野球部だ。杉野が投げた球は美しい弧を描きピッチャーを翻弄させた。クラブで鍛え上げた賜物だ。
そして一回裏は杉野の変化球のおかげで一点も取らせることなくスリーアウトとさせることができた。
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「プハッ!カルマ君」
「ん?…足元に出んなよ殺監督…踏んでほしい?」
「ヌルフフフフフフフ♪次は君がバッターです。ここで相手を挑発してみましょう!」
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二回裏
『七番バッター赤羽君』
次はカルマの番だ。だが、彼は動こうとはしなかった。
「どうした?早く打席に立t「ねぇ〜。これずるくない?理事長せんせ〜?こんだけ邪魔な位置で立たれちゃさ〜。お前らも可笑しいと思わないの?あ〜!そうか〜!お前ら『バカ』だから守備位置とか理解してないのか〜!」
「「「「ブチ…」」」」
カルマのいきなりの反論に加えての挑発、それに本校舎の生徒は全員でブーイングを出した。
「小さい事でガタガタ言うな!!E組!!!」
「たかがエキシビションで文句つけてんじゃねぇよ!!!」
「口で言うんならバットで結果出してみろ!!!」
それはもう悪口の嵐であった。カルマは楽しむかのように殺せんせーの方を向いた。
「ダメみたいよ?監督」
「いいのです。正直に反論する事が大切なのです」
そう言うと体色で赤丸を表した。
その後、挑発を仕掛けるもカルマはなすすべなくスリーアウトとなった。
『8番バッター神威君』
「やっと出番か…」
その放送と共に今までベンチに座っていた神威は立ち上がった。
そしてバットを手に取り打席へと一歩ずつ歩いて行った。