「捕まっちまった。」
今の現状を一言で表すならばこの言葉が一番だろう。
二時間前、セイバーと一戦だけ試合をしてから、衛宮の魔術講義もとい、俺の魔術特訓をして時間を潰してから、夜の探索時間となり、俺とジアナの二人は結界に何か変化が起きているかを調査する為に学校へ。衛宮とセイバー、遠坂、アーチャーは最近発生しているガス漏れの真相が魔術だと判断して、それが多く起こっている新都へと分かれた。
そして、俺達は効率を考えて、さらに二手へ分かれ探索を進めた。
ここまでは良かった。
いつの間にか魔術に掛かってたんですよ。
体は言う事を聞かず、口すらも動かせない。唯一意識だけが何とか残ってるという状況。もう最悪だよ。
そこから、俺の体は勝手に進んでいき、学校から離れてしまった。体が進む方向を考えていると、これもしかして、柳洞寺に行くんじゃね?と予測を立てる。ジアナが間桐邸で盗み聞きをした時に柳洞寺にはマスターがいるとか何とか言ってたし。案の定そうだった。
そして、階段を上る時に衛宮と合流させられた。こいつも俺と同じように魔術に掛かったんだろう。階段を上がった所で門番を発見した。こいつも多分、サーヴァントなのだろうか。
そして、現在門を潜り、キャスターと対面中です。
「お前が俺達をここまで連れてきたのか。」
衛宮が何とか喉を動かし、質問する。
「ええ。マスター達はみな小物だけど、坊や達二人は特に落ちぶれていましたから。」
さらっと侮辱された。けれど、俺はたった一年しか訓練をしておらず、衛宮は俺よりかは年数が長いが、練習方法が間違っていた。キャスターが言うことも当然っちゃ当然なんだが。
「何しろ街の人間達と変わらない対魔力ですもの。そんなマスターを見つけたら、こうして話をしたくなるのは当然でしょう?唯一そこの坊やの侍女はサーヴァント並みの魔力を持っていましたけど。」
うわ、今の俺ってそんなに魔術への対抗が低い?この一年結構頑張ったつもりだけど、
ていうかジアナが侍女ってやめてくんない?ないって、あれがメイドとかほんとないって。
「んで、どうする気だ。俺は別にマスターじゃないんだけど。」
次は俺が質問。
「そこのその坊やからはセイバーを、貴方には実験材料として活用させて貰うつもりです。」
それってもしかしなくとも、
「赤髪の坊やもそうだけれど、貴方も特有の力を持っている。それは魔術師として調べないわけにはいきませんもの。」
やっぱかよ!!前々から狙われる狙われるって叔父やらジアナやらに散々言われてたけど、過去の英霊からも狙われるとはね!!
……まあ、それはこの際どうでもいい。これから、キャスターが俺達に何をしようとしてくるかは判った。ならば次は、より情報を引き出すだけだ。
「そうかよ。全く、こんな事ならもっと早い時期から魔術を習い始めれば良かったぜ。キャスターさんよ。どうせ、俺達は殺されるんだろ?だったら、冥土の土産に話を聞かせてくれよ。」
「別に殺すつもりはないのだけれど。」
嘘つくな。さっきから殺気が(誰得シャレ)漏れ出て、いや俺の身体に突き刺さってんだけど。
「街の人間から魔力を吸ってんのはお前だな?」
「そうよ。」
「キャスター……!やっぱり、お前がやってたのか!!」
キャスターの返答に怒りを覚える衛宮。間桐の言ってた事は真実だったか。
「使えるものは使う。当然の事でしょう?むしろ、貴方達が何故それをしないのかが理解に苦しみますね。」
「無関係な人間を巻き込んでおきながら、何を言ってるんだ!!」
衛宮の主張はごもっともだが、そうやって相手を刺激するのは早死する原因にもなるからやめてくれ。俺達が今やるべきことは時間稼ぎと情報収集だ。ジアナやセイバーは俺たちがいない事に気づいる筈だし、捜してくれている事も確かだ。なら、それまでに相手との対話を長く続けなければならない。
「待て、衛宮。そんな事言ったって何の意味も無い。」
「創太……。」
「さて、キャスター。お前は俺達の力とセイバーを欲しがっているみたいだな。力の方は単なる興味本位だとしよう。だけど、何でセイバーを欲しがるんだ?」
「何故そのような質問をするのかしら。」
おい、質問を質問で返すな。
「いや、なに、お前に協力をするといえば多少の自由が与えられると思ってな。」
「なっ!?」
「あら、意外ですね。」
本当は嘘だけど。
「何考えてんだ、創太!そんなこと」
「うるさい!」
「っ……。」
俺を説得しようとする衛宮に一喝を入れる。
「それでどうなんだ。俺の問いに答えてくれるか?」
「いいでしょう。私がセイバーを欲しがる理由はバーサーカーを倒す為です。他のサーヴァントは問題なくとも、あのバーサーカーだけは例外。彼はかなり厄介な存在ですからね。」
やはりか。バーサーカーというのは狂化によって身体能力が上がり、代わりに理性が失われるクラス。それ故か、マスターがコントロールしきれず『冬木の』がつくこの聖杯戦争に関わらず、他のそれでもバーサーカーを召喚した際、すぐにマスターは殺されてしまうといったケースが多い。
その反面、手綱を握れた時の利点は大きい。そして、それは元の力が強い程。
そういった点で今回の聖杯戦争を勝ち残る為には、あのイリヤスフィールが従えるバーサーカーが一番の障害である。元の英霊が誰かは知らないが、あれほどの力を持っていれば倒すのが簡単じゃないとか、そんな甘っちょろいもんでは無い。
だから、キャスターは勝つ為に戦力を増強するべきであった。セイバーは今、マスターがマスターな為に力を存分に発揮できていないが、強い。そしてマスターはへっぽこだ。なら、セイバーを奪おうという考えに至ってもおかしくはない。
「ふーん、なるほど。だったらこうしないか。」
そして、俺はある提案をする。
「衛宮の令呪は俺が引き継ぐ。そして、お前と契約をして、従者にでもなろう。なんなら、
「なっ……!」
衛宮が驚いているが関係ない。どうせ嘘だ。相手が乗ってこようと無かろうと、ただの時間稼ぎなのだから。
「その話、私に何のメリットがあるのかしら。」
えっ?
