IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫   作:初月

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Vitaからの投稿ですので誤字があるかもしれません。
あと日常回の練習も兼ねているのをご了承ください。


第26話 少佐の意地

アリーナにいくつかある更衣室のうち一つをそのまま使ったためにかなり広いスペースとなっている男子更衣室。

色々と有名な人物なら警戒しそうなくらい広くそして死角も多いその空間で一人のんびりしているのがいた。

 

言わずとも知れた有名人の織斑一夏である。

 

先ほどの授業で行った模擬戦では甲龍を抑えたのと決死の突撃でホワイトフォートの127mm砲を道連れにしたくらいしか活躍はなかった。

 

まあまだISに触れて一年も経っていない素人なのだからしょうがないのだが彼の場合ではそう言っていられるほど周りの状況がいい物ではない。

さらに度重なるIS学園襲撃若しくは襲撃未遂事件の発生で主に日本政府が神経をとがらせていたのだ。

 

だから一人の教官兼護衛(更識楯無)を差し向けた。

 

そして護衛は早速任務を開始する。

 

「だーれだ?」

目標の目を手で覆う。

元々暗殺とかの訓練を受けている人間だったので足音一つ立てずに背後へ立つことに成功する。

突然そんなことをされた護衛対象も驚いて思考停止しているがむしろそれくらいがいいと楯無は判断した。

 

「はーい、時間切れ」

 

そういうと手を離す。

私も大して時間があるわけでもない。

「・・・誰?」

だが顔を見ても気づくことはなかった。

・・・私、これでも生徒会長なんだけどな。

ちょっとおねーさん悲しいよ。

 

「あっ」

 

そう扇子で織斑の後ろを指さして振り向いた先に男子更衣室を後にした。

今は学年ごとの成績優秀者(1年のみ専用機持ち)による模擬戦中とはいえ仮にも授業中。早くピット戻らなくては。

 

 

第二試合開始まであと3分の時である。

 

 

 ◇

 

4時間目。

 

授業に遅刻とのことで一夏が開幕説教を受けていた。

まあ10分もある休み時間の間に着替えられない一夏が悪い。

 

さらにこれのおかげで試合が始まるのが少し遅れたのだがまあ私には関係ない話である。

もう私達の出る試合は終わったからな。

 

まあ専用機持ちもレポートを出さなきゃいけないんだけど戦闘の詳細くらいなら見ればわかるし、一応カメラで撮影してるから困ったら再確認するだけの話だ。

 

「ね~ね~めありん」

 

間延びした声が後ろの席から聞こえてきた。

確か布仏本音と言っただろうか。

めありん・・・多分私のことを指すのであろう。

 

「なんでしょうか?」

 

つまりかけていたがIS学園にいるときの口調で話すことに成功する。

なんだか久しぶりな気がするのは気のせいだと思いたい。

しかし私に一体何の用事があるというのだろうか。

 

「そのビデオ、あとで貸してくれない?」

「あー、それならいいですよ」

 

なんだそんなことか。

内心でそんなことを思いながらかえした。

 

ありがとね~という布仏さんに少し応答しながら今回の試合の観察を始めることにする。

部屋にあまり持ち帰りたくはないし、布仏さんに貸すことを考えると時間をかけるのも申し訳ないしな。

 

「オーブリーさんはどっちが勝つと思う?」

 

またもや後ろから声をかけられる。

この声は確か相川さんだな。

相川さんからの質問に私は少し悩んで、でもすぐ結論を出すことに成功した。

 

「シャルとオルコットさんのほうじゃないですか?」

「なんで?」

 

あらかじめ用意していた答えを口調を変えつつ話す。

これがなんだかんだ言って面倒な作業だ。

一人称は変わったというのに口調は変わる気配を見せないのは私のせいなのだろうか?

 

「バランスとしてはどちらも悪くはないと思うんですが、篠ノ之さんの専用機は色々玄人向けなんで多分性能を生かし切れないと思います。そうなったら機転の利くシャルがいるほうが有利になるんじゃないかな」

 

「ほほう、その予想に何円賭ける?」

 

おどけた声でそう聞いてきた。

これは創作の軍とかでよく見るノリだな。

オーレリアでもやってる連中は見たことがあるが私は大抵賭けの対象だった。

 

「1000円・・・ですね。」

篠ノ之さんの頑張りで戦況は変わるし、とは口に出さなかった。

ただの賭けとはいえ負けたくはないし、言い訳を作るのはなんだか自分自身に納得できないから。

 

「じゃあ私は篠ノ之さんたちの勝利に500円賭けよう!」

「え!そこ数合わせないんですか?」

「だって専用機持ちの言うことなんだもん!これくらいのハンデはいいでしょ?」

 

