「イリヤスフィールってあの銀髪で小さい女の子のことか?」
「ああそうだ。」
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、始まりの御三家と言われるうちの一つだ。ちなみに言うと携帯獣の方では無いからな。俺が始めてやった時はトカゲとヒヨコとムツゴロウの中から草タイプを選んだのは完全なる余談である。
「なんでまたあの子が出てくるんだ?」
「これもジアナから聞いた方がいいかもな。」
「解りました。士郎君、また結論から言いますがあの子はキリツグの実子です。」
「……。」
おい衛宮、口が開いてるぞ。確かにあの十歳前後にしか見えない奴が、いきなり戸籍上ではあるとはいえ、親戚だと言われれば顎が外れるよな。どこのエロゲだよって言いたくなる。
「更に言えば彼女は貴方の姉です。」
ジアナさんや、まだ状況整理もできていない衛宮さんに、次の爆弾を投下してはいけませんぞ。いやマジで。さっき頭を整理できたというのに、また混乱させたら衛宮の頭が噴火するかもしれねえぞ。
「え、えっとシロウ?」
「……はっ、すまんセイバー。なんか起きたまま夢を見ていたみたいなんだ。昨日の銀髪の子が親戚だって言われて更にはあんな年下に見えるのに姉だったというカミングアウトを……」
「シロウ、それは事実ですよ」
「……まだ夢を見ていたのかな。ハハッ」
まずい。衛宮が夢の国へと旅立とうとしている。止めてくれこの世界の危機が掛かっているから止めてくれ。特に最後の部分。それは本当に危ない。
「衛宮、一旦お茶を飲もう。なっ?」
「あ、ああ。」
衛宮はそう言われてお茶に手を伸ばす。
「……よしっ、一先ずは落ち着いた。えーっと?遠坂と桜が親戚で姉妹だって言う話だっけ?」
「なんでや!?」
頭トゲトゲの人のセリフが出てしまった。全く落ち着いてないじゃねぇか。遠坂と間桐(妹)の事は話してねぇよ。どっからそれが出てきた。
「……。」
なにか、ジアナの様子がおかしい。驚いているという事は確かなのだが、関係の無い事を持ち出されてそうなってるのとは少し違うような?
「シロウ君。今話しているのはイリヤスフィールとキリツグについてですよ。」
「えっ、ああ、そうでしたね。」
俺が思考を張り巡らしていたら、ジアナが話を進めていく。
「この話をするにあたって、まず最初に聞いておかなくてはいけません。貴方は『昔』のキリツグを知っていますか?」
「『昔』の
「そうです。」
俺の予想だが、衛宮は『昔』の切嗣さんの事は知らないと思う。知っていたらやさぐれる……とまではいかないが今のように真っ直ぐに正義の味方が夢だなんて言うはずがないからだ。
「いや、知らない」
「やはりそうですか。
ではお話しましょう、私が知る限りで昔の彼の事を。」
ゴクリ、と生唾を飲む衛宮。
「彼は昔、魔術師殺しという異名を持っておりその名に恥じない行動を取っていました。」
衛宮の表情に驚きが混じる。いや、あれは怒りか?どちらにせよ嘘だと言いたい気持ちを抑えているようだ。さっき(前話)の教訓を学んでいるみたいだな。
「それはお金の為にというのもありましたが戦いを止める為でもあったそうです。」
そのジアナの言葉で衛宮の顔が和らぐ。
「ある日、その異名を聞いたアインツベルンはキリツグを雇い、第4次聖杯戦争のマスターとして参加させようとしました。理由はもちろん魔術師であるマスターを簡単に倒せるからです。キリツグは当初、聖杯を使えば恒久的な平和が作れると思いその話を了承しました。
そして、アイリスフィールというホムンクルスに出会い恋に落ち、子供ができました。それが十八年前の出来事だそうです。」
「つまり、その子供は……」
「あのイリヤスフィールです。
しかし、彼女は十八年前に、生殖細胞を組み合わせて人工でできたホムンクルスです。」
「いや、待ってくださいどう見てもあんな子が18才には見えません。」
「そう思うのは無理ありません。ですが理由はちゃんとあります。それは彼女には人間としての欠点があるという事です。」
「欠点?」
「はい、それは二次性徴が無いというものです。その為、イリヤスフィールは十八という年齢にも関わらず幼い見た目をしていたのです。」
少しの間沈黙が続く。衛宮にとっては驚きの連続だろう。もうそろそろ頭が本気で追いついていないんじゃないだろうか。知らなかった身の周りの事が次々と明かされているからな。
「衛宮、大丈夫か。なんなら話はまた今度にする事もできるが・・・」
「いや、心配しなくてもいい。驚くことばかりだけど、俺は
心配は無用だったか。
「それでジアナさん、あの子が俺より年上だという事は解りました。でも、俺は十年前、あの子が八才の時は
衛宮はきっと切嗣が何故イリヤスフィールと一緒にいなかったか、というよりはどうして幼い子が父と一緒にいないのかという疑問が湧いているのだろう。
