オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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どうも、作者です。
今回から前書きの方にコメントさせて頂きます。

この回は、とうとう主人公がトラウマに陥ってしまいます。昨今のネット小説では、あまりそういう演出は出てきません(少なくとも作者は見たことありせん)が、私はそんなの関係なしに書きます。俺強えとかくそゲフンゲフン。

これの最後の方では、賛否が分かれるかもしれない事が書かれています。ですが、ここまで読んで下さった読者ならば、別に構いませんよね!(こんな無茶苦茶な小説を読んだという意味で)

初期らへんの話を書き直したいです。そんな事を思いながら、なかなか実行できない自分がいます。だからどうした。今も酷いくせに。


棄権の合図

 晩飯を済ませ、夜の探索時間が始まる。俺とジアナは、すでに門の外へと出ている。いつもより人数が少なく感じるが、イリヤスフィールは協力的じゃないし、衛宮はどうするか分からないから、自然と俺たち二人が探索へ行く事になる。

 衛宮は、飯を食ってる時にほとんど喋らなかったし、結局何の意思も出さずに、時間が過ぎてしまった。

 まあ最初の頃は、二人で探索していたのだから、少なくなったというより、元の人数に戻ったと言った方がしっくり来る。多い事に越した事はないのだが。

 

「大丈夫ですか?ソウタ。」

 

 ジアナが、遠足に行く前の母親みたいな事を言う。もうそんな歳じゃねえぞ、俺。

 

「ああ。言っても持ち物なんてそんなにないからな。」

「そういう事ではなくて……」

 

 それは、何か歯切れの悪い言い方だった。

 

「じゃあ、他に何があるんだ?」

「いえ、その……ソウタの心境はどうなのかと——」

「はあ、心境ってどういう意味で言ってるんだ?」

「……率直に言うと、今まで戦ってきて怖くなかったのですか?」

 

 なんだそれ。一体どういう意図に基づいて質問しているんだ?

 朝の時も思っていたが、ジアナの様子が少しおかしい。昨日は、あまり感じなかった。しかし、今日になってからそわそわしているというか、オドオドしているというか。

 キャスターが攻めてきた夜に何かあったのか?けど、セイバーの過去をとりわけ気にしてたし……。

 駄目だ、分からん。まあ、とりあえず質問には答えておくか。

 

「それは、もちろん怖いに決まってんだろ。

 バーサーカーと対峙した時も、ライダーの宝具を目の当たりにした時も、ランサーの槍に刺された時も、全部怖かった。

 けど、逃げたりしたら、後から何倍にもなって返ってくる。だから、今は我慢して、戦っているだけだ。」

 

 ちょっとだけ、クサかったかな。けど、素直に自分の思いを言えたとは思う。今戦う事から背を向ければ、十年前のような事になってしまうかもしれない。正直言って衛宮は頼りないし、遠坂は信用しきれないし。俺の実力では、言えた事ではないけど。

 

「ソウタ……」

 

 お、なんだ。褒めてくれそうな雰囲気だな。恥ずかしいやい、そんなの。俺はただ……その、あれだよ。ほらそれは言わせんなよ。

 

「ランサーの槍に刺された、とは?」

 

 あ……。これ、そっちちゃうわ。違うパターンやわ。

 

「無茶しないでください、とあれほど言ったでしょう‼︎」

「痛ェーー‼︎」

 

 ゲンコツ、という効果音が鳴りそうなジアナの鉄拳落としが俺の頭頂部に入り、そのあと、一分ぐらいうずくまっていた。

 オラ、チョ◯ビ食いたいゾ。

 そしてその一分後、セイバーが召喚される前に何があったかを、正座をしながら根掘り葉掘り聞かれました。脚が痺れそうです。

 

「うー、まだ痛む。」

「次からは、慎重に行動してください。」

「はい……善処します。」

 

 流石に、みさ◯並みのゲンコツは、二度も喰らいたくありません。いやもしかしたら、次は◯さえグリグリかもしれん。

 

「ならば、良いでしょう。

 さあ、時間を無駄にしてしまった分を、今から取り戻しに行きますよ。」

「それは、この前のスパルタ特訓をやるという意味でございますか?」

「貴方が望むならば、いつでもやりますよ。」

「やめてください、しんでしまいます。」

 

