オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
最近厳しいご指摘を受けました。内容は一話目のギャグが面白くないうぬんかんぬんという物です。
正直に言って、私もそう思ってました。あんなの苦肉の策で思いついた物なんです。すごい後付け感あると思いますけど、本当です。
なので、消しました。だからと言ってほかのネタが面白しろいとも思ってません
話は変わってそれとは全く関係ないですけど、最近やる気が出ません。何をするにも手付かずで、五月病でも掛かったのかなと、どうでもいい報告。
だったら、するなよ。


前哨戦

 深夜零時。柳洞寺での最終決戦を前に、俺とジアナは二人きりで自宅の前に立っていた。

 衛宮が桜の顔を一度見ておきたいということで、看病場所である俺の家へと向かい、遠坂は辿り着くや否や喉が渇いたといいだし、冷蔵庫にある麦茶を勧めておいた。セイバーは遠坂の護衛をしている。

 電灯と少し欠けた月明かりが照らす中、ジアナが声を掛ける。

 

「少し良いですか?」

 

 ほんの数日であったが突然疎遠になった二人には、この時間は重要であった。

 

「なんだ?」

「言いたい事があります。」

 

 言いたい事……正体を隠している理由とかか?そうだとしたら、俺にとってどうでもいい。昔がどうのなんて言うつもりはない。大事なののは今だ。

 それとも逆に、俺がジアナを突き放した理由でも訊いてくるのか?それならば、俺は話す義理がある。

 そう覚悟し、話の続きを聞いていると

 

「私はこの時代のこの場所に召喚されて、本当に良かったと思っています。」

 

 それは俺の予想とは全く違う物だった。

 驚きを隠せないとはまさにこの事だ。俺の口はきっと馬鹿みたいに開きっぱなしだろう。

 

「生前にも家族がいて、貧しくも暖かい生活は送ってはいました。その人生の結末が、裏切りと罠に嵌められた事であっても、それで良かったのだと思っています。」

 

 後悔無き過去を振り返り語るジアナはどこか遠くを見つめる。

 ……止めろ。止めてくれ。

 

「ですが、もしここに生きている人たちと貴方の両親と、そして貴方と過ごした人生を今ここで終わってしまうならば……」

 

 それ以上、言わないでくれ。

 そんなの遺言みたいじゃないか。

 

「……いいえ。今でなくとも、私は未練を残してしまうでしょう。

 それくらい、貴方達には感謝しています。

 ですから、必ず、必ずや生きて、そしてこの場所に帰り、またいつもの生活を送りましょう。」

 

 ……ああ、そうか。だったら、生きて帰ろうじゃないか。

 この世界にフラグなんて物があるのか分からない。けれども、あったとしても、踏みにじってやろうじゃないか。こんな惚れてしまいそうな笑顔を見せられてしまえば、そうするしかない。

 

「絶対にな。」

 

 必ず生きて帰る。強く、強く、俺は決心する。

 

「あ〜ら。結構アツアツじゃない。お二人さんは。」

「り、凛⁉︎」

「てんめぇ空気読みやがれ。」

 

 そんな良い雰囲気を、遠坂は躊躇する事なく、ニヤニヤしながら横槍を入れてきやがった。

 

「良いじゃない。別に二人の間を悪くしようとしてるんじゃないし。」

 

 誰もそんな事は言ってねえよ。

 

「はあ、ったく。これで負けたら遠坂のせいだからな。」

「どこがどうなったら私のせいになるのかしら?」

 

 しらばっくれるか、こいつ。

 

「まずはな」

「悪い、遅くなった。」

 

 遠坂に説教をしようと思えば、タイミング悪く衛宮が帰ってくる。

 

「……?どうした、俺の顔に何かついてるか?」

「いいや、別に。」

 

 話を中断され不機嫌になった俺は、八つ当たりのように衛宮を睨みつけていたが、間抜け顔見せられたおかげで、そんな気はどこかに吹っ飛んでしまった。

 

「どこかの誰かさんは何かにお怒りのようだけれど、士郎も戻って来たんだし、そろそろ戦いに集中しなきゃね。」

 

 どこかの誰かさんって。

 ……まあいい。遠坂の言う通り、決戦までの時間は残り少ない。話を逸らされたような気もするが、余計な事を考えてはならない事も事実だ。

 けれども遠坂、覚えてろよ。

 

「全く……仕方ねえ。

 皆んな、準備は良いな?」

 

 おれが最後の確認を取ると、その場にいる全員が肯定で答える。

 

「そんじゃあ、今日で終わらせようじゃないか。勝者なんぞいないこの戦争をな。」

 