「キリツグは娘をアインツベルンに置いて妻のアイリスフィールと共に聖杯戦争が行われるここ冬木市にきました。先程も言った通りキリツグはセイバーに聖杯を破壊させました。
そして、それを良しとしなかったアインツベルンは自分達の領地にキリツグを入れさせませんでした。イリヤスフィールとキリツグが実の親娘だとしても。」
その話を聞いて衛宮の顔にまた怒りが浮かび上がっていた。さっきとは比べ物にはならない。親子なのに会わせないというのがムカついているんだろう。アインツベルンの当主がいたら一発ぶん殴られただろうな。
「衛宮。気持ちは解るがそれは元凶にぶつけるんだな。」
「分かってる。」
段々と落ち着いていく衛宮。それを見計らった様にジアナは話す。
「これは私の推測ですが、イリヤスフィールはキリツグが戻らなかったのではなく、戻ってこられなかったという事は知らないでしょう。その場合、イリヤスフィールはキリツグを恨んでいます。そして彼の養子である貴方もです。
ただの思い過ごしかもしれませんが、これからイリヤスフィールに会う時は注意してください。」
最後の部分についてだが、衛宮の性格からしてイリヤスフィールと会ったら誤解を解こうとしたり、後ろ目たさから優しくしそうだからそれを言っても無駄だと思う。
「分かった」
その『分かった』は絶対『分かってない』の意だ。
「けど、一つ質問です。」
「なんですか?」
「イリヤスフィールって子はホムンクルスだって言ってましたけど、なんでわざわざ子供を作るのに人工で作らなきゃいけないんですか?」
それを聞いちまうか。まずい事ではないが場合によっちゃとんでもない答えがでるかもしれないぞ。今回はそうじゃないが。
「えっと、子供を作る為に人の手を使った訳では無く、人工で作った結果がイリヤスフィールです。」
「?どういう事ですか?」
「つまり、簡単に説明すると彼女は聖杯の器なのです。母親であるアイリスフィールもそうなのですがある欠点があります。それは聖杯戦争が進むにつれて人としての機能が聖杯のそれに変わり、体の自由が利かなくなり最後には意識さえも無くなるという物です。
それを改善するためにアインツベルンは人であるキリツグとアイリスフィールの遺伝子を組み合わせ、その結果、欠点が無くなり完成されたイリヤスフィールの誕生というわけです。」
「なるほど」
聖杯の器としては確かに完成された。けれども
「けれども、私は先程彼女は人間として欠点があると言いました。その欠点がもう一つあり、短命だという点です。」
「っ……。」
自分がそういう運命を突きつけられたかのような表情をする衛宮。
「同情はするなよ。むしろこの聖杯戦争が終わっちまえばどっちにしろあいつはこの世からいなくなる。それはイリヤスフィール自身、分かってる事だ。」
「だけど……!!」
「そんなに気になるんならお前が勝ち残ってあいつの為使えばいい。なんでも叶う聖杯なんだからよ。」
「……あっ、そうか。」
納得しているようだが、親戚であるものの、関わりの無い奴に聖杯を使うなんてこいつはやっぱりおかしい。
まあ、俺が知ったかぶってイリヤスフィールの気持ちを勝手に予想してペラペラと喋っているのも大概だがな。
「以上が俺らが知っていて、お前が知らないお前の周りの人達についてだ。」
約一時間ほどだっただろうか、それぐらいの時間が経ったと思う。
「一応納得できない部分はあるけど、理解はできた。でも、なんでそれ今更言い出したんだ?」
「切嗣さんから黙っとくように言われたんだよ。」
「
「ああ、衛宮にとってそれは知るべき事では無かったんだとよ。でも俺たちは今は知るべき事だと判断してお前に話した。どう捉えるかは勝手だと思っているが、それを踏まえてどうするべきかは考えて欲しいんだ。」
「解った。」
これは本当に『解った』という意で言ったな。
「それとありがとう。創太、ジアナさん。それを話してくれて」
「別に。いつかは知ることだから早めに話しておいたほうがいいと思っただけだ。」
知らないままだったら向こうから話すかもしれないしな。
「さて、最後に俺たちのことだ。」
またせたな。(征服王ボイスで)
どうも作者です。
最初の挨拶でこんな事を言いましたが待ってくれてる人なんて本当にいるのかなとちょっとネガティヴになりました。
さて、作者は投稿した数時間後にアクセス解析というものを見てニヤニヤしているのですが、その後3話と4話のUA数の差を見ていつも凹んでいます。やっぱり文字数が多いと読みにくいんですかね?それよりもっと根本的な理由かあるような・・・。
作中についてですがまさかの2話連続で説明パートになってしまいました。変なギャグを入れるのもそうですが、正直言って要らない説明をガンガン入れてるのも原因だったりします。完全に要らないというわけではありませんがね。「俺は〇〇のことを話した」だと味気がない感じになりますし。
せいばーサンクウキ
次回は投稿できるかな。(遠い目)