TALES OF CRYING ―女神の涙と黒い翼―   作:ILY

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「身」の一族、「心」の一族

 

 太古の昔、二柱の神から宝珠と世界を守るべく力を与えられた二種族。

 アエスラングの種族が大気と心を通わせ高い深術の適正を持つ「心」の一族。イクスフェントの種族が深術を使えない代わりに長い寿命と高い身体能力を持つ「身」の一族であり、両者の総称が「シン」の一族である。

 二種族の能力が異なるのは「互いが手を取り合う事」を望んだアエスラングとイクスフェントの願いからであり、またそれぞれの差異に二柱の神の性質の違いを見て取ることが出来る。

 

『混血児』

 

 身の一族と心の一族、そして人間の血が混ざった者の中に稀に現れる突然変異とも呼ぶべき存在。

 高い深術の適正と身体能力、治癒能力を持ち、皮膚の異常で獣の様な体毛が発生する。個々の能力としては「心」や「身」の一族に劣るものの、戦闘に限れば総合的に両者を上回る能力を持つ。

 世間一般には「獣の子」として認知され、モンスター等の血を引いたものと考えられて(※実際シンの一族の混血の者に体毛は存在しない為、先祖の中に本当にそれらの血が混じっている可能性はある)殆どが殺され、現代においてはその血筋はほぼ絶えている。

 

宝珠の「座」

 

 狭義には六つの宝珠を安置するべき地点を指し、広義にはそこからのディープスの流れを安定させるべくシンの一族によってその地点に作られた台座も含む。

 宝珠はただ存在するだけでは機能せず、「座」に在ることで初めてディープスの流れを通して二つの世界を繋ぐ。

 地点ごとに二つの世界で対になっており火と風、水と地、光と闇の宝珠が対応している。その為、二つの世界の間のディープスの流れによる影響はこれらの地点の周辺が特に強くなっている。

 

(あけ)天傘(あまがさ)』と『(よい)地衣(ちごろも)

 

 同一の職人の手により作られた対となる武器。火鼠(ひねずみ)(ころも)氷鼠(ひねずみ)(ころも)と呼ばれる特殊なモンスターの皮から作られており、ディープスの集束を手助けし並の武器とは比較にならない戦闘能力を持ち主に与える、詠技の使用も可能な武器。

 タリア・キサラギが娘達の身を守るため姉妹に与えた。姉のリョウカが宵の地衣を、妹のトウカが明の天傘を所持し、タリア・トウカが出奔し『ジェイン・アキ』と名を変えた後も愛用し続ける。

 本来姉妹での使用を想定されている為、二つが揃ってこそ真価を発揮する。

 

命令刻印術式

 

 「他者に命令を聞かせる事」を目的として開発された深術を応用した技術の一つ。通常の深術はその都度術式を組み立てるのに対し、体内に成立した術式を埋め込む事で常時発動し続ける。

 しかし、人間の精神はそう簡単に制御できるものではなく、現段階の技術では他人の行動を制御するところまでは至っていない。その為実際は「主が従者を任意のタイミングで殺す事が出来る」機能を持った爆弾の様なもの。

 その経緯から忌まれた技術だったがジェイン・リュウゲンはそれを逆手にとり、処罰される寸前だったブレイド・アズライトに見せしめとしてこれを埋め込む事で自分の手駒として彼を獲得した。

 ブレイドに埋め込まれたものはエッジとブレイドの父親によって改良されたものらしく、『そう簡単に爆発する事はない』とブレイドが発言している。

 

『???』←New

 

 クロウが、同じ闇の宝珠を持った青年と対峙した時に陥った状態。

 通常、大気中の闇のディープスが集まって実体化していたラーヴァンが、まるでクロウと一体化した様な姿を持つ。

 獣同然の反射速度と目で捉えられない程の速度、そしてクロウ自身が封じていた「加減の無い闇の宝珠の力」を常時振るう為通常時の彼女とは比較にならない戦闘能力を持つ。

 クロウの自我は無く、ラーヴァンの防衛本能としての意識が全ての行動をコントロールする。

 羽で移動を、鉤爪で攻撃を、そして外殻部で運動を制御し、クロウという『容れ物』をラーヴァンの意志が強制的に動かす。彼女の生命のみが守れれば良い為、その身体へのダメージは考慮されておらず(身体を幾重も深術の膜で保護しているものの)瞬間移動にも近い移動スピードは、彼女の身体に痣になる程の多大な負担をかける。

