とある男の憑依体験   作:minesama

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筆の乗らない時の時間当たりのタイプ数の少なさは異常。
もっと早く投稿出来る予定だったのに……。


2.八月末(後) ※6/30朝、加筆修正

――その③

 

 

 

 8月28日早朝、暇をもてあました俺はフワフワと空中遊泳に勤しんでいた。 いつもみこっちゃんが寝てる間は暇でしょうがないのが今の生活の一番の難点だ。

 それでも昨日はみこっちゃんが結構遅くまで起きていて話しをしてたからマシな方、いやマシじゃねーか……。

 と言うのも、あのクッキー消失事件以来連日上条さんから謝罪のメールやら電話が掛かってくるやらで「そ、そろそろ許してやってもいいかな? いやでもやっぱり――」みたいな話を延々とされた。

 俺から見たらみこっちゃんは仲直りしたくてしょうがない様にしか見えないと伝えると「そ、そんな訳無いでしょう! あの馬鹿が必死に謝るから仕方なく、って聞いてんの?」ってな感じ。

 ちょっとだけだと微笑ましくて良いんだけど、延々とされるとさすがにウンザリだった。

 ああもう面倒くせぇな、さっさと仲直りしろよ……。

 何て事を考えながらみこっちゃんの部屋の前でフワフワ浮いていたら廊下の向こうから眼鏡を掛けた女装のゴリラが歩いてきた。

 

 ……は、え? いやいやありえんだろ、何でゴリラが? 意味が分からん。

 あ、良く見たらゴリラみたいな人間だあれ。しかもあのゴリラもどきが着てる服、いつもならこの時間に寮内を見回りに来る寮監の服(ピチピチになってる)じゃねーか?

 まさか、寮監から奪ったのか? いやいやそれこそありえん、あの寮監の目を欺ける訳が無い。

 戦闘力は言うに及ばず、門限に遅れた白井とみこっちゃんが空間移動で寮にこっそり戻ろうとしても難無く捕える人だぞ?

 

 つーかあの人いつも見回りの時に俺に気づいてるっぽいんだよな。

 寮内の見回りに来てる時に俺の居るほうに視線寄こすからお辞儀したら小さく頷いてたし。

 マジで何者なんだろあの人……。

 

 ってそれ所じゃねぇ!! 緊急事態だろ!!

 あのゴリラは実際にここまで侵入してんだから!!

 

(みこっちゃん大変だ!! 起きろ、起きろおおおぉぉぉ!!!!)

 

(――っ……うるっさいわねー、朝から大声出さないでよ……)

 

(それどころじゃない、侵入者だ侵入者!!)

 

(……はぁ、寮監がそんなの見逃す訳無いじゃない、何言ってんのよ)

 

(ほんとだって!! 寮監の服着た変態ゴリラがこっちに向かってるんだって!!!!)

 

(だぁー! 分かった、分かったから大声出すな!! ――ったくもう)

 

 ああ、そうこうしてる内に変態ゴリラがみこっちゃん達の部屋の前に……って何で俺の方見てるのこいつ!?

 え、もしかして俺の事視えてんのこいつ? ま、まさか寮監と同じ領域の人間!?

 それなら寮監の服を奪えたのも納得「ふわぁ……何だってのよもう……」やばっ、いくらみこっちゃんでもこんなのと鉢合わせしたら……っ!!

 

 ……あれ? みこっちゃん縮んだ??

 

「む、早いな御坂?」

 

「あ、寮監。おはようございます」

 

「うむ、おはよう」

 

 だぼだぼの黄緑のカエル柄のパジャマを着た幼女と寮監の服を着た変態ゴリラが朝の挨拶を交わしていた。 

 あるぇー????

 

 

 

□□□

 

 

 

 悪戯するんじゃないと小さいみこっちゃんにしこたま怒られた。悪戯じゃなくて本当に俺はそう見えるんだよ……。

 

 って言うのもすっかり忘れてたが今日は御使堕し(エンゼルフォール)が発動した日なんだな。

 御使堕しってのは天使の魂を天界から強制的に引き摺り下ろして人間の肉体に入れる大魔術だ。

 その副作用で、天使の魂に押し出された元の肉体の魂が他の人へと玉突き事故みたいになり、世界中でいす取りゲームのように次々と魂が入れ替わっていくって寸法だ。

 だから男が女になったり、老人が若者になったりするわけだ。

 って言っても魔術の対象になった人間は本来の魂の姿が見えるようになってるので入れ替わりに気づけない、とかそんな理屈だった気がする。

 俺が魔術の対象になってないのはやっぱり魂だけだからなのかな、良くわからんが。

 つーかこれ性別入れ替わってる奴はトイレまだ良いとしても、エッチする時はどうなるんだ?

