とある男の憑依体験   作:minesama

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超電磁砲Sの10話で麦のんの声が超キレッキレでワロタ。
声優さんって凄いんだなーって思った(粉みかん)


これからずっと禁書目録の裏方?編
1.八月末(前)


――その①

 

 

 

 8月23日晴れ

 8月も残すところ後10日を切ったがまだまだ真夏、相変わらず太陽からの日差しが強い。幽霊の俺にはあんまり関係ないが。

 と言うか今更だが学園都市の住人は真夏、しかも都市のど真ん中だというのにあんまり暑そうにしていない。せいぜいピザを主食にしてそうな体型の方が大汗かいてるぐらいだ。

 みこっちゃん達常盤台生なんかはサマーセーターをしっかり着て、ブラウスは胸元の第一ボタンまでとめてるのに平気な顔してるし。校則で決められてるんだろうがよく平気なものだ。

 と言う事をみこっちゃんに聞いたら、

 

(そりゃ暑くない事は無いけど、ってかアンタだって生身の時あったんだから分かるでしょうが)

 

 すいません生身で学園都市に来た事無いです、とは言える訳も無く実は今年から来たんだよって誤魔化したら、

 

(……アンタ、ほんと隠し事するの下手よね)

 

 と言われて溜息をつかれた。

 そういやよくよく考えるとみこっちゃんは書庫にハッキングして佐藤鳴介(お れ)の経歴知ってるから適当な事言ってもバレバレなんだった。

 つーかそもそも俺が佐藤鳴介かどうかすら怪しいと思われてるんだろうしな。

 それでも突っ込んだ事聞かないみこっちゃんマジイケメン。

 素敵、抱いて!

 

 結局何であんまり暑くないのかはよく分からんかった、まあどうでも良いか。

 

 

 

□□□

 

 

 

 今日のみこっちゃんの行動指針は上条さんにお見舞いの手作りクッキーを渡す事。やっぱり昨日上条さんからもお見舞い品の駄目出しをされたようだ。

 

「よし……っと。あとは焼きあがるのを待つだけですね」

 

 と言うわけで現在佐天の寮でクッキーを焼き上げ中。

 

「ごめんね佐天さん、無理言って台所使わせてもらって。寮の厨房だと色んな人の目に触れちゃうから……」

 

 機材なら常盤台の寮にもあるのだが、そういう訳で佐天の寮の台所を借りてるのだ。

 まあ俺的には「あの御坂様がクッキーを!?」「もしや殿方にお贈りするのでしょうか?」「まあ! お相手はどなたなのでしょう?」「キャー!」とか騒がれてあたふたするみこっちゃんを見たかったが、お姉様ラブの白井に妨害されたら元も子もないし仕方ない。

 

「ほほう、周りに詮索されては困る人へのプレゼントなわけですね!」

 

「ちっちがっ……! ただ借りを作りっぱなしなのは性に合わないだけ……!」

 

 赤くなって慌てるみこっちゃんを見て表情を緩め、むふふふと笑う佐天。

 俺、この子と仲良くなれる気がする。みこっちゃんを弄る的な意味で。

 

「わ、私は市販で十分だと思うんだけど、アイツ等揃って手作りにすべきとか……」

 

「……アイツ等? 御坂さん、二股狙いはちょっと……」

 

「い、いやそうじゃなくて!! あげるのはアイツ一人だけで……!!」

 

「ほほう、そのアイツさんが本命なんですね!」

 

「ちっ、ちがっ! 本命とかそう言うんじゃ――!」

 

 やるな、佐天涙子! まあみこっちゃんが自爆しすぎなだけなんだが。

 

「でも良かったです」

 

「え?」

 

「白井さんから最近元気ないって聞いてたから、あたしも初春も心配してたんですよ」

 

「うっ……」

 

「ほんとは相談して欲しかったです、ちょっと頼りにはならないかもですけど」

 

「……ゴメン、私の起こした事だから巻き込んじゃいけないってテンパってて……。以後気をつけます」

 

 ペコリと頭を下げるみこっちゃん。

 うむ、ミーハーなとこあるけど佐天ええこや。

 普通年上相手にこうは中々言えんわ。

 

(佐天は良い子だなぁ、なあみこっちゃん)

 

(……うん、ほんと私にはもったいない位)

 

(ふむ、それじゃあ佐天は俺が嫁に貰ってきますね)

 

(ほほう、アンタ佐天さんみたいな子がタイプだったんだ)

 

(なんだ嫉妬か? 大丈夫、俺はみこっちゃんも愛してるぜ!)

