オリ主と衛宮士郎との友情ルート   作:コガイ

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偽・VSセイバー

「よう、衛宮。」

 

 衛宮とイリヤスフィールの会話が終わり、彼女が帰った後、俺は衛宮が悩んでいる様だったので、とりあえず、話しかけてみた。

 

「創太?どうしてここに。」

「それはこっちのセリフだ。お前、ジアナと一緒に夕飯の用意をしてたんじゃねえのかよ。」

 

 放課後の時にジアナから連絡があって、そんな内容のメールを受け取った筈だが、一緒にいないどころか、少女(十八歳)と遊んでいるとは聞いてないぞ。

 

「いや、それが途中までジアナさんは一緒にいたんだけど、一瞬、目を離したらいつの間にか姿が消えてて……」

「ああ……なら、しゃーない。そりゃあ日常茶飯事だし。」

 

 衛宮が言ったように、ジアナは目を離すとあちらこちらに移動する。しかも、意図せずに。

 お前は子供か。と言って注意した事もあるが、未だに直る気配は無い。

 

「で、敵さんとまた不用意にお喋りしてた理由は?」

「またって……向こうから話しかけてきたんだけど、一人の人として話がしたいみたいだったし、何よりサーヴァントを連れていなかった。なら、今回はマスターとして来た訳じゃないって判断したまでだ。」

「甘い。ひっじょーに甘い。バナナチョコサンデーにハチミツと練乳をたっぷりかけたぐらい甘い。」

「は、はあ。」

 

 うっわ。微妙な顔をされた。いや、俺自身もね、面白いと思ってやってる訳じゃないよ。唐突なギャグが思い浮かんだんだよ。

 

「まあ、いいや。衛宮の甘さは今に始まった事じゃないし。それは置いとくとしてだ。俺が話したいのはその内容、イリヤスフィールと切嗣さんについてだよ。」

 

 衛宮の身内である二人。それは戸籍上ではあるが、やはり衛宮にとって知らないことだらけだ。

 

「さっきの話は途中からだが盗み聞きさせてもらった。……ジアナの予想が的中しちまったな。」

「ああ。」

 

 ジアナの予想。それはイリヤスフィールが切嗣さん(あの人)を恨んでいて、それが衛宮にまで矛先が向いている事。というか、ほぼ確定してるようなもんだ。聖杯を壊した切嗣さんをアインツベルンは良く思う筈がないし、イリヤスフィールに良い様に教えるはずが無い。

 

「まあ、どうするかはお前次第だ。あいつを説得するんだったら別に構わない。少なくとも俺はお前の主張を疎かにはしないつもりだ。だけども、必ず助けるとも限らない。悪いけどな。」

「いや、それだけで充分だよ。」

「そうか。なあ、イリヤスフィールが言った最後の言葉なんだけどさ。」

 

 衛宮をサーヴァントにしてもいい。なんか勘違い……いや、確実にその方面でしか意味が捉えられないセリフ。けれども、それは違う意味に聞こえた。

 

「あれか……いや、アイツにとっては側に居てくれる人がサーヴァントだって言ってた。だから、何故かは知らないけど、俺をそうしたいっていう意味だと思う。」

「ふーん。なるほどな。……まあ、多分だけど、イリヤスフィールはお前に懐いてるんじゃないか。衛宮は他人に世話を焼くしさ。どうせ、なんか買ってあげたんだろ?」

「なんで、判ったんだ?」

 

 なんでって。まあ、それは自覚しづらいか。その質問の答えとして、俺は自身の口元を指す。

 

「……あっ。」

 

 衛宮は自身の口についていたある物に気づく。

 

「餡子なんかつけやがって。」

 

 商店街で売ってある大判焼きだろう。何故カスタードクリームにしなかった。

 

「つまり、あの子はまだ説得の余地があるって事だ。悩む必要はそんな無いと思うぜ。」

「そう……だな。ありがとな。」

「いつも、助けて貰ってるんだ。少しは返そうと思ってな。」

 

 こいつは、いつも誰かに貸しを作っている。そして、それを返さなくてもいいと言う。それは俺も例外では無い。だから、こういう事で返さなくてはこっちの気が済まない。

 

「さて、そろそろ行くか。ジアナの奴、今頃お前を探しているはずだからな。」

「ああ。」

 

 こうは言ったが、むしろ、今も一人だけだというか事すら気づいていないかもしれない。

 

