オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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力の魔術・再びのバーサーカー戦

 アーチャーと創太に時間稼ぎをしてもらっている間、俺とセイバー、遠坂の三人はジアナさんがいるという小屋へと走っている訳だが……

 

「どういう事なのよ、士郎!なんで、あいつを置いてきちゃったの⁉︎」

 

 この通りさっきから隣でずっと喚かれている。

 

「アーチャーはまだ戦えるけど、創太はそうじゃないでしょ!ジアナでも一分保たないって言ってたのに!」

「ああ、もう煩いな!」

 

 流石にここまで煩いと痺れを切らしてしまう。

 

「創太は大丈夫だ!あいつ自身もそう言ってたし、何も考えずにあのバーサーカーに挑む筈がない!」

「あいつはここに来る前に策が無いって言ってたのよ⁉︎それなのに考えも何も無いでしょ!」

「それでもあいつは生き残る!」

「なんでそんな事言い切れるのよ!」

「あいつはどんな奴が相手だったとしても互角に戦えるからだ!」

「そんな事ある訳ないでしょ⁉︎」

 

 まあ、にわかには信じがたい事かもしれない。けれど、俺はあいつはの能力を知っている。それがとんでもないことも。

 

「凛。」

「何、セイバー。」

「私からもいいですか。」

「アンタも創太がバーサーカーに勝てるとでも言いたいの?」

 

 勝つとは言ってない気が……

 

「いいえ。ですが彼は確実にアーチャー共に私達の元へと帰って来ます。」

「なんでそんな言い切れるのよ。」

「先ず、彼はアーチャーの遠方からの援護をするつもりでしょう。それだけならばバーサーカーに狙われる心配はありません。」

「それだけならね。でも、バーサーカーに並みの攻撃は効かない。最初に見た時もそうだったでしょ。効いたとしても、バーサーカーかイリヤスフィールがそれを黙ってない。アーチャーよりも圧倒的に倒しやすい創太を狙うでしょうね。」

「しかし、貴女もジアナの能力を知っているでしょう。彼はそれと同じ能力を持っている」

「けど……」

「遠坂、お前が何を言おうとあいつは大丈夫だ。」

 

 少し口を挟む。

 

「なによ、他に理由でもあるの?」

「あるといえばある。けど、遠坂が納得できるような理由じゃないかもしれない。」

「……言ってみなさい。」

「まあ、単純な事だ。あいつは……

 

 

 

 俺の友達だからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 =====

 

「アーチャー、一緒に生き残るぞ。」

 

 アーチャーがキザなセリフを言った後、俺はそんな事を口走っていた。

 

「何言ってんだ、創太!お前が敵う相手じゃないだろ!」

 

 おいおい、それお前が言うか?

 

「衛宮、お前に言っておいただろ。俺達が使う魔術の事を。だからさっさと行け。」

「………。」

 

 まだ心配なのか。まあ、確かに俺は無謀なのかもしれない。でも、俺はやらなくちゃならないんだ。

 

「シロウ、早く!創太なら大丈夫です!」

「でも、セイバー!」

「セイバー、小屋にジアナがいる。そこまで、二人を連れて行け。……いいな?」

「はい。貴方も必ず生き残ってください。」

「はっ⁉︎何言ってんだ、セイバー!あいつを本当に置いて……」

「ちょっとは信頼しろよ。友達だろ?」

「っ‼︎……ああ、わかった。生きて帰ってこいよ。」

「もちろんだ。」

 

 ……もう行ったな。そう確認して、後ろに割いていた意識を前に向ける。

 

「逃げなくていいのか?今が最後のチャンスだ。」

「そんな事すれば、ただ恥ずかしいだけだろ。最後までちゃんと戦い抜いてやるさ。」

 

 ただし、戦闘は早めに切り上げさせてもらう。時間稼ぎが目的なら、戦う事はせずに別の方法をやるまでだ。

 

