IS×ACE COMBAT X ≪転入生はエースパイロット≫   作:初月

32 / 37
最近戦闘機分が欠乏している気がする。


7/26 タイトルの誤字を修正


第25話 転校生の本気 後編

まだ土煙の晴れない中再び銃声は鳴り響く。

 

そのなかで瞬間加速により突撃を敢行する一夏。

 

「待て一夏!」

 

そう叫んだが既に手遅れだった。

 

甲龍との戦闘で死にかけだった白式にガトリングと127mm砲

が一門ずつむけられ、そして火を噴いた。

もれなく爆炎に埋もれる白式。

 

瞬間白い線が127mm砲を貫き、装填済みだった炸裂弾ごと爆発を起こしたが直後白式戦闘不能とFCSが喋った。

 

ホワイトフォートは背部に127mm砲の代替としてGAU-10を展開しさらに濃い弾幕を展開する。

接近は危険と判断し距離を離すとCIWSの射撃が止んだ。

 

そこであることに気づく。

 

普通にあんな連射をしたら銃身が燃え上がるはず。

でも燃え上がらない。

 

さらに離脱に入ったとき2秒弱弾幕が薄くなっている。

 

ここから立てる仮説としては銃身を冷却するさいに格納し予備を展開する方法だろう。

 

立証する手段は無いに等しいが、それも実際に試せばいいだけだ。

 

ホワイトフォートの右前方から突撃を開始しそのままジンキングを始める。

エネルギーパック残量なしの表示が出たのを確認すると旋回戦に移行した。

 

アリスの顔が少し歪む。

 

そして照準が軽く甘くなってきたところで全速飛行に移りブースターに炙られかなり高温になったエネルギーパックをホワイトフォートのガトリング砲に目がけて投棄、ついでに曲がってまともに使えなくなったファルシオンを127mm砲に投げつけた。

 

離脱後後ろから吹いてくる爆風。

 

ハイパーセンサーを使って確認して急上昇。

 

そして盾型ハードポイントで守りながら急降下しつつ全門斉射し、無理やり着地姿勢に移行するときの回転で加速された脚を叩きつけ、ホワイトフォートの左腕ハードポイント破壊に両肩武器の誘爆を起こさせたときに

 

「おねえちゃん?」

 

という声が聞こえた。

 

その発言の衝撃で数瞬動きが鈍ったのが原因だろう。

 

―――ホワイトフォートの砲撃で10mほど吹っ飛ばされた。

 

 

直後ホワイトフォートが爆炎に包まれ機能を停止。

 

1秒足らずの差で私の負けとなった。

 

 

やっぱりまだISには慣れていないみたいだ。

 

試合終了と同時に沸き起こった拍手の中でそんなことを思った。

 

そのときふと空を見ると、着陸態勢に入った一機のF-3の姿が見えた。

 

 

 ◇

 

私は内心ほっとしていた。

クジで対戦相手を決めたら鳳の機体を除き攻撃特化(白式)、機動特化(グリフィスレイダー)、手数特化(ホワイトフォート)というあまりにも突き詰めている機体ばかりが集まってしまったためどのような試合になるか多々の不安があった。

 

例えば手数特化でありながらある程度の装甲を持つホワイトフォートに攻撃特化で防御なんて考えられてないといっても過言ではない白式が突っ込めばよくて相討ちに終わり、完全に防御を捨てているグリフィスレイダーにはかなりきつい戦いとなっていただろう。

メアリーの腕も中々あるだけにかなりの長期戦になることが予想され、確実に授業に影響を及ぼすだろう。

 

幸い今回は無理やりとはいえ甲龍を撃破したのだが完全にあの馬鹿がやらかしたおかげで白式・グリフィスレイダーチームの敗北となってしまったものの、授業時間的には丁度いいものとなった。

 

それにしてもまだまだあいつは訓練が足りないようだ。

あとでこってり絞ってやろう。

今朝から少しおかしい上に大事な局面で機動ミスをしたメアリーを巻き添えに校庭10周ぐらいがいいだろう。

 

メアリーは大丈夫だろうが一夏はどうなることやら。

 

軽い溜息をつきつつ山田先生に

「ちょっと愚弟に会ってくる。校庭も抑えてくるから管制室を頼む」

と言い残し管制室をあとにした。

 

このとき少し引き攣った笑みを浮かべたことを気づかれた山田先生は塩入コーヒーを飲まされたとか飲まされてないとか。

 

