これまで衛宮の周りについて説明していたが次に話す事は
「少し俺たちのことを話そう。」
と言ってもそれほど大した意味は持たない話だ。これはただ俺が言いたいだけだ。
「俺たちがこの聖杯戦争に参加者でも無いのに関わっている理由についてなんだが、お前と大体同じ理由で、聖杯戦争の被害を抑えるためだ。俺の両親もそんな理由で前回のやつに関わっていて、切嗣さんとも共同戦線を張っていたらしい。」
「
「ああ。」
さっきまでの話は、ジアナがその時に聞いたらしいし。
「俺はもう周りにいる誰かを失いたくない。ただそれだけの為に戦う。そして、できればお前が聖杯を勝ち取ってほしい。そうでなかったら、無理矢理にでも他の奴には聖杯は使わせない。そういう目的で聖杯戦争に関わっている。」
少しの沈黙。この言葉には嘘はない。純粋に思った事を伝えたつもりだ。しかし、俺はそれを全て否定するような事を言う。
「こんな話をした後に言うのはちょっとどうかと思うが……」
「なんだ?もったいぶってないで早く言ったらどうだ?」
衛宮は急かす。少し悩んで俺は口を開く。
「俺が今言ったことが全て
同時に驚く三人。散々長ったらしい話しておいてこんな事を言うのはおかしいとは思うがそれでも言っておきたかった。
そして、肝心なのは真実か事実かではなく、嘘をついているかもしれないというところだ。
「衛宮、お前は人が言った事を信じすぎている。今ここで起こっているのは戦争。敵はどんな手を使ってでも勝ちに来る。力だけじゃなく口や頭をも使う。だから、お前はもう少し人を疑う事を覚えろ。じゃないと……死ぬぞ。」
少し辛辣かもしれないが、本当の事だ。だが、衛宮に言っても無駄かもしれない。
「でも、創太は態々そんな事を言ってくれた。自分が疑われる事を恐れずに。だから、俺はそんなお前が嘘をついているなんて思えない。」
ほら、衛宮士郎という奴はこういう男だ。
「あのな衛宮。今の話聞いてたか?敵はどんな事でもするって。遠坂だって普段は猫被ってて、今は違う一面を見たけど、もしかしたらもう一面あるかもしれないぞ。かなり黒い面が。」
「そんなやつには見えないけどな……」
かなり重症だ。こいつ本当に生き残れるのか?
「はあ。もういい、とにかく俺が言った事は忘れんなよ。」
「わ、解った」
嘘つけ。いや、意味が無いのは解っていた。けれど言わずにはいられなかった。俺は友人としての忠告がしたかったのだろう。
「そういえば、お前遠坂から同盟の話は聞いたか?」
「ああ、聞いた。」
「早めに返事はしておけよ。さっきはああ言ったが別に承諾しても構わない。むしろ、ありがたい話だと思っている。」
「なんでさ?」
「敵が少なくなるからだ。後から戦う相手になるとしてもな。そうすれば生き残れる可能性が高くなるだろ。」
「遠坂と戦う気は俺には無いんだが……」
衛宮が言った事は聞かなかったことにしよう。面倒くさいから。だが本人の前では言わないでくれよ。さらに面倒になるから。
「最後の話になるけど俺とジアナはしばらくの間、ここに泊まろうと思うんだ。」
「なんでだ?」
「さっきも言った通り俺はお前が聖杯を取るのが最善だと思っているし、その為には一緒に戦う方がいい。なら、普段の生活もなるべく近くにいた方がいいだろ?」
「まあ、確かに。」
「それでどうだ?」
「いや、俺はいいと思うけど、セイバーはどう思う?」
「私も彼等が共に戦ってくれるのはありがたいです。」
「それじゃあ、決定だな。早速俺たちは荷物を取って来るぜ。ジアナ、いくぞ。」
「はい。それでは士郎君、セイバー、後ほどまたお会いします。」
そう言って俺たちは立ち上がって帰ろうとする。
「じゃあな二人とも。また後で。」
「ああ、またな。」
「はい、気をつけて。」
衛宮邸の玄関を出てすぐジアナが話しかけてきた。
「すみません、創太。実は急な用事があって……」
「セイバーに呼び出されたんだろ?」
「えっ……」
図星のようだな。
「大方、俺たちに聞かせたくない話だろ?別に訊いたりはしないからさっさと言ってこい。」
「……はい、ありがとうございます。」
そう言って、ジアナは塀を飛び越えていった。なんの話かはわからないが、おそらく前回の戦争についてだ。最後の最後で二人は顔を合わせていない。だから、お互い確認したい事があるのだろう。
「さて、先に帰るか。」
=====
「すいません、待ちましたか?」
「いえ、先程来たばかりです。そもそも、呼び出したのはこちらなのですから、待たされても文句は言いません。」
