オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
戦いはまだ終わっていない!俺たちの戦いはこれからだ!
嘘です。ここからはただただ桜ちゃんを救うためのお話です。

活動報告にボツ案を載せました。良かったら見てやってください。

次回はオルタナティブ!


喪失

 創太の体を貫く黒い影、それは何かに似ていた。いや、似ていたというより、先ほどまであった不完全な聖杯、あれとほとんど同じだった。

 しかし、あんな暴走した不完全さはなく、明確に誰かを、この世にいる全員を殺すという完全な呪いが、そこには存在していた。

 

「がはっ……」

 

 彼の口から溢れ出る血、それは人が流す赤い物ではなく、影に染め上げられたかのような、どこまでも暗い黒。

 貫かれた腹からは、すでに影の侵食が始まっていた。

 

「あ——ああ……!」

 

 言葉にならぬ声を上げながらジアナは、ただ全てに絶望したかのような目で見るしかなかった。それが夢であってほしいと、幻覚であってほしいと、願いながら。

 だが、現実は非情だ。

 

「ああああ!……あ?」

 

 身体を貫いた影は、さらに手を伸ばし、ジアナの体までも喰らう。彼女を庇った創太の意思など、御構い無しに。

 黒が蝕み、彼女の体を染め上げる。そんな状況では彼女はもう、()()()()()()()()()()()()()()

 

「創太!ジアナさん!」

「待ちなさい、士郎!」

 

 その二人を救おうと真っ先に出ようとする士郎の腕を、凛は慎二の身体を支えながらも掴む。

 

「離せ、遠坂!このままだと二人とも……!」

「もう手遅れなのよ!あんなに速く侵食されちゃ、いくらあの黒い奴から二人を切り離したって、そのままお陀仏よ!

 それに、あいつがそう簡単に獲物を手放すわけないじゃない!」

「けど……!」

「けども何もない!あんた魔力も無いのに何言ってんのよ!無駄死したら、二人に合わせる顔が無いわよ!」

「それでも俺は……!」

 

 凛は幾度となく制止をするが、士郎は一切聞く耳を持たない。彼とて手段がない事は分かっている。しかし見捨てる事は、彼の性に反する事だった。

 

「シロウ。」

 

 そして、それを見かねた第二の説得者が加わる。

 

「貴方の言いたい事は分かります。しかし、彼女らはそれを望んではいません。

 シロウが為すべきはアレの正体を突き止め、斃す事。そしてそれは、彼女らの願望でもあります。」

「それはあいつらを切り捨てるっていう事か!セイ……バー……」

 

 かつての騎士王の失敗を繰り返すような発言を聞いた士郎は、それを叱咤しようとするが、彼女の今にも涙が溢れそうで、それでも目を真っ直ぐ向けた顔をを見てしまえば、それ以上は何も言えなかった。

 

「まずい、来るわよアレ!」

 

 遠坂の指が指す先には、影に体の大半を飲み込まれた二人の姿と、次の捕食対象を狙うように蠢く影があった。

 

「二人とも逃げるわよ!」

 

 セイバーと遠坂はここから離れようと門に向かうが、士郎は説得されようがまだ見捨てる気は無かった。

 

「ちょっと、士郎!」

「悪い、けどやっぱり置いていけない。」

 

 士郎の見る先、影から伸びる人の腕が二本。どちらも右手なので、一人が出しているわけではない。

 それを見た彼は、両方助けられると、まだ諦めきれなかった。

 

「無茶よ!あんなのに少しでも当たったら、あんたも……!」

「なら、当たらなきゃいい。」

 

 彼は一歩、踏み出す。

 もうすでに、彼の心は決まっていた。

 二つの手を掴む。

 助けを求めるかのような、あの手を。

 

「……っ!」

 

 だが、それを拒むかのように、影に飲まれた片方の手から魔力弾が放たれ、士郎の頭に当たる。

 しかし、彼に怪我はない。その魔力弾は殺傷性のないものだった。ならば、他に何の意味があったのか。

 それは士郎の頭に響く声にある。

 

 ——逃げろ。

 

