とある男の憑依体験   作:minesama

12 / 15
原作では次編となる大覇星祭編が終わっていないので「とある科学の超電磁砲」を原作とするSSはここで終わりです。

今までのご愛読ありがとうございました


エピローグ.とある姉妹の恋愛事情

 俺が能力発動中に上条さんにぶん殴られて気絶した日の翌日、カエル顔のおじ様の病院の廊下にて。

 

(えぇー、じゃあ上条さんに俺のフォローしてくれて無いのかよ……)

 

(しょうがないでしょ、あの時はそんな雰囲気じゃなかったし。その後もアイツ、一方通行と戦って酷い状態だったんだから……)

 

(とか言ってイチャついてたんじゃねーの? 膝枕とかしちゃったりして)

 

「ブーーッ!!?」

 

 あ、こら。図星突かれたからってツバを飛ばすんじゃない。

 俺はいくら可愛い女の子のだからってツバ飛ばされて喜ぶ変態じゃないんだ。そういうのは白井にやってくれ。 

 

(あ、ああアンタあの時起きてたの!!!?)

 

(いいえ、カマ掛けです)

 

 あ、みこっちゃん固まって一瞬で顔が真っ赤になったな。

 いつも思うけど顔の血管に負担掛けすぎなんじゃないのかね。大体俺のせいだけど。

 

(そーかそーか、やっぱりイチャついてたのかー。そりゃー俺の事なんか話してる暇ないですよねー)

 

(あああああのね、違くて!! あれは私のせいでアイツが倒れちゃったからで別に変な意味じゃ無くて――)

 

(とまあみこっちゃんをからかうのはこの辺にしておこう)

 

(……へ?)

 

(ほらほら突っ立ってないで早く上条さんの病室行こうぜ、お見舞いに来たんだろ?)

 

(アンタ覚えときなさいよ……)

 

 ささ、恨みがましく睨んでないで早く行こうぜ。

 

 

 

□□□

 

 

 

 俺達が目的の病室に着くと上条さんは包帯ぐるぐる巻きで眠っていた。

 ICU(集中治療室)にこそ入ってないけど、どう見たって重傷だな。

 

 みこっちゃんはそんな上条さんを辛そうと言うか切なそうと言うか、複雑な表情で見つめている。

 自分の代わりに、妹の為にこんなボロボロになっちゃたんだからな。色々胸に来るものがあるんだろう。

 

 んで俺は空気を読んでしばらくその光景を眺めてたけど、いい加減このままってわけにもな。

 

(みこっちゃん、そういやお見舞いの品は何持ってきたんだ?)

 

(ん? ああ、デパ地下で適当に高そうなクッキーを選んできたけど)

 

 やれやれ、やっぱりか。

 

(いかん、みこっちゃんそれはいかんよ。ここは手作りクッキーをもってくるべきでしょう)

 

(はぁ、手作り? そんなの私のキャラじゃないでしょうに……)

 

(いやいや、大抵男は手作りって言葉に弱いんだよ。上条さんここまで体張ったんだし、そのぐらいの感謝の気持ちはあってしかるべきではないのかね?)

 

(そ、そりゃ確かに感謝はしてるけど……。で、でもコイツの事だから「自分のために戦ったんだ、お礼される事なんかしてねえよ」って言いそうだし……)

 

(いやいや、そう言われるからって引き下がるのはみこっちゃんらしくないだろ)

 

(それは、そうなんだけど……)

 

(そこでだね御坂クン。ここは一つぶちゅーっと行け)

 

(……………………はい?)

 

(ん、わかんねーか? キスだよキス、接吻とも言う)

 

(……で、で、でで出来るかそんなのおおお!!!!)

 

 ぐおっ!? みこっちゃん声でけぇよ、頭に響くわ……。

 でも「やらない」じゃなくて「出来ない」って所に微妙に本音が現れてるな。

 

(っつうー……。あ、ああ、俺が近くにいちゃ出来ないよな、うん。んじゃ俺廊下に出てるから上条さん起きる前にぶちゅーっといっとけ) 

 

(そういう事言ってるんじゃなくって!!)