 『クロウ』という人間の人格が消失している為、敵対しないものを意図的に狙う事こそないものの、扱う深術のレベルから敵味方無差別の戦い方をする。

 この状態のクロウと仲間全員の力を以ってしても、『ジード』には及ばなかった。

 

『ジード』←New

 

 クロウを圧倒し、ラークを瀕死状態に追いやった青年。

 彼女が持っていない闇の宝珠アスネイシスの残り全てを所持しており、クロウ側が本来の三割に満たない力なのに対し彼が所持する欠片は七割強で単純な出力でクロウと倍以上の力の差がある。

 王都で猛威を振るった火の宝珠の力がきちんと制御されていなかったのに対して、彼は完全に力を使いこなしている為実質的にそれ以上の「限りなく本来の宝珠に近い」力を持つ。

 その姿はラークの同族にして、シンの一族の裏切り者「ジード・カルシート」と酷似しているが彼は既に死亡している。

 

最上級深術←New

 

 禁術とも呼ばれる、ごく一部の人間にしか使えない上級深術クラスすら更に超えたクラスの深術。歴史上にも使えた人間がほとんどおらず、複数人でしか発動例がないものもある。

 また、この術を使えた者も当人が最も得意とする属性一つしか使えず、初めて発動された時期や文化圏もバラバラな事からその名前も大きく異なる。

 扱われるディープスの量が桁違いな為、熱に関係する火・光・闇属性の術は周囲(特に術者)への危険性から発動時間が極めて短い。

 更に、光属性と闇属性のディープスは熱と共に空気中に分解されやすい性質を持つため、他の属性と異なり通常は上級深術であってもその場に残らないが、最上級深術の場合その規模の大きさから術全体の体積に対する表面積の比が小さいため空気中への分解が緩やかになり、完全に分解されるまでに長い時間を要する(分解のペースは一定ではない為、データも少なく術の持続時間については正確な情報は無い)。

 分解が早い風属性の深術も完全に消えるまでにかなりの距離を要し、海を超えた隣の大陸まで強風が吹いたという記録がある。

 いずれも限りなく天災に近い術であり、通常の戦闘に用いられる様な術ではない。

 

 なお、あくまで「人間の限界」でしかない為、六属性の宝珠はいずれもこれと同等以上の力を秘めている。

 

 

・風の最上級深術……神息吹(カミイブキ)

 

 記録上は存在しながら、長い間分類されていなかった術。地の最上級深術として扱われていた時期も存在する。情報が少なく、その時の様子を示した文献には『一瞬にして大地が割れ、爆発した』という程度の情報しかなく、この術が発動したとされる位置には巨大なクレーターがある。

 これが、風の最上級深術に分類される様になったのは、「術者とされる者が残した名称が風を連想させる『神息吹』であったこと」、「広範囲の同心円上でほぼ同じ頃に強風の記録があること」、「地の最上級深術が別に存在し、全くの別物であったこと」等が挙げられる。

 

 現代ではその跡は湖となっており、息吹の御湖(いぶきのみこ)という名が付いている。地属性の深術と誤認されていたころは違う名称の湖だった

 

・火の最上級深術……(記録なし)

 

 炎の天才術士が操ったとされる最上級深術。複数人での発動か、命を犠牲にしての発動が普通の最上級深術の使用者の中にあって、彼は地脈の流れをきちんと理解し発動場所をそれに合わせる事で負担を最小限に抑え、個人で複数回この術を発動する事が可能であったとされる。

 焔螺旋の再現のように天に昇る火の柱を生み出し、上空で爆発を起こすことで術者との距離を調整し範囲内のものを一瞬にして灰とする。

 しかし、実際に発動されたのは一度だけであり、その一撃はとある術士の命を犠牲に放たれた同じ最上級深術、神息吹によって相殺されている。

 その衝突によって術者がダメージを負ったという記録は無いが、それ以降彼がこの術を使う事は決して無かった。

 

・地の最上級深術……エンプリファイド・レイジ

 

