TALES OF CRYING ―女神の涙と黒い翼―   作:ILY

88 / 122
※追加された情報には←Newが付きます。
 更新された情報は後で確認する事も出来ます、「次の話」を押すとスキップします。


※世界観・用語3の情報ステータスが更新されました

「身」の一族、「心」の一族

 

 太古の昔、二柱の神から宝珠と世界を守るべく力を与えられた二種族。

 アエスラングの種族が大気と心を通わせ高い深術の適正を持つ「心」の一族。イクスフェントの種族が深術を使えない代わりに長い寿命と高い身体能力を持つ「身」の一族であり、両者の総称が「シン」の一族である。

 二種族の能力が異なるのは「互いが手を取り合う事」を望んだアエスラングとイクスフェントの願いからであり、またそれぞれの差異に二柱の神の性質の違いを見て取ることが出来る。

 

 

『混血児』

 

 身の一族と心の一族、そして人間の血が混ざった者の中に稀に現れる突然変異とも呼ぶべき存在。

 高い深術の適正と身体能力、治癒能力を持ち、皮膚の異常で獣の様な体毛が発生する。個々の能力としては「心」や「身」の一族に劣るものの、戦闘に限れば総合的に両者を上回る能力を持つ。

 世間一般には「獣の子」として認知され、モンスター等の血を引いたものと考えられて(※実際シンの一族の混血の者に体毛は存在しない為、先祖の中に本当にそれらの血が混じっている可能性はある)殆どが殺され、現代においてはその血筋はほぼ絶えている。

 

 

宝珠の「座」

 

 狭義には六つの宝珠を安置するべき地点を指し、広義にはそこからのディープスの流れを安定させるべくシンの一族によってその地点に作られた台座も含む。

 宝珠はただ存在するだけでは機能せず、「座」に在ることで初めてディープスの流れを通して二つの世界を繋ぐ。

 地点ごとに二つの世界で対になっており火と風、水と地、光と闇の宝珠が対応している。その為、二つの世界の間のディープスの流れによる影響はこれらの地点の周辺が特に強くなっている。

 

 

(あけ)天傘(あまがさ)』と『(よい)地衣(ちごろも)

 

 同一の職人の手により作られた対となる武器。火鼠(ひねずみ)(ころも)氷鼠(ひねずみ)(ころも)と呼ばれる特殊なモンスターの皮から作られており、ディープスの集束を手助けし並の武器とは比較にならない戦闘能力を持ち主に与える、詠技の使用も可能な武器。

 タリア・キサラギが娘達の身を守るため姉妹に与えた。姉のリョウカが宵の地衣を、妹のトウカが明の天傘を所持し、タリア・トウカが出奔し『ジェイン・アキ』と名を変えた後も愛用し続ける。

 本来姉妹での使用を想定されている為、二つが揃ってこそ真価を発揮する。

 

 

命令刻印術式

 

 「他者に命令を聞かせる事」を目的として開発された深術を応用した技術の一つ。通常の深術はその都度術式を組み立てるのに対し、体内に成立した術式を埋め込む事で常時発動し続ける。

 しかし、人間の精神はそう簡単に制御できるものではなく、現段階の技術では他人の行動を制御するところまでは至っていない。その為実際は「主が従者を任意のタイミングで殺す事が出来る」機能を持った爆弾の様なもの。

 その経緯から忌まれた技術だったがジェイン・リュウゲンはそれを逆手にとり、処罰される寸前だったブレイド・アズライトに見せしめとしてこれを埋め込む事で自分の手駒として彼を獲得した。

 ブレイドに埋め込まれたものはエッジとブレイドの父親によって改良されたものらしく、『そう簡単に爆発する事はない』とブレイドが発言している。

 

 

共生体(シンビオント)←New

 

 ガザニア・グレイスとサシード・グレイスの夫婦が研究し作り出そうとしていた生命の形。

 被術者の生命活動に支障を来たさないよう高濃度のディープスを持った存在を埋め込む事で、生まれ持った素養が無くても誰でも深術を扱える様になる。

 本来であれば、体内の「属性」を司るディープスのバランスは繊細なものであり無暗に高濃度のディープスが入りこむと間違いなく生物としての機能に異常を起こす。その為、カースメリア大陸原産のインペルメアブル鉱石という石の保護壁によって被術者と高濃度のディープスとの間はディープスの逆流が起こらない様に遮断されている。

 クロウと闇の宝珠の欠片はこの唯一の成功例。

 

