オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
リアルの行動が更新速度に反映されているのが怖いです。
今回はL◯st stard◯stを脳内再生しながら読んでいただけると、面白さが倍増すると思います。私もそれを聴きながら書きました。(面白さがゼロ?知るかそんなも)
次回、最終決戦に見せかけた何か。



相違点

 アーチャーと創太の勝負に決着がつき、創太は地面に倒れこむ。その体には、ほとんど力が残っておらず、意識もない。だが、かすかに行なっている呼吸が、生きている証拠だ。

 

「おい。」

 

 剣の合間から見える士郎に、アーチャーは呼びかける。

 

「そこにいるのは分かっている。さっさと出てこい。」

 

 それは、士郎に向けられた言葉。士郎自身も、それが誰に向かって言ったのか分かっており、アーチャーの前に立つつもりだった。

 

「シロウ。」

 

 しかし、後ろからセイバーが引き止める。

 

「……すみません。こんな事を言うのは、もっと早くにすべきでしたが、アーチャーを、彼を」

「分かってる、セイバー。」

 

 彼女の言いたい事は理解しているつもりだった。これは二人の戦い。創太のように割って入ることはできない。だから代わりに、と言う事だ。

 士郎は、セイバーを安心させる言葉を言い、前に進む。

 二人は対峙し殺気立たせる。お前を認めるわけにはいかない。互いが思っている事はそれだ。

 

「アーチャー!」

「衛宮士郎、オレの事は隠れて聞いていたのだろう。言いたい事があるなら聞いてやらなくもない。

 だがその前に……ジャンヌ・ダルク!」

 

 真名を呼ばれ、ジアナは肩をピクリと上げる。

 

「そこにいる奴を持っていけ。私としてはどうでも良いが、戦いに巻き込まれて死んでしまったとなれば後味が悪いだろう?」

 

 その言葉は創太への気遣いなのか、それともアーチャー自身がそう思っているのか。どういう意味かは彼女に理解できなかった。しかし、それに甘えて創太に駆け寄り、彼を担ぐ。

 

「……ありがとうございます。」

「そう思うのなら、さっさと戦いの邪魔にならないような場所に連れて行く事だな。」

 

 彼の捻くれた言葉からは意図が読めない。ならば、創太をこの場から離す方が重要だ。そう思ったジアナは凛やセイバー、途中から合流したイリヤスフィールの元へ創太を運んだ。

 

「これで互いに気兼ねはなくなった。

 説得でも、正論でも、何でも言え。」

 

 アーチャーは、創太に言われた事を士郎にも似たような事を言われると思っていた。ここにいるの全員も同じ考えだ。

 

「そんな事は言わない。」

 

 しかし、士郎はそれを裏切る。

 

「俺は、創太みたいにお前を矯正させるなんて事はしない。だって、お前は何も間違えていないんだから。」

 

 今までアーチャーを否定してきた士郎が、ここに来て肯定する。

 

「誰かを救おうとする事が間違いなんかじゃない。それは失敗しただけだ!だから、それすらもお前が否定するなら、俺は死力を尽くしてお前という自分を打ち負かす!」

 

 そうでなければ、彼と同じだと証明されてしまうと、士郎自身が一番理解していた。

 

「ならば、言葉など不要か。」

 

 戦いが始まる。そう、誰もが直感した。

 

「「投影(トレース)開始(オン)。」」

 

 その詠唱は衛宮士郎だけが、彼らだからこそ使える物。衛宮士郎が衛宮士郎足らしめる物。互いに行う事は同じ。

 アーチャーは今まで見てきた英霊の武器を固有結界(この世界)からその手に召喚する。

 衛宮士郎は彼の手にある投影品を投影する。

 故に、これは明らかに士郎が不利な戦いであった。投影を使い慣れているアーチャーと、覚醒してから日が経っていない士郎。であれば、軍配があがるのはアーチャーだ。更には、アーチャーは固有結界を展開しており、投影のスピードが通常よりも速い。

 

「うおおお!」

 

 しかし、蓋を開けてみれば戦況は互角だった。

 最初は遠距離から投影品を射出するという、投影の出来を競うものであった。二人が投影し、撃ち合い、その中央で相殺する。ただそれだけが続いていた。

 アーチャーは痺れを切らし、近接戦闘に持ちかけた。投影の出来だけではなく、技さえも要求される勝負。それならば勝てると思っていたが、意思とは反し、二人の戦いは互角であった。士郎の投影も、技も、まだまだ荒削りであるにも関わらず。

 その理由は衛宮士郎()アーチャー(彼自身)を模倣していたからに過ぎない。剣を交わす度に、贋作がぶつかり合う度に、アーチャーの技術を、経験を、取り込んでいた。士郎にとって、それは意図的ではなかった。けれども、事実としてそうなっていた。まるで共鳴するかのように。

 

「うぐっ!」

 

 だが、前借りをしたようなその力は、士郎の体を蝕む。ゆっくりと着実に。それも仕方のない事。まだ未熟であるその体に、相応しくない力が使えるだけでも、奇跡のような物だ。

