オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
筆が進む、進む!この調子で、次回も書くぜ!
へっ?キャスター戦?し、知りませんね、そんな子(震え声)。
その点に関しては、申し訳ございません。ジアナ対アーチャー、凛対キャスター、士郎対葛木先生、という構図があったという情報だけ(震え声)
さっさと完結させてぇなぁ。


本当の正解

 教会の中へと入り、魔力が集まっている場所を探すと、地下への階段を発見した。この先に、きっとジアナ達はいる。そして、アーチャーも。だが、キャスターは多分いない。そいつの魔力だけが感じ取れないのだ。

 何故かは、分からない。しかし、この階段を降りなければ、この疑問の答えは見つけられない。

 俺は慎重に、一歩、また一歩と足を運ぶ。奥にまだいるであろう敵の存在に、気をつけながら。自身の存在を悟られないように、魔力を、気配を消す。

 やがて、階段の終わり近づく。それと同時に俺は、更なる注意を払って、その先を少しずつ覗く。

 

「————やめろ。もう決着はついた、これ以上は」

 

 耳からは制止掛ける衛宮の声。そして、目からはアーチャーが白い中華剣が振り下ろそうとする光景。それが脳に伝わった瞬間、俺は前へと出ていた。

 今までの蓄積された疲労なんて無かったかのように、全速力でアーチャーの前に出る。そして、強化も硬化もしていない手の平で、斬撃を掴む。

 

「……何故、止めた?」

 

 自身の行動を止められたアーチャーは、俺の行動を問う。

 部屋の中にいる俺とアーチャー以外の全員は、俺の手に注目する。そこからは血が流れ出て、剣を赤く染めようとしていた。しかし、対峙している二人は気にしてなどいない。痛みなどどうでも良かった。死に行く姿を見るよりは。

 

「状況は分かっているのか?そいつは、キャスターのマスターだ。キャスター(サーヴァント)がいなくなったとは言え、敵は倒さなくてはならない。」

 

 アーチャーが何か驚くべき事実を言っている気がするけれど、関係ない。後ろにいる()()()()が何者かなんて、そんな事はどうだっていい。

 

「だからって殺すのか?」

「ああ、殺す。お前が殺さないという、偽善に塗れた提案を出してもな。」

「じゃあ、なんで殺す必要があるんだ?」

 

 怒りがふつふつと湧き上がる。

 殺す、なんて簡単に言うアーチャーが許せない。

 

「そいつが邪魔をするからだ。」

「だったら……っ!」

 

 背後から微かな空気の流れを感じる。しかし、殺気も敵意も無かったが故に反応が遅れ、寸前のところでそれを躱す。

 

「……葛木先生。」

 

 後ろを振り向くと、仏頂面な顔が俺を見ていた。

 

「古崖、そこをどけ。」

「嫌です。」

 

 俺が否定した途端、葛木先生は独特な構えをする。それは相手を巻き取るかのような蛇だ。

 

「そうか、ならば……っ!」

 

 突如、葛木先生は倒れる。その後ろにいたのは、ジアナであった。

 

「気を失ってもらっただけです。命に別状はありません。」

「悪い、助かった。」

 

 感謝の言葉を述べて、アーチャーに再び向き直す。

 

「殺す以外に方法はあっただろ?」

「だが、次も邪魔をする可能性がある。」

「なら次もああすれば良い。

 殺すって事は、その人を終わらせるという事だ。説得も改正もせずに、その人は施しようのないと思って、人を殺すのは諦めてるだけだ!」

 

 俺は強く、強く説得する。

 死を見たくない。俺がこんな行動をとった理由はそれだろう。しかし、他にも理由はある気がする。

 何故だ?何故こんな事を……

 

「分かった。」

「なら、殺さないでくれるな。」

「いいや。分かったと言ったのは、お前を説き伏せるのは無理だと理解したからだ。だからと言って、そこの男を殺すのはいささか困難だ。もう、殺す意味すらもなくなりそうだからな。

 だから……」

 

 アーチャーは、別の方向を向く。

 まさか!

 

「ぐっ……!」

 

 アーチャーは今までも見た白黒の双剣で、衛宮の首を刎ねようとする。しかし、衛宮も同じ双剣を投影し、それを防ぐ。

 

「やはり、この世界の衛宮士郎は少々手強いようだな。」

「何の事だ……!」

 

 この世界の……?