 最も穏やかに始まり、最も危険な領域に到達する最上級深術とされる。広範囲の大地そのものに作用し、その全体を揺らす。しかし範囲が広い分、術が発動しても直後の揺れはほとんど認識できない。が、この術の真の危険性は大地を揺らす事ではなく、「何度も繰り返す事でその揺れを増幅する事」にある。振動を繰り返す事でその威力は通常の地震に匹敵するものになり、最大威力ではアエスラングまたはイクスフェントの大地全てが崩壊する。

 これを発動出来たのは「放浪の三人組」だとされ、三人全てが異なる大陸で一番の術士であったという。その彼らも発動できたのは一度限りであり、三人の呼吸が少しでもずれれば振動の繰り返しはそこで途切れてしまうので、実際に理論上の最大威力を出すのは困難であったと推測される。

 

 後年の研究者達によればその時代、術士として並び立つものの無かった彼らの行動原理は「何か面白いことを起こす事」であり、一度の発動でも彼らはその成果に十分に満足していたと言われる。むしろ最上級深術発動後の彼らは再び禁術を発動する事よりも、この実績を後世に残す為に活動していた為、この術だけ残っている参考資料が多い。が、自分達の活躍を誇張して書かれたものがあまりに多かった為、逆に与太話として一蹴され最上級深術として認められたのが大きく遅れたのは皮肉としか言い様が無い。

 

・水の最上級深術……(つひ)水竜(すいろう)

 

 別名、「国を食らった大蛇」。数千年前の黒髪の少数民族からなる『水影術師団』という深術士の集団が用いた、アエスラングの歴史上最悪の『人災』。基本的に最上級深術というのは一人の術士の限界を超えた術であり、一度の使用で命を落とすか一生に一度しか撃てなかったと言うのが普通である。しかし、この集団は『一つ一つでは機能しない、百人単位で同時に使用して初めて一つの術として機能する』術式を持ち、連発こそ出来なかったものの天災クラスの術を自在に何度も操る事を可能としていた。

 その力に抗えるものは存在せず、迫害される存在でしかなかった黒髪の少数民族は二つの大陸をその支配下に置き、自分達を「世界の中枢を担うもの」と称し残る二つの大陸をもその手中に収めようとした。が、それは一振りの剣を持った青年によって阻まれる。当時の出来事は次の様に記録されている。

 

 

  「天まで届く水の流れの中にあって、その青年は点でしかなかった。黒髪の術師たちは彼に気付く事さえなかっただろう。しかし、青年の振るった剣は一振りで荒れ狂う水の竜の動きを止め、二振りで竜を真っ二つにした。その剣を、恐れた術師達はこう呼んだ。天より現れ、蛇を下す剣――クサナギノツルギ、と」

 

 

 クサナギノツルギと呼ばれる剣の力で『水影術師団』の暴走は止まったものの、彼らの行動の結果は今日のアエスラングにも多大な影響を残した。二つの大陸に跨るその領土は「アクシズ=ワンド王国」として名を変え、その頂点に位置する貴族階級は今もこの黒髪の少数民族が占めている。

 彼らの末裔の一人タリア・リョウカはこういった経緯を理解しており、多くの犠牲の上に成り立った貴族・王族というシステムを快く思っていない。

 

 

クサナギノツルギ←New

 

 伝承の中で水の最上級深術を打ち破ったとされる剣。その正体はイクスフェントの身の一族に与えられた切り札『天空の剣』。

 通常シンの一族は人間同士の争いに関わる事を禁じ、宝珠の力が人間の手に渡ることのみを阻止する為に行動する。

 が、宝珠そのものとは別に世界には「時に地脈と呼ばれる、二つの世界の宝珠間でやり取りされる強いディープスの流れ」が存在し、終の水竜の術式は南東のカースメリア大陸に流れる「水の宝珠 フラッディルージュ」の力を使っていた為、その事態を「一部であれ宝珠の力が人の手に渡った」ものと考え危惧したイクスフェント側のシンの一族が『天空の剣』の使用に踏み切った。アエスラングとイクスフェントの繋がりが絶たれたクライング本編の時代には登場しないものの、作中にはこれと対になる『深海の剣』が登場する。


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