オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、投稿した後の話に、書き忘れた物を書く作者です。
やっと、書きたいことが書けたぞ!私はもう満足です!(未完フラグ)
今回は、今までに比べて原作のセリフから、かなりの量を抜いてきました。それによって原作コピーに引っかかるかどうかが、心配です。でも直してしまうのはあれだし、けどやっぱり運営から何か言われるのはちょっと……と思いながら投稿。果たしてどうなるのでしょう。


過去と恩人と友と

 また、夢を見る。

 前にも見た夢。父さんの昔話を聞かされる。

 

「父さんはな、昔正義の味方に会った事があるんだ!」

 

 一字一句、喋っている事は何も変わらない。

 何故またこの夢を見るのだろう。

 正義の味方、それは衛宮士郎が目指しているもの。

 ただの偶然だろうか。はたまた……

 

「それで、そいつの格好はな……」

 

 ーー2月13日ーー

 

「……そろそろだな。」

 

 睡眠から目を覚まし、俺がジアナ達に提示した十二時間が、経とうとしていた。周りを見ると、物が大量に置かれてある。自宅の地下室ほどではないが、色々な物がある。しかし、ここは屋根裏ではある為、換気はあそこほど悪くはないだろう。

 だが、そればかりを気にしてられない。拘束されている状態から、脱出しなくてはならないからだ。後ろで両腕を縛っている縄を周りに燃え移らないように、火の魔術で焼く。こうなれば、俺は人質ではなく、脱走犯に早変わりだ。

 

「起きろ、イリヤスフィール。時間だ。」

 

 隣にいる幼女の体を揺らす。

 ここの主である彼女は、俺がアーチャーに連れられ、ここアインツベルン城に来た時、明け渡してくれと頼み、了承したまでは良いものの、彼女はその後どうするかを考え、逃げるか残って人質になるか、という選択から自分で後者を選んだ。

 十二時間という短い時間を提案したのも、実はこいつが理由でもある。別に俺は何時間でも待っていられるが、彼女がいつまで保っていられるか分からない。

 

「……ん〜。あと五分。」

 

 かわい……じゃなくて。

 

「ほら、衛宮がもうすぐ来るんだから、そのままだと逃げ遅れるぞ。」

「シロウが?……あ、そうよ!シロウが来るのね!」

 

 衛宮の話を持ち出すと途端に食いつく。どんだけブラコンなんだよ。

 

「起きたか?ならさっさと逃げるから、後ろで両腕を縛っている縄を見せてくれ。」

 

 イリヤスフィールの後ろに回り込み、さっきと同じように炎で縄を焼く。ただ、今度はより慎重に、イリヤスフィールの肌には触れないように、一部だけを焼き切る。そこからは、手作業で縄を解いていく。縄だけを燃やすなんて器用なことは、俺にできないからだ。

 

「これでよし。痛い所とかはないか?」

「縄で縛られた所以外ないわ。」

「本当か?硬いところに座ってたんだから……いや、なんでも」

「っ!バカ!」

「ふぐっ⁉︎」

 

 強烈な平手打ちが、俺のほおに直撃する。

 

「……途中で止めたんだから、引っ叩かなくても良いんじゃないか?」

「そこまで言ったら、もうアウトよ!」

 

 連想させてしまえば、アウトなのかよ。

 

「レディに対する扱いが本当になってないわね。」

 

 うるせえロリッ娘(十八)。

 

「……なあ、イリヤスフィール。」

「なによ。」

「なんで、ここに残ったんだ?」

 

 俺は今さっき疑問に思った事を問う。

 

「それは……主人として、この屋敷を離れる訳にはいかなかったからよ。それに森を歩くのに時間が掛かるわ。だったら、シロウを待てばおんぶをしてもらえるかもしれないじゃない。」

「本当にそれだけか?」

「本当よ。」

 

 変な間があったから怪しいし、彼女が言った事は理由として弱い。一つ目は、今までの事を考えるとよく屋敷を離れていたから納得がいかないし、二つ目も従者がいるから、彼女らに連れて行ってもらえばいい。でも、まあ

 

「そうか。だったらこの話は終わりだ。」

 

 追求するのも馬鹿らしい。

 

「さあ行くぞ。お前は城から出たら右から本道と並行になるように森の中を行け。そうすれば、あいつらと合流できる。俺は真っ正面からアーチャーと向かい合う。」

「ええ、分かったわ。」

 

 階段の手すりに手を掛け、イリヤスフィールを誘導する。今は、彼女の真意を探るより、こっちの方が大事だ。

 

「……貴方が心配だったって、言える訳ないじゃない。」

「なあ、イリヤスフィール。こんな噂聞いたことあるか?