 

(ああ、うん。アンタそう言う奴だったわ……)

 

 で、その後は「でやっぱ元気になった原因は、噂の彼氏さんなのかなー?」とにやけ顔の佐天に詰め寄られたみこっちゃんが動揺して器具と材料をぶちまけ、それの片付けをしつつやっぱり佐天に上条さんの事を追求されてと言う感じだった。

 もちろん俺は俺でみこっちゃんを弄ってた。

 あーあ、佐天と意思疎通出来ればもっと色々みこっちゃんを弄れたんだがなぁ、残念だ。

 

 

 

□□□

 

 

 

 んでクッキー焼きあがって上条さんの病院に向かう途中の鉄橋の上。 

 みこっちゃんは未だに上条さんに渡す踏ん切りがついてないのか俺も居るのにブツブツ独り言呟いたり、急にシャドーボクシングを始めたり。結構いっぱいいっぱいなんだろうな。

 まあ素直に「これ、私の手作りクッキーなの」と笑顔で渡すみこっちゃんの方が想像出来ないが。

 

「何やってんだ御坂?」

 

 ありゃ、上条さんだ。ってまだどうみてもベッドで寝てなきゃいけない怪我の具合だと思ったんですが。

 

「なっ!? あ、アンタなんでここに!? まだ入院中じゃ!?」

 

「いやー、入院費も馬鹿になんないしな」

 

 いや、その理屈はおかしい。てか病院も包帯ぐるぐる巻きで松葉杖ついてる奴をよく退院させたな……。  

 あ、上条さんの顔に哀愁が……。ボソッと同居人が飢えて凶暴にとか言ってるし、ご愁傷様です。

 

「お前こそこんなとこで何やってんだ? ひょっとしてまた俺の見舞いに来てくれた「ちっ、違うわよ!!」そんなに全力で否定しなくても……」

 

 やれやれ、相変わらずだなみこっちゃんは。上条さん涙目だぞ

 

(みこっちゃん、それはちょっと……)

 

(う、うるさいわね!)

 

(やれやれ折角佐天に台所借りてまで作ったのに。これじゃ佐天に迷惑かけただけで終わっちゃうぞ?)

 

(……分かってるわよ)

 

(何なら代ってやろうか?)

 

(余計なお世話よ!)

 

 と俺の発破で意識を切り替えたみこっちゃんが何度か深呼吸をしてから上条さんに声を掛ける。

 

「あ、あの」

 

「うん?」 

 

 しばらくあーとかうーとか唸ってたみこっちゃんだが、ようやく決心できたのかクッキーの入った紙袋を上条さんに突き出した。

 

「……何でしょうかこの紙袋は?」

 

「クッキーよクッキー、さっきわざわざ作ってきたんだから!」

 

「え゛」

 

「……何よ、その反応。アンタが手作りが良いって言うからわざわざ作ってきたんでしょうがあっ!!」

 

「うおっ!? わ、悪かった! 悪かったからビリビリはやめろ!!」

 

 まったく、と電気を引っ込め溜息をついたみこっちゃんは上条さんの後ろに回り「ここに入れておくわよ」とバッグの中に紙袋を突っ込んだ。

 うん、多分そこに入れとくと食べ物限定のブラックホールに吸い込まれるぞ。

 

「他の人にあげんじゃないわよ。……一応、ア……ンタのために作ったんだから……」

 

 語尾が少し弱々しくなるみこっちゃん。

 そんな様子を見た上条さんは少し驚いたのか目を何回か瞬いてた。

 

「……はぁ」

 

「あによその溜息は」

 

「いや、いつもその位しおらしくしてれば良いのになーって。御坂たん萌えーって?」

 

「御坂たん言うな!!」

 

 とまあこんな感じでみこっちゃんはクッキーを渡す事『だけ』は出来た。

 

 なお、みこっちゃんはその日始終メールを気にしていたが上条さんからメールは来なかった模様。

 上条さんそういう気遣い出来ねーからな……。

 

 

 

 

 

 

――その②

 

 

 

「このクソ馬鹿やろーっ!!」

 

 と携帯に向けて叫んだ常盤台のお嬢様の声が道を歩く通行人達をギョッとさせた本日は8月24日。

 

 結局昨日は上条さんからクッキーついて感想も何も連絡が来なかったみこっちゃんはそれとなくメールを送るも返事無し。

 しびれを切らして電話を掛けてみたら、何でもみこっちゃんのメールがスパム扱いされてたらしいと言う事が分かった。

 それはともかくとして、クッキーの感想を聞くとなんとも歯切れの悪い返事。多分インちゃんに食べられたんだろうな……。

 案の定他人に食べられたと白状した上条さんに激怒したみこっちゃんが冒頭の怒りの言葉へと繋がった。

 まあインちゃんを貶める訳じゃないんだがこうなるのは予定調和なんだよな。

 インちゃんの知覚範囲にある食べ物は無くなる物と思わないとイカンから……。

 

 電話を叩き切ったみこっちゃんは帯電しながら早足で大きな足音を立てながら歩き出した。

 通話が終わってから余り間を置かずに着信がくるもガン無視。

 触らぬ雷神様に祟り無しだ、そっとしておくのが賢明って奴なのだ。

 

「よっ、どうしたのそんな不機嫌で、彼氏とけ「ア゛ッ!?」ひっ!?」

 

