オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。

今回の前半は、地の分を適当にやってしまいました。主人公の気持ちをどうにかして表現したいと思っていたら、何故かこんか風に……。
あと、後半は後半で、色々と変です。主人公が情緒不安定というかなんというか。原作主人公対オリ主という状況に持っていきたかったんです!(泣)

今回の話を書いてたら、オリ主の事を嫌いになりそうです。早く覚醒させたいです。

誰か誰かってうるさい。


反発する心体

「は……あ……。うっ……!」

 

 目の前には、血だらけの()()が立っていた。何処から持ってきたのか分からない旗を、支えとして。

 その旗はボロボロで、けれども何かを奮い立たせるような、

 戦わなければ、と思うような……

 

「あ、ああ……」

 

 それなのに、俺は何もできない。

 

 だってこわい

 だってしにたくない

 だってしんだらなにものこらない

 もういやだいやだ

 あんなことみたくない

 なりたくない

 だってだってだって

 

「おい、創太!」

「……あぁ……えみ、や?」

 

 えみや?なんでここに。

 

「大丈夫か!」

「……うぁ」

 

 こえがうまくだせない

 なんで

 からだもたたない

 なんで

 

「クックックッ……はーっはっはっはっ!

 ただの雑種かと思いきや、中々の傑作であったとはな!道化の正体を露呈することなど、どうでもよいことだった!

 しかし、あの魔術師の子がとんでもない臆病とは、想像の域を遥かに超えたものであった。道化、贋作者、臆病者、まさに滑稽劇を催すには、うってつけの役者が揃っておるではないか。」

 

 だれかがわらう

 まるでほんとうにおもしろいものをみたかのように

 あれはきけんだ

 あれはみてはいけないものだ

 みられてもいけないものだ

 かかわってはいけないものだ

 にげられないものだ

 ころされる

 しんじゃう

 しんじゃう

 しんじゃう

 

 もう……おわりだ

 

「はあっ……はあっ……。士郎君。」

「っ!ジアナさん!」

「創太を連れて、逃げてください。

 こんな体でも、囮役ぐらいできます。」

「それじゃあ、アンタが……!」

「私はいいんです。それに、彼の助けになるのは、少なくとも私の存在ではありません。」

「……駄目だ。」

 

 えみやが()()()のまえにたつ

 

「……えっ?し、士郎君!」

「俺は誰かを見捨てるなんてできない!

 助けるなら、二人とも助ける!」

 

 やめろ……やめてくれ……

 そんなことしたら

 そんな事をすれば、死んでしまう!

 

「ほう。この(オレ)を前にして、身の丈以上の宣言をするとは、愚かな。」

 

 ああ……

 またさいやくがおそってくる

 こんどこそおわりだ

 こんどこそ……

 しにたくない

 しにたくない

 しにたくないよ……

 

投影、開始(トレース・オン)。」

 

 いくな

 いかないでくれ

 いってしまえばさっきの()()()みたいになってしまう

 

「この(オレ)に楯突く事を、死をもって後悔させてくれる!」

 

 あめがふる

 あたればしんでしまうあめが

 ひとつでもじゅうぶんなのに

 たくさんたくさん

 いやだ、いやだ!

 ころされるのはもうたくさんだ……

 

性質変化(フォース・チェンジ)。」

 

 また()()()のこえがきこえる

 

「うぐっ……!は……あっ……。

 やはり、魔力は足りませんね。けれど、霊脈が使えれば……賭けですね、これは。

 士郎君、下がってください。」

「嫌です。意地でも動きませんから。」

「……それなら、良いでしょう。動かないのであれば、十分です。」

 

 ああ

 そらがおうごんのゆがみでうめつくされる

 ()がおちてくる

 

投影、完了(トレース・オフ)。」

 

 えみやがそれとおなじかずでおなじかたちのものをつくった

 でもそれはまけていた

 ほんものとぶつかりあうたびにこわれていく

 

「くそ……!」

 

