吉良吉影はゼロから始めたい   作:憂鬱な者

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第16話:デッドマンズフォーチュン その1

昼頃

 

「吉良さん、今朝は変だったなぁ…

いつもは真面目で、普段からしっかりしてるのに…」

 

調理場でレムが手を洗いながら独り言を呟く

 

「歳なんじゃない?」

 

彼女の側にいたラムが言う

 

「え」

 

「冗談よ、幾ら何でもボケるにしては早いわ」

 

「う、う〜ん…」

 

そんなことを言っていると

何処からか鼻歌が聞こえてきた

 

「〜♪〜♫〜♪♬」

 

鼻歌の聞こえる方を向くと

そこは調理場の入り口だった

 

鼻歌は扉の向こうから聞こえてくる

 

「♬〜♪〜♪〜♫」

 

段々とその鼻歌は近づいてくる

 

二人は唾を飲み込み

心の準備をした

 

 

ガチャ

 

 

「♬〜♫〜♪〜♫」

 

現れたのは『吉良吉影』だった

 

だが、違っていた

『吉良吉影』なのだが、彼女達の知る『吉良吉影』ではなかった

 

「き、金髪…!?」

 

「しかも、すごい御機嫌!!」

 

2人は驚きを隠せなかった

 

今までの彼とは似ても似つかぬ

最早、別人と言える程変わっているのだ

 

彼は、調理場に入ると

窓硝子に映る自分を見ながら、ネクタイを整えた

鼻歌を歌いながら

 

「〜♪」

 

「あの…き、吉良吉影さんですよね…?」

 

「ん〜?そうだよ」

 

困惑した顔で話しかけると

彼は御機嫌な顔で答えた

 

「えっと…その、随分御機嫌そうです…ね」

 

「そうかな?こんなに気持ちの良い天気だ

楽しい気持ちにもなるんじゃあないかな?」

 

「は、はぁ…」

 

そう言うと、彼女はラムと一緒に調理場を出た

 

「吉良さん、どうしちゃったのかな?」

 

「さぁ…、まさか本当にボケたのかしら?」

 

小声で話し

扉の隙間から、彼を見ると

 

彼は今度は髪型も整え始めた

 

「ま、まさか本当に…」

 

「ボケたのかしら…」

 

しばらくすると

彼は調理場から出た

 

すると、彼は二人を見て

 

「すまないが、今日は仕事を休んでもいいかな?」

 

笑顔でそう言った

 

「え、あ、はい…いいですけど…」

 

「ありがとう、それじゃあちょっと出かけてくるよ…」

 

そう言い、再び鼻歌を歌いながら何処かに行った

 

「吉良さん…」

 

二人は困惑した顔のままだった

 

 

 

 

 

 

彼は、街に向かって歩いていた

 

「こんなに晴れ晴れとして絶好調な気持ちになったのはいつ以来…

いや、こんなに清々しい気分になったことなんて今までなかったな…

わたしは遂に『無敵』になった…!!

『無敵』…ククク…『無敵』だ…」

 

そう呟き

再び鼻歌を歌いながら歩いて行った

 

 

 

 

 

街に着くと

彼は『手』の綺麗な女性を探し始めた

 

「さて、(どれ)にするかな…」

 

そう呟き

彼は一人の若い女性に注目した

 

「『また』あの娘にするか…」

 

そう言い

彼女の後を追った

 

 

 

 

 

しばらく歩くと

彼は、彼女とは別の道に外れた

 

そのまま歩き続けていると、狭い路地裏に入った

 

誰もいない、人1人が入れる程度の薄暗い路地裏だ

 

少し歩いた先は曲がり角になっていた

 

すると、彼は角に立ち

動かなくなった

 

 

数分後

 

その路地裏に若い女性がやって来た

 

彼が追いかけていた女性だ

 

 

彼女が曲がり角まで来ると、彼は道を塞いだ

 

「あ、あの…

通らせてもらってもいいですか?」

 

少し困った顔で彼の顔を見ると

 

彼は数秒の沈黙後、口を開いた

 

「君の名は…なんだったかな…

あぁ、思い出した

確か、エリナさん…だったね」

 

そう言うと、彼女は冷や汗をかき

僅かに後ろに下がった

 

「な…なんで…私の名前を知ってるんですか…」

 

「ん〜?

さぁ、『運命』ってやつかな…?

君は今、買い物に行ったところ…

財布を忘れたのに気付き、家に戻る途中…

この路地裏は、家への近道…かな?」

 

不敵な笑みを浮かべ、彼女を見つめると

彼女は、怯えた表情で少しずつ後退りする

 

「な、なんで知ってるんですか…!?」

 

「さっきも言わなかったかな?

『運命』だと…

いや…運命なのかな…?

まぁ、そんなことはどうでもいい…それより…」

 

そう言い、彼女の手を掴んだ

 

「君の手…とても綺麗だね…

ちゃんと手入れをしているのかな…?

凄く綺麗だよ…」

 

指で彼女の手を撫で回し

手に顔を近づける

 

「い、嫌…!!」

 

無理矢理引き離したが、直ぐに手を掴まれた

 

「とても可愛いよ…でも…」

 

 

カチリ

 

 

「喋らない君は、もっと可愛いよ…」

 

スイッチ音がすると

彼女の手以外が消滅した

 

「清々しい…

あぁ、なんて清々しい気分なんだ…」

 

彼女の手を握りしめ

頬擦りをする

 

「しかし、『彼女』をあの屋敷に持ち込むのは難しいな…

だが、もう『満足』したぞ…」

 

そう言うと、彼は『彼女』を上着の内ポケットにしまい

路地裏を出た

 

「後は『時』が来るのを待つだけだ…ククク…」

 

そう呟くと

彼は再び鼻歌を歌いながら、街をフラつきはじめた




色々あって遅れました
すみません

一応、不定期投稿のつもりなんですが
いつもの癖で定期的に投稿しようとしてしまいます
いいんだか、悪いんだか…

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