 

(ほんじゃごゆっくりー)

 

(ちょっ、ちょっと――) 

 

 すいーって壁を抜けて廊下に出る。こういう時幽霊だと便利だわほんと。

 何かまだ言ってるけど気にしない、みこっちゃんガンバレー。

 

 

 

□□□

 

 

 

 俺が廊下に出てから多分10分ぐらい経ったかな。

 それだけ経ったけどみこっちゃんはまだ行動を起こしていない。 

 なんで分かるかって? 幽霊だって事を生かして覗いてるからに決まってるじゃないですか。ほんとこの体便利だわ。

 

 俺が廊下に出てってからのみこっちゃんはしばらく固まってたけど、俺が戻ってこないのが分かると上条さんの方にチラチラ目線を送り出して。

 そのうち廊下側に背を向けながら段々と上条さんの枕元に近づいて誰も居ないのにキョロキョロした後上条さんを見つめて、かと思えば急に頭をぶんぶん振ったり。ほんと見てて面白い。

 まあ出来る事ならみこっちゃんの顔が見える反対側に回りたいんだけど、そこまで動くとさすがにみこっちゃんにばれるしな。ここで我慢しよう。そして早くやっちまえ。

 お、みこっちゃんの動きが止まった。行くか、行くのか?

 

「まったく、とうまはまた無茶して……」

 

 ありゃ、インちゃんじゃないか。何時の間に病室の近くに。

 室内の様子に気を取られて全然気づかなかった。

 

 そんでまあ幽霊な俺がインちゃんを止められるわけもなく病室のドアを開け、

 

「えっと、あなたは誰なのかな?」

 

「……ん、あれ。インデックスと……何やってんだ御坂」

 

 背を壁に張り付けて真っ赤な顔で滝汗を流すみこっちゃんを、目を覚ました上条さんとインちゃんが怪訝そうに見つめる構図になった。

 

 病室に入ってきたインちゃんは上条さんに「心配したんだよ」とちょっと不機嫌そうに言うとみこっちゃんに向き直り、頭の先から足元までジロジロと観察してた。

 

「それで、あなたは何なのかな?」

 

 上条さんを背に隠すようにしてみこっちゃんに少し不機嫌そうな視線を向けるインちゃん。

 無意識にこの先の恋敵(ライバル)になると感じ取ったんだろうか。

 

「何なの、って……。お見舞いに来ただけよ、アイツがあんなのになったのも私に責任があるって言うか……」

 

「……もしかして、あなたもとうまに助けられたの?」

 

「まあ、そうだけど……。ってアンタもなの?」

 

「うん、その時もこんな感じで病院に担ぎ込まれてたんだよ」

 

 みこっちゃんとインちゃんは上条さんを一瞥した後、同時に溜息をついた。

 息ぴったりだなこいつら、上条さん絡まなけりゃ仲良くなれるんじゃね?

 

「まあその事については後でとうまに問い質すとして……。さっきから気になってたんだけど、短髪の近くから何か気配と言うか、うーん。浮遊霊でも居るのかな?」

 

「短髪て……ってアンタ、コイツの事分かるの?」

 

 おお、すげぇなインちゃん、俺の気配感じ取れるのか。

 やっぱ魔力が無い分幽霊とかには敏感なのかね?

 

「心当たりがあ「インデックス!! そいつは何処にいる!?」と、とうま!?」

 

「ちょ、アンタ、まだ立ち上がっちゃっ!」

 

 うお、上条さん重傷なのに立ち上がっちゃ……。あーあ、みこっちゃんとインちゃんと取り押さえられてら。

 

「離してくれインデックス、御坂!! 御坂は悪霊に憑りつかれてんだ!! そいつを今度こそやっつけないと――離せ、離せえええぇぇぇ!!」

 

 

 

□□□

 

 

 

「大変申し訳ございませんでした」

 

