「どうですか?」
「んー、今までよりは良い出来です。」
「今までよりは……か。」
創太、遠坂、藤ねえの三人が学校へ行った後。現在、俺はジアナさんに土蔵で魔術を教えてもらい、直剣を投影していた。
「投影品としては破格ですが、やはり、戦闘で使うとなると壊れやすいのが問題ですね。」
「そう、ですか。」
口から落胆の言葉が漏れてしまう。
「そう落ち込まないでください。むしろ、一日でここまでできるのは凄い事ですよ。昨日はナイフで精一杯だったのが、直剣まで投影できるようになったのですから。
まあ、目眩しぐらいにしかならないのは何とも言えませんが……。」
ジアナさんはフォローしてくれたけど、その後にキツい言葉を言う。いわゆる、上げて落とすと言うやつだ。本人は本当のことしか言えないだけだろう。
「でも、この調子なら聖杯戦争中には、ソウタと同じように援護くらいできるようにはなりますよ。」
「そうなるよう、頑張ります。」
しかし、ジアナさんの言う通りこの戦争中に投影魔術が役に立つ物になっているのだろうか。さっきも昨日の様にセイバーと何戦か試合をした。あくまでも戦う為ではなく、生き残る為だ。しかし、セイバーに一撃も与える事が出来ずに終わっている。と言うよりも一度も攻撃に転じる事が出来なかった。創太はその一歩手前までいった。
魔術でもあいつは俺よりもしっかりとしたモノが扱える。別に俺とあいつに差があるのは仕方ないと思う。けれども、短期間で創太に追いつけるのだろうか。
「……不安ですか?」
顔に出ていたのだろうか、ジアナさんに心を読まれてしまった。
「貴方の予想通りですよ。それで、どうなんですか?」
この人は読心の魔術でも使ってるのか!?という言葉は押し殺し、俺は質問に答える。
「……まあ、不安ですね。短期間で強くなれるなんて信じられないです。」
「それが普通です。けれども、貴方にはそれ程の
「はあ……。」
それがあるならもう少し早く開花して欲しかった。それならば、できる事が増えていただろうに。
「……そろそろ、昼時かな。ジアナさん、お腹空いてませんか?」
「いえ、私はそんなに」
ジアナさんは遠慮しようとしたが、それを遮るようにお腹の虫が主張する。
「・・・頂きます。」
「あははっ。今から夕飯の用意と一緒に昼食の材料も買ってきますんで、少し待っててください。」
「それなら私も・・・」
「いいですよ。お腹空いてるんですよね?だったら留守番でもしてください。どうしても待てないなら台所にお菓子は多少あるので、それでも摘んでてください。」
「はい……。なるべく早く帰ってきて下さいね。」
「分かりました。」
さて、他にも食いしん坊がいる事だし、早めに料理を作ろう。
ーーーーー
電話が鳴る音が聞こえた。買い物の用意をし終えた瞬間に。一体誰から……。
「はい、衛宮ですが。」
「衛宮か?」
「慎二?ああ、俺だけど何か用か?」
電話の相手はライダーのマスター、慎二だった。
「今すぐ学校に来いよ。面白い物が見れるからさ。」
「面白い物?どういう……」
「いいから早く来い!!言っとくけど、必ず誰にも言わず一人で来いよ。」
言い終わったやいなや、こちらの返答を聞かずにすぐ電話を切られてしまった。慎二は一体何を見せたいのか。見当もつかない。何か焦っていたみたいだが……。
今の時間帯だと、学校は昼休みに入っているはずだ。学校に向かうとしても、五時間目が始まるかどうかに着く。それに見るだけならすぐに終わるだろう。二人には悪いけど昼食の時間は少し遅らせよう。
=====
あいつ馬鹿だろ。
あいつというのは
話を戻すが、昨日の事が遠坂に伝わっていない筈が無い。そうなれば間桐が話を持ちかけても、遠坂はこいつ何言ってんだと思うだろう。そうでなかったとしても、衛宮は使えない奴だどうのこうのと言っていたが、いやお前も魔術使えんやろ。となるのがオチだ。それにしてもあいつ妙にしつこかったな。
ちなみに遠坂は「もう帰る。」との事。相当気が損ねたようだ。まだ、昼休みだというのに。
しかし、間桐は二人に俺との手を切れとは言わなかった。という事はあいつ、俺が二人と協力してる事に気付いていないんじゃないか?俺も結構二人といるし、そもそもあいつ前に俺たちが一緒にいる所見てなかったっけ?具体的に言えば間桐兄が妹に暴行を振るいそうになった時。
まあ、いいや。そろそろ五時間目も始まる頃だ。その教科は
その瞬間、世界が変わった。
まずい。学校の結界が発動しちまったか……!発動するタイミングを延ばした筈なのに何故!みなが苦しみ始めて次々と倒れる。
どうすればいい……どうすればいい!!