 しかしそれとは別に、次第に、士郎の頭の中には、数々の光景がよぎっていく。

 守護者となったのに、誰も救えなかった事。

 世界を駆け、人を救ったのに裏切られた事。

 まだ理想を諦めていなかった若い頃の事。

 戦争を勝ち抜き、聖杯を壊した事。

 無意識に召喚したサーヴァントの事。

 平穏に暮らしていた日々の事。

 やがて士郎は、周りが霧に包まれていることに気がつく。アーチャーやセイバー達は居ない。ここには自分一人のみ。

 足元が安定しない。そう思って、下を見れば瓦礫があった。それに気づいてしまえば、自身がどこにいるかが、嫌でも理解してしまう。そうでなくても、周りの霧は突然晴れて、代わりに火の荒野に包まれている。

 

「ここは、あの時の……」

 

 士郎はその荒野の中で歩いている人を見つける。見た目は中年の男性で、髪はボサボサ、髭は綺麗に剃られていないという、間違っても綺麗には見えない中年の男性だった。

 その男性には生気がなく、ゾンビに近い歩き方をしており、それでも何かを探しているように歩く。

 その内、男性は何かに気づく。左右に首を振り、何かを発見する。そして、瓦礫を掘り返す。

 

「おい。」

 

 無意識の内に動かしていた足を、誰かが呼び止める。

 士郎の後ろに、その誰かがいる。彼には振り向かなくても分かった。アーチャーだ。

 

「その先は地獄だぞ。」

「これがお前の忘れた物か。」

 

 士郎に流れ込む映像(記憶)は、全てアーチャーの物だった。そして、彼らが今見ている物は衛宮士郎が生まれた時だ。

 

「確かに、始まりにあったのは憧れだった。

 けど、根底にあったのは願いなんだよ。

 この地獄を覆してほしいという願い。誰かの力になりたかったのに、結局、何もかもを取りこぼした、果たされなかった男の願いだ。」

 

 瓦礫を掘り返していた男性は、手を止める。そして、頰に涙を流した。

 次の瞬間、目の前が光に塗りつぶされる。強くも優しい光。衛宮士郎にもその光があった。彼自身もそれに気づく。

 士郎はまた歩を進めようとする。しかし、それは一歩目で終わった。まだ映像(記憶)は続いていたからだ。

 

「……違う。」

 

 どこから現れたのか、寝巻きの姿の少年がフラフラと中年の男性へ歩いていく。いや、そもそもその少年は、どこを目指しているわけでもなかった。

 どちらかと言えば、当てもないのにこの地獄を歩き、中年の男のように何かを探しているようだった。

 

「これは、お前の物とは違う。」

 

 何かを探す二人は、衛宮切嗣と古崖創太は出会う。

 

「この記憶は、俺のものだ。」

 

 アーチャーの生前に創太はいなかったからこそ、確信を持てる言葉。

 士郎はまた歩を進める。今度は止まらなかった。一歩、また一歩と、前に、前に、再び剣の荒野と化した景色を目に焼き付けながら。

 

「だからどうした。あいつの存在で、衛宮士郎(お前)の何が変わる?」

「変わるさ。」

 

 丘の上、そこに突き刺さった剣を前に、士郎は止まる。

 

「だって、あいつは衛宮士郎()にとって始めての友達だったから。」

 

 彼はその剣を抜く。熱く燃えたぎる剣を。それと同時に、世界は塗り替えられる。アーチャーのそれではなく、士郎の物へと。

 彼らの意識は徐々に現実へと戻っていく。無意識に身体が行なっていた戦いに引き戻されていく。

 そして、アーチャーは干将・莫耶を手に、士郎へ攻撃を仕掛ける。それは今までのどの攻撃よりも鋭く殺気に塗れた一撃。

 

I am the(体は)……」

 

 しかし、

 

born of my sword.(剣で出来ている。)

 

 士郎は、アーチャーの攻撃を()()

 

「ばかな———!」

「お前には負けられない!」

 

 アーチャーが予期しなかった出来事。衛宮士郎(現在)アーチャー(未来)を超えてしまうという、不測の事態。先ほどまで、剣製も、技術も、心も、アーチャーが上手であるはずだった。

 しかし、同じ物を投影しながら、アーチャーのそれが砕かれるという事はつまり、士郎の剣製が上だという証拠だ。

 

「くっ!」

 

 破れかぶれに、アーチャーは次なる剣を投影する。

 士郎は今持っている双剣では防げないと判断する。耐久力が先の一撃で減りすぎた。だから、またアーチャーの剣を投影する。

 刃渡りが二メートルもある長剣。それが二つ、鍔迫り合いに持ち込まれる。だが、すぐに士郎の剣が、アーチャーの剣を絡めとり、手から弾かせる。

 士郎の技術が勝った瞬間だった。

 

「だあああっ!」

 

 アーチャーに隙ができ、すぐさま士郎は一歩踏み込み、彼の懐へ入ろうとする。しかし、それは罠だった。

 剣が、アーチャーの横から射出される。彼は得物を弾かれた瞬間に、すでに他の剣を喚び出していた。それは士郎の右腕を斬り、剣を弾かせる。

 

「っ……!———じゃない。」

 

