吉良吉影はゼロから始めたい   作:憂鬱な者

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第9話:苦難の運命

翌朝

 

 

彼はいつも通り仕事をこなし

朝食を済ませた

 

 

廊下を歩いていると、レムがやって来た

 

「吉良さん、食材の在庫が残り少ないので買い出しを手伝ってくれますか?」

 

「ん、あぁ構わないよ」

 

そう言い、2人共支度をし

玄関に集まった

 

 

「姉様は留守番をおねがいします」

 

「わかったわレム」

 

するとそこにロズワールもやって来た

 

「私も用事があるから出かけてく〜るよ

朝までには帰る予定だ〜からね〜」

 

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

そう言い、3人共外に出た

 

「それじゃあ、君達もよろしくね〜」

 

そう言うと、彼は宙に浮き

猛スピードで空を飛んで行った

 

(魔法使いは空も飛べるのか…

まるでメルヘンやファンタジーだな…)

 

そう思いながら、街に向かって歩いた

 

 

しばらく歩くと、小さな村に出た

 

 

「こんなところに村なんてあったのか…

森に隠れて気づかなかったな…」

 

周りを見渡していると

村人達が物珍しそうに彼を見に来た

 

「おや、あんた見ない顔だね、どこから来たんだい?」

 

「その格好、あそこの屋敷の人だろう?名前なんていうんだい?」

 

(なんだこいつらは…寄ってたかって質問して…

適当に答えてさっさと出るか…)

 

そう思い、彼は自然な振る舞いで適当に答え

少し先にいるレムに早足でついて行った

 

少し歩くと、レムが立ち止まって何かを見ていた

 

「どうした?」

 

視線の先を見ると、子供たちがいた

 

奥の子を見ると、子犬を抱えていた

 

「なんだ…犬か…」

 

「かわいいですね」

 

すると、子供たちが寄ってきた

 

「あー、知らないおじさんだー」

 

(おじさんだと…)

 

「見て見て、子犬見つけたのー」

 

お下げの少女が彼に子犬を見せつける

 

「すまないが遠慮するよ…犬にはあまりいい思い出が無いのでね…」

(なんだこの犬…頭が禿げてるぞ…)

 

彼が引くと、レムが子犬を撫でた

 

「かわいいじゃないですか」

 

彼女が撫でてると、子犬が彼女の手を噛んだ

 

「痛っ!」

 

「ふん…これだから犬は好きじゃない…」

 

「むっ」

 

彼女が彼を睨むと

彼は目を逸らした

 

 

そんなことがありながらも、街に着いた

 

 

「久しぶりに来たな…

で、何を買うんだ?」

 

「えっと…」

 

 

街中を周り、食材などを買い集めた

 

 

「…まさかこれをわたしに運べと?」

 

大量の荷物を見て、彼女に嫌そうな顔を見せる

 

「はい、いくつかは私も運びますから」

 

(こいつ…)

 

少しイラッとしたが、仕方なく運ぶ事に決めた

 

すると背後から声が聞こえた

 

「お、あんた久しぶりだな」

 

「…確かあの時の」

 

声をかけて来たのは

以前に貧民街について教えてくれた店主だった

 

「そこの嬢ちゃんはあんたの同僚かい?」

 

「まぁ、そんなところかな…

そうだ、この前買うって言ったかな…

それ一ついいかな?」

 

「おう、リンガな、毎度あり!」

 

「ありがとう」

(リンガ?リンゴじゃないのか…)

 

「吉良さん、そろそろ昼になっちゃいますから急ぎましょう」

 

「あぁ、すまない」

 

そう言うと、リンガを片手にキラークイーンを出し

荷物を持たせた

 

 

道中にて

 

 

「…便利ですねそれ」

 

「まぁね…キラークイーンはそれなりにパワーはある」

 

リンガを齧りながら話す

 

「それより『手』大丈夫か?」

 

「あ、はい

大して血も出ませんでしたから」

 

「そうか…」

 

少し手を見過ぎな気もするが

それがどういう理由かは本人にもわからなかった

ただの『気遣い』か…彼の『サガ』なのか…

 

 

しばらく歩くと屋敷に着いた

 

「お疲れ様です

吉良さんは休んでいてもいいですよ」

 

「そうか、そう言うならそうさせてもらうよ…」

 