 ノーマルなカップルがアッー! な事になったりするんだろうか? ……な、なんて恐ろしい魔術なんだ。

 

「お、ね、え、さ、まぁん」

 

「だあぁ!! いつもいつも朝っぱらくっつくな鬱陶しい!!」

 

 こちらは絵面以外は毎度おなじみ朝の光景。

 みこっちゃんの方はそのまま10歳前後まで縮んだような、あれは多分打ち止め(ラストオーダー)に入れ替わってるな。

 白井の方は金髪巨乳の、ツインテールにしてるけどあれ食蜂じゃね?

 ふむ、抵抗できない幼女なみこっちゃんに襲い掛かるみさきち、か。薄い本が厚くなるな……。

 

 それにしても夏休み中でほんと良かった。

 街中も結構やばい状況なんだろうけど、それ以上に常盤台の制服着たむさいおっさんの集団とか見たらトラウマになりそうだ。

 特に食蜂の派閥が集まってる所とかさぞかしカオスな光景になるんだろうなぁ……。

 あーやめやめ、考えない方が良いわ。

 

 ちなみに御使堕しが収束するまで上条さんから連絡が途絶えたのでみこっちゃんの機嫌が悪くなり愚痴に付き合わされた。あーもう面倒くせぇなぁ……。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

――その④

 

 

 

 8月31日、その夏休み最終日。

 みこっちゃんは、

 

「ご、ごめんなさいでしたー!!」

 

 上条さんに土下座をさせていた。

 

「は?」

 

 みこっちゃんは上条の突然の行動に一瞬固まった後、キョロキョロと周りを見回して顔を真っ青にさせてた。

 

「ばっ、やめっ!? あ、アンタ場所考えてやれよっ!?」

 

 明日から新学期と言う事で英気を養っていたり終わってない宿題に追われたりするのだろう、幸いにも先日までとは違って街にはほとんど学生の姿は見えない。

 多分昨日までだったらネット掲示板に 【屋外】常盤台の子が男子高校生を土下座させてた件【プレイ】 みたいなスレが乱立したんだろうな。

 

(人通り少なくて不幸中の幸いだな、みこっちゃん。そこに居る海原と金髪アロハと青髪ピアスと銀髪シスター、あと他数名ぐらいにしか見られてないぞ、良かったな)

 

(全く幸いじゃないんだけど!?)

 

「電撃地獄は何卒、何卒ご勘弁をば!!」

 

「ちょ、いや、だから――」

 

「カミヤンが常盤台の子と屋外土下座プレイ……やて? なんて羨ましい!!」

 

「か、カミやんはそっちの人だったのか。これはねーちんに要報告ぜよ……」

 

「そ、そんな……とうまが短髪のじゃぱにーずへんたいプレイに絡め取られていたなんて……!」

 

「くっ……、し、しかし御坂さんが要求するのなら自分も出来ます!!」

 

 あ、インちゃんと海原が青ピに侵された。

 こいつら魔術師を侵食するってことは、青ピの変態力は魔道書の汚染レベルに匹敵するのか……!?

 青髪ピアス、恐ろしい子……っ!

 

「アンタらも何言っちゃってんの!?」

 

 

 

□□□

 

 

 

 時間は少し遡る。

 今朝のみこっちゃんは機嫌はちょっと悪いかな? ぐらいでいつも通りだった。

 いつも通り朝食を摂ってさて気になる雑誌でも立ち読みに行こうかな、と寮を出た所で常盤台理事長の孫・海原光貴(ただし偽者)に捕まった。

 

 偽海原は上級の容姿、さわやか、権力者の血縁と大抵の女子なら5秒で「素敵、抱いて!」となりそうな絵に描いたようなイケメンだ。

 まあ残念ながら思いを寄せるみこっちゃんには苦手意識を持たれてるのだが。

 とは言え、相手が誠実な態度なのでみこっちゃんも電撃で追っ払ったりとかもし辛い様で、あれやこれやと理由をつけて離れようとしたのだけど「ご一緒しますよ」と爽やか笑顔でみこっちゃんは逃げ道を塞がれてた。

 みこっちゃんが下着売り場に行くと言っても「ご一緒しますよ」って偽海原が言った時はさすがの俺も引いたけど。誠実って何だっけ。

 俺が同じ事言ったら間違いなくストーカーとして通報される。おのれイケメン、おのれ魔術師!!

