少年が行く幻想学園   作:スカイマーク

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どうもスカイマークです。
前回も言いました通り藍と橙が登場します。



本編
家族 前編


3月7日、日本、成田国際空港、第1ターミナル、南ウィング

 

デルタ航空が経由している飛行機から1人の少年が降りた。

人間の手により作られた少年が。

日本の玄関口と呼ばれる此処成田国際空港は曜日問わず人が多い。

少年の名前はケンシ。

ケンシは日本に降り立った。

入国検査では「八雲 ケンシ」と書かれた偽造パスポートを提示し入国した。

銀色の髪を持つケンシは身長も高くモデル体型である所為か周りの人を振り向かせる。

その為、ケンシはスポーツ用サングラスと帽子を身に付けてボストンバッグを背負って歩いた。

がしかし逆に税関検査で怪しまれてしまい幾つか質問されてしまう始末になった。

10分後何とか税関検査を終えたケンシはボストンバッグを手に取り国際線到着ロビーへ向かった。

到着ロビーに着いた。

ロビーには税関検査を終え出て来るの待っている人達が大勢いる。

その中でケンシはスーツに身を纏った金髪の女性を見つけた。

その女性の名前は八雲 紫

日本でケンシの生活面をサポートする国防省の人物。

そしてこれからケンシが仮の家族になる家族。

ケンシはスポーツ用のサングラスを取り紫の方へと歩む。

彼女もケンシに気づき笑顔で手を振る。

するとケンシはある事に気付いた。

紫の左にケンシと同じ年に見える金髪のショートヘアの少女、左には小柄な身長で茶髪のショートヘアの少女、この2人の少女も紫と同様こっちを見ている。

 

紫「日本へようこそケンシ♡初めての旅客機はいかがだったかしら?」

 

紫は相変わらず色気ある声と日本語でケンシをして迎える。

今回ケンシは一般人が乗る旅客機で日本へ来た。

軍の輸送機しか乗った事しかない彼は初めてだった。

 

ケンシ「流石にやり過ぎだぞ。」

 

ケンシは英語でそう言いポケットの中から今回乗って来た飛行機のチケットを紫に見せた。

そのチケットはファーストクラスのチケットだった。

そう、ケンシはファーストクラスで日本へやって来たのだ。

 

紫「ウフフッいいじゃない、これが日本の『おもてなし』よ♡」

 

これが日本のおもてなしだ、と紫は英語で言う。

喜んでいる紫に対しケンシは心の中で呆れかえっている。

そんな中、紫の左右に居る2人の少女はケンシをジッと見ている。

 

ケンシ「で?この2人は?」

 

ケンシはこっちを見ている2人に顔を向け紫に聞く。

2人はドキッとした。

 

紫「この子達?子達は私の義娘よ。そして貴方はこの2人の兄になるのよ♡」

 

紫に2人の娘が居ると事にケンシは驚いた。

 

ケンシ「お前に子供が居るのはいいが『兄』と言う事はどういう事だ。」

 

紫の肩を掴み顔を近づけ耳打ちするケンシ。

 

紫「あら?言ってなかったかしら?」

 

ケンシ「そんな事一度も言ってないぞ、コレも任務の一つか。」

 

紫「ええ、一応ね。これから貴方が行く学校はあの子達が通っている学校よ。貴方の事はアメリカでずっと暮らしていた兄だって伝えてあるから本性はバレてないわ。」

 

ケンシ「……」

 

ケンシが通う学校は紫の娘2人が通う学校。

紫がケンシの本性を偽った所為か2人はケンシの事を兄だと思っている。

ケンシはこれからややこしくなりそうだ、と心の中で呟き紫の肩を放し元に戻る。

 

紫「橙、藍、2人のお兄さんよ、これから一緒に生活するから挨拶しなさい。」

 

紫は日本語で彼に2人に挨拶して、と言う。

すると金髪の少女がおどおどした口調で自己紹介を始めた。

 

藍「お、お初にお目にかかります!わ、私の名前は八雲 藍と言います!よ、よろしくお願いしますお兄様!」

 

勢いよく頭を下げ礼をする。

今度は茶髪の少女が挨拶する。

 

橙「は、初めまして!八雲 橙です!こ、これからよろしくお願いします!」

 

緊張しているのか目をつむって頭を下げる。

誰もが可愛らしいと思うがケンシは思わなかった。

 

