また、夢を見た。
昨日の夢から時が経ち、父さんと母さんは第四次聖杯戦争の
「また……行っちゃうの?」
「悪いな、創太。でも、今日で最後だからな?ちゃんと留守番しててくれよ。」
「大丈夫。お母さん達はちゃんと帰ってくるから。」
母さんは本当にそう思って言ったんだろう。けれどその言葉は嘘になってしまった。
俺の隣にいるジアナは、不安気な表情で二人の顔を見つめる。
「どうした、ジアナ?」
黙っているジアナに話しかける父さん。
「やはり、私も行った方が……」
「昨日も言ったろ。あれはお前には止められないかもしれない。なら、俺達だけで行くしかない。たとえお前が、いや、えいy……りょーさんがたざく!?」
父さんが何かを言おうとした時、母さんの右ストレートが、顔面にクリーンヒットした。体をほぼ使っていない腕だけのパンチだったっていうのにかなり吹っ飛んだ。そん頃の俺は見慣れていたのでノーリアクションだったが、よくよく考えてみれば、あれは異常な光景だった。
「ふふっ、あんまり口を滑らせない事ね。」
「怖い!俺の妻が悪の幹部みたくなっている事が怖い!」
何、夫婦漫才やってんだ。
「ジアナ。確かに貴女をここに待機させておくのは戦力外というのも理由の一つよ。」
おい、母さん。それはストレート過ぎないか。腕だけじゃなくて言葉もそうなのかよ。ほら、ジアナも落ち込んでるぞ。体育座りまでしちゃったんですけど。
「でもね、一番の理由は私達の息子を、創太を護ってやってほしいの。私達も必ず帰るつもりでいる。けれども、今から行われるのは最も厳しい戦い。だから・・・わかるでしょう?」
子供の俺を気遣っているのか、最後まで言わない母さん。
「・・・はい。そういう事ならば、ソウタは必ず護ります。ですから、貴女達も・・・」
「ああ、必ずな。」
復活した父さんが何事も無かったように言うが、それによって逆になんか台無しになった気がする。だが、皆スルー。
「もうそろそろ時間だな。それじゃ、行ってくるよ。さあ、行こう。」
「ええ、それじゃあね。ジアナ、頼んだわよ。創太、行ってきます。」
「うん!お父さん、お母さん、行ってらっしゃい!」
「お二人とも、お気をつけて。」
それが、俺達親子が行う最後の挨拶となってしまった。
何時間かが経ち、俺はベットの上で寝ていた。夢から覚めた訳ではない。夢の中で寝ているという不思議な感覚に陥っていた。いや、厳密にいえば横になっていただけで、寝てはいなかった。その当時、何か胸騒ぎがして……
外から爆音が聞こえ、強い光が窓から差し込んだ。
すぐさま窓を開け、ベランダに飛び出し、外を見た。その光景は悲惨としか表現できない物だった。後に冬木の大災害と名付けられるその災害。
怖かった。
まさか、と思った。両親の事が頭に浮かぶ。
そして、走った。靴を履き忘れ、ドアを開けた。
ジアナが俺より先に外に出ていたが関係ない。俺を呼ぶ声を振り切り災害が起こった地へと向かう。
走る。走る。走る。走る。走る。
その小さな身体を動かす。
息は絶え絶え。
けれども、
休む事を忘れたかのように
走る。
どれくらい走ったかは分からない。いつの間にか周りは火の海に覆われていた。何かだった物の破片が足に食い込む。けれども、止まる事はしなかった。ただただ、両親を見つけたい。そんな一心で、身体は進んでいた。
しかし、何故だろう。俺は足を止めた。両親では無い誰かを見つけた瞬間に。その人は中年の男性で、頭がボサボサで、そして目が死んでいた。そして、俺は……
ーー2月5日ーー
「——、—きて——さ—。もう、朝—すよ。起きてください。」
うーん、眠い。まだ寝足りない。
「あと、五分……むにゃむにゃ……」
「起きないとまた電撃を食らわせますよ。」
「起きます!起きてます!!起きてました!!!」
ジアナのその言葉を聞いた瞬間、俺の中で本能が危険を察知した。やなかんじ〜になるのは御免だ。
「うん?まだ五時半じゃないか。なんでこんな時間に・・・」
「忘れましたか?今日は私達が当番ですよ。」
「え?……あ〜、そうだったな。そんな話があったような気がする。」
一昨日決めた事をすっかり忘れてた。飯の用意をローテーションで、一昨日は衛宮。昨日は遠坂。そして、今日は俺達だった。
けど、なんで五時半なんだよ。ここの朝食は早すぎんだよ。確かに、先生やら、朝練がある人とかいるから仕方ないけども。
ちなみに、何故、二人一緒かと言うと、単純に俺が高等な料理スキルを持っていないからだ。だからと言って一人だけ料理しないという訳にはいかないので、ジアナと共にやる事になった。
「まずは顔を洗いに行きましょう。貴方の髪もボサボサですし。」
「えっ?……ホントだ。」
ジアナの言葉に反応して、髪を触ってみる。この感触だと俺の髪の毛はすんごい逆立っている筈だ。クソソソの事かな?