 

(うー、どうしよう……。アンタ何か良い言い訳思いつかない?)

 

(気持ち悪いんで付いてくるなって言えば?)

 

(言えるかっ!?)

 

(ええー、俺には言った事あるじゃん)

 

(アンタは別に決まってんでしょうがっ!)

 

 うむ、全く嬉しくない特別扱いだな。おれはそっちの(罵られて喜ぶ)属性は無いんで。

 

(あー、じゃあ上条さんでも呼び出せば? )

 

(な、何で私からアイツに連絡とってやんなきゃなんないのよ……)

 

(さすがの海原も男と会うってんなら引き下がると思うぞ)

 

(むう……いや、でも……)

 

(それにあんま意地張ったまんまだと上条さん取られちゃうぞ。ほら、道の反対側みたいに)

 

 と俺が指差す先(まあ俺の姿見えないけどな、気分だ気分)には腰にインちゃんを貼り付けて歩きづらそうな上条さん、それと上条さんのクラスメイトな金髪アロハの土御門と青髪ピアスこと青ピが妬みで人を殺せそうなレベルの視線を上条さんに向けてちょっと後ろを歩いてる。

 うん、あれに気づいたみこっちゃんから何かにヒビが入ったようなと言うか、引きつったというか、そんな感じの音が聞こえた気がした。

 偽海原もそれに気づいたのか「み、御坂さん? どうかされましたか?」って声を掛けてるけどガン無視。完璧なイケメンスマイルに綻びが出来てやんの。イケメンざまぁ。

 

「あのーインデックスさん、歩きにくいんでいい加減離れていただけませんかね……?」

 

「ふん、そんな事言って私が離したら女の子と所に行っちゃうつもりなんでしょ? 私知ってるんだよ、ここの所ずっとけいたいでんわーで女の子にめーるとか電話しようとしてたの」

 

「なん、だと……? カミやん貴様、この裏切り者!!」

 

「銀髪シスターさんだけに飽き足らず他の子もカミやん病の毒牙に!? カミやん見境無しすぎるで!」

 

「お前らがそれ言っちゃうの!? つーかインデックスが邪魔して宿題出来ねーから外に出たはずなのに何この状況!?」

 

「そんな事言ったって騙されないんだよ? 私が目を離したらけいたいでんわーで連絡取ってた女の子と会うつもりなんでしょ?」

 

「いや、あれは命の危険を感じたから何とか怒りを鎮めようとしただけであってですね。つーか今はあのビリビリお嬢様には会いたくないって言う……あれ、何かバチバチ電気の音が「久しぶりね」ひぃっ!?」

 

 と、笑顔で上条さんに語りかけるみこっちゃん。どんな効果か目元に影が掛かって迫力のある笑顔だが。

 怖いからちょっと目線はずしとこ。 

 

「アンタ、人の事放っといて ず い ぶ ん 楽しそうじゃない? シスター侍らせたり、女の子と毎日連絡とって今日はデートですか。――舐めてんのかコラ」

 

 バチバチバチバチ威嚇の電撃を徐々に強めるみこっちゃん。声にドスが効いてるから余計に怖い。

 いやまあ上条さん一人なら威嚇じゃなくてとっくに電撃飛んでるんだろうけどね。

 ほら、一応インちゃん近くに居るし? み、みこっちゃんは基本的には優しい子だから!(震え声)

 

「む、短髪。何の用なの?」

 

「で、遺言なら聞いとくけど?」

 

 む、無視しないで欲しいかもー! と叫ぶインちゃんをガン無視して上条さんににっこりととても良い笑顔で笑いかけるみこっちゃん。

 上条さんは真っ青を通り越して土色の顔で滝汗を流してる。

 