「ほう。なかなかの覚悟じゃないか。

 膝も震えているのは武者震いという奴か?」

「言ってろ。」

 

 皮肉が絶えない弓兵だこと。だが、実際に俺は恐れている。あの黒塗りの巨漢に。やる事はただの援護だが、敵がこちらに何もしないとも限らない。

 

「アーチャー、好きに動け。それに合わせる。」

「まさか、本気で言っているのか?英霊(サーヴァント)の戦いに合わせるなどと。相当な実力者だったようだな、お前は。」

「はいはい。後で感謝する事になるんだから、あんまり見下すと恥をかくのはお前の方かもしれないぜ?」

「そうなるように願っておこう。」

「その願いはすぐに叶えられるかもな。」

 

 さて、お喋りはここまでだ。相手さんがそろそろ襲ってきそうだ。

 

「■■■■■ーー!!」

 

 声にもならない声。ただ意味もなく吠える。だが、その声だけでも俺にとっては一種の攻撃だ。足がガクガクと恐怖に震え、立っていられない。だからと言って、

 

 何もしない訳にはいかない。

 

「そらよ!」

 

 先制攻撃。俺は三つある()()()()の内の一つを早速使う。所謂、開幕ブッパだ。

 ただ石を投げただけのように見えるだろうが、その数秒後、目が痛むほどの光が放たれる。

 

「くっ……!」

 

 イリヤスフィールとバーサーカーの両者ともに目を守ろうとする。当然だ。それを喰らい続ければ失明するほどの光があるのだから。

 しかも、聴覚、嗅覚といった五感を一時的にシャットダウンする効果だけでなく、周りの魔力にノイズを発生させ、魔術による感知をいっさいがっさい無効にする効果を持っている。まさに相手の知覚から逃れる事に特化した魔術だ。

 ちなみに光は前方にだけ浴びせて、こちら側には影響が無いという仕組み。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグ)!」

 

 そして、すぐさまアーチャーは前にも見せた矢でバーサーカーがいるであろう方向に攻撃をする。

 カラドボルグというのは矢の名前だろう。弓の方には特殊な効果はない。あの捻り曲がった矢にはそれがあり、攻撃を確実に当てるという効果があるのだろう。

 大気はうねり、一直線に凄まじいスピードで矢は走る。次に起こるは着弾。俺は確信した。

 

「当たったな。」

 

 と。

 確実にバーサーカーを貫いた。けれども、おさまらない恐怖。あれはそんなヤワな事で終わるはずが無いと俺の頭は理解していた。

 

「いきなりやってくれたわね。」

 

 徐々に収まっていく認知阻害の輝き。それを放った前と違う光景は抉れた床だ。バーサーカーまで続いており、その床が普通の人間だった場合、直視できないほどの光景が広がっているだろう。

 しかし、バーサーカーは生きていた。先ほど変わらぬ体勢を保ちながら。

 

「いいわ、まずそこの名も知れない貴方から……っ!いない⁉︎」

 

 あったりまえだ。俺とアーチャーは既に別の場所へと移動している。あれだけの目眩ましをしておきながら、攻撃するだけなんてやる筈ないだろ。

 まあ、実際はアーチャーが俺を抱えて移動したので、俺自身はそこまで考えてなかったりする。

 

「やっぱり、倒せなかったか。けど、アーチャーの矢は当たっていなかったのか?」

「よく見てみろ。胸に穴が空いている。ダメージ自体は通っている筈だ。」

 

 ホントだ。確かに身体の中心に反対側まで見えそうな穴が空いている。前回の戦いも踏まえると、どうやらバーサーカー(あいつ)は一定以下のダメージを無効化するようだ。

 しかし、こうなると余計厄介だ。英霊といえど心臓を貫かれれば死ぬ筈なのに、あいつは生きている。どういう仕組みかは知らないが。

 心臓が別の場所にあるのか?それとも心臓がなくても関係ないのか……いずれにしてもそういう英霊は限定されそうだ。

 