 彼には確かに聞こえた。創太の声ではっきりと。

 二人が望んでいたのはセイバーの言う通り、助けではなかった。この場から逃げ延び、敵を斃す事。

 

「……遠坂、セイバー、お前達の言う通りだ。」

 

 その意思を汲み取り、士郎は再び決心する。今はこの場から生き延びる。影に侵食されながらも、拳を作るその手を見ながら。

 

「なら、ここからさっさと逃げるわよ。

 セイバー、後ろ任せた!」

「了解です、凛。」

 

 凛が先行しながら出口である門へと向かい、それに士郎が続き、セイバーが影の触手を切り落とし、前の二人を守る。

 セイバーは残り少ない魔力ながらも、触手を二人に近づける事はなかった。影がいくら無限に腕を伸ばそうとも、全て騎士王に斬り捨てられてしまう。

 しかし、それも一時の物。

 

「はあっ……はあっ……!」

 

 先程も言ったが、彼女の残魔力は少ない。つまり、限度はもうそこまで来ている。二人を安全な場所まで護衛しきる事は無理だ。

 だから、

 

「っ……!」

 

 誰かは見ていられなかった。

 降り注ぐ赤き矢群。それは幾度となく見てきたものだ。剣を矢と化して放つそれは、

 

「アーチャー……?」

 

 赤い外装を纏う彼の技だ。

 

「今回ばかりは出番が無くなったと思っていたのだが、少々予想外の出来事が起きてしまったか。」

「アーチャー⁉︎」

 

 何故彼がまだこの現世に存在するのか。その理由は彼が持ち得るスキル、単独行動にあった。それはマスターの魔力供給が無くとも、数日は生き残れる能力であり、弓兵には欠かせない物だ。

 

「話は後だ。

 私もそこのセイバー同様、魔力が底を突きかけている。だから、さっさと逃げる事だな。

 もっとも、あの胃袋の中に入りたければ別の話だ。」

 

 皮肉を忘れないアーチャーだが、やはりお人好しには変わりはない。

 

「ありがとう、アーチャー。」

「感謝します。」

 

 凛とセイバーは素直に礼を述べるが、衛宮はあくまでも何も言わなかった。彼の中で、未だにアーチャーを嫌悪している部分があるからだろうか。

 

「衛宮士郎。」

 

 けれども、アーチャーはそんな事を気にせず、背中を見せたまま彼を呼び止める。

 

「なんだよ。」

 

 未だにアーチャーを嫌悪する彼だが、言い分ぐらいは聞いてやろうと、立ち止まる。

 

「そう邪険にするな。貴様に助言してやろうと言っている。

 

 あいつを裏切るような真似はするな。」

 

「それだけか。」

 

 士郎は当然のように、冷静な声で返す。

 

「何、言っておきたかっただけだ。

 貴様がどのような決断をするかは知らんが、目的を見間違う事だけはするなよ。」

 

 自身が失敗したからこそ、彼は衛宮士郎に道を違えてはいけないと、彼は念を押す。

 

「行け、貴様にはやって貰わねばならん事が山ほどある!」

「……癪だけど感謝するよ、アーチャー。」

 

 士郎は振り返り、その場から逃げる。その様子を確認したアーチャーは双剣を構える。

 

「……後は、あいつらだな。」

 

 彼が見据えるは影……ではなく、それに隠れてしまった二人。

 今から行う事は創太とジアナの救出。しかし、それは無駄であると彼自身も分かっていた。けれども、やはり

 

「オレはお前の友達……か。」

 

 見捨てられずにはいられなかった。

 ただ、これを衛宮士郎に見せてしまえば、彼は確実にアーチャーの後を追いかけることになるだろう。こんな可能性の低い事は生きている士郎にさせられなかった。

 どうせこの身はすぐに消えてしまう。ならば、せめて無茶な事ぐらいはしようではないか、とアーチャーは決心していた。

 命ある者にこんな事はさせられない。

 

「一度でもかすれば終わり。触れるのは最後のみ。」

 

 触手が動く、その時、

 

「だが……!」

 