「ご、ご……」

 

「ご?」

 

「ごめんなさいでしたー!!」

 

 と上条さんが美しい洗練されたジャンピング土下座をした所で冒頭に繋がる。……ボウトウってなんだ? あれ、なんかデジャブが。

 

 んでまあ周囲の目線が痛すぎるみこっちゃんは何とか上条さんに土下座を止めさせようとするも、上条さんは震えながら「平に、平にいいぃぃ!」って言い続けて話しにならない。

 ……あー、ダメ押しになるけどみこっちゃんにアレも教えとかないとなぁ。

 

(みこっちゃんみこっちゃん)

 

(な、何よ! 今はアンタの馬鹿話聞いてる場合じゃ(寮)寮がどう、し……)

 

 油切れの機械みたいな音を出しそうな感じでみこっちゃんは常盤台寮のほうに視線を向ける。

 そこには真っ青な顔に縦線を入れた寮生達が口を半開きにしてこっちを見てた。

 一部のツインテールとかは泡を吹いて倒れそうになってたり、寮の管理してる人が処置無しと言った感じで天を仰いでる。

 

「あ、ははははー……」

 

 寮生達に見られていた事に気づいたみこっちゃんはあははははは、一頻り壊れたように笑った後「うわーん!」って叫びながら上条さん――ではなくインちゃんの手を掴んで全速力で走り出した。

 

「た、短髪うぅっ!?」

 

「うわあああぁぁぁん!!」

 

 あれ、何でインちゃん?

 

 

 

□□□

 

 

 

「あぐあぐまぐもぐ……うー、3個じゃ全然足りないんだよ……」

 

「ちょっとは遠慮って言葉を知らんのかアンタは」

 

 あの後一頻り走ったみこっちゃんは「噂が――寮監が――」とブツブツ言いながら頭を抱えていたが、インちゃんの「お腹減った」発言でようやく上条さんではなくインちゃんを連れて来てしまった事に気づいて更に愕然としていた。

 まあそんなみこっちゃんにお構いなく「お腹減ったお腹減ったお腹減ったーっ!!」と連発され、間違って連れてきた負い目もあったのかホッドドッグ(1個2000円)を3個インちゃんに奢ってた。

 

「はぁ、何やってんだろ私」

 

 うん、俺もそう思う。

 今日の出来事はかなり細かく覚えてたのにしょっぱなから大違いだ。

 原作知識とは何だったのか。

 

「それで、短髪はとうまといつからああ言う、その……ぷ、プレイをしてるのかな?」

 

 ちょっと恥ずかしそう頬を赤らめてみこっちゃんを睨みつけるインちゃん。

 頬に付いたマスタードがキュートですね。

 

「ち・が・う!! アイツが勝手に土下座してきたのよ!! まったく、私だってあんなとこでされたら迷惑、ってああもうマスタードついてるわよ、ほら」

 

「わぷっ……むうう。じゃあ何でとうまはあんな事したの?」

 

「まあ、アイツ私に悪いと思ってるんでしょ。行動はアレだけど」

 

「……とうま、短髪になにかしたの? またエッチな事?」

 

「違う!! ってちょっと待て、またってどういう事? 詳しく話しなさい」

 

「そ、それはちょっと、古傷を抉られるとゆーか、深く言及しないで欲しいかも……」

 

 みこっちゃんの顔が壮絶に引きつって「アイツに聞く事が出来たわね……」とボソボソ言う。

 上条さん、ご愁傷様です。

 

「ま、まあいいわ。……アイツね、私にねだった物を誰かにあげちゃったのよ。ほんと失礼な奴よね」

 

「えっと、それってもしかして、紙袋に入ってたクッキー?」

 

「そうだけど……まさかアンタ」

 

「あ、あのね。とうまはいつも私に食べ物くれるし、それにあの時はお腹減ってたから、その……だからとうまは悪くないって言うか……」

 

 さすがに悪いと思ったのかごめんなさい、と消え入りそうな声で呟くインちゃん。

 

「はぁ……いいわよもう。ったく、アイツもそう言えば良いのに」

 

 言う機会すら与えなかったのはみこっちゃんだけどな。

 

「え、えーっと、私も土下座した方が良いのかな? で、でもその、プレイ的な事は勘弁して欲しいかも」

 