「まったく、私に合わせると言いながら、お前が先に仕掛けるとはな。隙を作るにしても、事前に言ってほしいものだ。」

「最初だけだし、ちゃんと合わせてくれてんじゃねえか。

 それでアーチャー、次はどうする?正直言って、さっきの奴ぐらいの威力がないと、ダメージを与えられないと思うけど。同じか、それとも別の方法でいくか?」

「同じ方法でやらせてもらおう。なるべく、手の内は隠しておきたい主義でね。」

「分かった。けど、出し惜しみして死ぬなよ?」

「お前こそ、出し惜しみしなくても死ぬという事は勘弁だからな。」

 

 こいつ本当にうざい。まあ、それはあまり考えないでおこう。

 

「それで方法のことだが、さっきのアレをもう一度やれ。アレならば二度目でも十分効果があるだろう。」

「無理だ。あれは俺自身が使った魔術じゃない。これの効果だ。」

 

 アーチャーに秘密兵器を見せる。

 

「それは?」

「これは魔術を封じ込める石で、一回きりだが中に入っている魔術を使える。けれど、残りの二つはまた別の魔術だ。」

 

 ちなみに父さんが作ったものだ。名前は魔術貯蓄装置だとか。魔力を消費せずに済むので誰でも使える。

 

「……残りの二つというが、その手に持っているのは三つではないのか?」

「手元まで戻ってくるのがこの石の効果なんだよ。」

 

 便利なもんだ。これで回収し忘れが無くなるし、再利用ができる。エコだね。

 

「そこよ、バーサーカー!」

「やべ、気づかれた!アーチャー、今度こそお前に合わせるから迎撃してくれ!」

「私はお前のサーヴァントではないのだがね!」

 

 そう言いながらも、アーチャーは何処からともなく取り出した白と黒の双剣で、バーサーカーに迎えうつ。

 

「さて、準備するか。」

 

 アーチャー達から距離を取りながら呟く。あくまでも俺は援護する側だ。決して前で戦う側ではない。魔術を行使する準備に入る。

 衛宮にも言っておいたが、俺の魔術は変換魔術というモノを行使する事が基本だ。

 

性質変化(フォース・チェンジ)。」

 

 詠唱の開始され、()()()()()()()()()()。魔力の性質は元の力から土になる。

 力、それは物体や身体を動かすモノ。その分類には魔力も含まれるため、魔力の性質をも変換させる事ができる。

 地面に手を置き、魔力をそれに通す。まるで、あの時と同じような状況だ。衛宮がセイバーを召喚したあの日と。

 アーチャーを援護するために同じ魔術を行使する。

 

「ふっ!」

 

 そのアーチャーの方は防戦一方。巨大な大剣……斧?を双剣で受け流す。バーサーカーの身体は半端な攻撃を無効にするため、無駄に攻められない。

 

「■■■■■ーー!!」

 

 範囲の広い薙ぎ払い。それがアーチャーへ襲いかかる。速さも十分であり、アーチャーは仕方なく大剣を受け止めながら後ろへと引く。

 だが、バーサーカーは即座に次の攻撃へと転じる。地を蹴り敵へと向かおうとする。

 

「だけど、ここはもう俺のフィールドだ。」

 

 巨漢の身体が一瞬ピタリと止められた後、前のめりに倒れようとする。相手からすればいつの間にか脚が地面に埋まっているように思えるだろう。

 だが、それは俺の魔術で起こした現象。土の魔術でここら一体のフィールドは思うがままに動く。

 バーサーカーは倒れる事は無かったものの、地面に手をついてしまう。そのまま、脚を引っこ抜こうとするが

 

「そんなにのんびりしていても良いのか?」

 

 アーチャーが再びさっきと同じ矢を放つ。

 

 だが、弾かれた。しかもバーサーカーは何もしていないにも関わらず。

 

「なっ!」

 

 驚愕の声が漏れてしまう。

 一体何故だ?さっきは効いたのに、なんで今度は効かなくなってるんだ?