 いや、今はアーチャーを止める方が先だ。

 

「オレも全力を出さなければ、お前を殺せない。」

 

 十数の剣が突如して宙に出現し、衛宮を襲う。

 部屋にいる誰もがあいつを助けようと、駆け寄る。

 

「ふっ!」

 

 衛宮の横から、青い何かが体当たりをする。その正体は、あいつのサーヴァントであるセイバーだった。おかげで、衛宮は串刺しにならずに済んだ。

 しかし、問題はその体当たりが全力であった事だ。全力でただ体を飛ばすだけならば、規格外であるはずの英霊としての力はあまり残されていない事になる。

 

「アーチャー、何のつもり⁉︎もう芝居は終わったでしょう!」

 

 激怒する遠坂。

 

「何のつもりか、だって?見ればわかるだろう。」

「見ればって……まさか!」

 

 何を感づいたか、遠坂はまたもや衛宮にいち早く駆け寄ろうとする。だがしかし、それは上から降る剣の檻によって叶わなかった。

 

「ここまで来て邪魔などさせん。契約が切れた今、お前にかけられた令呪の縛りも存在しない。」

「なんでよ、アーチャー!アンタ、まだ士郎を殺す気なの⁉︎」

 

 衛宮を殺す……?

 

「そうだ。アレと契約し、ただ摩耗するだけの時間を過ごしたオレが、唯一つ望んだ最後の願望。」

「やはり、貴方はそのような存在でしたか。」

 

 ジアナは全てを理解したかのように、振る舞う。

 俺も所々ならわかる。しかし、()()()()だけはまだ理解し得ない。

 

「ジャンヌ・ダルクだったな。キミも理解しているだろう。アレと契約すれば、どんな物が与えられるかを。」

「ええ。確かに貴方にとっては、過酷ではあるでしょう。」

 

 意味の分からない会話だけが、続くその時。

 

「———告げる!

 汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら———」

 

 遠坂が詠唱を始める。檻から手を伸ばし、その先にはセイバーがいる。

 

「———我に従え!ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!」

 

 つまり、これは再契約。セイバーが魔力を供給するためには、マスターが必要。

 

「セイバーの名に懸け誓いを受ける……!

 貴方を我が主として認めよう、凛———!」

 

 そのマスターは遠坂だ。

 そこに立つのは、もはや今までのセイバーではない。魔力は格段に上がり、嵐すらも巻き起こるかのよう。

 衛宮と契約していた時とは大違い。それに俺は見入ってしまう。

 

「ちっ、元より凛と契約させるつもりだったが、手順が変わったか……!」

 

 こうなってしまえば、セイバーとアーチャーの力の差は歴然だ。方や遠坂凛という優秀なマスターがおり、方やマスターなんてのはいない。そして、数でも有利だ。どれだけ消費しているかは知らないが、ジアナもいるし、俺も微力ながら協力できる。

 

「アーチャー、貴方が何もせずに退けば、そのまま逃がしてあげましょう。」

「そうだな、キミの言う通り一旦退くとしよう。」

 

 一旦?という事は、まさか……。

 

「まさか!」

「待ってくれ、ジアナ。」

 

 アーチャーの行動を感づいたジアナだったが、俺が制止させる。そして、その予測通りアーチャーは、檻に閉じ込められていた遠坂を担ぎ、首筋に手を当て、意識を刈り取る。

 

「どこに行く気です、アーチャー!」

「邪魔が入らないところだ。ここまで数の不利があるのだから、退くしかないだろう。

 衛宮士郎、お前一人で来い。さもなくばこいつの命は保証せんぞ。場所は……」

「待てよ、アーチャー。」

 

 アーチャーが言い切って逃げる前に、俺は提案を持ちかける。

 

「遠坂は置いていけ。」

「何?」

「代わりに俺が人質になろう。魔力は……」

 

 手のひらにありったけの魔力を込めて、誰もいない壁へと放つ。轟音が鳴り響き、土埃が舞う。それが晴れた時、壁には人が五人ほど入りそうな大穴が空いていた。

 

「これで……はあっはあっ……全部だ。」

 

 俺はアーチャーに対抗する手段がない事を証明した。後は、相手の出方次第。

 だんだんと頭がふらふらしてくる。全ての力を使い果たしたのだから、本能的に睡眠を取ろうとするのは、間違いではない。しかし、今はまだ持ち堪えなければならない。

 

「良いだろう。凛の代わりに、貴様を人質にとってやる。」

 

 アーチャーは提案に乗ってくる。

 色々と違和感はあるけれど、一つの仮定で全て解決する。しかし、答え合わせはまだだ。

 

「……郊外の森に行ってくれ。あそこなら、誰の目にも入らない。イリヤスフィールは居るけど、俺が説得する。」

「ほう、あそこか。こんな手狭な場所では、全力を出せんからな。」

 

 思惑通りに事は進む。後は……

 