 難聴は衛宮の特権スキルだって。」

「へっ?」

 

 彼女は突拍子もない会話を出され、裏返った声をだす。俺からすれば噴き出しそうだから、その声は止めてほしい。

 

「ほら、グズグズしてないで脱出するぞ。」

「ちょっと……士郎の特権スキルってなんなのよー!」

 

 ーーーーー

 

 城の玄関から真っ直ぐ歩き、森の中を歩く。太陽の日差しが眩しい。時間はもう朝といったところか。

 イリヤスフィールとは既に別れて、今は単独行動を取っている。目的地は城から少し離れたところ。バーサーカーと戦った場所だ。

 彼女からは場所は屋敷を壊さなければどこでも良いと言われ、アーチャーが決めた場所はそこだった。

 

「脱走犯が真っ向から向かってくるとは、一体どんな勇気ある者かな?」

 

 出会って早々皮肉か。

 

「看守がしっかりしないから、手応えを感じなくてな。だから、敢えて堂々としてみたんだ。どうせ見張りがすかすかだからな。戦っても弱いだけだろ。」

 

 負けじと反論をする。

 

「そう言うことか。しかし、残念ながらこの先にはもう進めんぞ。」

「どうせ用があるのはお前だ。お前も分かってんだろ。」

 

 アーチャーと話をしながらも、周りの魔力を探る。すると右奥の方で隠れてはいるが、覚えのある魔力を感じる。ジアナ達だ。しっかりと時間通りに来てくれたようだ。

 これで、アーチャーについての正体を聞く準備は整った。

 

「早速だが本題だ。アーチャー、お前は一体何者だ?」

「衛宮士郎と、お前も分かっているはずだが?」

 

 こいつ、敢えて言いやがった。質問の意味を理解しているくせに。けど、こいつのペースには乗らない。落ち着いて、ゆっくりと俺の求める答えを引き出す。

 

「悪い、言い方を間違えた。だから、質問を変えよう。

 お前は何の成れの果てなんだ?衛宮士郎。」

 

 その瞬間、アーチャーの顔が緊迫したその物になる。

 

「良いだろう、古崖創太。そんなにオレの正体が気になるなら、教えてやる。お前の親友が、どれだけ愚かな存在かということを。」

 

 衛宮が愚か、か。それをいえば、俺も愚かな奴の一人だ。死を怯え、未だに曖昧な目標一つすらないただの愚か者だ。

 しかし、今は言うべきではない。アーチャーの話に耳を傾け、あいつがいかなる存在かを見極める時だ。

 

「オレは最初、人々を救うためと称し、世界中を奔走していた。争いがあれば解決し、絶望した人がいれば救ったさ。それこそ、正義の味方になるために。だが、実際のところは違った。

 殺して、殺して、殺して、殺し尽くした。

 己の理想を貫く為に多くの人間を殺して、無関係な人間なぞどうでもよくなるくらい殺して、殺した人間の数千倍の人々は救ったさ。」

 

 それは、後悔だった。救いたかった筈の人間を、無理だからという理由で、殺してしまう後悔。

 

「それでも、オレは戦った。何度も何度も。

 ———けど、きりがなかった。戦いを何度終わらせようとも、何人もの人を救おうとも、新しい戦いは起きてしまう。

 そんなものがある限り、正義の味方っていうのは有り続けるしかない。

 だから、殺した。

 せめて手が届く範囲は救おうと、何十人もの人を殺した。今度こそ終わりだ。今度こそ誰も悲しまないだろうと。

 ———だが、終わる事はなかった。

 一人を救えば二人。二人を救えば十人。十人の次は百人。さて、その続きはいくつだったか。そこで悟ってしまった。衛宮士郎が抱いていたものは、都合の良い理想論だったと。」

 

 正義の味方という理想を抱く限り、こいつは終わりのない無限ループに陥ってしまった。

 

「席は限られている。幸福という椅子は、常に全体の数の少な目でしか用意されていない。

 その場にいる全員を救う事などできないから、結構は誰かが犠牲になる。

 多くの人間を救う為に、一人の人間を絶望に落とした。

 そうやって走り続け、そして、何度も欺かれてもきた。救った筈の男に裏切られたこともある。死ぬ思いで争いを治めて、その張本人だと押し付けられ、斬首刑だ。

 それでオレの罪も償われたさ。だから、それだけならばまだ良かった。」

「けど、そうじゃなかった。」

 