 ーーーーー

 

 刀が打ち合う音。ただそれだけが聞こえている。だが、意識を耳に割く余裕は無い。ましてや、俺は押されている。勝つ為には状況を覆す術を考える事に集中するべきだ。

 

「守ってばかりでは勝てませんよ!」

 

 声と同時に相手のスピードが上がる。その言葉には百も承知だと返したい所。しかし、無駄な思考は頭から捨て、最善の一手を打つべく脳をフル回転させる。

 その撃ち合いの中で右からの水平斬りが迫って来る。

 重く、鋭い一撃。

 そして、俺が待ち望んでいた一撃でもある。

 姿勢を低くし、攻撃を回避する。

 そして今、相手と打ち合ってから、俺の()()()の攻撃が開始される。

 

「ふっ……!」

 

 まず、下段からの大振りな攻撃。もちろん、フェイクだ。途中でそれは相手の心臓を狙う突きへと変わり、相手は躱す。まだ、想定範囲内の出来事。

 

「はああっ!」

「っ!」

 

 俺が繰り出した刺突は上段からの斬撃へと一瞬にして()()()()()()()。これは相手にとって、予想外の攻撃だろう。しかし、俺の最善の攻めは、ただの反射神経で防がれる。

 やはり敵わない。そう、再確認させられる。

 だが、初めての攻撃のチャンスを掴んだのだ。このまま、また防戦一方の状況には持って行かれたくない。その一心で無理矢理刀を斬り返す。

 

「うおおお!」

 

 下段からの大振りな一撃。相手はまたかと思うだろう。先程もフェイントとして使われた動きだ。

 

 

 けれども、振り抜かれた。

 

 

 そして、()()()防がれた。

 

 

 ここで勝負が決まる。俺の刀には左手しか残っていない。では、右手はどこに行ったのか。答えは……

 

「はっ!!」

 

 セイバーの腹へと吸い込まれていき、

 

 寸前で止まった。

 

「……参った。」

 

 それは、俺が放った言葉。

 

 肩には刀が触れていた。

 

 ーーーーー

 

「やっぱ、さすがだな。セイバーは。」

「いえ、ソウタも中々の物でした。最後の反撃は特に。」

「それでも届かなかった事には変わらないしなー。」

「でも、俺よりかは持ち堪えてたじゃないか。」

「そうだけどさあ。」

 

 俺は道場でセイバーと試合をしていた。衛宮も隣に居る。何故そうなったのかと説明をすれば、まず、帰ってきてからの事だ。

 俺、ジアナ、衛宮、セイバー、そして遠坂が居間に集合して、衛宮はワカメがマスターだという新事実を話した。セイバーと遠坂は敵の本拠地に一人で乗り込んだ事に対して呆れており、無事だったから良かったものの何かあったら云々かんぬんという話に。

 そこから、何故か衛宮とセイバーが自分が戦うと言い合いになり、どうした物かとなった。きっと衛宮は、バーサーカー戦の事を思い出しているのだろう。衛宮は他人本位な奴だ。それでも、あいつ自身が前線に出て戦うのはマズい。そこで俺が「だったら、衛宮がセイバーより強かったら戦ってもいいだろ?」と話を持ち掛けた。

 これで、衛宮が完全に納得する筈がないが、それは最低条件だと思う。そもそも、弱かったら戦えない。戦うべきでは無い。そんな事を俺は説得材料に使い、何とか衛宮を話に乗っからせる事ができた。決闘方法は剣道という事で道場に向かった。

 そして今に戻る。現在、セイバーの連戦連勝で、衛宮はズタボロ。そろそろ体力が切れそうな所で俺が交代。先の結果になったのである。

 

「二回も()()を使ったていうのに一回も当てられないっていうのはなあ。」

「いえ、戦闘に反則も何もありません。それも立派な力です。」

「うん?反則が二回ってどういう事だ?