「衛宮、体力が回復したらすぐ来い。アーチャーの魔力切れなんてのは狙わないでくれ。」

 

 アーチャーのスキルで単独行動という物がある。魔力の供給無しでも、ある程度の時間は現界できる。しかし、そう何日も持たないはずだ。

 

「そろそろ良いな?」

 

 意識を失う前に聞いた最後の言葉は、確認であってそうではないアーチャーの一言だった。

 

 =====

 

「貴女が……ジャンヌ・ダルク⁉︎」

 

 アーチャーが創太を連れ去り、教会に残された四人は一度衛宮邸に帰り、互いに状況を説明し合っていた。葛木に関してはジアナが記憶を操り、聖杯戦争に関しての物を消していた。

 ジアナの正体、キャスターが遠坂からアーチャーを奪った事、そして、創太が一時戦いを降りた事を。

 

「私も聞かされた時は驚いたわ。けど、英霊の座のバックアップは受けてないから、能力や情報なんかは最初に無かったそうよ。」

「凛の言う通り、本来ならばルーラーとして召喚される筈ですが、聖杯を通してではなく、英霊の座から直接喚び出されたために、この現代や他の英霊の情報、そして私自身の力も保持してはいませんでした。

 しかし、この人形の体には成長という機能が施されていました。おかげで、現代の知識、技術、さらには魔術までも会得できるようになったのです。」

 

 同時に、ジアナが以前に話した昔話は嘘であったことになる。それは士郎と凛も承知ではあり、セイバーも元から気づいていた。

 

「まさか、サーヴァントではない英霊とは。であれば、第四次のキャスターに、何故あんな矛盾した態度を取っていたのかが分かります。」

「彼には……そうですね。申し訳ない事をしてしまいました。」

 

 苦笑をしながら、彼女はあの姿を思い出す。あれはジアナにとって、目を塞ぎたい出来事でもあった。

 

「ちょっと、第四次って何の話よ。」

 

 蚊帳の外にされた遠坂は、二人に突っかかって行く。

 

「それは……いえ、今は今後の話をすべきです。」

 

 しかし、ジアナに話を逸らされてしまう。遠坂にとって奥歯の隙間に何かが詰まっているような感覚だったが、彼女が言った事も確かに大事だと考え、渋々従う。

 

「今の時間は午前零時。体力を回復する為に、六時間。アインツベルン城への道を考えて、六時間。午後零時、つまり十二時間後に、アーチャーと戦闘というのが今後の予定です。」

「十二時間後?そんなの短すぎるわ。アーチャーも言ってたでしょ。一日は待つって。その言葉通りにするべきよ。」

 

 ジアナの提案を遠坂は、否定する。

 遠坂のいう通り、アーチャーは一日以内が期限だ。それをギリギリ待っていた方がアーチャーの魔力は消費され、衛宮の体力は回復する。しかし、そうしないのには訳がある。

 

「これはソウタの提案です。」

「創太が?いつの間にそんな事、言っていたのよ。」

「今さっきです。念話の魔術で彼と話をしていました。その時間に来てくれと、ソウタからの伝言です。彼自身も何かアーチャーに言うことがあるのでしょう。

 そして、私達が時間通りに来なければ、ソウタが死んでしまう恐れもあります。」

 

 創太が死ぬ。その言葉だけで、全員は衝撃を受ける。

 

「それどういう事よ。」

「言葉通りです。彼はアーチャーと話をして、場合によっては戦い、そして、アーチャーの魔力を消費させます。そうなれば、アーチャーが痺れを切らし、彼を殺すかもしれません。

 彼は体力を回復する為に、十二時間と言ったのでしょう。それを過ぎれば、むしろ消耗するだけです。」

「……俺は創太の提案に乗ります。」

「ちょっと、衛宮君?」

「遠坂、あいつがお前の身代わりになったのは、多分そのためじゃないのか。俺よりも先に、アーチャーと一対一になるにはそれしか方法がなかった。

 俺たちに来てくれって言うのは、助けてほしいだけじゃなくて何か別の意味があるんだと思う。だからさ遠坂、創太の提案に」

「分かった、乗るわよ。あいつに借りを作っちゃったんだから、乗るしかないじゃない。」

 

 衛宮の説得に負けた遠坂は、またもや渋々と言った感じで答える。

 

「セイバーも良いよな。」

「はい。私はマスターに従うのみです。」

「皆さんありがとうございます。最後にもう一言、彼からの伝言です。

 わがままに付き合ってくれて申し訳ないと。」

「……最初から、素直に頼めば良いのに。」

 

 遠坂は、誰にも聞こえない声で、そうぼやく。


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