 当初の想定では微生物や深術を扱う生物の器官の一部などの生体組織を埋め込み(名称はこれに由来する)、その能力も日常生活を補助する程度の深術の使用に留まる予定だった。が、唯一の人間の成功例であるクロウは現代の人間の手では作る事が出来ない超高濃度のディープス結晶体・アスネイシスの欠片を埋め込まれ、それによって本来の想定を遥かに上回る力を発揮している。

 反面、埋め込まれたアスネイシス側の力が強すぎる為鉱石による遮断が「宝珠の側からのディープスの流れを遮断する」事しか出来ておらず、クロウの方から無理に力を使おうと宝珠側にアクセスすると少しずつ鉱石による保護壁が壊れていく。

 

 

共生体過剰侵食(シンビオント・オーバーカロード)←New

 

 クロウが、同じ闇の宝珠を持った青年と対峙した時に陥った状態。

 通常、大気中の闇のディープスが集まって実体化していたラーヴァンが、まるでクロウと一体化した様な姿を持つ。

 獣同然の反射速度と目で捉えられない程の速度、そしてクロウ自身が封じていた「加減の無い闇の宝珠の力」を常時振るう為通常時の彼女とは比較にならない戦闘能力を持つ。

 クロウの自我は無く、ラーヴァンの防衛本能としての意識が全ての行動をコントロールする。

 羽で移動を、鉤爪で攻撃を、そして外殻部で運動を制御し、クロウという『容れ物』をラーヴァンの意志が強制的に動かす。彼女の生命のみが守れれば良い為、その身体へのダメージは考慮されておらず(身体を幾重も深術の膜で保護しているものの)瞬間移動にも近い移動スピードは、彼女の身体に痣になる程の多大な負担をかける。

 『クロウ』という人間の人格が消失している為、敵対しないものを意図的に狙う事こそないものの、扱う深術のレベルから敵味方無差別の戦い方をする。

 この状態のクロウと仲間全員の力を以ってしても、『ジード』には及ばなかった。

 

 本来であればどれだけ危険な状態に置かれても『共生体(シンビオント)』として完成されたクロウの身体はこの状態になる事は無いが、スプラウツで幼少期から強制された度重なる深術の使用の為に能動的にアスネイシスの宝珠の欠片にアクセスし続け、「瞳の色が黒く変化する」程に侵食が進んでしまったクロウの意識は完全にラーヴァンと繋がる様になってしまいこの状態になる可能性が生まれてしまった。

 

 

『ジード』

 

 クロウを圧倒し、ラークを瀕死状態に追いやった青年。

 彼女が持っていない闇の宝珠アスネイシスの残り全てを所持しており、クロウ側が本来の三割に満たない力なのに対し彼が所持する欠片は七割強で単純な出力でクロウと倍以上の力の差がある。

 王都で猛威を振るった火の宝珠の力がきちんと制御されていなかったのに対して、彼は完全に力を使いこなしている為実質的にそれ以上の「限りなく本来の宝珠に近い」力を持つ。

 その姿はラークの同族にして、シンの一族の裏切り者「ジード・カルシート」と酷似しているが彼は既に死亡している。

 

 

最上級深術

 

 禁術とも呼ばれる、ごく一部の人間にしか使えない上級深術クラスすら更に超えたクラスの深術。歴史上にも使えた人間がほとんどおらず、複数人でしか発動例がないものもある。

 また、この術を使えた者も当人が最も得意とする属性一つしか使えず、初めて発動された時期や文化圏もバラバラな事からその名前も大きく異なる。

 扱われるディープスの量が桁違いな為、熱に関係する火・光・闇属性の術は周囲(特に術者)への危険性から発動時間が極めて短い。

 更に、光属性と闇属性のディープスは熱と共に空気中に分解されやすい性質を持つため、他の属性と異なり通常は上級深術であってもその場に残らないが、最上級深術の場合その規模の大きさから術全体の体積に対する表面積の比が小さいため空気中への分解が緩やかになり、完全に分解されるまでに長い時間を要する(分解のペースは一定ではない為、データも少なく術の持続時間については正確な情報は無い)。

 分解が早い風属性の深術も完全に消えるまでにかなりの距離を要し、海を超えた隣の大陸まで強風が吹いたという記録がある。

 いずれも限りなく天災に近い術であり、通常の戦闘に用いられる様な術ではない。

 

 なお、あくまで「人間の限界」でしかない為、六属性の宝珠はいずれもこれと同等以上の力を秘めている。

 

 

・風の最上級深術……神息吹(カミイブキ)

 

 記録上は存在しながら、長い間分類されていなかった術。地の最上級深術として扱われていた時期も存在する。情報が少なく、その時の様子を示した文献には『一瞬にして大地が割れ、爆発した』という程度の情報しかなく、この術が発動したとされる位置には巨大なクレーターがある。