「とりま、洗面所だな。」
「そーですね。」
笑って?
「言いませんよ。」
いい○もー
「自分でやってて悲しくないんですか?」
酷い。
「普通。」
「アレよりかはマシですが、普通です。」
「普通だな。」
「普通……ですね。」
それが皆さんから頂いた朝食の感想である。ちなみに作ったのは和食だ。
「想像はしてましたがここまで全員の意見が揃うとは思いませんでしたね……」
「まあ、そこまで鍛えてる訳でも無いし。」
ハッキリ言おう。悔しくないもん。いや、マジで。
さっきも似たような事を言ったが、俺は別に料理が得意な訳ではない。それはジアナも同じような事だ。俺は二年、ジアナは四年前から料理を作り始めた。それに対して、衛宮は正確には判らないが十年前からは確実に毎日の食事を作っている。遠坂も多分、それぐらいからだろう。
年季だけが全てでは無い事も確かだが、俺達はそれに勝るほどの努力はしていない。食事を自分達で賄う。それだけの為に今までやってきたというのが大きい。
「マズくは無いんですけど、やはり、先輩の料理を毎日食べてると……」
「だよなー」
間桐のいう事は解る。衛宮の晩飯を食べてるとそりゃあねえ〜。
「私はてっきり、古崖君が作るって言うから激辛麻婆を作るかと……」
「いや、それはない。俺は確かに泰山の麻婆を食ってるが、人に食べさせるもんじゃないとも解ってる。なんせ、それを食べた次の朝はトイレを占拠しちまうぐらいだからな。」
へ、へえ〜。という言葉が部屋全体を包み込んだ。どうでもいいですよねそんな情報。というか、飯の最中にそんな事を言ってはならないんだよな、そもそも。
「まあ、普通だからこそ、私達は士郎君に料理を習いにきたのです。それこそ、彼の料理を普段から食べている桜の舌を唸らせるようならば、そうする意味はありません。」
そういや、衛宮の家に泊まる表面上の理由がそんなだったな。
ちなみに皆さんお気づきだろうか。感想を言ったのは四人で衛宮、遠坂、間桐だ。藤村先生は今日来ていない。残り一人はだれか。そう、本来、表沙汰にしてはいけないそセイバーだ。昨日の出来事が関係しているが、説明は省かせてもらおう。
「まあ、今回は俺とジアナの実力を見てもらっただけだし、教えてもらうのは晩飯を用意する時に教えてもらう。
そういえばだけど桜、お前、そろそろ部活に行かなくてもいいのか?」
「あ、そういえばもうそんな時間でしたね。」
早く部外者を出すために、口実を作る。
「なら、俺が玄関まで送っていくよ。」
「ありがとうございます。」
衛宮は桜を見送る。言い方は悪いが、これで邪魔はいなくなった。
「私たちは、食器洗いをしましょう。」
「ああ、そうだな。」
戦争がこれからどうなるか、それを話し始めようではないか。
どうも作者です。
今回のメインは最初の夢だけです。後はおまけみたいなモンです。
設定を忘れてしまう部分があります。日常パートならまだしも、シリアスパートとか、戦闘パートでやらかしてしまうと、死にたくなります。
次回、間桐邸。