 それでも、彼は攻撃をやめない。左腕は何も持っていないのに、まるで短剣を持っているかのような手つきで、アーチャーの胸を突き刺そうとする。いや正確には、今から短剣を投影するのだ。

 

「間違いなんかじゃない!」

「……!」

 

 彼の手に一本の短剣が現れる。何の力も持たない、ただ斬れ味が良いだけの短剣。だからこそ、即座に投影する事ができる。

 意識をせず、息をするように、士郎はそれを投影し、

 

 英霊エミヤ(アーチャー)を突き刺した。

 

 後は、静寂だけがこの場を包み込む。アーチャーの反撃は無い。彼にはまだ力が残っているはずだ。しかし、何もしない。ならば、答えは一つだ。

 

「俺の勝ちだ、アーチャー。」

 

 この結果を噛み締めるように、士郎は宣言する。

 

「ああ。そして、私の負けだ。」

 

 誰でもない、己自身に言い聞かせるように、アーチャーは呟く。

 もう、剣の荒野は無い。すでに周りは森に戻っている。

 

「くあっ……!」

 

 士郎は緊張を解いたせいか、体の反動を自覚する。今まで本来は得ない筈の技術を前借りしてしまったのだから、当然といえば当然の現象だ。

 

「シロウ!」

 

 真っ先に飛び出したのは、セイバーだった。体を支え、なんとか士郎を立たせようとする。他にも意識を失っている創太を除いて、ジアナや遠坂、イリヤスフィールも、士郎に駆け寄る。

 

「今すぐ回復魔術を施します。セイバーは、彼を」

 

 誰もが、士郎に意識を向いたその時だった。数十もの()()が、彼らに降り注ぐ。

 

「っ!我が神は(リュミノッ)……」

 

 ジアナは、宝具の真名解放を行おうとする。しかし、それよりも早く、アーチャーが庇った。

 

「アーチャー!」

 

 それは、誰が放った言葉だろうか。とにかく、何十もの剣が突き刺さったアーチャーの体に、皆が視線を集める。

 

「とんだ下らない茶番だったな。

 最初から結末が見えている劇なぞ、面白味も何もない。」

 

 道の真ん中で堂々と立っている人物、それはギルガメッシュだった。

 皆の視線は、次にそのギルガメッシュへと移る。

 

「貴様、アーチャー⁉︎」

 

 今度は明確に分かる。その声はセイバーの物だった。

 

「十年ぶりだなセイバー。お前とはもう少し早く顔合わせをする気であったが、予想外のことばかりでな。」

 

 黒のライダースーツを着た金髪の男は、セイバーだけしか見ていなかった。他は、まるでそこらに転がっている石などと、同じような扱いで。

 セイバー達にとって、ギルガメッシュは最悪のタイミングで出てきた。アーチャーは魔力切れ寸前、士郎と創太も力は残されていない。戦える者は三人だとしても、サーヴァントではない士郎と創太を守らなくてはならない。

 そして、あのサーヴァントは、誰かを気にして戦える相手ではない。

 

「さて、理解したか?それが本物の重みというものだ。いかに形を似せようが、本物の輝きには及ばない。」

 

 衛宮士郎を、衛宮士郎の全てを否定するかのような言葉。いや、それそのものだった。

 

「他人の真似事だけで出来上がった偽物は、疾くゴミになるがいい。」

 

 その数、三十。宝具の雨が士郎達に向かった降り注ぐ。誰がどうあっても避けられない。

 

「「動は消滅せん(リセット)!」」

 

 しかし、止める事は出来た。銃弾のごときスピードで降り注いでいた宝具は動きを止め、後は重力だけが働き、地面に落とされていく。

 誰がそんな事を行ったか。

 

「貴様ら……!」

「また会ったな、ギルガメッシュ。」

 

 それは、ジアナと気を失っていた筈の創太だった。

 

「相も変わらず臆病だけが取り柄の雑種が、わざわざ我の怒りを買うつもりか?ならば、そこの道化と共に」

「凛!」

 

 彼が言い切る前に、ジアナは指示を飛ばす。

 

「オーケー!宝石使うんだから、確実にやってよね!」

 

 凛がばらまく宝石の数は、三つ。そこから爆発が起こる。もちろん、ギルガメッシュには傷一つ付いていない。

 土埃が舞い、視界は良好ではなくなる。これでは、互いに状況を把握できない。双方とも動く様子はなく、埃が晴れるまで、変化はなかった。

 

「逃げたか……」

 

 視界がはっきりした時、もうすでに創太達の姿は無かった。

 

「おい、何やってんだよグズが!」

 

 草むらからかき分けて出てきたのは、間桐慎二であった。その表情には、怒りしかなく、その矛先をギルガメッシュに向けていた。

 

「せっかく遠坂がここに来るって情報を掴んだのに、なんで逃がしちまうのさ!」

「どちらにせよ今宵にまた会う事になる。」

 

 聖杯の力を手に乗せながら彼は、答える。ニヤリと不気味な笑顔を浮かばせながら。

 この男ならば、不完全な聖杯が作れる。そういった愉悦を楽しみながら。


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