 これが、風の最上級深術に分類される様になったのは、「術者とされる者が残した名称が風を連想させる『神息吹』であったこと」、「広範囲の同心円上でほぼ同じ頃に強風の記録があること」、「地の最上級深術が別に存在し、全くの別物であったこと」等が挙げられる。

 

 現代ではその跡は湖となっており、息吹の御湖(いぶきのみこ)という名が付いている。地属性の深術と誤認されていたころは違う名称の湖だった

 

・火の最上級深術……(記録なし)

 

 炎の天才術士が操ったとされる最上級深術。複数人での発動か、命を犠牲にしての発動が普通の最上級深術の使用者の中にあって、彼は地脈の流れをきちんと理解し発動場所をそれに合わせる事で負担を最小限に抑え、個人で複数回この術を発動する事が可能であったとされる。

 焔螺旋の再現のように天に昇る火の柱を生み出し、上空で爆発を起こすことで術者との距離を調整し範囲内のものを一瞬にして灰とする。

 しかし、実際に発動されたのは一度だけであり、その一撃はとある術士の命を犠牲に放たれた同じ最上級深術、神息吹によって相殺されている。

 その衝突によって術者がダメージを負ったという記録は無いが、それ以降彼がこの術を使う事は決して無かった。

 

・地の最上級深術……エンプリファイド・レイジ

 

 最も穏やかに始まり、最も危険な領域に到達する最上級深術とされる。広範囲の大地そのものに作用し、その全体を揺らす。しかし範囲が広い分、術が発動しても直後の揺れはほとんど認識できない。が、この術の真の危険性は大地を揺らす事ではなく、「何度も繰り返す事でその揺れを増幅する事」にある。振動を繰り返す事でその威力は通常の地震に匹敵するものになり、最大威力ではアエスラングまたはイクスフェントの大地全てが崩壊する。

 これを発動出来たのは「放浪の三人組」だとされ、三人全てが異なる大陸で一番の術士であったという。その彼らも発動できたのは一度限りであり、三人の呼吸が少しでもずれれば振動の繰り返しはそこで途切れてしまうので、実際に理論上の最大威力を出すのは困難であったと推測される。

 

 後年の研究者達によればその時代、術士として並び立つものの無かった彼らの行動原理は「何か面白いことを起こす事」であり、一度の発動でも彼らはその成果に十分に満足していたと言われる。むしろ最上級深術発動後の彼らは再び禁術を発動する事よりも、この実績を後世に残す為に活動していた為、この術だけ残っている参考資料が多い。が、自分達の活躍を誇張して書かれたものがあまりに多かった為、逆に与太話として一蹴され最上級深術として認められたのが大きく遅れたのは皮肉としか言い様が無い。

 

・水の最上級深術……(つひ)水竜(すいろう)

 

 別名、「国を食らった大蛇」。数千年前の黒髪の少数民族からなる『水影術師団』という深術士の集団が用いた、アエスラングの歴史上最悪の『人災』。基本的に最上級深術というのは一人の術士の限界を超えた術であり、一度の使用で命を落とすか一生に一度しか撃てなかったと言うのが普通である。しかし、この集団は『一つ一つでは機能しない、百人単位で同時に使用して初めて一つの術として機能する』術式を持ち、連発こそ出来なかったものの天災クラスの術を自在に何度も操る事を可能としていた。

 その力に抗えるものは存在せず、迫害される存在でしかなかった黒髪の少数民族は二つの大陸をその支配下に置き、自分達を「世界の中枢を担うもの」と称し残る二つの大陸をもその手中に収めようとした。が、それは一振りの剣を持った青年によって阻まれる。当時の出来事は次の様に記録されている。

 

 

  「天まで届く水の流れの中にあって、その青年は点でしかなかった。黒髪の術師たちは彼に気付く事さえなかっただろう。しかし、青年の振るった剣は一振りで荒れ狂う水の竜の動きを止め、二振りで竜を真っ二つにした。その剣を、恐れた術師達はこう呼んだ。天より現れ、蛇を下す剣――クサナギノツルギ、と」

 

 

 クサナギノツルギと呼ばれる剣の力で『水影術師団』の暴走は止まったものの、彼らの行動の結果は今日のアエスラングにも多大な影響を残した。二つの大陸に跨るその領土は「アクシズ=ワンド王国」として名を変え、その頂点に位置する貴族階級は今もこの黒髪の少数民族が占めている。

 彼らの末裔の一人タリア・リョウカはこういった経緯を理解しており、多くの犠牲の上に成り立った貴族・王族というシステムを快く思っていない。

 

 

クサナギノツルギ

 