「ち・が・うっつってんでしょうがあっ!! あのあからさまに変態の青髪の言う事間に受けてんじゃないわよ!!」

 

「そ、そうなの? なら良かったんだよ」

 

 あからさまにホッとするインちゃんと、疲れ切ってガックリ頭を垂れるみこっちゃん。

 うーぬ、インちゃんの天然攻撃が強烈で俺がみこっちゃんを弄る隙が見当たらん……。

 

「はぁ……、しっかしアイツも苦労してんのね。アンタみたいなのの面倒見て」

 

「そ、その言い方は些か以上に失礼かも――わ、わわっ!」

 

 ケイタイデンワーが! と言ってあたふたと携帯を取り出すインちゃん。

 

「出ないの?」

 

「まだ使い慣れてないんだよ!」

 

 と言ってインちゃんは携帯を取り出し、拙い操作でなんとか電話に出る。

 

「は、はいもしもし? こちらカミジョーで――あ、とうま? お昼ごはんは――とうま、追われてるの?」

 

 今までと一転、インちゃんは真剣な顔になって上条さんに応対する。

 多分、偽海原が正体表してトラなんとかって舌かみそうな名前の霊装使って追われてるところかな。

 ……あれ、この話みこっちゃんが聞いて大丈夫なのか?

 

「うん、それはトラウィスカルパンテクウトリの槍だと思う。効果は――」

 

(えっと、あの子何話してるか分かる?)

 

(安心しろ、俺もわからん。まあなんか俺みたいな希少な能力者でも相手にしてるんじゃね?)

 

 ほんとは能力者じゃなくて魔術師だけどな。

 

(うーん、でも何でこの子がそんな事知ってるんだろ?)

 

(さあ?)

 

 10万3000冊の魔導書を記憶してるからな、そりゃ知ってるだろうさ。

 とは魔術を知らないみこっちゃんに言えるわけも無く。

 さすがにそんな事教えたらアレイえもんにお仕置きされちゃうと思う。

 

「あ、ちょっととうま!? とうまってば! ……切れちゃったんだよ」

 

「アイツ誰かと戦ってるのね、場所は?」

 

「聞く前に切れちゃったんだよ……。でも結構激しい音が聞こえてきたから――」

 

 少し離れた路地のほうから何かが壊されるような音が聞こえてくるや否や二人は同時に駆け出した。

 

「アンタは危ないからそこで待ってなさい!」

 

「それはこっちのセリフかも!」

 

 なんて遣り取りをしながら二人で戦闘が行われてる場所へ走っていった。 

 

 

 

□□□ 

 

 

 

「守ってもらえますか、彼女を」

 

 みこっちゃんとインちゃんが到着した時、崩れたビルの鉄骨が上条さんと偽海原の二人に降り注ぐところだったが何とかみこっちゃんの能力で逸らす事が出来た。

 本当に間一髪だったみたいでみこっちゃんは冷や汗をかいてたが。

 かく言う俺も冷や汗ダラダラだ、ちょっと未来が変わるだけで色々ギリギリなんだから……。

 いやほんと、もう大人しくしてよう。多分三日で忘れそうだけど。

 

「いつでもどこでも、まるで都合の良いヒーローの様に駆けつけて。彼女を守ると、彼女のプレイに付き合うと、約束してもらえますか? 」

 

 え、何言ってんのアイツ。アイツも天然なのか? 恋は盲目なのか?

 みこっちゃんもずっこけそうになってるし、インちゃんはみこっちゃんを半眼で見るし。

 

 上条さんは、一応引きつった声で了承のしてた。

 偽海原が纏ってるのはシリアスな雰囲気には違いないからな、空気読んだんだろう。偉いぞ上条さん。

 

「フッ、まったく……最低の返事だ……」

 

 いや、最低なのはお前の頭だからね? 折角の良いシーンが台無しだから。

 みこっちゃんはブツブツと「ぷ、プレイとか言ってたのは気のせいよね。うん、そう、きっと気のせい。単にアイツは……」と自己暗示をかけてる。

 うん、精神衛生上もシーン的にもそうした方が良いと思う。

 

「ふんだ、別にいいもん、あんな約束しなくたってとうまは私の事助けてくれるんだよ。私はプレイなんかする必要ないし」

 

