オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
今回のイリヤちゃんはなんかおかしいです。オリ主への好感度が高いとしても、絶対こんな事言わないはずなんですけどね。
オリ主の本当の心情が明らかに!正直どうでもいい!けど、伏線は大事ですよね!オリ主の父を助けたヒーローとは、一体誰なのか!
ヒントはある意味、オリ主の父は核心ついている、という事です。


解決すべき要因

 ーー2月12日ーー

 

 アーチャーから警告を受けてから一日が経ち、現在は夕暮れ時だ。アレから誰とも会わず、縁側に座り、ただ庭を眺めていた。寝るときは勝手に布団を使わせてもらい、飯は昨日の様にコンビニで買った。たまたまポケットに財布があって良かったと思う。

 けれども、何もしていない訳でもなく、色々俺自身の気持ちも整理していた。死への考えや、()()の事。それを今一度考え直してみたが、結局、俺の気持ちが変わる事はなかった。

 知人が死なれるのは怖いし、けれどもそれ以上に自身が死ぬことの方が怖い。()()に関しては、どう考えても裏切られたとしか思えない。一番助けてもらった存在だと言うのに……

 

「シロウの言う通り、ここにいたのね。」

 

 思いを巡らせていた途中、声を掛けられる。誰だと思い、振り向くと、そいつは

 

「……イリヤスフィール。」

 

 白い妖精だった。

 

「何故ここに?まさか、俺が目当てだとは言うなよ。」

「ええ、そのまさかよ。」

「お前衛宮一筋じゃなかったのか。」

「もちろんシロウは大好きよ。けれど、命の恩人をないがしろにしないわ。」

 

 命の恩人……?俺がいつどこでイリヤスフィールを救ったんだ?見当がつかない。

 

「その顔は忘れたって顔ね。」

 

 幼女は呆れ返ったように言う。まったく、レディに恥をかかせないでよ、とかなんとか言っているが忘れた物は忘れたんだ。

 

「悪いな。お前が救われたっていうのは、多分俺のわがままが生んだ結果だ。」

 

 そして、今も俺のわがままで戦わないという選択をしている。ただ死にたくないという理由で。

 

「……いいわ、一応言っといてあげる。」

 

 そう言った彼女は、突然上品な振る舞いをしだし、言葉も綺麗になる。

 

「礼を申し上げます、古崖の魔術師。戦いの嵐から敵である我が身を守り、我が言葉を受け入れてくれた事、心より感謝いたします。」

 

 戦いの嵐……ああ、あれか。俺とアーチャーが囮役になって、バーサーカーと戦った時に、余波で吹っ飛ばされた瓦礫から守った時か。

 そして、受け入れたってのは教会に送らずに、そのまま一緒に住ませてやった事だな。

 それにしても、疑問に思うことがある。

 

「それをわざわざ言うためにここまで来たのか?」

「違うわよ。それはついでのような物。でも、言っておかなきゃ私の気が済まなかったの。」

 

 意外に律儀な奴だ。いや、意外というのは失礼だろうか。彼女は、貴族みたいな生まれで、礼儀を教わっているはずだ。ならば、それは意外ではなく、当然なのだろう。

 

「それで、本当は何の用事なんだ?」

「シロウから聞いたわよ、ソウタが戦わなくなったって。」

「……。」

 

 イリヤスフィールは話をしながら、俺の隣から少し間を取って座る。

 その事で来たのか。しかし、先ほどの通り何を言われても、それは他人の言葉だ。俺にとって何の意味も持たない。

 

「私は無理に戦えなんて言わない。正直に言って、それはどうでもいいわ。」

 

 またか。戦え、って言わないけど、何かしらを言ってくる。それは昨日、アーチャーが同じような事されてんだよ。

 

「けど、恩返しぐらいはさせてちょうだい。悩みぐらいなら聞いてあげられるかもしれないわ。」

 

 ……前言撤回。同じじゃなかった。むしろ、反対だった。なにかを言うのではなく、俺の話を聞くのか。

 

「……七年前だったな。」

 

 そう言われてしまうと、つい話してしまう。俺の何かが解決するという根拠はないにも関わらず。

 

「ちょうど、ここである人とある事について話していた。」

 

 相手は、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。だからか、俺は彼女に関する話を無意識に選ぶ。

 関する、とは言ったけど、どちらかというと関係なくもない話だ。

 彼女は、ある人については予想が付いているようだ。

 

「切嗣さんに、正義の味方について訊いていた。

 当時、その人の事を俺は、両親を知っている数少ない人、だと思って話を聞こうとしていた。けれども途中で、正義の味方って何だと思うのか、という質問を投げかけてみたんだ。」

 

 ……まて。どうして俺は、この話をしているんだ?イリヤスフィールはあくまでも、悩みを聞いてくれる、と言っただけで、思い出を語ってくれ、とは頼んでいない。

 けれどもそんな疑問は無視して、俺の口は語り続ける。

 

「それに対して、切嗣さんはこう答えたんだ。

 本当の正義の味方というのは、ただの理想でこの世には存在しない。あったとしても、それは偽物。目指そうとしても、結局は何かを選択して、選択しなかった方を捨てる。そして、選択しなかった方からすれば、悪になる。」

 

 切嗣さんはいつもそうしてきたらしい。大を生かすために小を切り捨てる。結局、そうしないと全て失うとも言っていた。

 

「けど、だからと言って諦めるべきでもない。いつか本当の正義の味方がなれる人がいると思う。

 とな。」

 

