オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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逃走、その後

 ーー2月10日ーー

 

 セイバーがキャスターの手に渡ってしまった夜は明けて、朝の時刻になる。目覚めの場所は俺の家、つまり古崖家だ。

 あの後、尾行とかもされておらず、無事に辿り着き、全員が揃ったところで寝床を決めて、あとは交代で見張りをやっていた。

 ジアナはなんとかあの場からは逃げだせたようで、俺達が目的の場所である俺の家についた時に、念話を使い連絡をくれた。

 更には間桐妹も連れて脱出したらしく、それを聞いた俺と衛宮はとてつもない脱力感が生まれた。ただ、イリヤスフィールだけは不満そうで、その理由を聞いても、

「なんとなくよ。」

 

 と、釈然としない返答しかしなかった。

 現在は俺と衛宮、ジアナ、イリヤスフィール、間桐妹の五人が合流している。朝食はジアナが作り、もう食べ終わった後だ。

 しかし、気がかりなのは衛宮だ。あいつはセイバーを失ってしまったからか、口数が減りどことなく顔色が悪いままだ。理由は、単純に相棒を失ったからではなく、昨日のギクシャクした関係からだろう。

 あまり触れなかったが、昨日は二人ともよそよそしいというか、何か遠慮しあっているというか、とにかく変だった。

 次に何をするにしても、あいつの心境は少し気になる。一度話し合ってみよう。衛宮はうちの庭にある小さな縁側に座っている。あいつの家とは比べものにならないが、それでも似た雰囲気を感じたのだろうか。

 俺はそこの隣に座って話しかける。

 

「どうした、衛宮。」

「………。」

 

 返事なしか。心ここにあらず、という言葉が今の状況に当てはまりそうだ。

 

「おい、衛宮。」

「……あ、創太。いつの間に座ってたんだ?」

 

 二回目の呼びかけで、気づいてくれた。そうでなかったら、グーパンでも入れてやろうかなとも考えてたんだがな。

 

「ほんの十数秒前だよ。

 で、お前大丈夫か?なんかボーっとしてたけど。」

「……いや、何でもない。」

「嘘をつくな。どんだけお前の友達やってると思ってんだ?」

 

 友達の嘘なんて一瞬でわかる。

 ……いや、今回は衛宮がわかりやすいだけだが、それでも小学生の頃からの付き合いだ。なんとなくでも察する事はできる。

 俺に嘘を指摘された衛宮は、少し間を置いて、そうだったなと、嘘を突き通すことを諦めたかのように言い放ち、自分に何があったかを話し始める。

 

「最近、夢を見るんだ。」

「夢?寝ている時に見ているあれの方か?」

「ああ。そっちの方だ。」

 

 俺も最近、夢を見続けているが、だからといって何に関係してるんだ?

 

「内容は、多分セイバーの過去の事だと思う。

 バーサーカーと戦った時に、黄金の剣を投影しただろ。あれも夢で見たんだ。その直前の夜に。」

 

 なるほど、いつの間にあんな剣を見たのかと思っていたけど、夢で見たのか。しかも、セイバーの過去を通じて。

 マスターとサーヴァントは、互いの過去を見る事ができると聞いたが、衛宮の言っている事はおそらくそれだろう。

 

「セイバーは王様になった時、皆んなを守りたいとは思っていた。

 けど、大勢を助けるために少数を犠牲にしたんだ。それを何度も繰り返して、最後にその国は滅びてしまった。そして、セイバーはそれを悔やんでた。

 だから多分、多分だけど、あいつの願いはきっと……」

 

 つまりはあれか。大を生かすために小を切り捨てる、ってやつか。どっかの誰かさんもそんな感じの事してた気がするな。まあ、衛宮も全てを見たわけでもないだろうし、正確に把握はしていないだろう。

 けれども、そんなのは大して重要じゃない。セイバーの願いがやり直しだろうが、なんだろうがどうでもいい。

 

「で、お前はどうしたいんだ?」

「えっ……?」

「戦いを続けるのか、やめちまうのか。そんでもって、セイバーに何か言いたいのか。何にしろ、衛宮が思ったことをするべきだ。

 それが間違ってたなら、誰かが止めるだろうよ。例えば俺とかな。」

「俺は……」

 

 自分が何をしたいのかがはっきりとしていないのか、また下を向いてしまう。

 

「今すぐに、とは言わない。じっくり考えればいい。けど、モタモタしてると全部終わっちまうからな。」

 

 最大限の笑顔を作りながら、ジョークを言ったつもりだった。しかし、衛宮は、ありがとな、と感謝した後、また考え込んでしまった。

 もう少し明るくさせたかったが、失敗に終わったか。いや、でも心なしか、衛宮の取り巻く空気が、さっきより軽くなった気がする。気のせいにはなって欲しくはない。

 どちらにせよ、俺が衛宮を手伝える事はそんなに無い。むしろ、そうしなくても、衛宮なら立ち直るだろう。だから、俺の心配も杞憂になるだろう。

 なら、ここでできる事はない。次は地下室の工房でも言ってみよう。なにやらそこで、ジアナが新魔術の開発中らしい。術式だけでも覚えとけば何かの応用になるかもしれないし、行ってみよう。

 ……何かに応用できた事なんてないけど。

 

 

 

 階段を降り、地下室のドアをノックする。いつも思うが、日本に地下室がある家なんてかなり珍しいと思う。湿気とかで、色々面倒くさい事が起こるし。

 

「ジアナ、いるか?」

 