 約二週間。いや、それは本格的に始まってからだから、情報収集の時間も入れればそれよりも前。違う。この戦いは十年も前から始まっていた。

 両親が戦い始め、そして俺も戦い、この夜で終わろうとしている。

 ここで決着をつけようではないか。

 柳洞寺、そこで敵は待つ。

 

 =====

 

 静かな夜に木々のざわめきが聞こえてくる。しかし、それ以外には何も無かった。動物や虫の鳴き声、人の気配すらも。そこは、危険なのだと本能で悟ったのか。

 そんな中で、彼女達二人は見上げる。林の中に続く階段と、その先にある寺の門を。その先からは、異様な魔力が垂れ流れおり、彼女らの足を包む。まるで、ドライアイスの煙のように。

 

「やはり、この先に聖杯があるのですね。」

 

 鎧を纏い、完全な戦闘態勢に入っているセイバー。

 

「はい。この様な不快ながらも強大な魔力を生み出す物は、聖杯でしかないでしょう。」

 

 こちらもシスターのような衣と鎧を纏い、そして自身の宝具である旗を掲げているジアナは、セイバーに応える。

 

「しかし、本当に大丈夫なのでしょうか。」

「私なら心配に及びません。英霊としての力が弱まっていたとしても、あのサーヴァントには勝てます。」

 

 ジアナは自信満々といった様子だ。しかし、

 

「いえ、そちらは信用しています。私が危惧しているのは士郎の方です。」

 

 それは思い違いであった。

 

「それこそ心配は無用です。彼が持つ力を十全に発揮できれば、まず負ける事はありません。」

「しかし……」

「それに、保険もあります。ですから、貴女は貴女の役割を果たしてください。」

「……はい。」

 

 セイバーは不安を残しながらも、元マスターである士郎に信頼し、この現世における最期の責務を果たそうと心の中に誓う。

 

「そろそろ時間です。私たちも行きましょう。」

「承知しました。」

 

 皆と別行動を取ってから十分後、それが彼女達の動く時間であった。

 セイバーはサーヴァントであるが故に、正門からでしか境内に入れない。寺はその性質上、人間あるいは正規の方法で入る霊以外は拒むのだ。

 しかし、英霊でありながらも生身の身体を持つジャンヌ・ダルクことジアナは正門から入る必要は無い。だが彼女には、セイバーと行動する理由がこの階段の上にあった。

 二人は階段を一段進むごとに、警戒を強める。林の中からの奇襲は、敵の性格から考えて限りなくゼロに近い。しかし、それでも不測の事態は無くしていかなければならない。慎重に寺の門に近づく。

 そして、階段の途中にある踊り場に着いた時、二人は足を止める。

 

「ほう、セイバーだけが来ると思いきや、聖女までもが付き添っているとは。私の存在は忘れられてはいなかったようだ。」

「アサシン……!」

 

 階段の頂上、そこで待ち受けていたのは、身の丈以上の刀を持つ侍だった。

 

「やはり居ましたね。門を依主としている貴方であれば、キャスターがいないくとも現世に残り続けていると予想していました。」

「その様子では、聖女が相手になるという事で良いな?」

「貴方には悪いですが、そういう事になります。」

 

 ジアナは作戦を決める際にアサシンの存在をみなに伝えていた。そしてその事を踏まえ、自分がその相手をするという事も。

 

「貴方としては名実共に兼ね備えたセイバーと剣を交えたいのでしょう。しかし、こちらとしてはそうもいきません。」

「そこまで見抜かれているか。であれば、私の正体も把握済みなのだな?」

 

 アサシンの正体。そう言われて彼女らは疑問を持った。確かに彼の正体は理解しているつもりだ。だからこそ、そのアサシンの言葉に引っかかってしまう。

 

「貴方の真名は佐々木小次郎の筈です。それは貴方自身も明かしていたでしょう。」

 

 以前に彼女達とアサシンが戦闘を行った時、彼は自身の宝具燕返しを放っていた。佐々木小次郎が使っていたと言われる剣技を。

 だから、彼の真名は佐々木小次郎だと()()()()()()()

 

「……ほう。どうやら思い過ごしのようだ。だが、どちらにしても結果は変わらぬ、か。

 ならば教えてしんぜよう。私の真名は佐々木小次郎では無い事を。」

「何?」

 

 アサシンが偽物だという事実は、さして彼女らには問題では無い。しかし、偽物であるならば、彼の正体は一体何なのか。

 