 伝承の中で水の最上級深術を打ち破ったとされる剣。その正体はイクスフェントの身の一族に与えられた切り札『天空の剣』。

 通常シンの一族は人間同士の争いに関わる事を禁じ、宝珠の力が人間の手に渡ることのみを阻止する為に行動する。

 が、宝珠そのものとは別に世界には「時に地脈と呼ばれる、二つの世界の宝珠間でやり取りされる強いディープスの流れ」が存在し、終の水竜の術式は南東のカースメリア大陸に流れる「水の宝珠 フラッディルージュ」の力を使っていた為、その事態を「一部であれ宝珠の力が人の手に渡った」ものと考え危惧したイクスフェント側のシンの一族が『天空の剣』の使用に踏み切った。アエスラングとイクスフェントの繋がりが絶たれたクライング本編の時代には登場しないものの、作中にはこれと対になる『深海の剣』が登場する。

 

本能共鳴技(インスティンクティブ・リンクアーツ)←New

 

 闇の宝珠に続いて火の宝珠までもが一時「座」を離れた事で、世界のディープスのバランス崩壊が加速した事による環境の変化。それが全ての生命にもたらした変化でモンスターが凶暴化し、その危機に単独で対抗する力を持たない人間の防衛本能が生み出した能力。

 人間の局所戦闘における最大の強み「武器を扱う能力」と「集団として戦う」の二つが最大限に引き出されたもの。

 発動者の武器にディープスが集束(コレクト)されるのをトリガーとし、付近に居る味方の武器へとディープスが流れ込みそれを媒介として両者の瞬間的な意識の共有がなされる事で高度な連携が可能となり「二人で同時に放つ(ディープス)RC(リコレクト)変化」ともいうべき技を放つ。

 防衛本能に作用して感覚的に発動する為、相手に対する僅かな不信感でも抱いていると発動せず「無意識のレベルでも絶対的な信頼を置いている」者同士でしか発動できない。

 また、(ディープス)RC(リコレクト)変化と密接な関係がある為これを使用できないリアトリスは発動する事が出来ない。

 エッジはおおよその原理を推察していたが第三元素の知識がなかった為、意識の共有がなぜ起こるのかと、そこに関わっているディープスの性質までは理解出来なかった。

 

 

第一構成元素 ハイエス←New

第二記憶元素 サーキュライツ←New

第三属性元素 ディープス←New

 

 「はじめに形が生まれた、次にそこに色が付いた、そして完成した時。そこには『既に』意味があった」 

 

 この世界の全てのものを成立させている三つの要素。

 普段エッジ達が術や技で扱っている「ディープス」はこの中の「属性」を司る第三元素に該当する。その為集められたディープスはそれ自体ではただの「属性」でしかなく、第一元素ハイエスによって「実体」が与えられて初めて形を得てその効果を世界に及ぼす。

 具体的には火のディープスを手に集束(コレクト)した場合それだけでは熱くならないが、ハイエスで実体化して術や技として使用した瞬間にそれは「火」という形をもって熱を発生させる。

 第二元素に関しては分かっている事が少なく、基本的に第一元素や第三元素の様に深術や物理現象にはほとんど影響を及ぼさないものの全ての物質に含まれいる事は分かっており、「記憶」を司り物事の連続性を確立させていると推測されている。

 この事からそれぞれに第一元素は世界を「形づくるもの」、第二元素は「意味を与えるもの」、第三元素は「彩るもの」とも呼ばれる。

 

 

交深術士(コンパッショナイザー)←New

 

 リアトリスの様な術者の正式名称。

 通常の深術士(セキュアラー)との大きな違いは、その術の組み立て方。

 深術士(セキュアラー)は基本的にディープスの制御が緻密では無いため大雑把に深術に必要な量のディープスを集め、それを実体化させるハイエスで縛り付ける様に固定する事で動きをコントロールし深術を使用している。

 それに対して、交深術士(コンパッショナイザー)は空気中のディープスそのものと心を通わせる事で直接ディープスを制御して動かし、それを実体化させる補助としてのみハイエスを使用している、云わば「生きた深術」使い。

 これにより「術を発動させる前段階で全ての動きを決めている」深術士(セキュアラー)では不可能な、「発動後のコース変更」、「術者が直に見えない海の中の相手への攻撃」等を可能にしている。

 その半面で交深術士(コンパッショナイザー)の術は、術の主体が術者では無く目的のみを伝達された「ディープス」である為「空気中に特定の図形を描く」、等の一つ一つの動作に目的の無い操作は不得手。

 

 総じて、深術に合わせてディープスを使うのが深術士(セキュアラー)であり、

 ディープスに合わせて深術を使うのが交深術士(コンパッショナイザー)である。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。