 やるならせめて、この戦争が終わった後にしてください。

 

「さて、漫才はこの辺にして、気を引き締めていくか。」

「はい。まずは、何処に行きましょうか?私としては……」

 

 と、真剣に気持ちを切り替えて、探索場所をジアナが提案しようとしたその瞬間だった。

 

「待ってくれ!」

 

 後ろから、ストップの声がかかったのは。

 

「衛宮?」

「俺も……俺も一緒に行かせてくれ。」

 

 俺へ真っ直ぐ伸びた視線は、迷いがあるものの、覚悟を決めたそれだった。

 

「もちろん、良いぜ。」

 

 むしろ、その言葉が聞きたかった。衛宮士郎という人物は、自分を突き進めていく者なのだから。

 

「ジアナも良いよな?」

「はい、私も構いません。」

 

 ジアナに了承も取ったという訳で、衛宮が戦うメンバーに継続して入る事になる。

 こうして、戦いに参加するメンバーが、直前に決まった。セイバーはおらず、遠坂との休戦も終わった今の現状で、今いるこのメンバーが、最善だと俺は思う。

 

 

 

「結局何も見つからなかったな。」

「すみません、何かあると思ったのですが……」

「いいって。もしもの話だ、ってジアナ自身も言ってたじゃないか。」

 

 探索を開始した俺たちは、ジアナの提案で衛宮邸に行くことにした。理由としては、キャスターが何か痕跡を残しているかもしれないからだ。

 落とし物でも良かったが、どちらにしろそこからキャスターについての情報が見つけられるかもしれないのだ。しかし、結果はスカ。キャスターが操っていた骸骨の破片さえも見つからなかった。

 

「ほらジアナさん、気を取り直して次に行きましょう。あそこなら、キャスターについて何か分かるかもしれません。」

「そう……ですよね!次の場所なら、確実にキャスターの情報を得ることができる筈です!」

 

 気持ちを前向きにしようとしたのか、ジアナは衛宮の言った事を力強く繰り返す。

 衛宮が言っているあそことは、柳洞寺だ。本来ならば、昨日の内に調べる予定だったが、キャスターの奇襲によって台無しになってしまった。

 そういえばだが、キャスターの正体についてあまり深く考えた事がない。昨日、セイバーに使った短剣から推測すると、裏切りと関係ある英霊なのではないだろうか。そこから先はまだ分からないが、裏切りとなると反英霊ではないだろうか。しかし、そこから絞るには、情報が……

 

「着きましたよ、ソウタ。」

 

 と、一人で悩んでいたら、いつの間にか柳洞寺の階段前まで来ていたようだ。

 

「ここからは、林の中を進みますよ。門番であるアサシンに見つかると、危険ですので。」

「ああ、分かってる。」

「分かりました。」

 

 俺と衛宮の返事を聞いたジアナは、俺たちを先導するように、道もない林の中を進んで行く。ただ、柳洞寺に行く為には、薄暗い所でさらに、斜面を登らなければならない。それでいて、木々の根が所々で盛り上がっており、この中を進むのは、骨が折れそうである。

 

「俺が先に行く。後ろは任せたからな。」

 

 しかし、弱音は吐いていられないと思い、衛宮よりも前へ行く事を決意した。

 それに対して、衛宮は反対せずに、そのまま俺が行くことになった。

 ジアナの背中を追うように、一歩ずつ、足場を確認する。

 

「二人とも大丈夫ですか?」

 

 俺たちが付いて来ている事を確認するかのように、ジアナは後ろを振り向く。

 

「当たり前だ。」

「はい、大丈夫です。」

 

 その二人は、まだ大丈夫だ。

 そしてまた、ジアナは進んで行く。あくまでも、俺たちのペースに合わせて、だ。彼女は、本気を出せば俺たちを置き去りにしてしまう実力を持っているが、そうはしない。理由はもちろん、俺たちの事を気遣ってくれているからだ。いつか、そうならないような実力差には、なりたいものだが、今はまだ夢のまた夢なのだろう。

 

「着きました。ここが裏の塀です。」

「ここを越えれば敵の本陣だな。」

 

 本来ならば、サーヴァントは塀を越えられないらしいのだが、今は、セイバーもアーチャーもいない。従って正面突破をする必要は無く、裏からコソコソできる。

 