 ああ、しんでしまう

 だれか……だれかたすけて……

 

「与えられた役割のために、我の呼びかけに応え、今ここへ遣えよ。

 インビジブル・シルク!」

 

 ひかりがつつむ

 まわりがみえなくなる

 ちかくにいた()()()もえみやも

 ずっとずっとひとり

 だれかだれか

 さびしいよ

 ひとりはさびしい

 ねえ

 だれかいないの

 ひとりぼっちなんていやだ

 またひとり……

 

「こ、ここは?」

「かはっ、はあ……はあ……。な、なんとか成功したようですね。」

「おれの、家だ。」

 

 かえってきたのか?なんだか、かんかくがはっきりしてくる。

 周りを見渡すと、不気味な物が多くある。見慣れているもので多分、地下室だろう。

 ああ、逃げだせたのか。

 そう安心したからか、さっきまで感じていた恐怖から少し解放された気がする。

 けれども、まだ怖いと、そう思ってしまう。でも、なんで怖いなんて思ったんだっけ。確か、確か……たしか……

 

 しんでしまう。

 

 ……思い出せない。そうだ、助けてくれた()()に礼をしないとな。その為に、そいつがいるであろう方向に顔を向けると

 

「っ……!」

 

 こんどは、かんぜんにおもいだしてしまった。

 

 助けてくれた誰かは、血だらけで、五体満足な事が不思議なぐらいにボロボロで、皮一枚で繋がっているのではないかという所もある。

 

 あのできごとが、おれをのみこむ。じゅうねんまえのあれが。

 

 胴体も削られており、致命傷が無い事は不幸中の幸いか。けれど、これだけ出血していたら、致命傷も何もない。

 

 ひのうみ、がれきのこうや、しかばねのおか。

 

 唯一無事なのが、顔の部分だろうか。小さな切り傷があるだけで、変形も欠けてもない。

 

「とにかく止血だ。創太、包帯か何かないのか。」

 

 衛宮はあくまでも冷静に対処する。無理をしているわけでもない。内心、動揺しすぎて発狂しそうな俺とは違って、慣れているのだろうか、

 

「……俺が応急処置をする。衛宮は一階のリビングに上がって、棚から適当なもん持ってきてくれ。」

「大丈夫……なのか?さっきから、息が荒いし、こういうのを見続けるのは……」

「早くしてくれ!」

 

 せめてそうでもしないと、さっきの失態を帳消しにすらできない。

 強引な説得に驚く衛宮は、それでも俺への同情からか、ああと言って、部屋を出ていく。

 血を見るのは辛いが、治療をするという他に選択肢はない。あったとしても選びたくはない。

 傷口に手を当てて、回復魔術を施す。血だけでも止めれば、後から再生でもなんでもできる。古崖家の魔術は、万能だ。ばんのう……

 ほんとうにそうであってほしかった

 

「……申し訳ありません。」

 

 喋るのも辛いのに、口をゆっくりと動かし、謝罪する。

 

「なんで、謝るんだ?お前は、俺たちを助けてくれた。それだけで十分だ。むしろ、お前は感謝される立場だ。

 だから、素直に看護を受けて……」

「そうではありません!」

 

 ()()が大声を上げ、俺はそれに驚く。

 その体で大声を出すなと言いたいが、何かがそれを拒んでしまう。話を聞かなければと、でも聞いてもならないと。複雑な感情だ。

 

「私が……謝罪したいのは……正体を隠して……いたことです。」

 

 さきほどとは声の質が変わり、息は絶えだえで、喋ることすら苦しそうだった。大声を上げた事は、彼女の体力を奪う行動だったのだろう。

 ここまで苦しいのなら、喋るなと言いたいが、正体というのはどういう事だ?