いや、まだだ。まだ焦る場面ではない。結界の発動者は近くに居るはずだ。探せばきっと、きっと……
倒れているクラスメイトが目に映る度、
「うっ・・・。」
吐き気がする。
大丈夫、大丈夫だ。こういう結界への対策はジアナから聞いている。
「
呪文を口にすると共に自身の魔力を元の性質から隔離のそれへと
「はあっ……はあっ……うぐっ。」
出ている筈なのに何故……この気持ち悪さは止まらないんだ……。
目眩がする。息が苦しい……。なんでこんな……とにかく、体の状態を調べないと……。
=====
「は……あっ……!!」
校門に入りすぐ、周りの空気が変わった。
体が熱い……!
結界が発動したのか!?まさかとは思うが、慎二か言っていた見せたいものってこれのことか?偶然だとは思いたいが、とにかくあいつなら自分の教室に居る筈だ。
呼吸もままならないが、この惨状を止めなくては!
二年C組の教室に辿り着いた。人はいる。だけど、誰も動いていない。全員が倒れている。
まるで、まるで……
その中には……。
「創太!!」
あいつもいた。すぐに駆け寄ろうとするが、
「いよう、衛宮。どうだいこの結界は?」
それを邪魔をするかのように、
「……慎二。」
この元凶が姿を現した。
「なんだよ、あんまり驚いていないみたいだな。さすがの衛宮でも僕のあんな言葉は信じてなかったって事か?」
こっちとしては十分驚いているし、慎二が自身の家で言っていた事も信じ込んでいた。その結果がこれだ。
「面白い物ってこれの事か?」
「ん?いいや。確かにこれも面白いけど、そうじゃなくて衛宮が顔面蒼白になるその時、つまり今のお前の顔だよ。
どうだ、お前の知り合いが、友達が、古崖が苦しんでる所を見てさどういう気分だ?」
その言葉で俺の中の何かが変わった。
「結界を止めろ、慎二。」
「はあ?嫌だね。お前の指図なんて聞く必要があると思うか?」
「そうか。だったら、」
怒りに身を任せ、
「力ずくでも止める!!」
一気に走る!!
「はっ、馬鹿だね。」
三本の黒い刃が現れる。だけど関係ない。こんなのセイバーの一撃に比べれば遅すぎる!!
「っ……。」
遅すぎるのだが、体が完全にはついてこれず少し掠ってしまった。けれども、それは問題ですら無い。
「慎二!!」
「ひっ……!やめろ、来るな!!」
俺は慎二へと一気に走り抜ける……!
あと三歩で届く。しかし、自身の勘が死を感じ取る。
「っ……!!」
間一髪でそれは避けられた。直感が感じ取った物は
「い、いいぞライダー……!」
禍々しい黒い女性だった。
先ほどの刃より圧倒的な死の気配……!このままでは、
「あがっ……!?」
蹴ら……れて……?
まずい、サーヴァントが出てしまってはこちらに勝ち目はない……!とにかく、体制を立て直さなくては!!
幸い、俺は蹴られた影響でライダーとの距離は空いている。その隙に……!
「うぐっ……!」
腕に杭が刺さった。その杭には鎖が繋がっており、ライダーの手元まで続いている。それが指し示すのはつまり、
俺の体は引っ張られ、
「うわっ!!」
追撃を、
「止まれライダー!!」
喰らう事はなかった。
「いっ!!」
けれども、俺の体は止まらず、慎二の前に来るまで地面に転がり続けた。
さっきのライダーを制する声は慎二のものだった。一体何故そんな事を?けれども、その疑問はすぐに解決された。
「創太……?」
どうも、作者です。
原作を見ながら書いていたら、魔術回路の解釈を間違っていた事が判明。ストーリーにはあまり影響のない事ですが、すごい恥ずかしい。
段々と日常・ギャグパートが減り、戦闘・シリアスパートが増えてきました。主人公が活躍するのはもう少し先です。具体的に言えばバーサーカー戦の時に、ちょっとだけ格好良くなって、ダサくなります。