「では、私が先に行きます。危険が無ければ、合図として壁を叩くので、それまで待機してください。」

 

 そう言ったあと、ジアナはあくまでも慎重に塀を登っていく。頭だけを塀の上へとやり、目視で敵の存在を確認し、次に体も持ち上げて乗り越える。

 数秒後、コンコンと壁を叩く音が聞こえる。ジアナからの合図だ。

 

「大丈夫みたいだな。衛宮、俺が足場になるから、先に行ってくれ。」

「分かった。」

 

 この塀は二メートル半程もあり、俺たちのような一メートル六十五センチぐらいの低身長では、よほどの身体能力がない限り一番上まで手は届かない。ただし、ジアナは俺より低いにも関わらず、元々の身体能力が高いので、先程のように軽々と登っていける。

 魔術で強化をして、塀を上がってもいいのだが、それだと魔力で相手に気づかれてしまうかもしれない。素の身体能力で、乗り越える必要がある。まあ、どちらにしろキャスターに気づかれている可能性もなくはないが。

 衛宮は助走をつける為に数歩下がり、俺は手を組み足を置く場所を作る。

 

「準備はいいか?」

「ああ、いつでも来い。」

 

 俺の確認を取った衛宮は思いっきり走り、俺の手の平を足場に塀の上へと跳ぼうとする。俺もそれに合わせて、衛宮の足を力の限り、持ち上げる。結果、衛宮は余裕で塀の上へと登ることができた。

 

「衛宮、ちゃんと登れたな?」

「ああ。だから、次は創太だ。」

 

 俺の番か。次は、さっきよりも簡単だ。俺が跳んで衛宮の手を掴み、あいつが、引き上げるだけだ。

 

「よし、いくぞ。」

 

 

 

 

 三人とも無事に敵地へのと侵入は成功した。だが……

 

「変ですね。」

 

 そう。ジアナの言う通りどこか変だ。それには、三人とも気づいている。

 

「誰もいないな。」

 

 サーヴァントどころか、人気の一つもしない。さらには、静かすぎる。人がいないだけで、こんなにも静かなのだろうか。冬の夜だからと言っても、動物の鳴き声とかもう少し聞こえてもいいんじゃなかろうか。

 

「もしかすると、拠点地を変えたとか。」

「だとしたら、一体何があったんだ?」

 

 衛宮の推測に対して、俺は疑問を抱く。罠の可能性もあるかもしれないが、どこか違和感を覚える。どこかなんてのは分からない。けれども、用心しなくてはならない。

 

「……っ!」

 

 そして、気づいた。やっと、やっとこの違和感の正体に気がついた。

 三人の視線が、一気に寺の屋根の上へと集まる。そこには、月明かりに照らされた影が腕を組み、仁王立ちをし、まるでこの世界の支配者は自分だと、そう言っているかのように、いやあれはそう言っている姿そのものだ。

 

「ほう。(オレ)の宝を迎え入れてやろうと思ったが、とんだ道化がいるらしいな。」

「なっ……!アーチャー⁉︎」

 

 黄金の鎧を身に包んだ誰かは、傲慢に、そして蔑むように、俺たちを見下す。

 ジアナが何か言っているけれども、俺には関係ない。いや、俺にとって処理しきれない情報だった、と言った方が正しい。

 

 あいつは、ヤバイ。

 

 脳内がそれで埋め尽くされたからだ。

 本能が叫ぶ、危険だと。あれは、バーサーカーよりもずっと凶悪で、どんな策を練ろうとも、軽く一蹴してしまう奴だ……!

 

「ふん、ちょうど良い。雑種らにも用が無いわけでもない。貴様ならば、余興としては楽しませてくれよう。」

「まさか……ここで戦う気ですか?」

 

 おい、やめろ。やめてくれ!

 そいつとは戦わないでくれ、ジアナ!

 

「安心しろ。所詮貴様は、女子供。五体満足になるまでには、手加減やろう。」

 

 嘘だ、お前は殺してくる!

 

 殺す?殺すということは、死ぬのか?