 正義の味方になれる人。切嗣さんにとって、それは、衛宮士郎を指していた。その時は理解できなかったが、今思えばきっとそうなのだろう。

 ……だから?こんなのが俺の悩みなのか?違う。そんなはずない。俺の悩みは、死にたくないという感情のせいで、何かから逃げてしまうことのはずだ。

 

「……もう一つ、聞いてくれ。」

 

 それでも俺は、昔話を止めない。

 

「あれはいつだったか。十二、三年前ぐらいに、父さんから話を聞いたんだ。父さんは、結婚するまでは旅をしてたんだ。」

 

 これは、最近見た夢にもあった。あの時は、途中で目を覚ましてしまったけれど、本当はもっと話してもらった。

 

「そんな時に、たまたま魔術関連の大きな事件に遭って、死にかけたらしいんだ。」

 

 事件の内容は、あえて省く。そこまで重要ではないし、話を長くするのは、聞いてくれている彼女に申し訳ないと、思った。

 

「でもその直前、誰かに救われたんだとか。」

 

 その人の容姿も、正確に教えてもらったはずなんだが、記憶があやふやであまり覚えていない。

 

「けれどもその人は非難された。何故なら、結果がどうあれ大量殺戮をしたからだ。

 だけど、少なくとも父さんは救われたと思っていた。その人は、英雄(ヒーロー)だと。しかし、正義の味方ではない。

 その話の後、父さんはこうも言った。英雄にも、正義の味方にもなろうとするな。お前は、思うがままに生きろと。

 ……これで、話は終わりだ。」

 

 話を全て聴いてくれたイリヤスフィールは数秒だけ考え、答えを出す。

 

「貴方……夢がないのね。」

「夢?」

 

 一体どう言う事だ?夢がないって……

 

「ああ、そういうことか。」

 

 今、俺はやっと理解した。自身の真の愚かさに。

 

「そういうことよ。士郎は夢を託されたけど、貴方にはない。きっと父親の言葉が裏目に出た結果でしょうね。」

 

 父さんの言葉が裏目に、か。思うがままという言葉が俺の恐怖と入り混じり、結果としてただ立ち止まっている俺という存在が生まれた。

 俺は持っていなかったんだ。衛宮のような自身からこぼれでていない夢すらも。

 衛宮は持っていなかったんだ。俺のような自身からこぼれでた感情が。

 恐怖なんてものは、人間誰しもある。けれども、何かに行動を移せるのは、その感情以上のものがあるからだ。

 そして、死にたくないという感情は前へと進む要因にもなり得るし、立ち止まる要因にもなり得る。そして、確実に前者となりえるものが、俺にはない。

 つまりは、俺が立ち止まっている原因は死にたくないという感情にあれど、解決する部分はそこではなかった。

 前へと進む理由にしかならない動機を持っていなかったことが、解決すべき原因だった。

 

「ありが……」

「礼は必要ないわ。これは借りを返しただけよ。と言っても、まだ根本的な解決になってない。自覚させただけで、戦いたくないという気持ちは変わっていない。そして、変える必要もない。

 だって、貴方自身もそう思っているんでしょ?」

 

 そうだった。結局の所、何も変化していない。俺は戦いたくない。それだけは、心底から思っている。

 けれど、けれども……

 

「よう、古崖。」

 

 また意識の外から声をかけられる。振り向くとそこには

 

「間桐。」

 

 ライダーの元マスターがいた。その立ち振る舞いは、最後に見た怯えた姿とはうってかわり、何故か堂々とこちらを見下しているようだった。

 俺は、その違和感からかすぐさま立ち上がり、イリヤスフィールを背に隠すようにする。

 

「一体何の用だ?」

 

 相手が喋る前に、俺は警戒の念を含めて、先に仕掛ける。

 

「なにいきり立ってるんだ。僕はね、お礼をしに来ただけだよ。」

「お礼?」

 

 悪いがとてもそんな様子には見えなかった。どちらかといえば、それは復讐をしに来たかのような雰囲気だ。

 

「俺はもうこの戦争から降りた。だから、俺に構うのは時間の無駄だと思うけど?」

「だから、早まるなって。

 ……まあいいさ。どっちにしたって、後ろのやつには用があるんだ。」

 

 後ろ?まさか、聖杯を直接……⁉︎

 

「そうそう。ちょっと遅れたけど、僕の()()()サーヴァントを紹介しておくよ。」

 

 間桐がそういうとその背後から、忘れもしない(見覚えのある)奴が現れる。

 そいつは髪を下ろし、前には着ていなかったライダースーツを身に纏っているが、間違いない。アレは俺のトラウマ(恐怖)だ。

 

「古崖はもう会ったかもしれないな。こいつの名前はギルガメッシュ。第四次の時に勝ち残ったサーヴァントだ。」

「貴様がシンジの言っていた奴か。」

 

 また直感が叫ぶ。今度こそ死ぬと。

 逃げられる要素はない。助けなどない。生き残る可能性もない。

 

「……イ、イリヤスフィール。下がってくれ。」

 

 それなのに俺は強がる。声が震え、恐怖をあらわにしているのに。

 

「じゃあ、僕のお礼を受け取ってくれよ。

 やれ、ギルガメッシュ!」

 

 間桐の言葉と共に、ギルガメッシュと呼ばれたサーヴァントの後ろから、多数の門が開かれる。蹂躙、その二文字が俺の脳裏によぎる。つまりはそれが行われるという事。

 ああ、シニタクナイ。


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