 アーチャーも同時に地を蹴る。

 触手の合間を縫い、紙一重で全てをかわす。けれども、相手は同じ事を何度もやるわけでもない。

 影は壁を作り、アーチャーの接近を防ぐと共に、その壁を使ってシールドバッシュ、不可避の攻撃を行う。

 

「はああっ!」

 

 だが、彼は難なく双剣で斬り裂く。

 それでも一歩、また一歩と進むたびに、触手の密度が高くなる。これでは二人に触れる事すら不可能。

 だから、アーチャーはすでに三組の双剣を展開していた。

 

「鶴翼三連!」

 

 彼の全魔力を使った投影は、影を囲む。そして、

 

「……オーバーエッジ!」

 

 その刃は巨大化し、触手を全て切り刻む。

 しかし、まだ中の二人には届かない。

 

「最大火力……壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

 あともう一歩、それを宝具の爆破で届かせる。しかも、アーチャー自身が手に持っていた双剣すらも、爆発させて。

 それ故に、影の大半は削れるが、まだ人の体は見当たらない。そして、自爆したアーチャーも死に体目前で、影に手を入れてしまえば一瞬にして霊体であるその身は溶かされてしまう。

 

「届いてくれ……!」

 

 けれども、アーチャーはその一瞬に賭ける。

 せめて、一人。

 できれば、創太を。

 願わくば、二人を。

 両腕を影に入れ、救出を試す。

 なりふりなど構っていられない。体を乗り出し、手探りで二人を探す。

 ほんの僅かな時間を無駄にしてはならない。

 探せ、探せ!

 彼の中で誰かが叫ぶ。

 救わせてくれ、救わせてくれと。

 過去の地獄で見たあの人のように!

 

「っ……!」

 

 そして、手は何かを掴む。しかも、両方ともだった。

 おそらくは誰かの腕だろう。二人なのか、一人の両腕を掴んでいるだけなのか。

 ともかく、アーチャーはそれを引きずり出す。自身の魔力が少ないからだろうか、影の中だからだろうか。それはとても重く感じられ、まるで水の抵抗を受けているかのようだった。

 それでも、アーチャーは一瞬にして、それを外に出す。

 両方か、あるいは片方のみなのか。どちらにせよもう彼には判断も、ましてや残った片方を助ける事すらもできない。その身体はほぼ溶けてしまっているのだ。

 

「……ふっ。どの道、私一人では助ける事は出来ない、か。」

 

 引きずり出した者が生きているかも分からない。けれども、彼に後悔はない。可能な限りの事はやり遂げた。ならば、これ以上の事は望まなかった。

 

「だが、どうせならば、せめて衛宮士郎の友人とやらを、この戦争が終わるまで見届けたかった物だな。」

 

 最後に高望みをしながら、アーチャーは影へと溶かされていく。

 この()()()での役目は終えた。次にいつか会う時は味方同士でありたいと、意識が薄れゆく中、弓兵は夢を見る。

 

 ーーーーー

 

「シロウ!」

「イリヤ⁉︎」

 

 境内から脱出し、階段を降りる士郎と凛、セイバー。そして、その二人を待っていたのは、衛宮邸に居るはずのイリヤスフィールだった。

 

「お前、どうしてここに……!」

「何か……嫌な予感がしたの……。聖杯に異変が起きたんじゃないかって。」

 

 今は、彼女の中に聖杯の力は無い。けれども器ではあったからか、イリヤスフィールは危機を察知し、ここまで駆けつけて来た。

 

「話は後よ!後ろから追っ手が来るかもしれないんだから、今は逃げる事を優先するべきよ!」

「なら、創太の家に向かってちょうだい。あそこにいるあいつの様子が、何か気になるの。」

「確かに、桜の事は心配だ……遠坂。」

 

 士郎としては桜が居るはずの創太の家に向かいたい。けれども、やはり味方である彼女の意見は聞くべきだと思い、凛に視線を移す。

 

「私も賛成よ。むしろ、そっちに向かった方が良いと思うわ。セイバーも良いわね。」

「はい。」

 