ケンシ「八雲 ケンシダ、ヨロシク。」

 

ケンシは日本語で藍と橙に挨拶をする。

9年間アメリカで過ごして来た為か日本語がカタコトだった。

その所為か藍と橙は顔を上げ唖然とする。

すると紫がパンッと手を叩き話を区切る。

 

紫「さぁ、お互い自己紹介を終えたところだからお家へ行きましょ。」

 

 

 

 

 

 

 

俺と八雲一家は車に乗り高速道路を走っている。

運転は紫、隣の助手席は橙、残った藍と俺は後部座席。

車はレクサス、中は極普通で快適。

前に居る橙と紫は仲良く会話、藍は下を向いてチラチラと俺の方を見る。

一方、俺は車の窓から見える日本の風景を眺めていた。

9年間振りの日本。

昔と随分変わっていた。

何か日本にいた時を思い出す。

9年前の俺は両親に暴力を喰らい虐待されていた。

その時はまだ真実を知らなかった。

あの頃の俺には優しい妹が居た。

俺と同じ髪の色だった。

今でも忘れていない。

妹は両親に虐待されていなかった。

むしろ可愛がられていた。

妹は俺が虐待されている事を知らない。

何故なら妹が居ない所で俺は虐待されていたからだった。

10歳の時だったか。

俺の体内を循環するナノマシンが真実を教えてくれた。

家族だと思っていた両親、妹は家族ではないと。

そして自分は人間によって作られた「戦うための人間兵器『人工兵士』」だと。

真実を知った俺はショックを受けたがナノマシンに寄って平常心を保たせてくれた。

妹だと思っていた者は実は妹ではない。

俺は何故、両親が暴力を振ってくるのか理解した。

「本当の家族じゃないから」

単純な事だった。

俺は妹と両親を恨み始めた。

だが妹には、何も悪くない。

こうして全てを知った俺は家を出て行った。

日本は嫌な思い出しかない。

残酷で、悲惨で、刹那で仕方がない。

 

藍「あ、あのー」

 

突然横に座っている藍が日本語で話掛けて来た。

口調から察するとまだ緊張している。

俺は顔を藍に向けた。

 

藍「ワ、ワット ドゥユー……」

 

今度は英語か。

日本語がカタコトな俺の為に英語で伝えようとしているのか。

 

ケンシ「ニホンゴデイイゾ。」

 

藍「で、でも……」

 

ケンシ「日本語ガカタコトナダケダ。コトバハリカイハシテイル。アト、ソンナニキンチョウシナクテイイゾ。」

 

すると俺の言葉で緊張が解れたのか藍の表情が笑みえと変わった。

 

藍「それを聞いて安心しました。」

 

ケンシ「ソレデドウシタ?」

 

俺は藍に用件を聞いた。

 

藍「アメリカで何をしていたのですか?」

 

どう答えればいいだろうか?

ハイスクールに通っていたと答えれば詳しく聞かれる。

だから俺は

 

ケンシ「…グンデハタライテイタ……」

 

人工兵士だと言う事を伏せて答えた。

藍は驚くだろう。

だが違った。

納得している表情だ。

 

藍「そうですか。だから紫様はお兄様の事を隠していたんですね。」

 

隠してた?

どうゆう事だ?

紫はこの2人に俺の事を何と言ったのだ。

俺はまだ「八雲 ケンシ」と言う人物をまだ余り捉えてない。

それは後で名前を付けた紫に聞くとしよう。

 

藍「どうして軍に?」

 

ケンシ「ホカニイクアテガナカッタカラ。」

 

俺は軍以外行く当てがない。

そう作られたからな。

 

藍「でも、他にあったのでは?」

 

ケンシ「タタカウコトシカノウニナカッタカ。」

 

藍「そうですか……」

 

少し藍は俯いた。

俺の事を思ってだろう。

別に気を使わなくてもいいのに。

 

ケンシ「ベツニキヲツカワナクテイイゾ。」

 

藍「いいえ、お兄様ですから使いますよ。でも嬉しいです。」

 

笑顔でそう答える藍。

今の俺は藍と前に居る橙の兄である。

でも俺はこの2人と同様、血の繋がった紫の息子でもない。

ましてや2人の兄じゃない。

俺は再び窓に顔を向けた。




どうでしたか?
ケンシには八雲一家の家族になってもらいましたw
次回もお楽しみに。

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