 

「無駄よ。ヘラクレスに同じ攻撃は効かない。」

「ヘラクレス……まさか!」

 

 戦慄する。ヘラクレス、となれば十中八九、あいつはギリシャ神話に登場するあの英雄……

 

「なるほど、心臓を貫かれても動いている理由が解ったぜ。ヘラクレスは試練を十二回乗り越え、その数だけ命を与えられた半神半人か。」

「ええ、そうよ。そいつは十二回殺さないと死ねない身体を持っているの。最初の一回は殺されちゃったけど、貴方達はもうバーサーカーを殺す事なんて出来ないのよ。」

 

 ペラペラと情報を喋りやがって。しかも、随分余裕そうに。俺らにはバーサーカーを殺す程の威力が高い攻撃はもうできないと踏んでいるのか。

 まあ、関係無い。こちとら手数の多さは天下一品……というかその気になれば無限なんだよ。バーサーカーに効くかは別として。

 

「ほう、そいつは良い事を聞いたな。」

 

 どこが良いんだよ、その耳が聞いた事の中で。

 

「古崖創太!私に合わせてみせろ!」

「何か策があるんだろうな!」

「もちろんだ!」

 

 アーチャーが疾風の如くバーサーカーに突っ込んでいく。以前に手数は多いと言っていたが、果たしてバーサーカーに対抗出来る手はいくつあるのだろうか。

 手に持っているのは双剣。もちろんあれだけでどうにか出来るとは思わないが、何をするつもりなのだろうか。

 

「はあっ……!」

 

 バーサーカーによる単純な力をアーチャーは洗練された技で逸らす。

 それを見ていると、やはりサーヴァントの戦いというのは別次元だと思ってしまう。魔術によって目では追いかけられるが、自身の身をそれに投じる事が出来るかと言われれば無理だ。

 この体は一般人より少し上ぐらいの身体能力を持ってるが、規格の外には出ない。魔術を使ったとしても耐えられるのだろうか?

 

「……いや、今はそんな事考えている場合じゃない。」

 

 考える事はたらればではない。今、この場をどう振り切るかだ。

 集中しろ。なるべく、アーチャーの負担を減らすんだ。

 戦闘の余波でできた瓦礫が浮かぶ。それは誰が行った事でもない。俺がそうした事。バーサーカーの行動をバーサーカー自身が予期しない行動にさせる。

 まず始めに敵の体制を崩す。その為にはバーサーカーの動きを読まなければならない。

 

 剣筋を、技を、力を読み取る!それが親から受け継いだ能力!

 

「っ……そこだ!」

 

 バーサーカーが一撃と一歩を出す瞬間、それが触れるであろう地面を沈ませる。体制は崩れていない。だが、それは予測していた。だから次の一手も既に用意してある。

 猛スピードで瓦礫を飛ばす。狙うは剣の腹。以前、衛宮を助けた時のように、剣筋を逸らす。しかし、数個ぶつけたところでその大剣はアーチャーを十分に捉えられる。

 

「だけど、そこからなら……!」

 

 次に使うのは力の魔術。元の性質であり、最も使いこなしている性質でもあるが、使う魔術自体は効率が悪い。しかも、対象に()()()()()()さらに燃費が悪い。

 

「逸れろ!」

 

 俺の言葉通り、バーサーカーの剣は逸れてただ地面を斬っただけになる。しかし、魔力の減りが想像以上だ。三分の一ぐらい持っていかれてしまった。

 だが、ここで終わらせてはいけない。すぐさまバーサーカーの剣を地面に埋もれさせ、足もそうする。すぐに抜け出されそうだが、一秒でも稼げれば御の字だ。そして、

 

「潰れろ!」

 

 秘密兵器の一つを使い、バーサーカーにかかる重力だけを強くさせる。あいつが持つ同じ攻撃は効かないという能力が拘束にも反映されるのであれば、土で足を固めるという手段は効かない事になる。そのため、保険として手札を切らせてもらった。

