吉良吉影はゼロから始めたい   作:憂鬱な者

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第15話:さらなる成長

5日後

 

 

彼は窶れていた

 

顔にも疲れが現れており

歩く時も、壁にもたれかからないと真っ直ぐ歩けない程だった

 

 

「あの…吉良さん…

最近、大分具合が悪そうですけど…」

 

「あぁ…大丈夫だよ…

少し、疲れが取れないだけだよ…」

 

朝の仕事で、レム達に会っても

そんな返事しかしなくなっていた

 

激しい絶望感とストレスにより

彼は限界だった

 

(ダメだ…方法が無い…

衝動を抑えるのも限界だ…

このままでは…わたしは…

疲労で倒れるか、彼女達を殺してしまう…

医学に詳しく無いが、ストレスは溜めすぎると危険だと聞いている…

死亡例もあるらしい…

このまま我慢し続ければ、わたしは自滅してしまう…

下手に人を殺すことも出来ない…

どうすればいい…どうすれば…)

 

洗面所の鏡を見つめ

写っている自分の顔を見つめる

 

 

その時、彼の中で『何か』が切れた

 

 

彼は虚空を見つめながら自分の部屋に戻った

 

 

昼頃

 

 

部屋に籠っていると

レムが心配してやって来た

 

「吉良さん…本当に大丈夫なんですか…?

今朝も様子が変でしたし…

何か悩み事があったら、相談してください…」

 

彼女が部屋に入ると、彼は窓の外を見つめ

呟き出した

 

「自分の『爪』が伸びるのを止められない人間がいるだろうか?

いない…

誰も爪が伸びるのを止められないように…

持って生まれた『性』というのは誰にも止められない…

どうしようもない…

困ったものだ…」

 

「吉良さん…?」

 

彼女に詰め寄る

 

「『爪』こんなに伸びてるだろう…?」

 

彼女に伸びたボロボロの爪を見せる

 

「わたしは持って生まれた『性』なものだから

前向きに考えてるんだよ…前向きにね…」

 

光の無い眼で、彼女を見つめ

彼女の手を握る

 

「君の『手』…

とても滑らかな関節と皮膚をしてるね…

『ほおずり』…

…してもいいかな…?

頬擦りするととても落ち着くんだ」

 

そう言うと彼は

彼女の手の甲を頰につけると

『頬擦り』をし始めた

 

「アフウゥゥゥゥゥ〜〜〜…」

 

「や、やめてください吉良さん…!!」

 

無理矢理引き離したが

すぐさま彼に『手』を掴まれた

 

「わたしは今まで…

主に『手』の綺麗な女性を48人殺した…

わたしは子供の頃…

レオナルド・ダ・ビンチの『モナリザ』の手…

あの絵…画集で初めて見た時…

なんというか…下品なんだがね…

『勃起』…しちゃってね…

『手』のところだけ切り抜いて、しばらく部屋に飾ってたんだ…

君のも切り抜きたい…」

 

「ひっ…!!」

 

 

カチッ

 

 

スイッチ音と共に

彼女の『手』以外が消滅した

 

「…」

 

彼女の『手』をしばらく見つめていると

彼は途轍もなく後悔した

 

「しまった…

しまったしまったしまったしまった…!!

我を忘れて、彼女を殺してしまった…!!

どうする…!?

彼女を殺してしまった事がバレたら…この屋敷の住人達に…

いや、もっと広い範囲で目立ってしまう…!!

これがバレるのに、そう時間は無い…!!

どうする…!?どうする、どうすればいい!?」

 

指先を喰い千切る程爪を噛み

大量の汗を流しながら、考え込む

 

彼が激しく絶望していると

扉をノックする音が聞こえた

 

「!!」

 

「吉良?最近、全然仕事が出来てないじゃない

また部屋に籠って何してるのよ?」

 

ラムの声だ

 

「…うぐっ…!!」

(マズい…

よりによって彼女だ…!!

この事を知られたら、相当マズい…!!

どうする!?

BITE THE DUSTはリスクが大きい…!!

もっと完全な…

『やり直す』様な能力でも無ければ…!!」

 

『手』を握りしめていると

彼の体から黒い靄の様なものが出てきた

 

「!?

こ、これは…!?」

 

すると

彼の意思とは無関係に

キラークイーンが体から出た

 

だが、そのキラークイーンは彼の見慣れたものとは違っていた

 

黒い靄を纏い

ドス黒い体をしている

血の様に紅い眼が光ると

 

彼の意識は遠のいていった

 

 

 

 

 

「……………さん」

 

誰かの声が聞こえる

 

「き…………さん」

 

聞き慣れた声だ

 

「吉良吉影さん」

 

「!!」

 

ハッと気付き、眼を凝らすと

彼の目の前にあったのは爪切りをしている自分の手だった

 

そして、声のする方を見ると

レムがいた


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