 アーチャーの顔が皮肉れた笑顔で歪む。

 

「ああ。オレは、それよりも以前、世界に死後を預け、守護者になる事を契約した。その代わりに、力を貰い、生前で出来る限りの事を尽くした。」

 

 守護者、ジアナにも聞かされたことがある。それこそ、魔術師になったあの日にも。

 

「人間の滅亡が来るとき、それを食い止めるのが守護者、だっけか?」

「良く言えば、な。だが、実際にはそんな都合の良いものでは無かった。それは、生前の時も理解していたが、良いように使われるための者だった。

 当時のオレは、それでも人々のためになるなら、今度こそ理想を守れるなら、そう考えて契約した。

 それが、実態はどうだ。ただの掃除屋でしかない。既に起こってしまった事を、その力をもってして無にするだけの存在。絶望を嘆く人々を救うのではなく、絶望と無関係に生を謳歌する部外者を救う為に、絶望する人々を排除するだけの殺戮者。

 ———馬鹿げた話だ。それが、今まで自分(オレ)の何が違う。」

 

 ……そうか。こいつは、守護者になり、そして

 

「自身の抱いた理想に、裏切られたって訳か。」

「しかも幾度となく、な。それも慣れてしまった。

 そして、何度も見てきた。

 意味の無い殺戮も、意味の無い平等も、意味無い幸福も……!

 オレ自身が拒んでも見せられた。オレが望んだのはそんな事では無かった。そんなモノの為に、守護者になったのではない……‼︎」

 

 英霊エミヤ(こいつ)は、人間の生き方ではなく、多分だが自分自身に怒りを覚えている。人の醜い部分だけを見せつけられる、理想と乖離してしまう人生を選んでしまった自分に。

 

「それが、衛宮を殺そうとする理由か。守護者になれば、自分の意思で行動をする事はできない。だから、この聖杯戦争に参加し、遠坂との契約を切れるように仕向け、自由に行動できるようにする。

 そうすれば、この時代の衛宮を殺すことができ、矛盾点が生まれ、世界から外れる。けどそれは」

「可能性があまりにも低い、そんな事は百も承知している。これは、罪を償い過去を無かった事にするなんて、高尚な物ではないさ。オレがやっているのは、ただの八つ当たりだ。過去の自分へのな。」

 

 それがアーチャーの全てか。ここまで聞ければ十分だ。

 

「だったら」

「お前の質問に答えたんだ。今度は、私の質問に答えろ。

 古崖創太、貴様は一体何者だ?」

「は?」

 

 それは、以前にも一度訊かれた質問だった。

 

「生前、オレの友人の中に古崖創太という名前などいなかった。力の魔術を持った奴も、聖女を連れた奴もな。更に、私はサーヴァントとして、冬木の第五次聖杯戦争を何度も経験してきた。衛宮士郎を殺そうとし、そして失敗に終わった。それでも、古崖創太に出会った事はない。

 それを聞かせたお前にもう一度問おう。貴様は、誰だ?」

 

 生前にはいない?何度もこの戦争を経験した?

 ———出会ったことはない。

 

「……そうか。そういうことだったのか。」

 

 アーチャーの話、そして、俺の過去を照らし合わせた時、俺の中で全てが繋がった。

 

「ふっ……くく、あーっはっはっはっ!」

 

 俺は突如として、狂ったように笑い出す。

 

「気が触れたか。」

「ははっ。いやいや、そうじゃないさ。

 俺は今、嬉しいんだよ。知らず知らずの内に、命の恩人と出会えた事にな。」

「何?」

 

 さっき全てが繋がったと言ったが、それは大げさだ。しかし、謎が解けた事は確かだ。あの人の正体が分かったんだから。

 

「お前の質問に答える前に、少し昔話をさせてくれ。と言っても、それは俺のではなく、俺の父さんのことだ。

 父さんは、母さんと出会うずっと前に、世界中を旅していた。」

 

 最近の夢にも出てきて、イリヤスフィールにも語ったあの話。

 今度は詳細に話す。例え、アーチャーがそのことを覚えていても、いなくても。

 

「けど、お前みたいに誰かを助けたいなんていう目的じゃなく、単なる興味で、だ。その旅の途中で、ある事件に巻き込まれた。村に呪いが蔓延するという事件に。その病は進行が進むに連れてとてつもない力を得る代わりに、自我を失い凶暴化してしまう物だ。更に恐ろしいのは驚異的な感染力だ。