 バーサーカーは少し沈み、周りの地面も沈んでいる。重力が重くなり動きづらくなっている筈だ。

 アーチャーの方はいつの間にか離れており、腕をクロスさせている。ガードの体制ではないと思うが……

 

「鶴翼三連!」

 

 そう言いながら、剣を左右に投げる。その意味は解らないが、やはり防御の構えではなかったか。けれども、次に目にする光景は驚きのものだった。

 

 もう一度同じ双剣を投げた。

 

 最初の物は未だ空中を舞っている。しかし、アーチャーは再び同じ物を取り出した。そして、更に同じ事をする。

 どういう原理だ?今まであいつが使っていた武器は亜空間にでも仕舞っているのか、英霊が持つ能力だと思っていた。だが、同じ物を何本も取り出すのはどう考えてもおかしい。

 まあ、今はどうでもいいことだ。バーサーカーの動きを抑える。それに集中しなければならないのだから。

 左右に広がる三組の双剣。その軌道は一気に変わり、まるで対となる物同士が引き寄せあっているかのように、同時にバーサーカーへと向かっている。

 しかし、あれだけならばダメージは通らない。確かに同時ならば同じ攻撃は二度効かないという能力は関係ない。だが、一発の威力が低ければ意味がない。それなのに何故……

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 アーチャーの詠唱。それと同時に双剣が全て爆破。一瞬にしてバーサーカーの姿が見えなくなる。なるほど、あれならば強固なあいつの体を貫通する……っ!

 

「危ない!」

 

 それを見た瞬間、俺の体は動いていた。俺がいる位置からバーサーカーを中心とした反対側へと走る。魔力をスピードに特化した身体能力に変換しながら。

 階段を登り振り返る、そして、爆破によって飛んでくる瓦礫に手を掛け、霧散させる。

 

「な、なん……で?」

 

 尻餅をついたイリヤスフィールは間抜けな声を出す。質問の答えを出すとすれば、瓦礫を霧散したのは魔術だ。手で触れた時に原子の結合とかをどうのこうのした。その結合にも力がある為、力が魔力の性質である俺にとって容易い事だ。ただし、遠隔での行使は難しい。

 ……いや、こいつが求めている答えはこれでは無いな。正しい答えをするならば

 

「俺は誰かが死ぬところを見たくないだけだ。既に死んでいるサーヴァントならまだしも、敵だとしてもお前を見殺しなんていう事はしたくなかった。」

「えっ?」

 

 それに、衛宮も何かしら思うはずだ。完全な他人でもないし、あいつはお人好しだ。悲しむ顔はあまり見たくない。

 相手方は驚いているようだが、何を想おうと俺にとっては関係ない。これはただのエゴだからな。

 

「さて、あっちはどうなってるかな。」

 

 再び戦場へと目を向ける。未だ砂埃は舞っていて、敵の姿は見えない。しかし、あの爆破を同時に喰らえば、バーサーカーであろうと殺せる筈だ。そう考えると、あと十回あいつを殺さなければならない。

 そう考えていると、砂埃からバーサーカーが跳び、アーチャーへと襲いかかる!

 

「くっ……!」

 

 予測していなかったのか、そうでなければスピードに対応できていなかったのか、アーチャーは咄嗟に大剣を受け止めようとする。だが、あんな物受け切れる訳がない!

 

「はあっ!」

 

 地面から二人の間に土の壁を生み出す。

 

「■■■■■ーー!!」

 

 敵は吠えながら、土の壁を破壊しようとする。その壁はあいつにとって紙同然だという事は承知しているが、壁を作った目的はアーチャーを守るためではない。

 次に壁は破壊され、その向こう側の敵が見える。だが、バーサーカーの視界に入ったのはアーチャーではなく、

 

 懐へ入ろうとする俺だった。

 

「っ……!」

 

 体を捻りなんとか大剣を避ける。アーチャーよりも俺の方が体格が圧倒的に小さい。そのおかげで、あいつであれば確実に当たっていた攻撃は、的が小さい俺には避けられる。

 一気に懐に入った俺は全魔力、いや持てる全ての力を右腕の筋力に変換し、

 

 

「はあああ!!」

 

 

 そのままバーサーカーの体を貫く!