そんな、恋人が待ち合わせ場所で会話をするような私達は、衛宮家にある道場にいました。アイコンタクトでセイバーから話があると聞いた(見た)のですが・・・
「それで話とは?」
「前回の聖杯戦争についてです。」
「やはりその事ですか。」
私が思っていた通りのことでした。
「まず、私は前回の最後に聖杯を壊して戦争が
「私も判りません。というよりも私は本当に貴女が聖杯を壊したのかが気になるところなのですが……」
「それは間違いありません。確かにこの手で聖杯は破壊しました。」
彼女は嘘を言っているようには見えません。それなのに聖杯戦争は起こっています。これは一体……。そう悩んでいると一つの考えが思い浮かびました。
「セイバー、貴女の言った事は事実でしょう。ですが、今ここで聖杯戦争が行われているのも事実です。そこから考えられるのは聖杯の再構築です。」
「それならば大量の魔力が必要です。それをたった十年で集めるのは無理があります。」
やはり、そこを疑問に思いますか。聖杯とは霊脈から少しずつ魔力を採り、その魔力を使い英霊を召喚します。しかし、人の手で魔力を集めるなどと不可能ですが、
「そう考えるしかありません。もし間違いだったとしてもアインツベルンから直接
それで万事オッケーです。なにかセイバーが苦笑いをしていますが気のせいでしょう。
「そ、それはその方向でいきましょう。」
あれ、本当にしているような?
「もう一つ質問をしても?」
「ええ、構いませんよ。」
き、気のせいですよね!!多分……。
「創太に本当の事は話しているのですか。」
「何がですか?」
感づいてはいますが一応シラを切ってみます。
「惚けてないでください。貴女とソウタの両親が出会った話です。」
無駄に終わってしまいましたか。
「前にもその話を聞き、その後、問い詰めましたが貴女は詳しい事は話せないと言いました。それは私が部外者だからだと思いましたが、創太はそうではありません。」
うーん、理由はあるのですが、それを話してしまえばセイバーは私の正体に気づいてしまうかもしれません。ですが嘘をついたところで彼女には見破られます。仕方ありませんが、それっぽい事を言っておきましょう。
「私は今の私です。昔の私ではありません。ですから、昔の私を語ったところで意味はありません。」
事実ではありますが真実ではないと言ったところでしょうか。そもそも、意味がないのならば語ってもいいということにもなりえます。
「……分かりました。引っかかる言い方ですが、貴女がそういうのであれば私は黙っておきます。」
すんなり引き下がってくれるセイバー。私としてはありがたいことです。
「他に質問はありませんか?」
「いえ、ありません。疑問は少しあります。例えば昨日の戦闘で私の
「うっ……。」
バレましたか。あれだけ派手に使っておいてバレたも何も無いのですけれど。創太を助ける為とは言え、今回のは失態でした。バレた所で問題は無いのですが。
「しかし、あれも古崖家の魔術なのでしょう。」
さすが、セイバー。大当たりです。
「はい、貴女の言う通りです。しかし、あれは一度しか使えません。そもそも、あれは貴女の剣を騙して使っているに過ぎません。」
一度騙されれば次からは同じ事は出来ません。
「そうですか。しかし、貴女達の魔術は多様な事に応用が可能ですね。」
「器用貧乏なだけだと言ってましたけどね。」
ソウタの両親が言っていた事です。
「それともう一つ。マスターと話し合った結果、彼には真名を明かさないことにしましたので、私の名はシロウに伝えないでください。」
「はい、解りました。」
おそらくですがシロウ君の対魔力では無いに等しく、格上の魔術師に脳内を容易く覗かれると判断したのでしょう。そうなれば秘匿も何もありません。
「話はそれだけです。」
「そうですか。では、私は一旦帰って荷造りをしてきますので。」
「はい、創太も待っている事でしょう。」
「ええそうですね、それでは。」
そう言って私は道場から出ていき、古崖家へと帰ります。もしかしたらもう荷造りが終わっているかもしれません。早く帰りましょう。
どうも、作者です。
あんまり話が進まねえ。と言うよりも説明を序盤に持ってき過ぎました。けれど、物語が進むにつれて説明が入れづらくなるので仕方ありません。(言い訳)
あとは更新ペースですかね。モチベーションが下がっているのもそうなんですが新しい生活リズムに慣れません
次回!!もあんまり進みません。