「だから違うっつってンだろうがいい加減その話題から離れろおおおォォォッ!!!!」

 

 ご愁傷様です。

 

 

 

□□□

 

 

 

 その後合流した三人は、時間も時間だということで昼食の為にファミレスに向かった。

 途中おそるおそる上条さんが「な、なぁ御坂、海原がプレイとか言って「わ・た・し・がそんな事望んでると思ってんのかああぁぁ!?」ご、ごめんなさーい!!」

 と冒頭の焼き直しになりかけてたりした。

 

 んでファミレスに着いたら上条さんは食事もそこそこに宿題を始め、みこっちゃんはそれを興味津々と覗き込む。

 

「へぇー、これが夏休みの宿題なのね。あ、そう言えば課題手伝ってあげる約束だったわよね」

 

「え、っと。わ、分かるのか?」

 

「ん、だって復習みたいなもんじゃないこれ」

 

 と更に身を乗り出してスラスラと問題を解いてくみこっちゃん。

 気づいてないのかなぁ、ほとんど密着してるぞ。ほら、上条さんガッチガチに固まってんぞ。

 インちゃんは、ムスッと不機嫌そうな顔で見てるな。それでもディアボロ風ハンバーグ(3つ目)を食べながらなのはさすがだけど。

 ふむ、インちゃんには悪いがやっぱこの二人が居るならからかわないとな。

 

 みこっちゃんが髪をかき上げた時、上条さん鼻をヒクヒクさせて匂いを嗅いでたっぽいし。うん、これでいこう。

 

(みこっちゃんやい)

 

(ん、なによ? お供え物ならあげないわよ、無駄になるだけだし)

 

(ちげーよ。上条さんがみこっちゃんに良い匂いがするっていってるぞ?)

 

(あれ、そんな事言ってた?)

 

「なによアンタ、やっぱまだ食べ足りないの?」

 

「え?」

 

 あれ、そっちに取っちゃうの? 失敗したかなぁ……。

 

「いやだってアンタ、良い匂いがするって「ガハッ!? ゴホッゴホゲホッ!!」ちょ、ちょっと急にどうしたのよ!?」 

 

「い、いいいやなななななんでも無いぞ!? そ、そそそそそんな良い匂いがするなんて、あは、あはははは「と~う~ま~?」え、あの、インデックスさん何をそんな歯をガチガチと……。歯を痛めますから「とうまが何を嗅いだのか気づかないと思ったのかな!?」うっぎゃあああああああ!!!!?」

 

 ああ、インちゃんは気づいたみたいだな。

 ちょっと予定外だけど面白いからまあ良い――ん? あの黒いスーツ姿のおっさんは……。

 

 

 ――断魔の弦――

 

 

 うお! いきなり窓ガラスぶち破ってきた!?

 三人は――おお、すげぇ。上条さんがとっさに二人とも守ってみんな無傷だ。相変わらずぱねぇな……。

 

「っ! てめぇ!!」

 

 忘れてたけど、そういや闇咲のおっさんが襲撃してくるんだったな!!

 

「無傷とは、少々予想「何してくれんのよコラァ!!」あばばばばば!?」

 

「……えっ?」

 

 ……えっ?

 

「え、いや……あれ?」

 

「アンタなに呆けてんの? さ、宿題の続きやるわよ。ほら、アンタもコイツに噛み付くのは止めときなさい」

 

「ふん、命拾いしたみたいだねとうま」

 

「え、いやあの、魔術師が……」

 

「まったく、短髪が気づいてたらこの程度じゃ済ませなかったんだよ」

 

「うん? 何が?」

 

「短髪は知らない方が良いかも」

 

「???」

 

 闇咲くん、1ターンで退場。

 あれ、いいのかなこれ? みこっちゃん能力者だけど魔術師倒しちゃって……。

 つーか闇咲くん完璧に放置されてるしこれ。いいやもう、知ーらね。

 

 あ、後でちゃんと事情聞いて闇咲くんの好きな人を上条さんが助けに行きました。




インさんと絡ませたら美琴さんを離脱させられなくて闇咲くんが瞬殺されたでござる……。

※2013年6月30日午前8時ごろ加筆修正。なんか3000文字ぐらい増えちまったい。

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