少し溜息をつきつつその発言を認めた。

たしかに一年も勉強していない一般生と既に年単位での勉強を重ねた専用機持ちが同じのでは割に会わないからな。

 

「あ~、戦闘始まったよ~」

 

布仏さんが言い終わるころにはすでに交戦状態に入っていた。

 

予想通りに紅椿は瞬間加速で突撃、ブルーティアーズが後退して、援護でカスタムⅡが前衛に回ったようだ。

 

シュバルツェアレーゲンは少し遠いところから戦況を見つつ支援中といったかんじ。

1対1を二つ作るのか2対1で叩き潰すのか気になるところではある。

 

「あれ?ビットまだ撃ってない?」

 

確かにビットは滞空したまま複雑に飛んでいた。

近くを見ると複雑な機動で飛ぶワイヤーブレードが見える。

 

まず相手の手数を減らしにきたか。

 

しかしさっきからレールキャノンが使われていないのは意外だ。

 

正直な話レールキャノンの衝撃波に巻き込んだ方がワイヤーブレードを展開するよりいいはずなのにしない。

まあ動かなくなればレーザーの雨かもしれないが母機の機動は制御に思考がさかれて鈍るのだから火力で勝てるはず。

もしくは全て破壊してからAICを使用しての撃ちあいを行うのだろうか。

 

そのままワイヤーブレードとビットの攻防を見ていると離れた場所から多数の衝突音が聞こえた。

 

「あちゃー。あれはなんか駄目だね」

「完全に機動に振り回されてますね」

 

紅椿がアリーナに次々と空く穴を見て思ったことはただ一つだ。

 

篠ノ之は機体に振り回されている。

 

彼女には高機動・高消費型なんかより打鉄強化版くらいのものにしたほうがよかったのではないだろうか?

それとも姉である博士が何か秘策でも容易しているのか。

 

私が知ることではなさそうだ。

それに天災の渾名を持つ博士に自ら接触しにいくほど私は馬鹿じゃない。

 

「持久戦にでも持ち込むつもりでしょうか?紅椿は不利になる一方だというのに」

「やっぱり篠ノ之さんは打鉄の感覚が強いみたい」

 

そのまま相川さんが機体くれと言いそうになった時、試合は大きく動いた。

ブルーティアーズのビットがすべて破壊され、紅椿が移動用エネルギーの調整をした瞬間にシールドピアスを打ち込まれて撃破されたのだ。

 

「最初からこれが目的でしたか。でも紅椿が居なくなったのは痛いですね」

そう呟くと後方から大声が聞こえた。

「頑張れラウラちゃん!私の500円のために!」

「ちょっとゲスいよ~」

 

軽いツッコミが入ったあと相川さんが「あっ」と声を漏らした。

 

真っ先にビットを失った分機動が鋭くなったブルーティアーズにワイヤーブレードとレールキャノンが向けたのだ。

いくらAICがあろうと多方面からの攻撃には耐えられないのに。

 

予想通りシュヴァルツェア・レーゲンの背後にラファールリヴァイブカスタムⅡが回り込む。

 

だがラウラはそれを狙っていたらしく後退しオーバーシュートするとすぐにレールキャノンを発射。

シャルは突然の攻撃で一瞬驚いたのが仇となり直撃してしまった。

これで発生した硬直を利用しワイヤーブレードで拘束することに成功。

 

至近距離で背後からレールキャノンを連射されカスタムⅡに撃破判定が出た。

完全に学年別対抗トーナメントの仕返しである。

 

だが流石はシャルというべきだろう。

撃破される寸前にグレネードをばら撒き、撃破判定が出て間もなく黒い機体が砂塵に包まれ撃破判定が下りた。

 

試合は終了、無事に私の1000円は守られたのだった。

 

相川さんは俯き、それを布仏さんが慰めていた。

···別に私はそこまで金が欲しいわけではない。

 

だがそれを言おうとしたら制止された。

 

「言いたいことは分かるよ、オーブリーさん。でも賭博の元締めをやってた人間として引けない一線があるんだ」

 

熱く語りながら私に500円を渡された。

ここで彼女の意志を否定するほど私は酷ではないつもりだ。

 

「わかりました。有り難く受け取らせて頂きます」

 

「そう、それでいいのよ」

そんなことを大げさなリアクションをしながら呟いて相川さんは帰っていった。

 

これで授業も終わり。

念のため4ヵ所に設置した撮影機材を片付けて帰路につこうとしたときふと横を通った千冬さんに

「あとで教育室に来い」

と言われた時、背筋が凍り付いた。

 

まあ実際は賭博の件ではなく私の映像資料を使いたいって話であったのだけれど。




次は多分9月下旬です。

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