 とベッドの上で頭を下げる上条さん。

 みこっちゃんの懸命な説明で何とか俺の誤解を解く事が出来たからだ。

 説明聞いたら顔真っ青にしてジャンピング土下座しそうな勢いだったのでみこっちゃんに頼んで止めてもらったけど。

 

「まったく、とうまはもうちょっと考えてから行動すべきかも」

 

「返す言葉もございません……」

 

 うんまあ、確かにそうしてほしいな。昨日の夜睨まれた時すげー怖かったし……。

 まあ不思議と殴られた痛みは無かったんだけどね。実体化もどきを解除されただけだからなのかな。

 

「あははは……。ま、まあコイツも気にするなって言ってるし。それにあの姿みたら勘違いしてもしょうがないわよ、現に私も初めて見た時もそうだったし」

 

(そういや白井と二人でびびりまくってたな)

 

(しょうがないでしょ、アレ下手するとトラウマレベルよ?)

 

 ええー、そんなに酷いのか俺の実体化もどき……。

 

「そうなの? ちょっと見てみたいかも」

 

「そんな面白いもんでもないんだけど……」

 

 ふむ、まあご要望とあらば。

 いでよ俺の体、うぬぬぬぬ!! ついでに笑顔のサービスじゃ、ニタァ。

 

「……うわぁ、凄い邪悪な笑みなんだよ、これは酷いかも。とうまの事責められないんだよ……」

 

「でしょ? これでコイツには自覚無いんだから余計にね」

 

 ひでぇ言われようだ……。

 まああなた達が仲良さげにしてるなら僕は構いませんけどね。……べ、別に悲しくなんかねーし。

 

 んでしばらくは、みこっちゃんとインちゃんが上条さんの愚痴を(上条さんは遠い目をしてた)言い合ってた。

 一頻り話した後、上条さんがインちゃんに席を外して欲しいと言った。もちろんインちゃんは渋ったけどプライベートに関わる話をするからって事で何とかおさまった。もちろん俺も廊下に退避、空気を読める男って良いよね。

 その際変な事しないようにってインちゃんが釘を刺したら、みこっちゃんが面白いくらい動揺してたのは笑えた。

 

 話は多分、上条さんの話はもちろん実験と妹ちゃん達に関する事だろうな。

 存分にみこっちゃんを慰めてフラグ強化に尽力していただきたい。

 

「ううー、心配かも心配かも。とうまと短髪を密室で二人っきりにさせるのは心配かも。あなたもそう思うでしょ?」

 

 いや、俺的にはもっとぐいぐい行って欲しいんだけどね。まあみこっちゃんは起きてる上条さんにアプローチする度胸無いから心配すんな。

 ってこの組み合わせじゃ意思の伝達できないか。

 

 何分か経ってみこっちゃんが病室から出てくるまでインちゃんは「心配なんだよー」って言いながらずっと廊下をうろうろしていた。

 

 

 

□□□

 

 

 

 正午、上条さんの病室を後にした俺達は9982号の妹ちゃんと合流し、病院裏手の小さな公園のベンチに座っている。

 上条さんほどではないにしろ結構な怪我をした妹ちゃんはあちこち包帯だらけだ。歩く程度なら支障がないらしいのは幸いだが。

 

「ミサカは、本来でしたらお姉様と出会った日の夜に死んでいるはずでした」

 

 妹ちゃんは続ける。

 それは一万回近く繰り返されてきた当たり前の事。

 自分達は殺されるために作り出されたもの。

 ただそれのみが存在意義であり、産み出された理由である、と。

 

「しかしお姉様とあの少年、それとあの――なんだかよく分からない方によってその目的が失われました」

 

 よく分からない奴って……いやまあ大して喋ってないし姿も見えないから仕方ないんだろうけどさあ。

 

「だからミサカにも生きるという事の意味を見出せるようこれからも一緒に探すのを付き合ってください、とミサカは精一杯のワガママを言います」

 

「――――うん、よろしく」

 