 

「……こうなっては、猶予はありませんね。

 創太、士郎君。ここから逃げてください。」

「ジアナさん⁉︎でも……!」

「いいから、早く!言い争う時間はありません!」

 

 それでも、衛宮は何か言いたそうだったが、聞く耳も持っていなかったジアナは、もうすでにあの黄金のアーチャーに距離を詰めて、攻撃を仕掛けていた。

 

「衛宮!ジアナの言う通りにさっさと逃げるぞ!」

「まさかあの人を置いていくつもりなのか⁉︎

 あいつは、危険だ。俺たちが援護を……」

「だからこそだ‼︎」

 

 俺の大声で、衛宮の目が見開く。

 

「……だからこそ、俺たちではどうにもできない。援護なんてすれば、ジアナの邪魔になるだけだ。」

 

 それに、それに……

 

 そんな言い争いをしている途中で、俺と衛宮の間にある地面に、剣と槍の破片が刺さる。これは、ジアナのものだ。

 戦っている二人を見る。ジアナの手には、折れた剣と槍がある。対して黄金のアーチャーは、宝具と思われる剣を持っている。得物だけでも、天と地ほどの差がある。勝敗は明らかだ。

 

「何をしているのですか!逃げてください!奴は危険です!」

 

 一度体勢を立て直す為に、体を引いたジアナは、俺たちに怒号する。

 俺としても、早くこの場から逃げ出したい。

 

「ほう、貴様はそこの雑種を逃す為の囮役ということか。実に、道化らしい。」

「黙りなさい!」

 

 右手の平で魔力を込めた彼女は、そのまま右腕を敵に向ける。遠距離戦に持ち込むつもりだろう。

 

「この(オレ)を撃ち合いに持ち込むとは、愚かな。」

 

 そう言った敵の背に、何かが見える。黄金の歪みのような何かが、生み出される。強いて例えるならば、波動だろうか。それが空中に数個、浮かぶ。

 

騎士は従手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)。」

 

 ジアナが、何か呟く。魔術の名前だろう。

 そして、見えた。黄金の歪みから、何か射出された。数は三。それと同時に、ジアナは右手に集めた魔力を捨てる。次に、打ち出された得物のうち、二つを()()、残りの一つを叩き落とす。

 魔力は、敵を誘導する為の偽装(フェイク)だったか。

 

「狂犬の猿真似をしよって。だが、三本目を所有権を奪わなかったところをみると、二本までが限界のようだな。」

 

 狂犬が誰かは分からないが、元々の技の持ち主だろう。

 

「二本もあれば十分です。」

 

 形状も在り方も全く違う武器を持つジアナは、その二本を構える。

 右手に持つそれは柄が異様に長い斧槍。一方左手には持ち手にも刺さりそうなぐらい刃が多数ある剣を持っている。まさに諸刃の剣だ。

 だがおかしい。その二本、さらに三本目である矛先が両端にある槍も含め、同じ時代に作られたとは思えないのだ。風格……というのだろうか。

 そもそも、複数の宝具を持つあいつの存在自体がおかしいのだ。

 

「しかし、何故旗を使わん。貴様の本領はそれではなかろう。」

「それは……」

 

 ジアナの本領?それは、身体能力の高さではないのか?しかも、旗というのは……。

 

「……読めたぞ。貴様、その雑種に」

「黙りなさい!」

 

 アーチャーと呼ばれたあいつの口を止めようと、諸刃の剣を瞬時に投げる。だが、黄金の歪みによってそれは、吸い込まれる。

 

(オレ)(はなし)を邪魔するか。ならばその罪、まずは貴様の正体を露見する事で償え!」

 

 その言葉と同時に、黄金の歪みが一気に増える。やがて数十という数になった時、そこからさまざまな武具が、垣間見えてくる。

 

 直感した。してしまった。あれは災厄だと。

 

 あいつの気分しだいで、俺たちのような木っ端な存在は、一瞬にして死んでしまう!

 

 ……災厄?死ぬ?それは、それはまさか

 

 脳にノイズが走る。

 

 あれみたいじゃないか。

 

 治ったと思っていた、いや記憶の奥底に捨てていたトラウマが

 

 ……あれ?あれって一体……

 

 俺の頭を

 

 火の海……誰かの死……

 

 体を

 

 いやだ、イやダ……

 

 蝕んで

 

 あんナのオモいだシタクナ

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッレ)!」

 

 そして目の前にいる血まみれの姿が、

 

「……ああ、あああ!!」

 

 俺を戦場から引きずり下ろしてしまった。


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