 

 ◇

 

0934、伊豆半島沖上空をF-3D震電Ⅱ4機で構成されたファルシオン隊が駆け抜けていた。

 

F-3Dとは大陸戦争時に迎撃・奇襲用として開発が開始され航続距離・最高速度以外ではF-2を超える性能を得た準ステルス機であるF-3Aに特殊増層用のパイロンを追加し航続距離を長くした改良型である。

開発が遅れたのはステルス性とミサイル搭載数を減少させないように機体ラインに沿った増層とパイロンを開発したためであり、その形状はかなり特殊なものとなった。

所謂CFTを装備可能にしたF-3なのだが、この機のCFTは増槽として切り離せるのだ。

そのため特殊増槽によって機体膨らむため「デブ震電」という愛称があるくらいである。

 

<<最近要撃任務多いっすね>>

<<まあしょうがないだろう。ISのせいというのが食わんがな>>

 

IS学園のある湘南方面で要撃任務に就くことの多いファルシオン隊は軽い雑談をしながら飛行していた。

ローテを組んで行っている要撃だが、8月の終わりごろから回数が増えてきたのだ。

 

それも周辺国から飛んでくる定期便ではなく反IS組織のものと思われる機体や所属不明の機体がである。

 

最近ではオーシアで第四艦隊が離反したとのうわさも聞いているので不気味でならない。

 

表面上だけはまるで平和が訪れたかのような言い草だがその実世界各国で退役軍人や軍所属部隊の離反、一部の女性優位社会反対派の武装蜂起が多発していて対艦ミサイルを積んでの要撃もかなり多い。

もはや戦争状態なのに世界はそのことを認めようとしていなかった。

 

<<まあそう言わないであげてよ。IS部隊もミサイル防衛に明け暮れてるようだしさ>>

 

そういうのは万年4番機という謎な称号を持っているファルシオン4。

外見は20代前半くらいだが自由エルジア掃討戦の時には既に空にいたらしい。

女性というのを生かして女尊男卑に染まりきったクソ基地司令と交渉したりIS部隊の掩護をとりつけたりとかなり交渉事をやるのがうまい。

そして空中戦の腕も確かだ。

 

<<司令部より通信。無警告撃墜許可がおりたよ。それにしてもなんで私・・・>>

<<前方にunknown確認。数は4>>

 

3番機がそういった瞬間前を飛んでいた3,4番機がミサイルを発射した。

 

<<2機撃墜確認。残り2機はいただいた!>>

 

そういって2番機もミサイルを撃つ。

俺も少し後にミサイルを発射した。

 

<<隊長が2機撃墜。ファルシオン2、いい囮だったな>>

<<副長としてはなんだか微妙な気分だ>>

 

流れとしてはフレアとチャフに2番機のミサイルが吸い込まれその直後俺の撃ったミサイルが当たったという感じだ。

これがいつもの流れであるおかげで副長は撃墜数が乱戦で仕留めた2機なのに対して俺が7機である。

・・・もう少し撃墜数を副長に分けてやりたい。

 

<<敵機殲滅。RTB>>

 

3番機の通信とともに編隊は帰路へとついた。

以前使っていたF-3Aとは違いまだ燃料に余裕がある。

 

あともう一回空中戦ができる。

 

そんなことを思った時だった。

 

<<海中よりunknown出現!>>

 

突然通信が入る。

 

直後レーザーが隣を駆け抜けた。

 

<<こちらファルシオン2!上部エンジンをやられた。脱出する>>

<<敵機視認!人型ユニットのようだな>>

<<フレア発射口がやられた!小型飛行体がいるみたい!>>

 

一気に全機からの無線が入る。

この無線を聞いたのか空中管制機からの通信が入った。

 

<<敵をISと断定。対IS部隊が到着するまで持ちこたえろ>>

 

了解の声を発する間もなく乱戦が開始される。

何もないところからレーザーが発射されているのだ。

 

幸いF-22を圧倒している格闘戦能力のおかげで掠るくらいで済んでいるが劣性なのには変わりはなかった。

 

<<敵レーザーは同時に5発まで射撃可能なようだ>>

 

戦域から軽く離れていたファルシオン3がそう無線を発した瞬間機動が乱れる。

 

<<ファルシオン3!応答して>>

 

乱戦をしながら叫ぶファルシオン4。

だが返答はない。

その時俺はあることに気が付いた。

 