 全員の意見が一致したところで、一行は創太の家へと向かう。しかし、その途中では違和感が感じられる部分が多くあった。

 人気が無く、いくらなんでも静か過ぎだった。まるで、何者かが攫っていったような……()()()()()()()()()かのような雰囲気だった。

 彼らはそれを怪しみながらも、目的地に走り、そして着いた。だが、彼らの目には、異常な光景が映っていた。

 

「扉が……破壊されてる……?」

 

 創太の家の玄関、そこには元は扉であっただろう木の破片が散らかっており、誰しもが出入りができる状態になっていた。

 しかも、それ以外にも不可解な点はある。例えば……

 

「これ、中から壊したわね。」

「え?」

「だって、破片は中にほとんどなくて、外側だけにしかない。こんな壊し方、中からじゃないと無理よ。」

 

 つまりは桜がこのドアを壊した。彼女はそう確信していた。

 理由は分からない。しかし、侵入した痕跡はどこにもなく、消去法でそう判断するしかない。

 

「桜……!」

 

 しかし、士郎はそんな疑いすらも持たずに中へと入り、後輩の姿を探す。彼女は創太の両親の物であった部屋に寝かされていた。だから、彼はそこを探す。

 そこの扉はすでに開いており、誰かが出入りした後が伺える。部屋へと入り、ベッドの上をすぐさま見るが

 

「誰も……いない……。」

 

 結果はもぬけの殻だ。

 押し入れや机の下など、隠れられそうな場所は全て探すも、桜の姿はない。

 

「士郎、桜は!」

 

 遅れてやって来た凛だが、質問の返答に士郎は首を横に振るしかない。

 

「もう誰かに連れ去られたんだ。」

「誰か……ね。そうであってほしいものだけど。」

 

 彼女は期待に似た小さな声をこぼしたが、士郎の耳には届かなかったようだ。

 

「士郎、ここにいるのは危険よ。桜の事が気になるのは分かるけど、態勢を立て直した方が賢明よ。」

「……分かってる。」

 

 桜を一刻も助けだしたい、しかし今の身体では探し出すことすらもできない。そう理解していた士郎は凛の言葉に従い、創太の家を出る。

 

「三人とも、ご無事でしたか。」

 

 家を出た三人を迎えたのは、外を警備していたセイバーだった。

 

「何にもなかったわ。何にもね。」

「という事は、桜も?」

「ええ。

 とにかく、ここは危険よ。扉は無いし、誰かが入ってきたかもしれないし、士郎の家に向かった方が……」

 

 凛が喋る途中で、セイバーは直感に訴えかけられる。何かがマスターの首を狙っていると。

 そして、それを感じたと同時に彼女は動く。マスターを狙う何かから凛を守るために、それを不可視の剣で弾く。

 

「っ……敵⁉︎」

「気をつけてください!相手は気配を消しています!」

 

 誰とも知れない敵からの攻撃、それは全員を警戒態勢に入らせる。しかし、一人だけは別に意識を向けていた。

 

「……短剣?」

 

 士郎はセイバーが弾いた物を解析していた。それは何の変哲も無いが、人を密かに殺すには適正な物。そして、誰かが言っていた事を思い出す。柳洞寺のアサシンは正規の英霊では無いと。

 正規では無い、つまりは正規のアサシンがいる……という事は。

 

「セイバー!そいつはアサシンだ!」

「アサシン⁉︎しかし、彼はすでにジアナによって倒された筈です!」

「そいつとは違うやつだ!」

「……なるほど。そういう事なのね、ハサン・サッバーハさん?」

 

 凛に正体を明かされた敵は彼らの視界に現す。

 全身が黒い布と黒い肌で覆われており、右手には黒い包帯で巻かれいる。唯一、黒ではない部分は顔を覆っている白い骸骨の仮面のみだった。

 

「たった一度の奇襲で私の真名まで明かすとは、敵ながら流石だ。」

「ここの聖杯戦争では、本来アサシンはハサンが召喚されるはずなのよ。怪しいとは思ってたけど、別にアサシンがいるなんてね。」

 