 ドアを開け、目的の人がいるかを確認する。部屋中を目配せし、改めて不気味なもとい個性的な物が揃っていると認識させられた。

 この部屋にある物のほとんどは、父さんが旅をしていた時に集めた物だ。トカゲの蒲焼きやカエルの目玉といった魔術の古典的な物から、パソコンに入ってそうなハード類などの最先端技術を用いた物まで。はたまた、暗黒物質としか表現しようがない謎の物もある。

 父さんは収集癖でもあるのかと突っ込みたくなるが、今は関係ない。あくまでも、目的はその中心にいる人なのだから。

 

「ソウタ?何の用ですか。」

「新魔術ができたかな、と思ってさ。そうじゃなきゃ、手伝おうかなとも。」

「そうでしたか。ならば、手伝ってください。」

 

 って言う事は、まだ完成してないのか。

 

「りょーかい。で、なに作ってんだ?それを聞かなきゃ何するかも分かんないけど。」

「端的に言えば、どこにいたとしてもここにある物を自身の手元に喚び寄せる魔術の開発です。」

「そりゃまた凄い魔術だな。けど、どちらかと言えば魔法なんじゃないか?」

「当然です。元となる物も魔法なんですから。」

 

 は?そりゃあ、どういう事だ?

 

「……分かっていないようなので、一から説明します。」

「はい、よろしくお願いします。」

 

 俺が理解していない、という事をいちはやく察知するジアナさん。いやあ、こういうのは本当に助かる。ありがたい事です。

 

「この魔術は、貴方の父が残した魔道書に載ってある物です。」

「魔道書って、あれか?何十もある……」

「そのあれです。」

「あれだったか。」

 

 あれ、つまり魔道書というのは、父さんが遺した物の一つ、いや五十四冊だ。

 その中に書いてある魔術の半分は、本人が生前に使っていたのだが、残りの半分は完成されていない魔術だった。中には案を書いただけでその後は一切触れられてない、なんてものもある。

 それが本毎に分かれていればまだマシだったが、ごちゃごちゃに混ざっているので、実際に行使するまで使えるかどうかが判断できない、という事になっている。

 

「で、なんでそんな魔術を開発しようとしたんだ?」

「以前ソウタが、キャスターの転移魔術を模倣しましたよね?

 あれを応用すれば、今開発している魔術も使えるのではないかと思いまして。」

 

 ああ、元となる物も魔法っていうのはそういうことか。

 

「しかし、まあ、あれだ。よく大量の魔道書からそんな事を思い出したな。」

「最も古く書かれた本の三つ目の魔術が、それでしたから。」

「……ああ、つまりはそういうことか。」

 

 思わず口から呆れが漏れる。

 何故そうなるかというと、その最も古くに書かれた本は、レーザーを撃つ魔術が書かれていたからだ。他にも腕を剣と一体化させたり、隕石を降らせたり、更には自分の身をドラゴンにさせたりと、無茶苦茶な魔術が考案されている。

 つまりそれは、父さんのロマンが詰まった本とも言えよう。

 ……何書いてんだ、あの人は。

 

「ちなみに、こんなコメントが書かれてましたよ。

 この魔術が完成したら、超でっかい剣を召喚させる!

 ……どう思います?」

「すごく……子供っぽいです……。」

 

 夢見過ぎなんだよ。

 

「それはともかくだ。その魔術は、転移魔術を応用すれば完成できるんだな?」

「はい。もしそうなれば、必要な物を逐一取りに帰らなくても良いようになります。」

 

 そりゃあ便利なこった。パンナコッ(殴

 

「……しかし、私一人では開発しようがありません。元からある魔術であれば、習得するのは何とかなりますが。」

 

 そういえば、そうだったな。ジアナは身体能力系の魔術は得意だが、他の系統はあまり得意ではない。だから今回のような、身体に関係しない魔術はジアナの専門ではない。だからと言って、俺の方が得意な魔術があると言われれば、はっきり言って無い。

 

「だったら手伝うよ。どうすればいいんだ?」

「ありがとうございます。であれば、空間の動かし方を……」

「それは確か……」

 

 何だかんだと話し合いをしつつ、その後は俺が魔術の感覚を伝え、それをジアナが形にする。互いがアドバイスを出し合い、完成に近づけていく作業が行われていく。

 本にある情報も適当ではなく、土台としての部分は書いてある。これならば、今日中に出来上がりそうだ。

 しかしその途中、ジアナはある質問をする。

 

「……セイバーの過去は、聞きましたね。」

「ああ。大体だけど、なんで分かったんだ?」

「貴方の性格から、真っ先にシロウ君へ話をしに行くと思ったので。」

 

 バレバレだったか。しかし、なんでまたそんな事を聞いたんだろう?

 

「それで、どう思いましたか?」

「どうって……どうとも思わなかったな。

 俺は他人の人生を評価するほど偉くないから否定できない。

 けど、強いて言うならば、見殺しにするような真似は、いくら国の為だとしても共感できないな。」

「そう……ですか。」

 

 俺の返答を聞いた途端、ジアナさ落ち込んだような顔になる。

 なんだ?何か嫌なことでも思い出したのか?

 うーん、よくわからん。まあ、無理して聞き出す必要もないし、あまり触れないでおこう。

 その後は、衛宮の昼食の合図まで作業が続き、昼食の後も同じ事をしていたので、俺たち二人はほぼ半日は地下室に篭りっぱなしの状態だった。




どうも、作者です。
今回は短くさせていただきました。理由としては、次回が重要な場面なので、それだけの回にさせたかったからです。別に面倒とかじゃ(ry

まずいです。この小説が完結した後のアイデアは次々と出てくるくせに、肝心の本編のアイデアは浮かばないという事態が発生してます。ホロウとか妄想第六次とか。
もう……書いちゃってもいいよね?

次回、主人公のトラウマ再起!嘘じゃないよ!本当だよ!

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