 後で分かった事だが、その原因は魔術師が実験を失敗したからだとか。

 とにかく、そのまま放置すれば、人類が滅亡する。そう考えた父さんは、なんとか病気をなんとかしようと、せめて進行しきっていない患者を治そうと、努力した。魔術を惜しみなく使って。

 結果から言えば、治療は成功した。だけど、凶暴化した人間を抑えるのは難しいし、そもそもその解呪自体も時間がかかるものだった。人手が足りず、その場に解呪できる人間は偶然居合わせた俺の父親のみ。しかも、父親すらも病にかかる寸前だった。

 他から援軍を呼ぼうとも、そのまま治療に専念しようとも、時間が足りず、もう手詰まりだった。

 

けれども、そこに守護者が現れた。

 

そしてそいつは、病に囚われた全ての人間を殺した。病気の進行状況に関わらず。」

 

 当事者である守護者は、後悔と罪悪感からか、目線を逸らす。

 

「その守護者の外見も、父さんから聞いている。」

 

 俺ははっきりと思い出す。今の今まで忘れていた、父さんが言っていた言葉を、一字一句間違いなく。

 

「褐色の肌に、黒いボディスーツを身に纏い、その上から赤い外装を羽織っていた。色素の抜けた白髪は逆立っていて、中華風の双剣と黒塗りの洋弓を携えていた、と。」

 

 それは、今のアーチャーそのものだ。つまりは、父さんが昔会っていた守護者というのは、目の前にいる衛宮士郎だった。

 

「運良く父さんは助かった。まだ病には掛かっていなかったからかもな。

 けれど、守護者は周りに批判されていた。殺人鬼だとか、せっかく救えた命を、とか。

 でも、俺の父さんは違った意見を持っていた。目の前に現れた守護者は、正義の味方だと。

 誰もできない選択を、一歩踏み越えてやってのけた。その行動自体は、人ならざる物だとしても、そうしなければ自分は生きていなかったと。

 ……昔話はここまでだ。」

 

 ここにいる全員がもう感づいている。俺の存在がどんな物なのかと。しかし、それでも俺は自分で口にする。

 

「さて、話は終わったんだから、質問に答えよう。

 俺はお前に救われた不確定要素(イレギュラー)の一人だ。」

 

 不確定要素、つまりはアーチャーに殺されたか殺されなかったか。抑止力が作用するタイミングが早かったか、遅かったか。それだけで、命の有無が決められていた者だ。

 守護者というのはそれが存在する体で、歴史が作られている。つまり、アーチャーは守護者にならざるを得ない人生を送らされてきた。途中で死ぬことは許されず、生まれる前から確定された物だった。

 しかし、俺は違う。厳密に言えば父さんの方だが、結果だけ見れば変わらない。父さんがいなければ俺という存在はない。

 あいつはパラレルワールド(並行世界)を体験し、衛宮士郎を何度も見てきた。しかし、俺は違う。それだけで、俺が世界にとってどうでもいい者(イレギュラー)なのだと分かる。

 

「全く、命の恩人がまさかお前だとはな。

 ……だから、気が変わった。本当は、戦わないつもりでいたんだけどな。」

「何?」

 

 本来ならばアーチャーは俺ではなく、衛宮と戦うべきだ。あいつにとって、俺は他人なのだから。

 

「俺はもう、見ていられなくなった。英霊エミヤ(お前)衛宮士郎(あいつ)を殺すなんていう、自殺紛いな事を。

 俺があいつの友達だからじゃない。お前が俺の友達で、そして恩人だからだ。」

 

 一方的と、自己満足と思われても構わない。だってこいつも、そう生きてきたのだから。

 

「ならば、どうする気だ?」

「当たり前の事を聞いてんじゃねえよ、()()。」

 

 説得なんて無意味だ。どれだけ言葉を並べようとも、他人の言葉だ。

 

「理想に裏切られた?罪を償った?自分なんかいなければ良かった?ふざけんじゃねえぞ。俺はそんなお前に救われた。救われた人々がいた。それなのに、自分が間違いだって言い続けるのか。」

「なんと言おうともな。」

 

 だったら、話は簡単だ。

 救われた人々のために、父さんのために、そして、俺の何の意味もない意地のために!

 

「アーチャー、俺はその曇り切った目を覚まさせるために、スカした顔を一発ブン殴ってやる!」


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