 と今も空気を読まず声を掛けてきた馬鹿を眼力だけで戦意喪失させるぐらい不機嫌だ。

 うう、誰でも良いからこの雷神様のお怒りを鎮めてくれないかな……。でないと俺の胃が……。

 

 

 

□□□

 

 

 

 30分ぐらい経つとようやくみこっちゃんも落ち着いてきた。

 と言っても雷神様から人間レベルの不機嫌度になった程度なので機嫌が直ったわけではないのだが。

 

「ん?」

 

 とみこっちゃんは足を止める。

 視線の先にはいつぞやのガチャガチャの前でしゃがみ込む常盤台の制服を着た茶色掛かった髪の――と言うか妹ちゃんだ。何番の子かは分からんが。

 妹ちゃんは何やら財布の中身をジーっと見つめている。まあガチャガチャをやるお金が足りないんだろうな。

 

 そんな妹ちゃんを見たみこっちゃんはやれやれと言った感じで妹ちゃんの方に歩いていく。とりあえず不機嫌だったのは忘れた様で何よりだ。

 

「よっ、どうしたの?」

 

「おや、お姉様こんにちわ。ミサカはガチャガチャと言う悪辣な集金システムと戦っていた所です、とミサカは説明します」

 

「悪辣て……。あっ、ごめんアンタ何番? やっぱりあの子以外は見分けつかなくって」

 

「ミサカの検体番号は10032号です。それであの子とは9982号でしょうか、とミサカは分かりきった事を訊ねます」

 

「そうだけど、まああの子はゲコ太バッチ付けてるから分かるってのもあるんだけど「ミサカも」うん?」

 

「ミサカもお姉様からのプレゼントが欲しいです、とミサカは俯き加減でおねだりしてみます」

 

 突然の妹ちゃんのおねだりに面食らってたみこっちゃんだが、ややすると引きつったような妙な表情になる。

 多分にやけ面を悟られまいと必死になってるんだろうな

 みこっちゃんは姉御肌だからこうやって甘えられるのが嫌いじゃないからな。

 

 

「しょ、しょうがないわねぇ。じゃあお姉さんが何か買ってあげるわよ」

 

「姉貴面するなら9982号にあげたような幼稚なものはかんべんな、とミサカは釘を刺しておきます」

 

「気前良くしたのに駄目出しされた!?」

 

 そんな感じで二人はブラブラと町を散策する事になったが、何故だか9982号の妹ちゃんとみこっちゃんが遊びまわったルートをなぞる事になった。

 発案は10032号の妹ちゃんなのだがその理由が「まずは9982号に並び立つところから始めなければいけません、とミサカは闘争心を燃え滾らせます」と無表情で言ってた。

 更に聞くとアイデンティティを奪われたような焦燥感が彼女を駆り立ててるらしい。みこっちゃんはあんまり分かっていなかったが。

 ……別の世界線から何か流れ込んでるんだろうか。

 

「で、アンタ結局何が欲しいのよ」 

 

「お姉様から頂けるならなんでも、とミサカは謙虚になってみます」

 

「そう言うのが一番困るんだけどねー……」

 

(ねぇ、アンタだったら何が良いと思う?) 

 

(俺に聞いたら俺の好みの下着の話になるぞ?)

 

(ああうん、ごめん。聞かなかった事にして)

 

 未だみこっちゃんは俺の事を理解してくれていなかったようだ、嘆かわしい事だ……。

 

(まあ冗談はともかく、何か見分けつくようになるものでもプレゼントしたらどうだ?)

 

(見分けのつくもの、ねぇ……)

 

 うむむむ、と腕を組んで妹ちゃんを見回すみこっちゃんだが、ふと頭の部分で目線が止まった。

 

「そうね、新しいヘアピンなんてどう?」

 

「ヘアピン、ですか」

 

「うん、違うの着けてれば私も見分けやすいしさ」

 

「ではそれを、とミサカは期待半分不安半分なのを隠しつつお願いします」 

 

「いや、隠せてないから」

 

 そして二人は中高生向けのアクセサリーショップへ。

 そこで色々選んだ結果、星型のヘアピンをプレゼントする事になった。

 

「うん、結構似合ってるじゃない」

 

「それは遠まわしな自画自賛でしょうか、とミサカは照れ隠しに毒を吐いてみます」

 

<いやいや、俺も似合ってると思うぜ>

 

<9982号がダメだから次はミサカを口説くつもりでしょうか、とミサカは警戒します>

 

<だから違うって……お前等の中で俺はどんな扱いなんだよ……>

 

 と、そんな感じで過ごしている間に一日が終わった。

 その頃にはみこっちゃんもクッキーの事はきれいさっぱり忘れて上機嫌になったのでほっとした。

 

 ちなみに、別の妹ちゃんと会う度にみこっちゃんは何かねだられる様になった事を付け加えておく。

 聞く所によると、ミサカネットワークでは日々妬みの声が上がってるとか。

 

 なお、10032号達に今後の出番は無い模様。南無。




10032号は9982号の犠牲になったので、ちょっとだけ出番を。
もう出ないけどな(ゲス顔)

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