 そういえば、目の前にいる()()の着ている服が、いつの間か変わっている。神に仕えるシスターのような、戦場を駆ける戦士のような、とにかく現代人は着ないような服装だ。

 ……()()()()ってだれだ?正体も何も、元々こいつの名前すら……

 

「私の正体……私の真名()は……」

「言わなくていい。」

 

 その声は、とても重かった。

 周りの空気を変えてしまうほど。

 

「無理に明かす必要も無い。隠していたのは、理由があるんだろ。ならせめて、その理由がなくなったときに話してくれ。」

 

 なんでそんな事を、思ってもいない事を俺は言ったんだ?

 

「……はい。」

 

 やめろ、そんな優しい顔をしないでくれ。

 俺はお前の偽名すら憶えていないんだ。だから、無理に笑わないでくれ。

 

「本当に申し訳ありません。」

 

 今の俺に、そんな謝罪を受ける権利は無い。

 

 だから、やめてくれ。

 

 ーー2月11日ーー

 

 朝日が目に差し込む。そこに眠気など無かった。いや、本当はあった。けれども寝られなかった。体は睡眠を欲しているのに、心はそうではなかった。あの死に物狂いで逃げた夜から一睡もせず、新都の夜景を屋根の上から、ただ眺めていた。

 昨日、重症を負った()()は、なんとか助けた。……いや、助けたというのはどうだろう。俺の方が完全に助けられた側であるのに、助けたというのはおこがましい言い方だ。

 一命を取り留めた。それだけは間違いはない。

 あと、どうやって逃げだしたかという事だが、()()が魔術を使ったからだ。

 逃げる直前に、インビシブル・シルクと言っていたが、あれは魔術と全く関係ない。どちらかと言えば、関係があるのは詠唱の方だろう。昼間に開発していた転移を応用する魔術、その一つだ。

 地下室にあらかじめ仕掛けてある道具と、場所交換するという魔術。そして、その道具はインビシブル・シルク、つまりは透明になれる布だろう。

 けどそれは、どうでもいい。今最も重要な問題は、

 

「戦えるか、どうか……」

 

 昨日の夜、十年前のトラウマが蘇った。あの災害のような男を目の前にして、戦う意志が失われてしまった。こんな事を自分で言うのもどうかと思うけれど、次に戦うとき、同じ事にならないとは限らない。むしろ、同じ事になる可能性のほうが高い。

 それに、そもそも俺は戦う気がない。そんな奴が戦場に赴いてしまえば死ぬだけだ。

 けど、戦わなければ死ぬ。また、十年前のようになるのは確実だ。衛宮がなんとかしてくれるなんていうのは、楽観的すぎる。()()もサーヴァントに匹敵する力を持っていても、倒すほどではない。

 

「でも、俺に何ができるっていうんだ。俺は、俺は……!」

 

 ……どちらにしろ、こんな状態では、戦場に立っても足を引っ張るだけだ。もうそろそろ、二人が起きてくる時間でもある。俺の気持ちをはっきりと伝えておかなければ。

 

 

 

「おはよう、創太。」

「……おはよう。」

 

 リビングに入ると、台所からいつもと変わらない調子で衛宮が朝の挨拶をする。ここの台所は、衛宮の家のように対面式で、台所にいてもリビングの様子がわかる。

 ただ、衛宮の顔はどこか無理をしている気がする。どこか調子でも悪いのだろうか。

 

「もうすぐ朝食ができるから椅子に掛けてくれ。」

「ああ、悪いな。」

「謝る必要はないと思うぞ。ジアナさんは休まないといけないし、お前も……」

 

 衛宮が親しみのある(知らない)名前を言った時、俺は胸が痛くなった。

 なんでだ。なんで、お前はその名前を口にできる?俺は、それすらも怖いのに、今会ってしまえば……

 

「おはようございます。ソウタ、シロウ君。」

 

 その声に、俺はなぜか反応して、肩が一瞬あがる。

 振り返れば目に入るいつもと同じ(初めて見る)姿に、違和感を感じた。昨日とは違い、現代の服装を身に纏う誰かに。

 体中傷だらけであったというのに、今はその後が一切ない。本当に()()()()()()()()()()