 

 

「う……。」

 

 だが、立つ力を失ってしまい、俺の身体は崩れてしまう。

 ()()は打てたものの、それは生き延びなければ意味が無い。

 バーサーカーはさっきの一撃で命を一つ失ったが、まだ九つも残っている。そして、動けない俺を襲ってくる!

 

「だから、逃げた方がいいと言っただろう。」

 

 世界がブレる。

 いや、アーチャーが横から走って来て、俺を抱え脱出する。

 

「何が逃げた方がいい、だ。不意を突かれたくせに。」

 

 助けられたにも関わらず、俺は感謝の言葉を言わずに、さっきの事を掘り返す。

 

「そう見えるだけだ。まったく、まさか私を文字通りの足蹴にするとは。おかげで反撃できるものもできなくなってしまった。」

「どうだか。」

 

 アーチャーの反論は説得力が無い。明らかに余裕がなかったっていうのに。

 

「まあ、今は逃げてくれ。悪いが俺は魔力切れどころか、前みたいに動けないんだ。お前がそんな俺を戦場に置いて戦うような性格でなければ、そうしてくれるだろ?

 現に危ない所を助けてくれたんだから、無駄に考える必要は無いと思うが……」

「そうだな。私はどうやらお人好しのようだ。だから、お前の指示に従ってやろう。」

「逃げようとしたって無駄よ!!」

 

 敵は俺たちを逃してはくれないようだ。となると、このまま、衛宮達の所に行けば全滅だ。だから、残り一つの秘密兵器を()()()()()()()()もらった。

 

「檻よ、現れろ!」

 

 次の瞬間、バーサーカーの周りから光が現れ、囲んでいく。

 巨漢はそれに捕まる前に効果範囲外へと逃れようとするが、そんな事をしても関係ない。魔術自体はすでに敵を捉えているのだから。

 光は次第に檻へと形を変えて、バーサーカーを閉じ込める。

 

「■■■■■ーー!!」

 

 そのバーサーカーは吠えながら、檻を破壊しようとするが、ビクともしない。

 

「秘密兵器をまだ持っていたとはな。バーサーカーを一回倒した時か、()()()()()()()()()()を真似た時に、もう使い切ったと思っていた。」

「お前に抱えられる直後に仕掛けたんだよ。あれで数時間ぐらいは時間を稼げる筈だ。多分、イリヤスフィールでもあの魔術を解除するのは不可能だ。

 ……というか、よく転移がキャスターのだと気付いたな。」

 

 転移が何処で使われたかと言うと、アーチャーを助ける為に土の壁を作った直後だ。あの時、アーチャーの前に転移をしてそのアーチャーを蹴り、無理矢理後退させながらも、俺はバーサーカーの懐へと入っていった。

 

「魔術の構造があまりにも似ていたからな。誰でも気づく。

 むしろ、何故それができるのか私が聞きたいぐらいだ。」

「別に説明してやっても構わないが、今は逃げるのが先決だ。」

「同感だ。」

 

 話をしている内に城から抜け、それが遠くに見える。目的は果たした。ちゃんとあいつらは逃げているのだろうか。

 多分だが……とにかくジアナに連絡するか。




どうも作者です。

バーサーカーは二度死にました。(三度目がないとは言ってない)

やっと、オリ主の戦闘が書けました。能力自体は明かされましたが、その詳細は次回にします。

書く時に、戦闘シーンは誰かの視点でやった方がいいのか、それとも三人称で書いた方がいいのかと悩んでました。次にそれを書く時は三人称になるかもしれません。

次回、皆んなのお楽しみシーンがあるかも!?(あるとは言ってない)

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