吉良吉影はゼロから始めたい   作:憂鬱な者

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第7話:家庭的な男

「…さて、そろそろ行くか…」

 

そう言い紅茶を飲み干すと、ティーセットを片付け

調理場に向かった

 

 

 

 

 

「待たせてしまったかな?」

 

「いえ、大丈夫です

それでは早速ですが、昼食の準備をしますから手伝ってください」

 

「わかった」

 

そう言うと彼は上着を脱ぎ、袖を捲ると

彼女に言われた通りに料理を作り始めた

 

だが、驚くことに彼は

野菜や果物の皮を剥き、食材を切り、火を通し

味付けから何から何まで、用意するものの殆どを1人で終わらせた

 

そんな彼を彼女達はただ呆然と見ているだけだった

 

「ん?どうした、手が止まってるじゃないか」

 

「え、あっ、すみません…」

 

「君たちは歳下とはいえ、わたしの先輩なんだから

君たちがしっかりしてないと困るよ」

 

「ごめんなさい…」

 

手を洗いながらレムに言う

 

「まだ、手伝うことはあるかな?」

 

「大丈夫です…

吉良さんは料理とか得意なんですか?」

 

「別に得意というわけでもないよ…

ある程度は1人で作れるってだけさ」

 

「そ、そうですか…」

 

殆ど立場が逆になった様な中

昼食の準備は終わった

 

 

 

 

 

(結構な量だったからか…少し肩が疲れたな…)

 

肩を揉みながら、部屋に向かって1人廊下を歩く

 

すると、なんとなく通り過ぎた扉に違和感を感じた

 

「…」

(この扉…何か感じる、誰かいるのか?)

 

すると彼は、扉をノックする

 

(返事が無いな…開けてみるか…)

 

そう思い、ゆっくりと扉を開けた

 

そこで彼が目にしたのは、大量の本の中

1人本を読んでいる金髪の少女だった

 

「…」

(こいつ…朝、隣に座っていたやつだ…)

 

「何か用かしら?」

 

本を閉じ、彼を見つめる

 

「ここは図書館…いや、書庫か?」

 

「えぇ、正しくは禁書庫

ここに何の用かしら?」

 

「いや、何となく違和感を感じて入ってみただけだ

朝、会ったが名前を聞いてなかったが、良いか?」

 

「そ、私は『べアトリス』

この禁書庫の司書をしてるわ、あんたの名前は聞いてるわ『吉良吉影』よね?」

 

「あぁ

この屋敷にはこんなに広い書庫があったのか…

少し見せてもらってもいいかな?」

 

「…好きにすれば」

 

「わかった」

 

そう言い、彼は適当に本棚から一冊本を取り

開いた

 

「…」

(全く読めん…

やはり、ここの世界の言葉はわからないな…どうしたものか…)

 

本を閉じ、棚に戻す

 

「ありがとう

また今度、来てもいいかな…?」

 

「…いいけど」

 

「ありがとう」

 

そう言い、彼は禁書庫を出た

 

 

 

 

正午辺りになり、昼食を済ませ

彼はレム達に声をかけた

 

「すまないが、この国の言葉を教えてくれないか?」

 

「突然どうしたんですか?」

 

「いや、わたしはこの国の生まれじゃなくてね…

この国の言葉はまだわからないんだ

教えてくれると助かるんだが…」

 

「…わかりました、私でよければ」

 

「すまない、助かるよ」

 

そう言い、レムと一緒に部屋に戻った

 

 

 

 

 

「それでは、とりあえず簡単なものから教えますね」

 

そう言い、彼女は子供向けの本を取り出した

 

「吉良さんは、基礎的なところから知らないみたいですので

そこから教えますね」

 

「わかった」

 

そう言い、彼はぶっ続けで教えてもらった

 

 

数時間後

 

 

「…それでは、そろそろ夕食の準備をしますので

吉良さんは手伝わなくてもいいですから、勉強に集中してください」

(吉良さんがいると、あまり立場が無いですから)

 

「すまない…」

 

そう言い、彼女は心なしか少し笑顔で出て行った

 

 

 

 

 

「ふぅ…、大分わかって来たな…

我ながらよく出来た…

もう、この本を読める程になったのは自分でも驚きだが

こんな苦労をしたのは『川尻浩作』の筆跡を真似るのを練習した時以来か…

まぁ、もう川尻浩作の筆跡を真似る必要なんて無い…

フフフ…仗助や承太郎のやつら…

今頃、わたしが突然消えて慌てふためいているだろうな…

まさか、追い詰められたわたしが

今、悠々自適な生活を送っているなんて夢にも思わないだろう…

ククク…やはり、この吉良吉影…強運に守られているんだ…

わたしは『生き延びる』…平和に『生き延びて』みせるぞ…

クックック…」

 

窓から見える沈み行く夕日を眺め

不敵な笑みを浮かべる




吉良さんって料理は何作れるんでしょうね?
というより、吉良さんに出来ないことってなんだろう
荒木さん曰く
吉良さんはその気になれば賞など1位を取れる程の実力があるそうです

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