 

「おはようございます、ジアナさん。」

「……。」

 

 衛宮は挨拶を返すが、俺は黙ったままだった。

 ただ、挨拶を返すだけ。日常でやっている事なのに、俺はできなかった。

 

「もうすぐ、朝食ができるので、椅子に掛けていてください。」

 

 ()()は、その事を気にしていなかったのか、何も言わずに、机を挟んで俺の正面に座る。確かに、いつもはこんな風に向かい合って座る。だが、今だけはやめてほしかった。

 俺と()()は、互いに目を合わそうとしない。()()の理由は、分かる。けれども、俺はなんでそうしたんだ?隠していた負い目は向こうにあるとしても、俺に隠されていた怒りなどは無い。他の人であった場合は知らないが、俺には、少なくともないはずだ。ない……はずだ……

 

「ふわぁ〜、おはよう……」

 

 そんな重い空気をブチ壊しにきているのか、と思わせるほど大きなあくびをしながら部屋に入ってきたのは、イリヤスフィールだった。

 しかし、そんな思惑があるにしろ、ないにしろ、重い空気は以前と残ったままだ。

 衛宮は俺とジアナに言った同じようなセリフを、イリヤスフィールにも言い、ジアナは無理をしてなるべく普段通りに挨拶を返した。

 けれども、俺は無愛想に「……おはよう。」としか言えなかった。

 こんな調子では、周りの士気を低くしてしまう。やはり、言った方が良いのだろう。

 

 

 

 朝食は誰もが言葉を発することなく、沈黙のまま終わってしまった。俺と誰かの間にある暗い雰囲気を読み取ってか、それとも、俺が聞いていなかったのか、とにかくそのせいで味というものが感じ取れない朝食だった。

 皿洗いも衛宮がやってくれている。俺たちの心情を考えているのか。心配しているのか。

 リビングには誰かとイリヤスフィールもいる。衛宮の皿洗いが終わったタイミングで俺は、話を始める。

 

「なあ、二人とも。ちょっと、話を聞いてくれないか。」

 

 衛宮と誰かの意識を俺へと向けさせる。二人の様子を見ていると、悲しい表情で、多分俺の言いたい事が分かっているのだろう。

 

「今後の事なんだが……もう俺は、この戦争を降りるつもりだ。」

 

 これが、俺の出した結論だ。

 

「一晩中、考えてたんだ。今のままで、俺はこの先戦えるのかって。昨日の事もあるしさ……。そして、思ったんだ。きっと役立たずになるって。

 それだけじゃない。俺自身も戦いたくないって、そう思ってる。戦うのは怖い。死ぬのは……もっと怖い。

 だから……戦いから降りさせてもらう。」

 

 俺はなんて恥さらしなんだろう。けれど、もうどうとでも言うがいい。意気地なしでも、根性なしでも、あの黄金のアーチャーが言った臆病者でも。実際に全て事実なのだから。そして、事実を言われたって痛くもかゆくもない。

 

「……貴方が限界だと言うのであれば、仕方ありません。戦う事が怖いというのは、恥じる事ではありません。むしろ、それが普通の人の考えです。

 ですから、後は、私達に任せてください。」

 

 ああ。ありがとう。こんな弱虫に、優しい言葉をかけてくれて。

 

「そうだな。怖いのなら、仕方ないと思う。

 戦いの事は俺たちに任せて、創太は……」

「おい、待て。」

 

 衛宮が「戦う」と同意義の言葉を言った瞬間。思いもしない言葉が口に出る。

 

「お前、あれだけ打ちのめされて、まだ戦うとか言っているのか?」

 

 何を言ってるんだ、俺は!

 

「あいつに挑んで、全く歯が立たなかったくせに。」

 

 やめろ、やめてくれ。それは、俺が言うべき言葉なんかじゃない!

 

「俺と戦え!この戦争に残るって言うなら、せめて俺より強いって証明してからにしろ!」

 

 俺は、なんでこんな事を……。


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