 アサシンの正体は見破られた。しかし、凛たちの状況が悪いのは一向に変わらない。なにしろ、全力を尽くした後だ。魔力がほとんど切れかかっており、セイバーが何故まだ現界しているかも不思議なくらいだ。

 

「士郎、凛、イリヤスフィール。ここは私に任せて、貴方達は逃げてください。

 私はもう限界です。これ以上魔力を使えば、凛が危険だ。ならば、せめてアサシンを道連れにします。」

「……頼んだわよ、セイバー。」

 

 凛は慎二に肩を貸しながら逃げる。しかし、士郎は少し躊躇った。彼女を残してはおけない。けれども、セイバーの気持ちを無下にすることもできない。

 彼女は戦争が終われば、この世から去る身。だから、どちらにしろ一緒に生き残る事はできない。ならばせめて、最後まで彼らのサーヴァントとして在りたかった。

 士郎には、それが理解できていた。

 

「悪い、セイバー。」

 

 だから、逃げると言う判断を下した。

 

「貴方が謝る事はありません。強いて言うならば、この戦争を貴方達の勝利で終えてください。」

「ああ。」

 

 士郎はイリヤを連れて逃げる。

 その姿を見る事なく、視線を真っ直ぐと敵に向けるセイバーは、次に踏み込み、そしてアサシンを斬ろうとする。

 

「ふっ!」

 

 しかし、それは簡単に躱されてしまう。

 

「言葉も交わさず、いきなりとは。騎士王としての誇りはどこへ行ったのか。」

「私には時間が残されていない。だから、最初から手加減は無しだ。」

「そうか、それは残念だ。」

 

 セイバーはまた一歩踏み込もうとする。しかし、足が動かない。何故だと思い下を見ていれば、先ほどの黒い影だった。

 幾度と脱出を試みようとも、足は抜けるどころか沈んでいく。

 

「手加減無しの力が見れず、残念だ。」

 

 アサシンはこれを狙っていた。そもそも姿を現したのはセイバー以外を逃げさせるためだ。ほかの者がいれば、セイバーを助け出されてしまうかもしれない。

 あとは、宝具によりセイバーを抹殺するのみ。影に飲まれればサーヴァントは抜け出す事が不可能。

 

「苦悶を零せ。」

 

 黒い包帯から、橙色の腕が現れる。それは異様に長く、攻撃範囲外(アウトレンジ)からセイバーの体にも触れられる物だった。

 

妄想心音(ザバーニーヤ)——。」

 

 その手はセイバーの心臓を取ろうと、伸ばされる。

 直感が再びセイバーに告げる。あれに触れてはならないと。しかし、彼女は動けず、躱すなど不可能。ならば、

 

「くっ……はああああ!」

 

 セイバーは動かす。重い一歩を。影を引きずりながらも前へ。躱すなどと、彼女の頭にはもう捨てられていた。

 今はただ、相手を斃す事だけを考える。

 

「っ……!」

 

 圧倒的有利なはずのアサシンは、セイバーのその気迫に一瞬、押される。しかし、その腕をまた伸ばす。彼女を体を貫通し、偽の心臓を作り、掴む。

 それでも、彼女の歩みは止まらない。

 

「ああああああ!」

 

 聖剣を解放し、残る全ての魔力を集める。必殺だろうと宝具だろうとなんだろうと、食らうのは構わない。どうせ、相打ち狙いなのだから。

 

「かあっ!」

 

 敵の偽の心臓を潰し、真の物も潰したはずのアサシンだったが、しかし

 

「な……!」

 

 目の前に起こっていることに驚きを隠せなかった。

 霊核を潰されたはずのセイバーはまだ動きを止めておらず、剣が発する光は消えず、むしろ強くなっていた。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"!」

 

 騎士王は振り下ろす。真名なぞ解放せず、そんな余裕もなく。

 ただ全力で、それは今まで放った物よりも格段に威力が下がっているが、それでも彼女の持つ魔力量からすれば、異様な光だった。

 魔力の光が全てを包み込み、何も見えなくなる。光が過ぎ去った後、もうそこには誰もいなくなってた。


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