 うむ、麗しき姉妹愛とは良いもんですな。

 おじさん不覚にも涙腺が緩んじゃいそうですよ。

 

「それと、お姉様といつも一緒にいらっしゃる能力者の方、あなたはなんと呼べば?」

 

<ああ、名前言ってなかったか。佐藤鳴介だよ>

 

「では佐藤さんと。佐藤さんもミサカを助けるために尽力してくれたと聞きました」

 

 いや、尽力ってなぁ。俺はちょっと口出しただけで後はみこっちゃん達がほとんどやってくれたし。

 

「お姉様はミサカが妹だからと、あの少年はミサカが世界にたった一人しか居ないからだと。では佐藤さんは何故ミサカを助けてくれたのでしょうか、とミサカは期待を込めて質問します」

 

 何で、って言われてもなぁ。

 こうやって直に会ったら死んで欲しくないって思いが出てきただけなんだけど。

 こっぱずかしくて言い辛い、つか俺のキャラじゃねーし。

 

「ほら、答えてやんなさいよ。この子さらってでも助けようとしたんでしょうが」

 

 ちょ、ま、何を。

 

「そうなのですか?」

 

「うん、普段コイツふざけてばっかりなのにアンタ達関連だと物凄い真面目だったからね。ちょっとヘタレだけど、頑張ってたし」

 

 み、みこっちゃーん!? 何ペラペラしゃべってんの!? 

 

(ちょ、みこっちゃん、あのですね……)

 

(何よ、別に隠すことじゃないでしょ。それともアンタ照れてるわけ? ぷぷ)

 

 おのれ、普段の仕返しのつもりか……。くそ、後で覚えてろよ。

 

「普段ふざけてばかり…………真面目……ヘタレなのに頑張る…………。なるほどなるほど、とミサカは……」

 

 なんか妹ちゃんもブツブツ言ってるし、何がなるほどやねん。弁護士になって法廷にでも立つのか?

 

「わかりました。謎は全て解けた、とミサカは先日再放送されていた推理ドラマの決め台詞をドヤ顔で使います」

 

 完全に自分の世界に没頭してら、まあいいけどさ。

 

「あなたはミサカの事が好きなのですね、とミサカは少々頬が紅潮するのを感じつつ衝撃の事実を明かします」 

 

 …………………………はい?

 

「なるほど、そういう事だったのね……」

 

 いや、みこっちゃん何腕組んでうんうん頷いて納得したみたいになってんの?

 俺はそういうんじゃなくってだな……。

 

「ですがその気持ちには答えられませんごめんなさい、とミサカは間髪いれずに定番のお断りの言葉を口にします」

 

 いや、ちょ、ま。

 

「あちゃー、振られちゃったわね。」

 

 いや、だから何で俺振られたみたいになってんの?

 え、何この状況?

 

<あの、妹さんわたくしはですね――>

 

「感謝はしていますがミサカの気持ちは変わりません、とミサカはきっぱりと答えます」

 

<いや、だからね――>

 

 その後、妹ちゃんは俺が喋ろうとするたびに被せてきたので(思念波の会話にしないのと被せ気味なのは照れてテンパってたせいだと後で分かった)この日は誤解を解く事が出来なかった。

 ちなみにみこっちゃんは早々に妹ちゃんの勘違いだと気づいたのか、顔を背けてプルプルしてた。

 まじで覚えてろよチクショウが……。

 

「お友達ならOKです、とミサカは妥協案を提示します」

 

<だから違うっつーの!> 

 

 俺の声にならない叫びは届くことは無かった。

 

 学園都市は今日も平和です。

 

 

 

 ――欠陥電気編・完――




それでは引き続き「とある魔術の禁書目録」を原作とするSSをお楽しみください。
なお、こう言ったいやらしい言い回しをするのは僕の趣味ですので諦める事をお勧めします。
まあ燃え尽きた感があるのでしばらく更新しないかもしれませんが。
もしやる気が戻らなかったらこっそりと完結済にするかもしれませんがその時はご容赦を。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。