レーザーの数が2本まで減っていたのだ。

 

直感で敵の隙だと思いミサイルを撃った。

 

<<FOX2!FOX2!>>

 

だが敵が爆炎に包まれることはなかった。

迎撃されたのだ。

 

<<こちらファルシオン3、主翼を切られた。脱出する>>

 

またレーダーから友軍の反応が消える。

残るは俺とファルシオン4の2機。

 

そう思ったときに赤いレーザーが敵にあたった。

 

<<こちらトキ1。援護射撃を開始する!>>

 

すこし遅い無線。

 

安堵するとともに機体を青いレーザーが貫く。

 

火を噴きだした機体を見て俺は決断した。

 

<<ファルシオン1、脱出する!>>

 

直後キャノピーを破砕して燃え上がる機体から飛び出し見た光景は赤いレーザーと青いレーザーの中で舞う青い鳥だった。

 

 

 ◇

 

隊長の墜落により一人となってしまった私は離脱を始めようとしてあることに気が付いた。

 

レーザーが何らかにより防がれていたのだ。

 

ミサイルも先ほどレーザーにより迎撃されているのを確認できた。

 

なら残すは実弾兵器、つまり私の機体のバルカンだけ。

 

そう決断し赤と青のレーザーの中を駆け抜ける。

 

かつてF-2でX-2と戦ったときのような緊張感。

実際に1mm操縦を間違えれば死にかねない状況の中を飛ぶのはかなりのスリルがあった。

 

でもそんな突撃は相手の想定外のであった上に洋上と青空の中では非常に役立つ青い塗装のおかげか気づかれることなくバルカンによる攻撃に移る。

 

<<ファルシオン4!FOX1!>>

 

叫びながらバルカンを乱射した。

一部が小型の何かやレーザーにツッコみ防がれたが多くの弾丸がISにあたる。

 

もちろん発砲音が至近距離で聞こえれば気づかれるわけで青いレーザーによる弾幕が展開される。

 

でも1秒たたないうちに弾幕は消えた。

 

戦略レーザーによる攻撃での消耗で離脱を開始したのだ。

 

航続距離強化型とはいえあまり長くは飛べないF-3。

仲間の敵討ちに追撃を行いたくもなったが離脱した。

 

燃料は残り24%。

帰れるか不安であったが無線を開く。

 

<<ファルシオン4、RTB。あとこの空域に救助ヘリの派遣をしてね>>

 

そういった後少し機体を傾け洋上と空中の白いパラシュートを3つ視認したあともっとも近い基地へ機首を向けた。

 

念のためミサイルもAIM-9Xを除いて全部捨てたあと赤いレーザーが消える。

 

今回の要撃も終わり。

 

いつもならそんなことをつぶやいていたのだが今日は呟く気にはなれなかった。

 

「随分と久しぶりの一人寂しい帰還ね」

 

自然とそんなつぶやきが漏れた。

 

 

これが公式戦においての初めての対IS戦における通常兵器使用側の戦術的勝利であった。

まあこの敵ISはストーンヘンジ砲台跡守備隊襲撃後に無補給でIS学園襲撃に向かっているのだが所属不明機である以上そんなことを知る由もない。

 

 

 ◇

 

そろそろ織斑一夏に接触しようと思っていた更識楯無は少し焦っていた。

自分が躊躇っている間に亡国機業所属部隊がIS学園目前まで来ていたのだ。

 

幸いISのほうは日本国防空軍のADF-1部隊の攻撃により後退させることには成功したようだが、母艦である中型潜水艦は取り逃がしたらしい。

 

ISが戦略レーザーを積んでいたとはいえただ戦闘機に負けたという事実も大変重要なことではあるのだが織斑一夏の件でただでさえ苦情が来ている更識の長としては亡国機業の攻撃開始に間に合わなかったという事実それ自体が問題であった。

 

まあ幸いなことに今目標は更衣室に一人でいる。

 

早速接触をかけるとしよう。




転校生の本気とかいうタイトルでありながらあんまり戦果あげられてない気がする転校生のことは気にしないでください!相手が悪すぎるだけなんです!

それにしてもグリフィス1の実力をどのくらいの速度で上げていくかはかなりの問題になりそうです。
ISは空を飛んではいるけど地上戦に近いものですし苦手そうではあるけどグリフィス1の立場を考えると一般兵士から特殊部隊並には地上戦ができそうとも思ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。