 最後に手を使ったのは剣道としては反則だけど、それ以外に何かしたのか?」

 

 確かに、剣道としての反則は一回だけだ。これは俺自身が反則だと勝手に思っているだけである。

 

「シロウはソウタが最後に行った反撃の中で何か違和感を覚えませんでしたか?」

「違和感……あ、そういえば突いてからの斬り返しが速かった。でも、アレが反則?」

「俺としちゃあ反則だよ。剣道のルールは魔術を使う事は考慮してないからな。」

「えっ、魔術を使ってたのか⁉︎」

「まあな。説明は……まあ、今夜の魔術講義の時にでも。」

 

 と、先延ばしにしていく俺。

 

「なあ、セイバー。」

「はい。何でしょうか。」

 

 俺はある事を訊く為にセイバーに誘いを掛ける。今しなくても構わないのだが、やはり早めが良いものだ。

 

「ちょっと付いてきてくれないか。道場の外を出るぐらいでいいからさ。」

「創太、二人して何話すんだ?」

「まあ、ちょっとな。」

 

 人に聞かれんのはちょっと恥ずかしい事だ。とは、思うだけで言わない。

 

「別に悪い事はしねえよ。」

 

 納得してくれたのか、衛宮はそれ以上は何も聞いてこなかった。

 

「それで付いてきてくれるか、セイバー?」

「はい。良いですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ソウタ。私を何故呼び出しだしたのです。」

「——訊きたい事があってな。」

「それは一体……」

「俺の両親のことだよ。」

 

 これは、昨日の夢を見た時から考えていた事だ。

 

「俺は幼い頃しか両親を見ていない。だから、衛宮が切嗣さんの事をあまり知らなかった様に、父さんと母さんにも俺が知らない一面があるかもしれない。」

「それはジアナに訊けばいいのでは。」

「とっくに訊いたよ。別にそんなモンは無いと訊いたが、それはあいつの意見だ。信じないとは言わないけど、気づいてない可能性がある。だから、他の奴の意見が聞きたかった。」

 

 ただの印象だけだが、セイバーは人の本質を見抜くのが上手いはずだ。少なくともジアナよりは。

 

「そうだったのですか。しかし、私から見てもあの二人は裏も何もありません。貴方の父親、古崖創助(そうすけ)は明るい性格で少し子供っぽいところがありました。良くいえば無邪気、悪くいえば落ち着きのない人でした。そして、仲間意識が人一倍強いのも印象的でした。

 その伴侶である古崖白無(シロナ)はソウスケとは対照的に静かでお淑やかな人で、時折見せる怒りが全てを圧巻させる様でした。」

「そう……か。ジアナから聞いた事とほぼ一致しているな。悪いな態々呼び出して。」

「いえ、別に私は構いません。……裏があるのはジアナの方ですが。」

「なんか言った?」

「別に構いませんと言っただけですが。」

「そう?まあいいや。」

 

 これで、確信まではいかないが、少なくとも裏があるという可能性は低くなった。信じきれない自分が少し嫌になりそうだが。

 

「……。」

「……?私の顔に何かついてますか。」

「いや、セイバーってさ、遠坂にはまだ少し敵意があるけど俺にはそんな物ないような気がするなと思ってさ。自惚れではなければ。」

「いえ、自惚れではありませんよ。貴方の両親には人として接して貰えましたから。……少なくともキリツグよりかは。」

「ん?……ああ、そういうことか。」

 

 あまり切嗣さんとは仲がよろしくなかったのだろう。ジアナからもそんな話を聞いたし。

 大方、奴隷(サーヴァント)サーヴァント(奴隷)だとかそんな似たような考えて方をしてたんだろう。もしくはただ単にソリが合わなかったのか。

 

「もうそろそろ時間かな。俺はジアナと一緒に晩飯を用意するから、一旦抜ける。衛宮にもそう言っといてくれ。」

「解りました。」

「おう。まあ、あいつの事、宜しくな。ある意味大変だろうけどさ。」

「はい。」

 

 その後、台所へと向かい、ジアナと夕飯の支度をしていたのだが、衛宮が途中で参加してきて、手取り足取り料理を教えて貰ったのは余談だ。




どうも、作者です。
奇跡!前回の後書き通りに投稿できた!!
まあ、次回予告の事を言われると、ちょっとねー(横目)

今回はセイバーとの模擬戦がメインでした。前半の部分は前回に入れたかったのですが、その時は面倒臭いと思ってスキップしようとしてましたが、今回の話を書く時にやっぱ入れようと思った訳です。

オリ主がやっとこさオリ魔術の説明をしようとしてますが、それ自体はもう少し後です。

気づいている方もいらっしゃるかも知れませんが、一部のイベントが一日早くなっています。三つのルートを掛け合わせるのも大変なのに+αしているので、結果このようになっています。

次回、隣の尼さんは魔女!?

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