そう言い、彼は部屋に向かった

 

 

向かう途中、また廊下の扉に違和感を感じた

 

「…また、あの時の感じだ…」

 

とりあえずノックをし、扉を開けると

 

そこにはべアトリスがいた

 

「?確か禁書庫はもう少し先にあった筈…

まさか、これも魔法…か…?」

 

「…随分と鋭いのかしら?」

 

「…やはり、魔法か何かか…」

 

中に入り、扉を閉める

 

「正確には『扉渡り』という能力

屋敷内の部屋を自由に移動できるわ」

 

「…それは凄いが、相手にとっては迷惑だな…」

 

「ふん」

 

「せっかくだ…読書でもさせてもらうよ…」

 

そう言い、適当に本を選び

読み始めた

 

 

「…聞きたいことがあるんだが…いいかな?」

 

「何かしら?」

 

「この本に書かれている『サテラ』というのは何者だ?」

 

数秒の沈黙の後、彼女が答えた

 

「…そうね、一言で言うなら『魔女』かしら」

 

「有名なのか?」

 

「えぇ、少なくともルグニカで知らないものはいないかしら

嫉妬の魔女サテラ…他の6人の魔女を滅ぼし、世界の半分を飲み込んだという魔女…

今では封印されてるけど、完全ではない…

あまり人前でサテラのことを言うのはやめた方がいいかしら」

 

「そんなものがこの世界にいるのか…」

 

再び本に目を通し、絵を見る

 

(この絵…エミリアに似ているな…同一人物とは考え難い…

世の中にはそっくりな人間が3人いると言うが…

ただ、似ているだけか?

だが、この魔女がそれほどの存在なら、彼女は差別的なことをされるかもしれん…

人と話すのは少ないと言っていたな…

可能性はあるな…)

 

少し真剣な顔つきに、彼女も気付いていた

 

(本当に勘のいいやつ…)

 

 

しばらく何冊か本を読み、読み終えると

彼女に質問をした

 

「魔法や加護などは大体理解した…

ところで『呪い』とはどういうものなんだ?」

 

「…そうね、簡単に言うと

相手に接触することで付け、後から発動し

対象を殺すもの…かしら」

 

「つまり…相手に触れ、後から作動すると?」

 

「平たく言うとそうかしら」

 

「時限爆弾の様なものか…」

(こっちの呪いとは違うのか…)

 

「でも、呪いは術式が発動する前なら解除出来るけど

発動したら解除は出来ない…

もし、解除するなら術をかけた本人を殺すしかない…

何でこんなこと聞くのかしら?」

 

「ただ、本で見て気になっただけだよ…

色々為になった…また暇があったら来るよ…」

 

そう言い、禁書庫を出た

 

 

 

 

 

特に変わったことも無く

普段通り彼は過ごした

 

その夜

今日も安心して眠れる…そう思っていた

 

 

薄暗い中、廊下を歩いていると何かを見つけた

 

「誰かいるのか?」

 

そう呟き、近づいてよく見ると

 

「!?…レム!!」

 

倒れていたのはレムだった

 

「はぁ…はぁ…」

 

「息が荒い…病気か…?

いや…朝も昼も元気そうだった…この短時間でなるとは考え難い…

毒か…?いや、それも考え難い…

仮に食事に入っていたとしたら、わたしもなっているはず…

今日は調理場にわたしもいた…

調理中に入れられた可能性は無い…

運ぶ時も一緒にいた…

としたら…考えられるのは…まさか…!!」

 

その時、彼の脳裏に一つの言葉が思い浮かんだ

 

「『呪い』ッ!!」

 

冷汗をかき、彼女の手を強く握る

 

(考えられるのはそれしか無い…!!

呪いは接触することでかけられると言っていた!!

今日、彼女が接触したのはあの『犬』だけだ!!

今日見た本にもあった…魔獣というものがいると…

まさか、あの犬が魔獣か!?

だとしたら…あの村もマズい…!!

他人が死ぬのはわたしとっては如何でもいい…

だが…彼女が死ぬのはわたしにとってマイナスだ…

村人は…)

 

彼は彼女を抱え、立ち上がった

 

「殺されると解っていて、見殺しにするのは気分が悪い…

だが、何よりも…あの犬はわたしにとって『害』だッ!!」




べアトリスの喋り方難しいです(´・ω・`)

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