「坊やが出した二つの提案。そのどちらともが私自身がすればいい話。貴方がするにしても同じ結果になると思うのだけれど。いえ、むしろ貴方がその契約の穴を突いて裏切る可能性もあります。」
しまったああああ!!それまったく考えてませんでした!!なんという初歩的なミス!!そりゃあ、相手に俺を従者にする利点を見せなければ意味無いよね!!コンチクショウ!!
「あら、本当に考えていなかったのですね。」
そうだよ。これがその場その場で取り繕うとしてた結果だよ。
「では、交渉決裂ということで。」
そう言うとキャスターは衛宮の令呪に手を伸ばし、聞き慣れない呪文を詠唱し始めた……!
まずい。このままではセイバーが相手の手に渡ってしまう!とにかく時間稼ぎだ。一瞬でいい。何かキャスターの気を引けるようなそんなものがあれば……!
ぶっつけ本番だがあれしかないな。
衛宮はキャスターと対話する前に、身体が動かないのは相手の魔力が自身の魔力に混じっていると予想し、自身の魔力で洗い流そうとした。
けれど、それは失敗に終わった。理由は魔力が混じっているのではなくそれが魔術であったからだ。魔術として確定している以上、魔力で洗い流そうとしてもそれ自体が異常であるために何をしても無駄だ。
だが、今から俺がやろうとするのは
簡単に説明すると、筋力で魔術を行使するというモノだ。相手は魔術で俺達を拘束する時に、魔術回路を重点的に縛る。魔術には魔術でしか対抗出来ないからだ。例外云々はここでは置いとくとして。
つまり、相手は魔力を使われると厄介だと思い、身体の方は少し疎かになっている。それでも強力なのは確かだし、力づくでは絶対に無理だ。けれども、口と喉だけは動いている。敵の唯一油断している点。その口と喉の筋力を使ってこの拘束を解く!!
「
聞き慣れた呪文。俺がいつも魔術を使う時に呟くそれは親から受け継いでるモノだ。叔父は別の呪文を使っていたので先祖代々なのかどうかは知らん。
「うおおおお!!」
「なっ……!」
「創太⁉︎」
よし、大声をあげる事によって、気を引く作戦は成功だ。魔術の方は成功しても、そうでなくともどうでもいいが、やはり成功させたい所!!キャスターに邪魔される前にこの拘束を解く!!
筋力が魔力に似た何かに変える感覚。だが、筋力である事には変わらない矛盾。そしてそれは、キャスターの魔術を破戒する!!
「はああああああ!!……あっやべっ。」
「っ!!……?」
「一体何が……。」
結果から言うと身体は自由になった。いや、それだと語弊があるか。正しくはキャスターの魔術からは逃れられた。しかし、倒れた。力を上手く制御できずに体力を使いすぎてしまった。そんでもって、体中が痛い。筋力も使いすぎたらしい。その影響か筋肉痛のような症状がところどころに出ている。
ああ、キャスターの笑い声が聞こえる。どうせ、俺を嘲笑っているのだろう。体が倒れ伏し、視界が固定されている中でも理解できた。結局、誰も来てくれなかったのか。ただそんな絶望に落ちる中、赤い外套を着た男、アーチャーが突然現れた。
どうも作者です。
筋力で魔術行使ってなんぞや。訳分かんねえぞ。
何故か早足で書いてしまった。なので今回は出来がかなり酷いです。(当社比)
次回、アーチャーVSキャスター。
来週は無理かも。