「佐々木小次郎ではないのであれば、一体何者なのですか?」

「どこから話すべきか。そもそも佐々木小次郎というのは、宮本武蔵の好敵手として語られた都合の良い架空の人物に過ぎん。私はその人物の秘技を披露できるという一点で、あの女狐に召喚されただけの農民だ。」

「農民が……伝説にもなる秘技を?」

「ただの暇つぶしだった筈なのだがな。それは宙を舞う燕を斬ろうという物だ。一太刀を入れればその風圧に乗られて避けられ、どれだけ素早く二太刀入れようとも届かなかった。そして、それ以上数を増やそうとも無意味だという事に気がついた。

 ならば、と思い三太刀を同時に放つという前人未到の修行をしていれば、その領域に辿り着いてしまった。」

 

 ジアナは思った。その理屈はおかしい。

 そもそも、同時に放つという発想がおかしかった。そんな人外じみた事を何故やろうとしたのか。更には、魔術も何もなしにその身一つで魔法紛いの事をやってのけた事は、呆れを通り越して賞賛に値する事だとも、彼女は思っていた。

 決して、宝具を模倣できるのも大概だ、と言ってはならない。

 

「貴方がどういう存在であるかは分かりました。しかし、倒すべき存在である事は変わりません。そして、貴方の相手が剣士として無名である事も。」

 

 ジアナの言葉は、謙虚したものでも、自身を卑下したものでもない。れっきとした事実だ。ジャンヌ・ダルクは兵の士気を上げる事に長けていても、戦い自体に優れているわけではない。

 

「そう謙遜するな。確かに生前のそなたは技術を持っていなかったのだろう。しかし、今は違う。その力は誇るべきだ物だ。」

「確かにこの力そのものは誇るべきモノでしょう。ですが、これは私のモノではありません。恩人から授かった力を自身の力だと勘違いし、驕りたくはありません。

 ……時間をもう無駄にはしたくはありません。私達は早くその門を超えなくてはなりませんから。」

 

 ジアナは剣を構える。彼女自身の力ではなく、彼女の持つ全ての力に合わせた構えを。

 

「では始めよう。

 私とて無名の者。その最期が誰であろうと、強き者であれば文句なぞ言わぬさ——!」

 

 階段の頂上から一気に降り、駆け寄るアサシン。

 無名同士の戦いは、幕を開ける。

 

 =====

 

 同時刻。柳洞寺の横にある林の中。

 月明かりはほとんど届かず、視界はかなり悪い。更には茂みを地面が覆い、足元は全く見えない。一歩でも間違えれば怪我を負い、戦闘に支障をきたす。そのため、木々の中を進む少年と少女は一歩一歩に細心の注意を払っていく。

 そして、目的の場所にたどり着こうとした時、ある人物に出会う。

 

「どっちに来るかと思えば俺たちの方に来るとはな、言峰。」

「私個人としては、衛宮士郎と対面したかったがな。」

 

 言峰綺礼、衛宮士郎とは違った意味で歪みを持つ存在。

 

「綺礼、アンタ性格悪いとは思ってたけど、そっち側に加担するとはね。」

「加担する?凛、君は少し勘違いをしていないか。」

 

 凛の勘違い、それは綺礼が元々敵対する勢力ではないという事だ。

 

「どういう事よ。」

「遠坂、そもそもあいつは人の不幸を楽しむ奴だ。」

「人聞きの悪い事を。私は人々に救いを与えているだけだ。例えば、そう。凛、君の父親に与えたように。」

 

 綺礼は薄気味悪い笑顔を浮かべる。

 

「アンタ、まさか……!っ、絶対に許さない!」

「待て遠坂。仇を取りたいのは山々だろうが、こいつは俺がやる。お前は色々と温存しなきゃいけねえからな。」

「……ええ、分かったわ。」

 

 凛の怒りは創太の制止によって抑えられる。

 

「創太、君の両親から散々やられたよ。まるで雑魚だと扱われるようにな。」

「邪魔をするなら、同じ結果になるぜ。だから、今の内に道を開けた方が良いんじゃないか。」

「できない相談を持ちかけられても困る。例え無駄だとしても、私はするべき事をするまでだ。」

 

 綺礼は中国拳法の構えを取る。それは強者の構え。英霊程ではないが、普通の人ならば一捻りできるであろう力を持つ。

 

「なら、俺もするべき事があるからな。そこをどいてもらおう。」

 

 創太は腰を極限まで低くし、利き腕である右腕を大きく引く。そこから強烈な一撃を放つ、まるでそう言っているかのように、この一撃は分かっていても避けられない物だと宣言しているかのように、構える。

 

「悪いが一撃だ。一撃でお前は沈む。」


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